初めて評価をいただきました。
至らない部分の多すぎるであろう本作を評価して下さり嬉しいです。
ストライダーズ様、本小説に感想を書いて下さりありがとうございました。
この場を借りて、お礼を申し上げます。
【神山高校】
昼休み。俺はいつも通り、司と昼ご飯を食べていた。
すると、不意に司が溜息をつく。ここ数日、司の「らしくない」行為がかなり多い気がする。俺は少しばかりの驚きを見せながら、司に質問をぶつける。
「おい、溜息なんてらしくないだろ……何かあったか?」
「む……聞いてくれ夏夜! オレは人を探している!」
「んなこと大声で言わんでも聞こえてる。で、誰を探してるって?」
「名前は分からん。だが、ロボットを使ってショーをしてるヤツだ。この間フェニックスワンダーランドで見かけてそれっきりなんだが……」
「……どんな見た目だ?」
「身長は……少なくともオレより高かった気がするな。ああそれと、
(……とんでもないくらい心当たりがありすぎるんだが)
長身で、しかも紫に水色のメッシュ。そんな見た目をしててかつロボット使ってる奴なんて、俺の頭の中には1人しかいない。類だ。
というか、あいつ公共の場所でショーしてんのか。しかも遊園地内で。どう考えても無許可だろ。なんで捕まらないんだ。……しかし、類と司は相性がいいといつか思ったことがあったが、まさかこんなに早く接点ができるとはな。
「──心当たりがある」
「本当か!? 是非教えてくれっ!!」
「うるさいなもう……。そうだな、放課後に屋上に行け。大体そこにいる」
「なにっ!? まさか同じ学校なのか!?」
「同じ学校も何も、最近隣のクラスに転校してきた奴だが。知らなかったのか?」
「そ、そうだったのか!? 灯台下暗しとはこのことか……。教えてくれて感謝するぞ! 早速今日、屋上に行ってみようと思う!!」
「はいはい。あの天才も大概ショーバカだから、話せば結構気が合うんじゃないか?」
俺はこっそりとメッセージアプリを起動し、類にメッセージを送る。
珍しいねと驚かれたが、とりあえず「用事があるやつがいるから放課後屋上で待っててくれ」と連絡したらすぐにOKをもらえた。
(これでよし……と)
あとは、類と司の問題だ。あわよくばショーユニットでも組んだりしないかな。流石にそりゃないか。
「ま、いい出会いになると良いな」
「ああ! オレは必ず、そいつを仲間に引き入れて見せるぞ!!」
相も変わらずうるさいが……なんだかんだ相性は良さそうだ。どちらもショーのことになると真面目になるしな。成り行きを見守るとしよう。
【星乃家】
それから数日経った、ある日の放課後。
いつも通りパソコンに向き合おうとしていた俺の部屋に、何やら急いだ様子で一歌が駆け込んでくる。
「お兄ちゃん、突然で悪いけど……ギター教えてくれない!?」
「な、なんだいきなり?」
「あ……ごめん」
「……まぁ、いいけどさ。で、なんだっていきなり?」
「うん。それがね……」
やたらとテンパっている一歌をなだめた後、大体の事情を一歌から聞いた。どうやら志歩が随分と無茶な要求をしてきたらしい。
(なるほど、そう来るか)
志歩はバンドをやるにしても、馴れ合いではなく本気でやりたいのだという。その考えは知っている。なんせその話は志歩から何度も聞いたところだ。だからライブハウスでバイトしてるわけだし。
ギターを教えてくれと頼み込む一歌の目は、本気だ。どうやら本気で志歩と向き合う覚悟はできたらしい。で、ギターの練習を自分なりにしてきたけど、時間が足りないから教えてくれってことだそうだ。
そういうことなら、断る理由はどこにもない。そもそも志歩たちのいざこざに巻き込まれるのなら、よほどのことがない限り一歌の味方をするって決めてるしな。
「わかった。どの曲だ?」
「あ、これなんだけど……」
「……!?」
楽譜を一目見て、目を見開く。
それは、まさしく俺の作った曲だった。自分の作った曲だ、音取りやコード進行を覚えていないわけがない。ドラムパートはないが、ギターとキーボード(見た感じシンセサイザーか?)、そしてベースの3つで演奏できるように調整されている。志歩はベースだから、キーボードは咲希がやるのだろう。ピアノやってるから順当ではあるな。
(……面白い。俺の作った曲で一歌たちに挑戦するか。良いだろう。志歩の期待以上の出来にしてやる)
「本気なんだな?」
「うん。私は、もう一度志歩たちと一緒にいたいから」
「よし。ギター持って来い。やるぞ」
「っ……! うん!」
それからしばらくの間、一歌とともにギターの練習に興じることになった。
まずは一度、通しで弾かせてみる。一通り弾き終えた後、俺は課題点を整理していく。こういう時、課題点はなるべく簡潔にして伝えるのが重要だ。一度に多くの要求をすると、その人間はまず頭がパンクするからな。
(よく聴いてるからというべきか、超久しぶりに弾いたにしては割と様になっている。だが、全体的にまだ甘さが目立つな)
一歌はギターを弾いたこと自体はあるが、中学生以降はほぼ弾いていなかったので経験値的にはほぼ素人同然だ。それにしては、よくやっていると思う。
だから「甘い」っていうよりかは、ブランクの問題かもしれない。まあさっき言った通り一歌は実質的に初心者だし、無理もないだろう。
しかし、一歌は本気でやると言った。俺もその覚悟を受け取った以上、容赦することはしない。
「……ここと、ここと、ここ。入りがワンテンポずれてる」
「そっか。気を付けるね」
「それに、全体的に音が弱いな。自信がないのは仕方ないが、もっと音を出せないと志歩には認めてもらえんぞ」
「うん」
こうして、俺たち2人の練習時間は過ぎていく。志歩に言われた期日までに、一歌の演奏をより高みへと押し上げるため。
そしてその日の夜、俺は「あの日」ぶりに志歩と連絡を取り合った。
『随分と無茶を押し付けたみたいだな』
『自覚はあります。でも、あれくらいはやってほしいので』
『でもそれは形だけ……だろ?
『ほんと、敵いませんね。そうです。私にとって重要なのは、2人が本気でバンドに向きあってくれるかどうか。それだけです』
『……あいつは本気だぞ。見とけ。俺が絶対、一歌のギターを完成させてやる』
『夏夜さんが一歌に? ……覚悟しておきます』
志歩の声が少し強張ったのが分かった。志歩は幼馴染の誰よりも俺の楽器演奏の腕を分かってるからな。だからこそ、俺が一歌の師匠になったということで認識を改めたのかもしれない。
志歩にささやかな挑戦状を叩きつけたところで、俺は連絡を終える。
(『出来る出来ないは問題じゃない』……か)
やはり、志歩は心根は優しいやつなのだ。ただ不器用なだけで。
やっぱり人の心象なんて、一朝一夕の付き合いくらいじゃ分からない。何か月も、それこそ何年も一緒にいてもなお、分からないことすらあるのだから。
少なくとも、そう遠からぬ未来であの3人はまた「いつも通り」に戻れるだろう。
(……さて、あとは穂波だな)
穂波とは、強引な手段を使ってでも本気で話し合う必要がありそうだ。
状況によっては、かなり強い圧をかけることになるかもしれない。そう思いながら、俺はセカイに入るための楽曲を再生した。
【星空のセカイ】
セカイの曲を再生すると、すぐに満天の星空が俺の目に映った。いつも通り、IAが俺を出迎えてくれる。
……相変わらず有能な執事(いや秘書か?)みたいだな。
「マスター、お久しぶりです」
「IAか。久しぶりだな」
「あ、夏夜君。来たんだね」
……そういや、しばらくこのセカイを訪れてはいなかったな。
今日もGUMIとONEはどっかに行っているみたいで、ここにはIAと俺、そしてミクしかいない。
「あれから、どっか扉は開いたのか?」
「いえ。どうやらまだ、条件は満たしていないようです」
「そうか……。そういやミクは、扉を開ける方法を知ってるのか?」
「うん。
「えっ」
「……なんでお前が一番驚いてんだ?」
条件を知っているというミク。その発言に、なぜか俺ではなく隣にいたIAが1番驚いている。
「良かったら、教えてくれないか」
「もちろんいいよ。1つ目は、
キミの曲……つまり「三日月夜」としての曲か。
それに関しては多すぎて絞れないだろう。なにせ俺が今までにアップした曲は最低でも1000万人以上に聞かれているのだ。誰が俺の曲を聞いたことがあって、セカイを持ってるかなんて、俺には知る術もない。
「1つ目ってことは、他にもあるのか?」
「うん。もう1つは、
「繋がり?」
「あ、繋がりって言っても難しく考えなくていいよ。顔と名前を知っていればいいからね」
「なるほど……。実際に1度現実で会う必要があるのか」
「そういうこと」
つまり、「俺の曲を聞いたことがあって」、「セカイの持ち主全員の顔と名前が一致していれば」扉が開くらしい。
セカイへの扉を開く条件が分かったことで、俺はいま一度考え直す。今開いている扉は、青の扉の1つ。つまり、あの星空が広がる学校の屋上のようなセカイに繋がっている扉だ。
仮にあれを「学校のセカイ」と名付けるとして……セカイの持ち主は誰なんだろうか。「俺の曲を聴いたことがあって、俺と確実に面識がある人間」ってことだが……正直見当もつかん。一歌たちは聞いたことがあるだろうが……。もう一度行けば、何か掴めるだろうか。
思い立ったが吉日。行ってみるとしよう。俺はあのログハウスの中にある青の扉の前に立つ。今日はIAだけでなく、ミクもついてきた。
「よし、俺はもう一度あのセカイに行ってみる」
「夏夜君なら大丈夫だと思うけど、気を付けてね」
「行ってらっしゃいませ、マスター」
俺は再びあの扉を開く。ちなみにミク達にセカイを渡ることはできないらしい。IA曰く、「見えない壁みたいなのに阻まれて扉の向こうに行けない」という。同時にミクが「今はまだその時じゃないから」という意味深なことも言っていたが。
そして俺の視界は眩い光に包まれ、再び美しい星空の見えるあの屋上にやってきた。
【学校のセカイ(仮)】
「こんにちは。また会えたね」
「ミクか」
出迎えてくれたのは、このセカイのミク。前に見た時も感じたが、何というか……このミクからは一歌に近いものを感じるな。こう、押されたら断れなさそうなところとか。あと、立ち振る舞い。
すると、前は聞かなかった声が聞こえてきた。
「あら、お客さんかしら?」
「この声……ルカ?」
「うふふ、正解よ。初めて会ったはずなのだけれど……よく分かったわね」
ミクの隣で微笑んでいたのは、ピンクのロングストレートが特徴的なバーチャルシンガー、巡音ルカ。やはり、ミクと同じで服装には制服のような意匠が込められているようだ。どこか大人びた雰囲気を放つ彼女からは、まさしく「先輩」という雰囲気を感じる。なんて言えばいいのか分からないが……みんなの想像するであろう「巡音ルカ」のイメージに一番近い。
俺は声で分かったが、それはひとえに今まで作ってきたボーカロイド曲の賜物だ。声質とか、どういうBPMで歌わせるのが一番合うかとか、そういうのはすべて把握している。そうして話を聞いていくうちに分かったのだが、どうやらこのセカイにはミクだけじゃなくルカもいるらしい。俺のセカイにもGUMIとかIAとかいっぱいいるし……セカイは人によって姿を変えるという性質があるらしいから、セカイによってバーチャルシンガーも違うのかもしれない。
「ここはいつ来ても夜なんだな。俺のセカイと同じだ」
「夜っていうより、夕暮れ時かな。夏夜のセカイは、いつも夜なの?」
「ああ。星空がきれいだから、星空のセカイって俺は呼んでる」
「星空のセカイ……。ふふっ。いい名前ね」
ルカがセカイにつけた名前を称賛してくれる。そういや、ここはどんな名前のセカイなんだろうか……?
「そうだ、ここはなんて名前なんだ?」
「ここは──そうね、『教室のセカイ』とでも言おうかしら?」
「教室? ここは屋上だが……」
「……そうだった。夏夜にはこのセカイを案内したことがなかったね」
「なら、案内を頼んでも?」
「ふふっ。任せて」
「あら、ミク。ここぞとばかりに先輩気取りかしら?」
「ル、ルカ……!」
やはり……ミクはどこか一歌に似ている。発言といい、性格といい。からかわれたら照れるところもそっくりだ。
そしてミクに校舎を案内してもらううちにわかったのだが、このセカイは校舎の中からだと星空が見えず、代わりに夕暮れ時の空が見える。セカイというのは持ち主の想いを反映する……とは向こうのミクから聞いてはいたが、ここまで違うものなのか。
そしてある教室に入った時……俺は、信じられないものを見た。すぐさま駆け寄り、まじまじと調べ始める。
「これは……まさか一歌のギター? それに、一歌が持ってるミクのCDも……」
「? どうかしたの?」
「こっちは穂波が小さい頃読んでた星空図鑑と同じだ。そしてこれは……フェニーくん? フェニーくんと言えば……志歩? いや、でも近くに志歩のベースがあるし……。志歩じゃないとすれば、咲希のものか……?」
教卓の上には、穂波の家で見た天体望遠鏡が置いてある。探れば探るほど、一歌たちとの関連を疑わずにはいられない。そして教室の隅に置いてあった写真を見て、疑念は確信へと変わった。
「これは……! 一歌、咲希、穂波に志歩……4人が写ってる!?」
「見つけたんだね」
「ミク……。ってことは、ここは
「そうだよ。ここは、一歌たちの想いから生まれたセカイ。外から見える景色も、一歌たちの想いを映し出したものなんだ」
「そうか……。一歌たちのセカイってなら、最初から扉が開いてたのも納得できるな」
これで合点がいった。一歌たちがこのセカイの持ち主だというなら、最初から扉が開いていたのも納得できる。
一歌は昔から俺に三日月夜の楽曲を布教しまくってるし、咲希だって一歌と一緒に俺の作った歌を聴いたことがある。穂波も俺の曲を聞いたことがあるらしいし、志歩とは一緒に演奏したこともある。なんなら志歩が一歌たちへの課題として押し付けたのは俺が作った曲だ。
そう考えると、俺の曲は少なからずアイツらへの影響を与えているのかもしれない。それに、あいつらとの関係は顔なじみってレベルじゃないしな。
「……ここが誰のセカイなのかもわかったし、今日の所はお暇させてもらう」
「あら、もう行くの?」
「ああ。ここはあいつらのセカイだ。邪魔しちゃ悪い」
「そっか。一歌のお兄ちゃんなら、いつ来ても歓迎するよ」
「そうする。時間があれば、だが」
【星空のセカイ】
セカイを渡った際にスマホのプレイリストに出現したもう1つの「Untitled」を停止し、元居たログハウスの中に戻ってくる。
ミクはすでにいなくなっていたが、IAは律儀に俺のことを待っていた。
「お疲れさまでした、マスター」
「ああ。いい経験ができた」
「そうでしたか。それは幸いです」
ログハウスを後にする。
するとミクとGUMIが焚き火を囲み、何かを焼いているのが見えた。近付いてみると普通の串焼き肉のようだった。
このセカイ、生き物がいる気配はしないんだが……どこからその肉は調達しているんだろうか?
(いや、考えたら負けか。それを言ってしまえば、セカイって場所そのものが不思議空間だしな)
「あ、夏夜君。お帰り」
「ただいま。それ、貰ってもいいか?」
「うん。いいよ」
「はい、どうぞ。美味しいから、よく噛んで食べてね?」
GUMIから串焼き肉をもらい、口にする。
──うん、普通にいけるな。現実で食べる肉と全く変わりない。どうやら塩がまぶされていたようで、塩味がちょうどいい。IAも近くにあった串を1つ掴むと、よく焼けた肉を思い切り噛み千切った。
……意外とワイルドな食べ方するな。
「おお、美味い」
「よかった」
「たまにはマスターと一緒の食事も、良いものですね」
「バーチャルシンガーなのに、腹が減るのか?」
これもまた、素朴な疑問だった。言わずもがな、ミクやGUMIという存在は本来バーチャル・シンガー……すなわち電子世界の存在だ。そんな現実にいない人物でも、腹は減るのだろうか。
「うーん……。よく考えたら、お腹が減るって感じはあまりないかも。どちらかというと……趣味みたいな感じかな?」
「そうなのか」
「でも、味はしっかり感じるよ。ONEは1回草を食べて『まずい!』って言ってたしね」
「あいつは何をしてるんだ……」
「すみません。私も、妹の考えていることは分からないのです……」
どうやら腹が減るとか、そういうわけではないらしい。しかしONEはあれだな。知れば知るほど奇行種だな。何をどう思ったら「草食べてみよ」なんて発想に至るんだ。
かくして俺はたき火を囲んで談笑を楽しみつつ、一通り串焼き肉を堪能(性懲りもなく乱入してきたONEをIAが説教する一幕もあったが)し、元の現実へと帰っていくのだった。
夏夜の音楽の才能について説明すると、プロセカで言うところの演奏(バンド)・踊り(アイドル)・歌唱(ストリート)・演劇(ショー)・作曲(アンダーグラウンド)といったすべての事柄において、
ただし2つ以上の才能は両立できず、両立しようとするとどっちつかずになりすべてのパフォーマンスが50点行くか行かないかまでに落ちます。
一応弾き語り程度の軽い動きであれば大丈夫ですが、各ユニットがアフターライブでやるようなパフォーマンスをしろとなると途端にガタガタになります。
そのため、ストリート時代の夏夜は「突き抜けた歌唱力」というただ1つの強みで他のストリートパフォーマーを圧倒していた怪物ということになりますね。
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