2章の始まりです。
今回はタイトル通り、「雨上がりの一番星」に対応するストーリーです。
友情に輝く「一番星」
【スクランブル交差点】
一歌たちが「Leo/need」として活動を始めて、しばらく経った頃。
司や冬弥の問題を解決し、あたふたしているうちに既に季節は秋……しし座流星群が見える時期に近づきつつあった。
そんなある日の放課後のこと、俺は咲希と遭遇した。バイト帰りだろうかなどと思っていると、俺に気づいたらしい咲希がとてとてと駆け寄ってきた。
「あ、なつやさん!」
「咲希か。バンドの練習は順調か?」
「ちょっと疲れるときもあるけど……すっごく楽しいです!」
「楽しいならいいんだ。音楽で大切なのは、上手く演奏するのもそうだが、一番は『楽しむこと』だからな。咲希は確か……キーボードだったか」
「はい! まだしほちゃんに追い付くには遠いけど……アタシ、頑張ります!」
(元気そうでよかった。一時はどうなるかと思ったが……)
どうやら本人の様子を見る限り、学校生活もバンドの練習も充実しているようだ。いいことだ。どうやらその他にもシブヤのカフェのバイトやテニス部での活動など、咲希のよく言っていた「青春」ってやつを楽しんでいるように見える。前に聞いた「やりたいことリスト」の内容も、着々と埋めていっているらしい。
──「やりたいことリスト」ね。
入院中に一度見せてもらったことがあるが……時々いつの時代だと思う内容が混じっていた。非常にツッコみたかったが、咲希がやりたいことである以上、俺に止めることはできなかった。
ちなみに退院してすぐ、その「やりたいことリスト」の達成のために一歌が巻き込まれたらしいのだが、家に帰ってきた一歌はただ「恥ずかしかった」とだけコメントしていた。いったい何をしたんだ。
「そういや……今日はいつにもましてテンション高いように見えるが」
「あ、分かっちゃいますか? 実は、今度の土曜日に天文台に行くんです!」
「ほー、天文台。いいな、それ。穂波が喜びそうだ」
「はい! その代わり、土曜日まで練習詰め込むことになったんですけど……」
(……ったく、志歩だな? 相変わらず素直じゃないな)
まぁ何よりもベースを優先したがる(ラーメンとフェニーくんは除外とする)志歩にとって、天文台なんて二の次だろう。いや行きたいには行きたいんだろうが、優先順位が違うってだけのことだ。
それに超行動派の咲希のことだ、他にもなんかいろいろやろうとしたに違いない。で、それを咎める志歩を何とか3人で説き伏せた……ってとこか。
「ところで、根を詰め過ぎてはないか? 折角みんなと出かけるのに、体調崩しちゃ意味ないぞ」
「さっき学校でほなちゃんにも言われたけど、アタシは大丈夫です!」
「穂波に? ……悪いが、おでこ触らせてもらうぞ」
「え、なつやさん!?」
咲希のおでこに手を当てる。
……やはり、少し熱い。咲希は基礎体温が高い方だ。だが、それにしてもこれは熱い。熱すぎるというほどではないが、少し危険なタイプの熱だ。司と一緒に昔の咲希の様子はよく見てたから分かる。
「咲希、今すぐ帰って休め」
「え……!? な、なんでですか!?」
「……今の咲希は危ない方の熱を出してる。このままじゃ、また熱だすぞ」
「は~い。天馬咲希、今日はよく寝ます!」
「分かればよろしい」
家に帰り、司と電話をつなぐ。何かあってからでは遅いからな。
『悪い司。少しいいか?』
『む、こんな夜遅くにどうした夏夜? ──何かあったのか? 悩みがあれば力になるぞ!』
『悩みってほどじゃないが、ひとつ忠告しとこうと思ってな』
『忠告? 何をだ?』
『週末まで咲希から目を離すな。あいつ多分無理してんぞ』
『なにっ、そうなのか!? どうりで今日は寝るのが早いわけだ……。そういえば今週末に一歌たちとデートに行くとはしゃいでいたが、それが理由か?』
咲希は退院してからというもの、何かにかけて「デート」と言いたがる。というか、友達との外出は咲希にとって軒並みデートだ。
『相変わらず咲希のやつ……。ただ天文台に行くだけでもデートなのか? ……まあ、今日はちゃんと早めに寝たみたいで何よりだ』
『そうらしい。……だが、すまんな。オレたちはこの週末家にいないんだ』
『何かあるのか?』
『母さんたちは旅行、オレはフェニランで公演があってな。週末は咲希以外、誰もいなくなってしまう』
『なるほど。なら、週末は任せてくれ』
『ああ。夏夜は信頼できるからな! 今週末は咲希のことを頼むぞ!』
『任された』
……大事にならないと良いが。そんなことを思いつつ、曲を打ち込んでいく。最近、曲の更新が止まっている。スランプではなく、単純にいろいろあっただけなのだが。
軽く作業を終え、ベッドに飛び込む。3分も経たぬうちに、俺は夢の中であった。
そして金曜日。ふと咲希が心配になった俺は、ギターを持って練習に赴こうとする一歌を呼び止めた。
「一歌、これから練習か?」
「そうだけど……どうしたの?」
「俺も行く」
「お兄ちゃんも?」
何故か分からないが、何かが起こりそうな気がしたからだ。そしてこういう時、俺の直感はだいたい当たってしまう。仮に何も起きなかったとしても、一歌達の練習を見れるから損はない。
「ダメか? 志歩なら許してくれると思うが……」
「ううん。むしろ嬉しいな。お兄ちゃんが来たら、みんなびっくりすると思うよ」
「よし、ちょっと待ってろ。ギター持ってくる」
ギターケースからギターを取り出す。
……父さんのギターに憧れて、必死に頼み込んで誕生日に買ってもらった青のギター。記憶が正しければ、もうかれこれ10年以上もの付き合いになる。物持ちがいいのか、定期的に手入れしているのが功を奏したのか、まだ十分使える大切な逸品だ。向こうあと5年くらいは使うつもりでいる。
ちなみに一歌のギターは父さんのお下がりだ。父さんと母さんはギターをきっかけに出会ったらしいし、いつの間にかうちはギター一家になってしまったな。
(チューニングは……大丈夫か。もし弾くんなら向こうでやればいいし)
ギターをしまい、ギターケースを持って待っている一歌の下へ向かう。
そうしてライブハウスにやってきたとき、志歩と穂波は一歌と一緒にやってきた俺に驚いていたが、俺が「今のLeo/needの演奏を聴いてみたい」というと、志歩が「余計に中途半端にはできなくなったな……」と呟いていた。
そして一番最後に咲希が来たのだが……。
「おまたせ~! って、なつやさん!? なんで!?」
「遅かったな。一歌にギターを教えるがてら、お前たちの演奏を聴きに来たんだ。今日の俺は観客だ」
「そういうこと。というわけで、今日は実際にライブをやってるって仮定で行くよ」
「う……ちゃんと歌えるかな」
「自然体でいるのが一番だ。こんなところであがってたら、ステージになんて立てないぞ。ところで……咲希は熱、大丈夫なのか?」
「そうだよ咲希ちゃん、熱はないの? ちょっと顔赤いよ?」
穂波の言うとおりだった。確かに、いつにもまして咲希の顔が赤い。「急いできたから火照っている」で誤魔化されればそれまでだが──なぜだろう。妙に、気になる。
「咲希、熱あるの? だったら家で休んで……」
「ううん! ないない! 明日みんなで天文台行けるんだ~って、テンション上がってるだけだから」
「……ならいいけど」
「えーと、今日は個人練習でいいんじゃないかな?」
「ほなちゃん、アタシは大丈夫だから! 頭から通そうよ!」
咲希を心配して予定変更を提案する穂波。それを却下したのは、他でもない咲希だった。
「咲希、本当に無理してない?」
「うん! アタシはいつでもオッケーだよ! さっそく始めよっ!」
「……じゃあ、始めるよ」
(……なんだ? 今日の咲希は……何処か焦ってる気がする)
志歩はそれ以上、咲希に何かを言うことはなかった。咲希の言動のどこかに違和感を抱えたまま、咲希の希望通り通しでの練習が始まったのだが……様子がおかしい。
最初は良かったのだが、途中からキーボードの音がブレブレだ。それに……どんどん咲希の顔が赤くなっている。だが、他の3人は演奏に夢中でそれに気付く素振りはない。それに、息も上がってきている。
(まずい……! あれは、危険な方の顔色だ!)
「──ストップだ!」
「え、どうしたのお兄ちゃん?」
突如発せられた大声に、演奏がぴたりと止まる。その場の全員が不思議そうな表情をしながら、俺の方を見ている。
しかし、狼狽えている暇はない。下手をすれば一刻を争う。現に咲希の顔色は真っ赤で、今にも倒れそうなくらい息遣いも荒い。
「穂波、咲希を診てやれ! 俺は、今すぐ何か飲み物を買ってくるから!」
「な、夏夜さん!?」
「咲希ちゃんごめん、おでこ触るね……!」
「ほ、ほなちゃん……? それに、なつやさんも……」
「……! 咲希ちゃん、
「え?」
大騒ぎになるスタジオを後に、俺は猛ダッシュで近くの自販機でスポーツドリンクを買って戻ってくる。穂波が気を利かせてくれたようで、咲希はすでに近くの椅子に座らされていた。体調不良を黙ったまま練習し、果てに熱まで出してしまった咲希を志歩が問い詰めている。
「なんで……なんで言わなかったの!? 無理しないでって、あれほど言ったでしょ!? なのになんで無理するの!?」
「どうしてって……」
「志歩! そこまでにしろ」
「……っ!」
ヒートアップする志歩を制する。穂波と一歌は、揃って不安げな表情をしながら俺と咲希のことを交互に見ていた。
「夏夜さん……」
「一歌!」
「……っと。これ……?」
「飲ませとけ! たぶん水分足りてない!」
「……! 分かった。咲希、飲める?」
「う、うん……」
一歌は俺が投げたスポーツドリンクを上手いことキャッチし、咲希に飲ませる。途中から自分で飲んでいたので、どうやら自力で飲めるくらいの体力は残っているようだった。
(……そういえば、バッグの中に叩くタイプの保冷材がなかったか!?)
バッグを漁ると……あった。何かあった時のために準備していた叩くタイプの冷却パック。夏の間使わなかったものを放置していたのだ。
すぐさま力いっぱいそれをぶっ叩き、冷え始めたことを確認してそれを咲希の首筋に当てる。結構冷たいと思うが、我慢してほしい。
さて、ここからは尋問の時間だ。大方原因は分かるが──自覚させないことには始まらない。
「……で? 咲希はなんでこんなになるまで無理をした? また熱を出すって警告しただろ」
「ごめんなさい……。でも、アタシ……どうしてもみんなで天文台に行きたかったから……」
「そんなの……! いつでもできるでしょ! そんなことより──」
「志歩! 言いたいことは分かるが、今は抑えろ!」
「──っ、でも……!」
「しほちゃん……
「あ……っ!」
(……やっぱか。咲希はまだ、昔の記憶を引きずってるんだ)
もうわかってる通り、咲希は昔から虚弱体質とはいかずとも、身体が弱かった。正確には、「自分のやりたいことに体調がついていかない」と言える。
そしてそれは……今の咲希の性格にも影響を与えてしまっている。自分のやりたいことがあまりに多すぎる上に、それに対して盲目的に集中してしまうため、調子を崩すことがあるのだ。今回がまさにそれだろう。「みんなで天文台に行きたい」という目標に対して無理して根を詰め過ぎた結果……熱を出した。
(ったく、だから口を酸っぱくして言ったんだ……。『体調崩しちゃ意味ないぞ』って)
そして咲希の言動から考えるに、咲希はまた志歩の発言を「言葉通り」にとらえたに違いない。おおかた……「手を抜いたら天文台はナシ」みたいなことでも言ったのだろう。
自分の体調を二の次にした咲希も悪いが……咲希をここまで追い込むような話し方をしたであろう志歩にも非はある。少なくとも俺は、そう思った。
「穂波。落ち着いたら、咲希を家に送ってくれ。一歌、穂波と一緒に行ってくれ」
「あ、はい!」
「わ、分かった」
「志歩は残れ……。話がある」
「……はい」
項垂れる志歩。どうやら自覚があるようだ。これで自覚がなかったら思い切り説教をかましているところだが……今それは得策ではないだろう。
しばらくして、咲希は一歌と穂波に支えられてスタジオを後にした。俺は完全に意気消沈したらしい志歩に向き直る。
「で、何か言いたいことは?」
「……すみませんでした」
「それを言うのは咲希に言え。俺は何もされてない。謝るのは、俺にじゃない」
そう、俺は何もしていない。謝るのは俺にじゃない。謝るんなら咲希に──3人全員にだ。
「俺が聞きたいのは、咲希になんて言ったかだ」
「……『練習で手を抜いたら絶対行かない』って言いました」
「だからか」
「私、気付けなかった……」
気付けなかったのも無理はないだろう。咲希は体調不良を空元気で上手く隠していたからな。志歩は、一歌や穂波と比べて他人の様子には疎い。その欠点がもろに出てしまったわけだ。
「……実を言うと、咲希はこの間から体調がおかしかったんだ」
「なら、なんで──!」
「それに関しては言わなかった俺が悪い。そこは認める。それに、咲希の言うことを鵜呑みにした俺たち全員に問題がある。あの時咲希の顔色が悪いって気付いた時点で、無理言ってでも帰らせるべきだったんだ。それでも咲希は、自分の体調よりもやりたかったことを優先した。ぶっちゃけ、そこは咲希が悪いな。人の警告を無視して体調を疎かにしちゃ元も子もない。けど、棘のある言動で咲希に余裕を与えなかったお前にも非はある」
「でも……!」
「でも、じゃない。志歩は、なんで咲希が自分の体調よりバンドの練習を優先したと思う?」
「……そんなの、
そう、今回一番重要なのはここだ。
──「なぜ咲希は、自分の体調不良を押してでも練習参加を強行したのか」。
志歩はただ単に天文台に行きたいからだと思っているようだが、そうじゃない。咲希にとってはもっと別の、非常に大きな理由があるのだ。そして、志歩はそれに気づいていない。だからこそ、ここでその認識を正さなきゃいけない。
「違うな。ただ行きたいだけなら、志歩の言う通り1人で行けばいい。けど、咲希は多少無理を通してでも、絶対に4人で行きたかった。そうしてまでバンドの練習を優先したのは、
「4人で……行くこと?」
「咲希がずっと欲しかったもの……。それは、『4人で一緒にいられる時間』だ。遠くの病院に転院して、お前たちがバラバラになって、咲希のお見舞いに来れなくなってからも……ずっとな。これに関しては俺よりも、一歌の方がよくわかってると思う。実際、一歌に聞いたことだしな」
「一歌に……?」
「それに、これも一歌から聞いた話だが……咲希は寂しかった時、星を見ていたらしい。だから余計に、今回の天文台には4人で行きたかったんだろうな。これ以上、志歩と、志歩たちとの時間を失うわけにはいかなかったから」
そう。咲希が失った時間は、あまりにも「長すぎた」。
生まれながらの健康体である俺には想像するしかないが、咲希にとっては耐え難い拷問であったに違いない。思い出したのは、いつか俺が聞きだした咲希の心の叫び。
『アタシを、置いてかないでよ……!』
それはきっと、咲希の数少ないトラウマといえるものだ。
だからこそ、咲希は4人でいる時間を何よりも大切にする。たとえ、自分の身体が
「咲希は、みんなが中学時代に出来るはずだったことが何もできなかったんだ。体育祭も、文化祭も、修学旅行だってな。……咲希の中学時代の思い出が何もないのは、他でもない志歩がよくわかってるだろう? 咲希にとって『4人で一緒にいる時間』ってのは、他のどんなものを──たとえ
そこまで話すと、俺は志歩の方を向く。志歩は咲希の強い想いを初めて知ったからか、一目でわかる程に落胆していた。
やがてその瞳から、涙がこぼれ始める。俺と志歩以外誰もいないスタジオに、志歩の嗚咽だけが聞こえていた。
「ごめん……咲希……っ!」
「ここまで言ったんだ。やるべきことは、決まっただろ?」
「夏夜さん……っ、私、わたし……!」
「だが……今日のところは、帰って頭を冷やせ。仮に今話しても、どちらも冷静ではいられないだろうからな」
「はい……そうします」
俺と志歩はスタジオの後始末を済ませると、スタジオを後にする。志歩を家に送り届けると、俺は司に電話を掛けた。司は俺の連絡を受けた直後、即座にショーの練習を切り上げて家に帰ったという。それだけでなく、明日入れていた公演も急遽休むことに決めたらしい。
……あいつには申し訳ないことをしたな。そう思いながら、俺は司に電話をつなぐ。
『すまん、司。俺のミスだ。咲希の顔色が悪いことに気づいた時点で、無理矢理にでも帰らせるべきだった』
『いや、気にしなくていいぞ。それに夏夜が気付かなかったら、咲希の体調はもっと悪くなっていたかもしれんからな』
『だが、わざわざバイトを休むなんて真似をさせたんだ。何かしらのお詫びをさせてくれ』
『む……。なら、今度うちのショーの練習を見に来てくれると助かる。一度、観客目線の意見が欲しいと思っていたんだ。そうだな……ハロウィンの時期でいいか?』
『分かった。必ず行く』
今度のハロウィンに司たちのショーを見に行く約束をした俺は、そこで一度トークを終える。まもなく一歌から「咲希が寝たから、これから帰る」という連絡が来る。
……そうして帰ってきた一歌は、分かりやすく落ち込んでいた。
「一歌」
「あ……。お兄ちゃん」
「咲希のことについては、心配するな」
「うん……。ごめん、今日はもう寝るね……」
「ああ……」
返事もそこそこに、一歌は自分の部屋に戻ってしまった。これは……相当きてるみたいだな。
(こういう時、何かができればいいんだが)
……兄としての力不足を感じながら、今日は作業をすることなく眠りについた。
そしてやってきた土曜日の朝。朝目を覚ましたころには、既に一歌は咲希の見舞いに行っており不在だった。
さらに言えば、天気はあいにくの雨。
(……これじゃ、天文台に行っても意味ないな)
降りしきる雨をBGMに、新曲を仕上げていく。最初の頃はハイペースで上げていた楽曲も、今では2~3か月に1曲といったペースである。まあ時間がかかるぶん、細部までこだわって作るからプラマイゼロな気がするが。
昼飯をはさみ、合計で5~6時間くらい作業した後、曲が6割がた完成したところで、俺は息をついた。
(……一息入れるか)
今作っている楽曲は、ピアノの主旋律を前面に押し出した楽曲だ。今まで得意としていた激しめの曲とは対極に、しんみりとした楽曲を目指して作ってみた。ピアノの前奏から始まり、そこからピアノの伴奏を中心にギター・ドラム・ベースの旋律が重なる。
一歌たちの抱えていた切ない思い、そしてその中にあった暖かさの両方を表現してみたかった。それを表現するように、イラストを描いていく。ざっと3分の1くらい書き終わっただろうか。外を見ると、すでに日が落ち始め、雨は止んでいた。
「ただいまー」
「む……?」
玄関に行くと、一歌が帰ってきていた。その表情は、昨日と打って変わって晴れやかだ。
(……心なしか、いいことがあったように見えるな)
「何かいいことでもあったか?」
「あったよ。すごくいいことが」
「良かった。その様子なら、もう問題は解決したっぽいな」
(……良かったな、一歌)
その後、一歌にこの間見せてもらった楽譜──「ステラ」を弾き語りしてもらった。うん、やはり心にしみわたる曲だ。
「……どうだった?」
「ああ。一歌たちの想い、ちゃんと伝わったぞ」
「よかった……」
「さ、飯にしようか。今日は母さんたち仕事で遅くなるらしいから、俺が作るぞ」
「やった。お兄ちゃんの作るご飯、楽しみだなぁ……」
「はいはい。楽しみに待ってろよ」
小走りでテーブルへと向かっていく一歌の背を見送りながら、俺は一歌の未来を展望する。
(一歌。きっとお前たちは、これからいろんな困難にぶち当たるんだろうな。……だからこそ、友達を大切にしろよ。何かあった時、気兼ねなく助け合えるのが友達ってやつなんだからさ)
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ギターもキーボードもドラムもベースもなんでも弾けるが、一番得意なのはギター。
次点でベース。
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