星の夜が紡ぐ歌は   作:もりいぬ

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ついに今回からニーゴの面々とオリ主が本格的に接触し始めます。

また、申し訳程度に「全力!ワンダーハロウィン!」に対応した話が展開されます。
「囚われのマリオネット」はオリ主が関わらないので、しれっと終わっています。ご了承ください。

追記:感想にて指摘されて気づきましたが、寧々はワンダショの面々以外は苗字呼びですね。
修正させていただきました。



2つの夜の邂逅

 

【夏夜の部屋】

 

 深夜0時過ぎ。作曲が一段落したために休憩を取っていた俺は、ふと最近聞いた「ある曲」のことを思いだしていた。

 

(こないだ上がったニーゴの新曲、あれは……随分と人の心を抉り取る曲だったな)

 

 ──「悔やむと書いてミライ」

 

 今最もホットな楽曲投稿グループである「25時、ナイトコードで。」──通称ニーゴにおける初の試みとして、ニーゴのメンバー全員による生声の歌唱によって投稿された楽曲だ。

 

 そしてその曲からは、人の持つ苦しみ……というか、辛さを激情のままに歌ったかのような強烈なメッセージが感じられた。1人の「作曲家」として、あそこまで心を抉り取られるような感覚があった曲は初めてかもしれない。

 

(俺も負けてらんないな……ん?)

 

 ピコン、とパソコンが音を鳴らす。見ると、俺のパソコンに通知が来ている。

 

❲1件のメッセージが届きました。❳

 

 パソコンに来たということは、俺の「三日月夜」の公式アカウントへのダイレクトメッセージだろう。あれやこれや弄って、スマホには来ないようにしてるからな。

 

(そういや、公式アカウントを作ってから初めてメールが来たな。どれどれ……)

 

 

 ──────────

 

差出人:K

宛先:[email protected]

 

 

 突然のDM、申し訳ありません。

 初めまして。私は「25時、ナイトコードで。」という音楽サークルで楽曲投稿をしております、作曲担当のKと申します。

 このたび、三日月夜様の楽曲に深い感銘を受け、DMを送らせていただきました。

 

 つきましては一度、三日月夜様と私の楽曲について意見交換の場を設けてはいただけませんでしょうか? 

 メールアドレスを掲載しておきますので、是非ご検討の程よろしくお願いいたします。

 

 追伸 本人確認と言ってはなんですが、現在制作中の新曲のデモをお送りいたします。よければ一度、お聴きください。

 

 25時、ナイトコードで。 K

 

 ──────────

 

(……マジか)

 

 あの「ニーゴ」の作曲担当直々にDMが来るとは。

 ……ふむ。これは貴重な機会だ。顔出しはしないと公言している以上、身バレは避けたい。だが三日月夜と同じく正体不明と名高い「25時、ナイトコードで。」の主要人物となれば、身バレする心配もあまりなさそうだ。

 

 それに、今のニーゴは飛ぶ鳥を落とす勢いの人気である。チャンネル登録者数こそこちらの方がまだ上だが……一昨日投稿された「携帯恋話」は、たった2日で70万再生をたたき出しているのだ。

 俺が普段作っている楽曲とは曲のジャンルが違うことからも、学べることは非常に多いだろう。

 

(流石に顔は出せないし、あまり時間的余裕もないが……そこは受けてから考えよう)

 

 かくして俺は、「K」という人物に対し快諾の返事を書いていくのだった。

 

 

【「K」の部屋】

 

 一方そのころ……その「K」という少女はまた新たな楽曲制作に勤しんでいた。

 

「ここは……キーを少し上げる。あと、ここのコード進行を変えてみよう。それで……」

 

 集中するK。すると、パソコンからメールの到着を知らせる音が鳴る。

 

「ん、メール? 誰だろ」

 

 Kは、メールの着信画面を開く。

 見ると、送信者の欄には「三日月夜」と書かれていた。

 

「あ……三日月夜さんからのメール」

 

 Kは先日聞いた三日月夜の楽曲に感銘を受けた。あらゆるジャンルで人の心を震わせるこの人と一緒に曲を作れば、もっと多くの人を救える楽曲を作れるかもしれない。そう思ったKは、他の「25時、ナイトコードで」のメンバーである「雪」、「えななん」、「Amia」と相談し、自分が代表する形で三日月夜にDMを送ったのである。

 なお、メッセージを送る際に他3人(特にAmia)からの介入がありまくった結果、何故か本人証明として曲のデモを送るということになってしまったのはここだけの話である。

 

「……!」

 

 そしてそこに書かれていた内容は──

 

 

 ──────────

 

差出人:三日月夜<公式>

Title:DMの件について

 

 どうも、三日月夜です。まずは、ご連絡ありがとうございます。

 DMにあった意見交換の場を設けてほしいという件についてですが……是非お受けしたいと考えております。

 その際私の都合ではありますが、顔出しはNGということにさせてください。

 

 予定や日時につきましては、主にニーゴの方々に一任しようと考えております。

 ですがこちらの都合もありますので、身勝手ですが、意見交換につきましては年が明けてからでもよろしいでしょうか。

 

 予定が確定し次第、同じメールアドレスにご連絡いただければ幸いです。

 では、連絡をお待ちしております。

 

 P.S.新曲のデモを拝聴させていただきました。そのお礼として、私の方からも新曲のデモを提供させていただきます。

 

 ──────────

 

「……! 受けてくれるんだ……」

 

 そこに記されていたのは、「是非引き受けたい」という旨の返答だった。これを受けたKは、ナイトコードに集合をかける。25時……午前1時前であるにもかかわらずかけられたKの集合の一声に、サークルメンバーである3人は1人を除き困惑のリアクションを見せる。

 

『K、まだ25時になってないけど……いきなりどうしたの?』

『そうだよ。突然ナイトコードにログインしたと思ったら、集合なんて。何かあった?』

『えななんにAmiaも、突然ごめん。……雪は?』

『いるよ』

 

 全員集合していることを確認したKは、話の本題を切り出す。

 

『──三日月夜さんから、返信が来たよ。ぜひ引き受けたい、だって』

『え、マジ!? やったじゃんK!』

『まさか、ホントに引き受けてくれるなんて』

『……そう』

 

 各々の声を上げるニーゴの面々。先に言ったとおり、「『三日月夜』さんと話してみたい」という今回の一件を持ちだしたのはKなのだ。

 

『うん……よかったよ。予定とかは、こっちに合わせてくれるって』

『おおー! じゃあ今すぐ……ってわけにもいかないよね~』

『あのね……。向こうにも向こうの事情ってのがあるでしょ?』

『そうだよAmia。それくらいわかるでしょ』

『うぐっ……』

『ま、まぁまぁ……』

 

 調子に乗った発言をするAmiaを、えななんが正論で抑える。ついでに雪がその傷を抉り、Kが慌てて諫める。

 傍から見ればだいぶツギハギで危うい関係性だが、これが「25時、ナイトコードで。」という音楽グループのいつもの活動風景である。

 

『とりあえず……顔出しはしないみたい。それと、向こうも都合があるから来年でもいいか、だって』

『いいんじゃない? あらかじめ言ってくれれば、こっちも合わせやすいし』

『ボクも賛成~! あ、でも三日月夜さんってナイトコードの使い方知ってるのかな?』

『あ……。どうなんだろう?』

『う~ん、まぁ知らなかったらボクたちで教えればいいんじゃない?』

『それもそうね』

 

 顔出し云々に関しては、ニーゴの活動場所であるナイトコードという特性上問題はない。

 やがて、Kはメールに添付されていた音楽ファイルの存在を思い出した。

 

『あ……。そうだった、皆聞いてくれる?』

『どうしたの?』

『うん。実は……三日月夜さんのメールに、新曲のデモが添付されてたから、一度皆で聴いてみようと思って』

 

 それを聞いたすぐに飛びついたのは、えななんだった。続くようにAmiaも賛同の意を示す。

 

『私はいいと思う。三日月夜さんの新曲、楽しみだし』

『ボクもボクも~! どんな曲なんだろうね』

『……雪も、それでいい?』

『──うん』

『分かった。じゃあ、流すね』

 

 最後のメンバーである雪も承認したことで、反対意見はなくなった。

 

 Kの言葉が終わると同時に、三日月夜から送られてきた新曲のデモが流れ始める。比較的ポップな明るめのムードでコードが進行していく。だが、その歌詞が流れた瞬間。4人はそのイメージを覆されることになる。

 

『(……!!)』

『(これが、三日月夜さんの新曲……!?)』

『(うわ、すっご……引き込まれるんだけど。相変わらず、先輩はすごい曲作るなぁ)』

『(……この曲)』

 

 ……曲が終わった時、しばらく4人は声を発することができなかった。最初に声を発したのは、Amiaだった。

 

『……なんか、すごい歌だったね』

『同感。……うまく言えないけど、すごく私たちに刺さるし、癖になる……』

 

 そして雪から、これまでKが一度も引き出すことができなかった言葉が飛び出す。

 

『……()()()

 

 雪のその一言で、3人が沈黙する。Amiaがその沈黙を破るのに、数秒を要した。

 

『え……?』

『雪あんた……。今なんて……?』

『──わからない。分からないけど、何かが、響いた』

『──!!』

 

 雪の「何かが響いた」という言葉。この一言に、Kは驚きを隠せなかった。それは、「あの日」以来あらゆる曲を聴かせても、引き出すことができなかった一言だったからだ。

 ──この人となら、本当に「雪を救う」曲が作れるかもしれない。そう思ったKは居ても立っても居られなくなり、自分でも驚くほどの早さで三日月夜にメールを送信した。

 

 

【夏夜の部屋】

 

(……お、返信来た。早いな)

 

 Kから送られてきたメールを確認する。そこには、快諾してくれたことを嬉しく思う旨の内容があった。

 

(反応は……上々みたいだな)

 

 どうやら今度アップする予定の新曲のデモは聴いてもらえたみたいだ。追伸に「素晴らしい曲でした」と書かれていたし、ニーゴの皆さんにも評価は上々らしい。これで自信をもって世に出せるというものだろう。

 すると、珍しい人物からメッセージが送られてきた。

 

(瑞希……? こんな夜遅くに何の用だ?)

 

『先輩、随分と思い切ったね~?』

『何のことだ?』

『いや、先輩がニーゴとコラボするなんて思わなかったからさー』

『……なんで知ってる? 瑞希はニーゴ関係者なのか?』

『関係者も何も……メンバーだよ。ボク、ニーゴで活動してるんだ

 

 その内容に、一瞬手が硬直する。

 

(嘘だろ? 瑞希があのニーゴのメンバー?)

『……マジ?』

『マジ。Amiaがボクの名義だよ』

『そうか……マジか』

 

 手を額に当て、天を仰ぐ。

 ……どうやら俺は、既にニーゴのメンバーのうち1人と知り合いになっていたらしい。なんというか……。意外な縁ってもんはあるもんなんだな。

 

『それなら、俺の新曲を聴いただろ?どうだった?』

『うん……なんていうか、すごかったよ。先輩って、あんな曲まで作れちゃうんだね。ボクびっくりしたよ』

『そう言ってもらえれば、作曲者冥利に尽きる。それと一応言っとくが……俺が三日月夜だってことは、他のニーゴのメンバーには黙っててくれよ』

『うん、もちろんだよ! というか、ボクが人の秘密を喋るように見える?』

『……さぁ、どうだろうな?』

 

 おちゃらけた会話だが、その実俺は瑞希をかなり信頼している。瑞希は一見すると軽い性格に見えるが、実は誰よりも線の引き方がしっかりしている。

 

 なんせ、誰にも言えない秘密を何年も抱えて生きてきたんだ。そしてその積み重なってきた年月は、俺の信頼の理由になっている。正直、両親と一歌を除けば一番信頼している相手かもしれない。

 無論、俺もナイトコードの「Amia」が瑞希であることは言わない。言うつもりもない。

 

『そうか……。ありがとう。実はナイトコードについてあんまよく知らないから、いろいろ教えてくれると助かるんだが』

『そういうことならお任せあれ! ナイトコードのマナーから使い方まで、なんでもレクチャーしちゃうよ~!』

『ったく……。頼もしいな、瑞希は』

『先輩にそう言ってもらえると嬉しいな~! あ、Kに呼ばれたからボクは作業に戻るね! それじゃいつかの25時、ナイトコードで!』

『ああ。ナイトコードで。……これでいいのか?』

『お、早速使いこなすなんてやるね~!』

 

 それ以降、瑞希からの返信はなかった。どうやら本当に作業に戻ったようだ。

 ……ついでに瑞希が学校サボって何やってるのかがこれで分かった。ま、文句は言ってもその在り方を否定はしないが。

 

(……しかし、瑞希が所属する音楽サークルか。これは、直接会話するのが楽しみだな)

 

 まだ見ぬ「25時、ナイトコードで」のメンバーとの対談に、俺は想いを馳せるのだった。

 

 

 

【ワンダーステージ】

 

 ニーゴのリーダー格らしい「K」という人物からメールを受け取ってしばらくして。

 ハロウィンも間近に近づいたある日の夕暮れ時に、俺は前に司に言われた通り、ワンダーステージにやってきた。

 やってきたのだが……肝心の司がいない。その代わりに……。

 

「あれ、類だけ……じゃないな。そっちの女の子は?」

「おや? 夏夜君じゃないか。紹介するよ、この子は寧々。前に僕が話した、幼馴染さ」

「どうも……。草薙(くさなぎ)寧々(ねね)……です」

 

 その背格好に、俺は見覚えがあった。

 司とぶつかり合ったあの日、帰り際にすれ違ったあのよもぎ髪の女の子だ。

 

「……きみ、神高だよな?」

「え……。そうですけど……」

「やっぱりな。俺は星乃夏夜。司とは昔の知り合いだ」

「……」

「あぁ、ごめんね。寧々は人見知りなんだ」

「別にいい。人それぞれだからな」

 

 見た目通り、控えめな性格らしい。

 夕暮れ時のワンダーステージに、俺と類、そして寧々の影が重なる。その時俺は、今この場に漂う雰囲気が妙に重いことに気が付いた。

 

「……で、何があった?」

「……聞いてくれるのかい?」

「ああ。答えられることなら、何なりと」

「そうかい。じゃあ、君にも聞いてもらおうかな」

 

 そこで俺は、今日のワンダーステージに司がいない理由を聞くことになった。

 曰く、「今日の類は何かが変だ」と言われたということらしい。そのまま、司と意見の相違を引き起こしている最中なんだそうだ。

 近くにいた寧々の意見を求めてみると、寧々から見てもそうだという。なんでも、「目がキラキラしてない」……らしい。正直俺には分からんが、司と寧々が言うんだからそれで合ってるんだろう。

 

(お互いがショーに本気になってるからこその衝突……だったりするのかね)

「……まいったね。今回ばかりは、自分じゃよく分からないよ」

「ふむ……。司は普段はあんな奴だが、人の変化に機敏だからな。もし今の類が本当にそうなら、気付いたのも納得できる」

(星乃さんも司を『あんな奴』って言うの……?)

 

 この時寧々が俺のことを困惑が混じった目線で見つめてきていたのだが、俺がそれに気づくことはなかった。

 

「僕がショーで手を抜くなんて、あり得ないと思うんだけどね」

「手を抜く? 定期的に校内を爆破してるお前がか?」

「爆破じゃないよ。ただ司君の髪をチリチリにしてみただけさ」

「……そんな遠慮のないお前が手を抜いている、か」

 

 眉を吊り下げる類。うーむ……。今回ばかりはお手上げだ。俺は司や瑞希ほど類のことを知らないからな。

 

 そもそも類はさっき言ったとおり、司の承諾もなしに司を空高くへ射出してみたり、どこからともなく持ってきた謎の装置を使って校内で爆発を起こしたりするのがデフォルトの人間だ。本人曰く「安全性は保障されている」から加減は考えないとしても、今更この男が倫理観で手を抜くことなど考えにくい。

 

 そこまで考えた時、ふと服をちょいちょいと引っ張られていることに気づく。目線だけそちらにやると、寧々が控えめに俺の服の袖を引っ張っていた。

 寧々は俺が気付いたことを察すると、そそくさとステージの裏に消えていく。

 

「悪い、少し寧々と話してくる」

「……寧々と? 構わないけれど……いったい何を話すんだい?」

「さあ? 俺は呼ばれただけだし分からん」

 

 俺は消えていった寧々を追いかける。寧々は、ステージの裏側で待っていた。

 

「星乃さん……ごめん、初対面なのに」

「構わない。類に聞かれたくないことか? ま、なんでもいい。話してみろ。力になれるなら、なってやるから」

「うん……。あのね、類、無意識のうちに遠慮してるんだと思う」

「無意識のうちに? 類が?」

 

 どうやら俺たちに気付けなくとも、昔馴染みである寧々には気付けることがあったらしい。しかし寧々の言うことが本当ならば、無意識とはいえなぜ手加減するような真似をしているのだろうか。その結論は、寧々自身の口からすぐに得られた。

 

「前に、司が類の演出でケガしそうになったの。それで……」

「あー……。だいたいわかった」

 

 もうその一言だけで察した。

 いや、察せられるだけのことをやっているって意味で「やっぱりあいつヤバい奴だ」と再認識させられた瞬間でもあったが。 

 

「要は、『最高の演出にしたい』って気持ちと『司にケガはさせられない』って気持ちの板挟みになってんのか。類はあれでも、ちゃんと演者のことを考えて演出するからな。ショーを見てれば、それが分かる」

「……たぶん、そうだと思う。昔から類、一人ぼっちだったから……」

「本人から聞いたことがあるな。過剰に見える演出のあまり、友達を失った……だったか?」

「うん。でも……私に何ができるんだろうって思って」

「……1つ聞くが、なんで俺に?」

「……類から、『自分の意見をはっきり言える人』って聞いてたの。あと、司の幼馴染って聞いて」

(類にとっての俺は、そう見えてるんだな)

 

 さて、寧々の話でだいたい事情は分かった。類はショーの演出になると手加減ができないということは聞かされていた。その結果として、周囲から孤立していったということも。

 

 あえて言おう、そりゃそうだ。一応安全には配慮しているようだが、傍から見れば超危険なんてものではない。飛び降りれば死ねる高さからのワイヤーアクションだったり、安全配慮の欠片もない(ように見える)爆破だったり。天才の考えていることは天才にしかわからないとはよく言ったものだが、あいつの場合は「天才」というよりも「天災」だろう。

 

(とはいえ、類が考えてるような心配はいらないだろうと思うんだが……)

 

 正直なところ、天馬司という男がその程度の危険で尻込みするとは思えない。俺から見ても、あいつはどうしようもないショーバカだ。

 だが……だからこそ、ショーのためなら全てを賭けられる覚悟がある。それこそ、「死ぬなら舞台の上で」って普通に言いそうな男だ。というか、現に何回か言っていた気がする。そんな頭スターな男が、自らが認めた()()()()()()たる類の演出を拒むだろうか? いや、拒むことなどありえない。

 何はともあれ、とりあえず一度しっかりと自分の意見をぶつける。それをしないとダメだろう。孤独というのは、そう簡単に癒えるものではないのだから。

 

「一度お互いに、自分の意見を徹底的にぶつけるしかないな」

「え?」

「司のことだ。例え危険のある演出でも、あいつは躊躇わない。それに……いつまでも過去の記憶に縛られてると、出来ることも出来なくなるぞ。ぶつかり合えば、分かることだってあるはずだ。だってあの2人の根っこは同じ──()()()()()()()()()()()()なんだからさ」

「……ふふっ。なにそれ」

「類はともかく、司にとって『ショーバカ』は褒め言葉だぞ。あとは、司も類も、勿論寧々も。一度、腹を割って話し合ってみるといい」

「うん。……やってみる」

 

 あいつらは、根っこの部分が似てるんだ。「最高のショーをしたい」司と、「最高の演出をつけたい」類。この2人が共鳴し合えば、間違いなく最強のコンビが出来上がるだろう。

 だからきっと、話し合えばわかりあえる。寧々は去り際に「ありがと」と俺の耳元で小声で囁くと、奮起したようにステージの裏側から立ち去っていく。あとは自分の意見をぶつけまくって、前に進んでくれることを祈ろう。

 

(大丈夫だ、類。司は絶対に……お前の期待を裏切らない)

 

 親友のショーにかける情熱に信頼を寄せつつ、俺はワンダーステージを後にした。

 

 それはそれとして、人を呼び出しておいて最後まで姿を現さなかったあの頭スターは許さん。後で類に頼んで罰ゲームってことでいつもより多めに爆破してもらうとしよう。

 

 

 





今作の展開上、いくつかのイベントは同時進行という形を取ることがあります。
時系列が混乱しないよう私自身注意しますが、読者の皆様もご注意ください。

パラレルの次案を選ぶとしたら、どれにします?

  • 約束された気絶のみのり(みのり)
  • 夏夜と愛莉、ドラマへの挑戦(愛莉)
  • 桐谷夏夜、伝説の兄妹オンステージ(遥)
  • 星灯らぬ夜、眠りを知らず(完全新規)
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