2章も佳境となってきました。
今回は「KAMIKOU FESTIVAL!」に対応するストーリーとなります。前編後編の2話編成です。
ストーリーの関係上、どうしても原作色強めです。
【神山高校】
あれよあれよと時は過ぎ、気が付けば月日は11月最後の土曜日。
この日、ついに神山高校文化祭……通称「神高祭」が幕を開けることとなった。今日1日は高校の敷地も一般開放され、一般の方々はもちろん、他校生の参加も普通に許可される。そしてやることはシンプル、各クラスが1つ以上の売店や出し物、ブースを設置し、今日という日を徹底的に遊び倒すのだ。
──さてそんなお祭りムードの中、俺はというと。
(……帰りたい)
「そこの置物はそっちにおいてくれ!」
──司の出し物にして2年A組の出し物である劇の準備に巻き込まれていた。現在は司を中心として、絶賛リハーサルの進行中である。
その劇の名は、「ロミオ ~ザ・バトルロイヤル~」。タイトルの響きだけ聞けば、なんだか興味を惹かれるようなタイトルだろう。
だがその正体は、世の変人奇人が裸足で逃げ出すレベルのカオスだ。
その内容を説明しよう。
「9人のロミオが1人のジュリエットを取り合って最後の1人になるまで戦う」物語である。
──大事なことなのでもう一度言わせてもらおう。
今作の概要は
「
……である。
……いやなんだよ、9人のロミオが1人のジュリエットを取り合って最後まで戦うって。話を聞いた時俺の頭には宇宙が浮かんだぞ。そんなデタラメな話聞いたことあるか? ロミオは忍者でもなんでもないんだぞ?
皆も想像してみろ、9人の同姓同名の人物が自分を取り合って戦うんだぞ? 意味不明とかそういうレベルじゃないだろ。そんなのジュリエットも意味わからなさ過ぎて匙投げるに決まってる。
というわけで、このあまりにもふざけた内容の劇に(リハーサルの時点で)耐えきれなくなった俺は隙を見てこっそり2年A組を抜け出し、偶然出会った彰人にこの話をしたら呆れられるとともに同情された。
──彰人が常識人でよかったと、心から思った瞬間だった。そのまま俺は彰人と一緒に、とりとめもないことを喋りながら校内を散策する。その最中で、俺は前に彰人が喋っていた「あること」を思いだした。
「そういや前に彰人、姉がいるって言ってたな」
「あー……。忘れてもらっていいっすか?」
彰人は苦虫をかみつぶしたような顔をすると、頭を掻きながらそう言った。
「え、なんで」
「絶対姉って認めたくないからっす。正直、認めちまったら負けだと思ってますから」
「……そこまで嫌か」
「嫌いな人間を言えって言われたら真っ先に言いますね」
どうやら、彰人の姉は相当面倒な性格をしてるらしい。俺と一歌や、司と咲希のように仲のいい関係ではないのだろう。
……もっとも、志歩と雫のところのようにべったりくっつきまくるというのもそれはそれで問題だとは思うが。
(でもまぁ、内心嫌っているわけじゃないのだろう)
本当に嫌いなら、「顔も見たくない」とかになるはずだ。
だが「姉と認めたくない」ってことは……遠回しに「家族としては認める」とも取れなくはない。深読みしすぎな気もしなくはないが。
すると、廊下の向こうから超爆音が聞こえてくる。
「おーーーい!! 夏夜ぁーーー!! どこだぁーーーっ!?」
「あ、やべバレた」
「……頑張ってくださいセンパイ」
「はぁ……」
とうとういなくなったのに気付かれたらしい。渋々、本当に渋々と、俺は2年A組への道を戻り始めた。
ちなみに戻ってくる頃には既に準備の大部分は終わっており、役のない俺は用済みだったらしい。じゃあなんで呼んだ。そう思っていたのも束の間、司が「オレの演技に穴がないか、夏夜に見ていてほしい!」と言い出した。
まぁそれくらいなら……と付き合ったのが間違いだと後悔したのは、数分後のことである。演技に一通り付き合った後、俺は一緒に司の演技を見届けていた類と寧々に声を掛けた。
「……どう思う?」
「まぁ、悪くはなかったんじゃない?」
「そうだろうそうだろう! 俺はこの演劇で必ず学校中を……いや世界中を感動の渦に叩き込んで見せる!」
「「それは無理だろ(でしょ)」」
自画自賛する司に対し、驚くほどに寧々と俺の声がハモった。
……良かった。この劇が変だと思ってたのは俺だけじゃなかった。
「なっ!? 寧々はともかく夏夜まで!? 何を根拠に……!」
「これだけ言っとく。──お前は新喜劇でもやりたいのか?」
「ロミオとジュリエットのパロディーって聞いて台本読んでみたら、バカみたいに戦うシーンばかりだし、話の内容も変だし……これでどう感動すればいいわけ?」
「てか、最後の『残ったロミオが宇宙概念になる』ってなんだよ。こんな終わり方されたら常人の理解力ヒューズ一発で飛ぶぞ?」
俺と寧々による容赦のないツッコミに、司は少なからずダメージを受けたようだった。
「なにおう!? 9人のロミオによる、命と真実の愛を賭けたバトルシーンは誰がどう見ても感動するだろう!」
「そうだね。その場面は僕も好きだよ。愛するジュリエットのために、ひとり、またひとりと無残に散り逝くロミオ達……。飛び散る血潮、悲痛な慟哭。だというのに、なぜか観客は笑いを堪えきれない……。愛する者を奪い合うという悲劇を、あそこまでの
あ、こいつ言いやがった。俺たちがぼかしてたところを躊躇なく。
そうなのだ。司はこの劇を「悲劇」として書いたんだろうが……残念ながら、ハッピーエンド至上主義の司に悲劇を描くのは向いていない。
実際この物語の台本を回し読みした際、クラスメイトのうち数名は俺も含めて爆笑してしまっていた(当然のごとく、司から『何がおかしい!?』と言われた)。もう一度言っておく、「台本だけで」クラスメイト複数名の腹筋をぶち抜く破壊力なのだ。もしあんなものを劇にしてしまえばどれだけの破壊力になるのか、想像もしたくない。
そうしてまたうるさくなり始めた司をよそ目に、俺はまたそそくさと2年A組を後にする。そこで俺は、非常に珍しい人物と遭遇した。
「瑞希?」
「あ、夏夜先輩! やっほー!」
なんと、レアキャラこと瑞希が神高祭に来ていたのだ。一応根回しをしていたとはいえそれでも来ないんじゃないかと思ってしまっていたが、来てくれるとは。
しかしクラスには行っていないらしく、文化祭特有の変Tではなくいつも通りの制服だった。とはいえ、だからどうした。俺の言うことは決まっている。
「いつも通り、きまってるな」
「ありがと先輩! ところでさっき、あっちから変な笑い声が聞こえたんだけど……?」
「あー……。司だな。見てくか?」
「いいの?」
「一応同じクラスだからな。まだ出し物はしてないが」
「じゃ、案内お願いしま~す!」
「任された」
俺は瑞希を先導し、2年A組の前に到着する。すると瑞希が、誰かに気づいたように足を止めた。
「あそこにいるのって……類?」
「ああ。うちのクラスの出し物の協力者だ」
「じゃあ、一緒にいるのが『司』って人?」
「ま、そうなる。今回の劇の主役だな」
「……今の類、なんだかすごく楽しそうだね」
そう語る瑞希の顔は、どこか寂しげだった。俺はその表情の正体が気になって、瑞希に問いを返す。
「そうなのか?」
「うん。昔と違って、表情が柔らかくなったというかなんというか……」
「それはよく分からないが……瑞希が言うならそうなんだろうな」
前々から思っていたが、瑞希は本当に人の表情を読み取るのが上手い。たぶん、長い孤独によって培われたものなのだろう。
しかし類のことを名前で、しかも「センパイ」とつけずに呼ぶとは……。もしや、知り合いだろうか?
そんな俺の思考をよそに、瑞希が何かを呟く。
「そっか、類には仲間ができたんだね。……じゃあ、声を掛けるのはやめとこうかな」
「どうした?」
「あ、ううん! なんでもない!」
なんでもない、なんてことはないだろう。なんでもないのなら、さっき見せた表情は何なのだ。
いずれにせよ、瑞希を1人にはできないな。俺も、今だけは瑞希を1人にさせたくない。
「──心配しなくてもいい。瑞希には俺がついてるからな」
「……! ありがと、先輩」
まもなく俺は、連れがいないという瑞希を引き連れて校内を巡り始めた。お化け屋敷に喫茶店、ストライクゲームに……クイズ大会も? 改めて見学すると、本当になんでもありだな、この学校。
瑞希は興味津々そうにそれらを見ながらも──残念そうな顔をしてスルーしてしまう。
(……やっぱり、そう簡単に禍根は消えるもんじゃないか)
……瑞希は、言ってしまえば「イレギュラー」だ。
人間というものは、往々にして自分にとって都合の悪い存在を排したがる生き物である。そしてその傾向は、思春期の時期に特に強まる──と、いつか見た本に書いてあった。それが正しいかどうかは別として、俺はその通りだと思う。
だが俺はその「異物を排除する」という思考に理解は示せども、共感することはできない。瑞希は瑞希だ。いくら瑞希がどうあろうと、「暁山瑞希」という1人の人間であることに変わりはない。
俺はあの日瑞希に屋上で投げかけた言葉を、ずっと覚えている。でも仮にあの場所で出会ったのが瑞希じゃなかったとしても──俺は同じことを言っただろう。
「何か、食べたいものあるか?」
「んー、じゃ焼きそば食べたーい」
「分かった。今日は奢ってやる。ちょっと待ってな」
「やった! ご馳走になりまーす!」
俺は中庭に駆けだし、焼きそば2つを買って帰ってくる。
一方の瑞希は、俺が焼きそばを買いに行っている間にたまたま通りがかったらしい彰人と冬弥を捕まえて絡んでいた。
「瑞希、あまり冬弥たちを困らせるな」
「夏夜先輩。いえ、俺たちは大丈夫です」
「こっちが困るんだよ。ほら、ご注文の焼きそばだ」
焼きそばを手渡すと、瑞希はご馳走を前にした猫のように目を輝かせる。
「うわ、美味しそう……! 先輩、いつもありがと!」
「はぁ……。で、オレは帰っていいか?」
「ダメだよ弟くん! こういうのは楽しまなきゃ!」
(……弟くん?)
彰人のことを「弟くん」って呼ぶってことは、瑞希は彰人の姉と面識があるってことだ。
(──彰人の姉、か。どんな人物なんだろうか)
彰人は先の会話から分かる通り自分の姉について口が裂けても教えてくれそうにないんで、あとで瑞希から聞いてみるのもいいかもしれない。彰人にかこつけて聞けば多分教えてくれるだろう。
そんなことを考えていると、天然ボケの化身たる冬弥が恐ろしいことをぶっこんできた。
「そういえば暁山。俺の先輩がこれからクラスで演劇をやるから、見に行こうと思ってたんだ。良ければ一緒にどうだ?」
「「「え?」」」
冬弥を除く俺たち3人の声が綺麗にハモる。瑞希と彰人は単純に冬弥の提案に驚いただけみたいだが、俺は別ベクトルだ。
……まさか、あの舞台をそのままやる気なのか。正気か? もう文化祭は始まってるから今更どうしようもないのだが。
そこでふと時計を見ると、初公演の開始があと10分前に迫っている。
「あー……。そういやもうそんな時間か。見たい奴はついてこい、案内してやる」
「もしかして、お前が言ってた『見たい催し』ってそれか? ……つーか、その先輩ってどうせあいつだろ? お前が前に紹介した、司センパイ」
「ああ。なんと今回、司先輩が台本を書いて、主役も務めるらしい」
「へー、面白そう。お邪魔じゃなければ、ボクも一緒に見てみようかな?」
「司先輩の雄姿を見る人数が多い分には、構わない。彰人はどうだ?」
「まぁ、別にいいけどよ……」
とんでもなく真面目なトーンで話を進める冬弥。
……昔からこうだ。冬弥は司のことになると変なスイッチがかかる。いやまぁ、事情は知ってるから気持ちはわかる。ただ冬弥は如何せん……盲信的すぎるんだよな。冬弥は俺にも似たような尊敬の念を向けてるけど、司ほど変なスイッチはかかってないと思う。
(同じクラスである手前、『腹筋を粉砕されたくなければやめとけ』と言えないのがつらいな……)
せめてもの抵抗だ。
俺はさっと彰人の後ろに回りこむと、彰人に小声で話しかける。
「……すまん彰人、1人じゃ笑いを堪えられそうにないから付き合ってくれ」
「あー……。分かりました。付き合うっす。どっちにしろ、冬弥に連れていかれそうですし」
「悪い。あとでチーズケーキかなんか奢る」
「そこまでしなくていいっすよ。なんか、たかってるみたいで申し訳ねぇっす」
「ねえねえ、なに話してるの?」
いつの間にか背後に回り込んできていた瑞希が、俺たちの顔を興味深そうに覗いてきていた。
「あ? 別になんでもねえよ」
「んー、じゃあいいや。というわけでほらほら、さっそくレッツゴー♪」
「お、おい腕引っ張るな。あとその『弟くん』ってのは……うわっ!?」
(……凄まじいスピードで彰人を引っ張って行っちまった)
まもなく瑞希は彰人を引っ張って見えなくなってしまった。曲がり角を曲がって階段を上っていくまで10秒とかかっていなかった。なんて瞬発力だ‥‥……。
(いや速っ。あの華奢な身体のどこにあんなパワーがあるんだ……?)
「……俺たちも行くか、冬弥」
「はい、夏夜先輩」
というわけで2年A組を目指して消えていった2人を追いかけ、俺と冬弥は階段を上っていくのだった。
……結果から言わせてもらえば、「ロミオ ~ザ・バトルロイヤル~」は俺と寧々、類が言った通り悲劇が喜劇になってしまっていた。
話の内容の意味は全く分からないのだが、情報の渋滞が過ぎるあまり、一周回って面白いのだ。
というか正直、情報量が多すぎて頭が機能停止してしまいそうになる。そのせいか彰人は隣で頭を抱えていたが、俺は瑞希と2人で大爆笑してしまった。しかも恐ろしいことに台本と違って視界にダイレクトに訴えてくるせいで、情報を遮断できないという特大のおまけまでついている。脳と腹筋に悪いのでもう二度と見たくない。
なにせ、最後の「残ったロミオが宇宙に行って概念存在になる」というシーンで腹を抱えながら椅子から転げ落ちた人間がいたほどだったからな。多分、どうしてそうなったのか司以外は誰1人として理解してないだろう。
とはいえ、「人間は理解力の限界を超えると一周回って笑ってしまう」というのは新しい発見だったかもしれない。
「頭痛え……」
「あー、笑いすぎて疲れたー! ホント、意味不明過ぎてヤバかったね」
「まさか劇にした瞬間あそこまでの破壊力になるとは……。ンフッ……! ダメだ、思い出しただけで笑いが……。あれは腹筋に悪すぎる……」
「ねー! 9人のロミオが最後のひとりになるまで戦うってとこまでは予想できたけど、まさか
俺と同じく、完全に笑いを堪え切れていない瑞希である。
──というか、あの劇を一切笑わずに見ることができた彰人と冬弥はなんなんだろうか。彰人は膨大過ぎる情報量に脳が追い付いてなかったとして……。冬弥に関しては完全に見入ってたからな。
それにさっきからつらつらと感想を述べてるんだが……多分あの常識で推し量れない喜劇(これでもだいぶマイルドな表現だ)にそんな深い意味ないと思うぞ。
それからは4人でしばらく校内を練り歩いていたが、俺はここであるクラスの前に立てかけられていた看板に目が行った。
「『神高ゲーム大会、エントリーは13時半まで、14時から開始。腕自慢求む!』……か。面白そうだな……」
現在時刻、午後1時25分。エントリーの締め切りまでもうすぐだ。
自慢ではないが、ゲームにはそれなりに自信がある。中学時代にストリートで歌うついでとしてゲームセンターに立ち寄ることがあったからだ。あとは、冬弥と一緒にゲームに興じることも多々あった。
しかも、シューティングゲームありときている。このビッグウェーブに乗らない手はないだろう。
「悪い、俺はやりたいことができたからここで抜ける」
「分かりました。夏夜先輩、ありがとうございました」
「あ、そうだ。彰人。もしアイツに会ったら、『
「え? あ、はい」
「瑞希も、今日は目いっぱい楽しめよ? そんじゃな」
「うん。またねー」
俺はすぐさま滑り込みでエントリーを済ませ、大会の開始時刻──14時を待った。
そうしてゲーム大会が始まると、神高中から揃ったゲーム自慢たちが腕を競い合い始める。だが、俺の敵ではない。
俺は1回戦2回戦と勝ち進み、特に苦戦することなく決勝へと駒を進めた。そして……。
「まさか、星乃さんが相手なんて……」
「俺も寧々と戦うことになるとは、思わなかったな」
遂に迎えた決勝で、なんと寧々と対決することになった。類からゲーム好きだと聞いてはいたが、よもやこの大会に出場していたとは。
そして決勝はこれまでのルールと異なり、全くジャンルの違う3つのゲームで競うことになっていた。1つ目は、「大乱戦スマッシュファイターズ」。この手のゲームは俺があまり経験していなかったこともあり、寧々の独壇場だ。終始俺は圧倒されるばかりで、寧々のストックを1減らすのが限界だった。
2つ目の種目は、お馴染み「ぷよぷよ」。これに関しては、冬弥と一緒にプレイして鍛えられていた実力が火を噴いた。さすがに寧々もやり手だけありパーフェクトノックアウトとはいかなかったが、1ゲームも取られなかったので結果的には圧勝と言っていいだろう。
やはり、一撃必殺級の大連鎖を決めた時の爽快感は筆舌に尽くしがたいものがあった。決着がついた後、隣の寧々がすごい驚いた顔をしていたのは記憶に新しい。
(この手のゲームで、冬弥以外には負けられないんでな)
そうして1勝1敗で迎えた最終戦は、シューティングゲーム。しかも、経験済みのものだった。様子を見るに、どうやら寧々も経験済みらしい。エイムが難しいと有名で、武器うんぬんよりもプレイヤーの腕がものを言うことからコアな人気があるゲームだ。
つまり、最後に信ずるは己の力のみ。正しく決勝に相応しいゲームだろう。
「フルスロットルで行くぞ? 寧々」
「こっちこそ、手加減はしないから……!」
コントローラーを同時に手に取り、画面の敵を次々と倒していく。ヘッドショットを決めれば高得点だが、このゲームではそれが非常に難しい。だが現状、俺も寧々も大きなミスはなく安定してヘッドショットを決めている。
「すげー……」
「プロかよ……。こんなん普通じゃ見れねーぞ」
いつの間にかギャラリーが大量に集まってきていた。残り時間は10秒。ゲームの仕様でスコアが隠され、どっちのスコアが上か分からなくなる。
「……ここっ!」
「……!」
「そこまでー!!」
タイムアップの文字とともに、2人ともコントローラーを置く。どちらもほぼ大きなミスはなかったかのように思えたが……どうだ?
「最終スコアは……出ました! 96対94! よって第1回神高ゲーム大会の栄えある優勝者は……草薙寧々さんです! おめでとうございまーす!」
「「おおーっ!!」」
「えっ……! あ、ありがとうございます……」
激闘の決着に、ギャラリーが沸き立つ。勝者となった寧々の表情は、喜びと困惑が入り乱れているようだった。
「星乃夏夜さんも、草薙寧々さんも、どちらも一歩も譲らぬ名勝負を見せてくれました。そんな激戦を制した草薙さん、一言コメントをお願いします!」
「あ……えと……いい勝負、でした。今度機会があれば……また戦いたいです」
「ありがとうございます。惜しくも準優勝となった星乃さんからも、一言お願いします!」
「はい。草薙さんの言うとおり、とても白熱した勝負でした。──次は負けません」
「……! うん。こっちこそ」
優勝した寧々と、激戦の後の握手を交わす。
その光景を見たギャラリーが沸き立ち、健闘を称える拍手を送っていた。
「それでは、第1回神高ゲーム大会を終了いたします! 選手の皆様、お疲れさまでした!」
(あぁ……負けた負けた。なんだか、久しぶりに負けた気がするな)
ゲーム大会が終わった後、密かで心の中で反省会を始める。
──たった2点、されど2点。俺と寧々のポイント差は、それだけだった。
つまり、あの最後の1秒のヘッドショットで勝負が決まったのだ。ヘッドショットは3点だ。つまりそれを除けば最終スコアは93対94……俺が勝っていたことになる。
「……見事に完敗だな」
あの局面で焦らず冷静にヘッドショットを撃ち込む判断力と、数回のミスがあった俺と違いパーフェクトヘッドショットを決める実力の両方を持ち合わせた寧々が、勝つべくして勝ったのだろう。
(……さすが生粋のゲーマー、というべきか)
「あ、星乃さん……!」
そうして会場を立ち去ろうとすると、俺の下に寧々が駆け寄ってきた。俺は一旦思考を止め、寧々と向き合う。
「寧々、いい勝負だった。ありがとう」
「ううん。……こっちも楽しかったし。それにしても……ゲーム、出来たんだね」
「昔そこそこやっててな。下手ではないと思う」
「いや、私から見ても相当上手いと思うんだけど……」
どうやら俺の実力は、生粋のゲーマーに認められる程度にはあるらしい。嬉しいことだな。
「とにかく、最後のヘッドショットは見事だった。あれが決勝点だな」
「あれは……。たまたま近くに敵がいたから撃っただけ……」
「それでも勝ちは勝ち。負けは負けだ。だから、今度機会があればまた戦おう」
「うん……! 次も負けない……」
寧々と再戦の約束をし、俺は会場を立ち去る。
すると、瑞希が屋上の方へと上がっていくのが見えた。
「瑞希……?」
──俺には、去っていく瑞希のその背格好が妙に寂しく思えた。
そんな瑞希を放っておけなくて、俺は瑞希を追いかけるべく足を屋上へと向けた。
ゲーム大会のルールは本作オリジナルの描写です。
作者は実写版「ロミオ〜ザ・バトルロイヤル〜」がどんなものだったのかわからないので、ゲーム本編からわかる情報だけを頼りに書いています。
パラレルの次案を選ぶとしたら、どれにします?
-
約束された気絶のみのり(みのり)
-
夏夜と愛莉、ドラマへの挑戦(愛莉)
-
桐谷夏夜、伝説の兄妹オンステージ(遥)
-
星灯らぬ夜、眠りを知らず(完全新規)