星の夜が紡ぐ歌は   作:もりいぬ

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ついに2章も終幕となります。
先にネタバレすると、今回は瑞希と夏夜以外の原作キャラが登場しません。



来たる年の瀬の最後に

 

【スクランブル交差点】

 

 クリスマスが過ぎ、いよいよ年の瀬も近付いてきた12月の最終日。世間は大晦日ムード一色で、新たな年の訪れを今か今かと待ちわびている。俺の知り合いたちも今日1日はいつも通りの忙しい日々を忘れ、家族水入らずの時間を過ごしていることだろう。

 

「あ、夏夜せんぱ~い! こっちこっち!」

「お、いたいた」

 

 しかし俺は何故か、大晦日の真昼間に瑞希に呼び出されていた。

 というのも昨日の夜(というか今日の午前1時頃)に突然電話がかかってきて、開口一番に「先輩、明日ヒマ?」なんて聞いてくるもんだからバカ正直に「ヒマ」なんて答えたのが運の尽き、「じゃあ暇人同士どこか行こうよ!」となってしまい、あれよあれよという間に俺の大晦日の予定が決まってしまったわけだ。

 

 当然そう言われた直後に「お前の予定はどうした」と質問を投げかけたが、どうやら毎年応募している年越しのアニソンカウントダウンライブに落選してしまったらしい。なにやら今年のライブには大物アーティストが出演するらしく、そのせいで倍率が跳ね上がってしまったそうだ。

 ついでに言えば、瑞希の家族は皆揃って海外に行っているらしく、今は家に1人らしい。というわけで1年最後の日が丸一日ヒマになった瑞希は、大晦日に予定がなさそうな俺に声を掛けてきたというのが事のあらましだ。

 

 ちなみに俺を誘うより先にニーゴの面子に誘いをかけたそうなのだが、全員予定が入っていたり、引きこもっていたりでダメだったらしい。

 ……予定があるならともかく、引きこもりって。どうやらニーゴのメンバーの中には出不精がいるようだ。不健康なことで。

 

「すまん、待ったか?」

「ううん。ついさっき来たばかりだから!」

 

 何か恋人同士の会話のテンプレートみたいな会話だな、などと取りとめもないことを思いつつ、今日の予定について話し合う。

 

「それで? 今日はどこへ行くんだ?」

「んー、ショッピング! と行きたいんだけど……今日やってる店って、ショッピングモールくらいしかないんだよね~」

「さすがに大晦日じゃやってないのも仕方ないか」

 

 大晦日でもショッピングモールとかなら普通にやっているが、そこら辺の店の情報やら商品やらは網羅してしまったのだろう。カワイイ物に目がない瑞希のことだし、何もおかしくはない。こんな年末に新商品を販売し始めるはずもないだろうし。

 

「てことで、どこかカフェにでも行かない?」

「カフェか……。うん、悪くないな」

 

 最後にカフェに行ったのは、WEEKEND GARAGEを除けば咲希のバイトしてるカフェに顔を出したくらいの時のものだ。普段から外食なんてあまり行かないし、悪くはないチョイスだな。3時にはちょっと早いが、そこは気にするほどのことでもない。

 

「じゃ、行くか」

「うん! レッツゴー!」

 

 シブヤのスクランブル交差点から数分歩くだけでも、それらしいカフェはちらほらと見えてくる。気分屋の瑞希は「ん~……」だったり、「どこにしよっかな~」と呟きながらカフェを選定していた。

 正直俺には瑞希の判断基準がよく分からないのだが、そこは別に今始まったことでもないので気にしていない。

 

「うん! ここにしよう!」

 

 そうこうしているうちに、瑞希の中で決定が下されたらしい。俺も断る理由はないので、追従して中に入る。

 普段見慣れているWEEKEND GARAGEとは打って変わって、白と青を基調とした、清潔感のあるカフェだった。どっちかというと冬より夏に行きたいカフェだ、などと的外れなことを思いながら、瑞希と同じテーブルにつく。

 

「先輩はどれを頼むの?」

「そうだな……」

 

 メニューに目を通しながら、何を頼むか考える。

 こういうシブヤにあるカフェなんて基本行かないし、そもそもカフェに行ったとしてもWEEKEND GARAGEくらいのものだから、こういうおしゃれなカフェだと何を頼めばいいのかよく分からない。

 

(ひとまずコーヒーは確定として……他は何にしようか)

 

 そうしてページをパラパラとめくっていくと、1つの文字列が何となく俺の目に留まった。

 

(日替わりフルーツパンケーキ、か。なかなかおもしろそうだ)

 

 他のメニューには写真がついているが、この「日替わりフルーツパンケーキ」には写真が付いていない。恐らく日替わりでフルーツを使う関係上、写真をつけても無駄だからだろう。つまり、出てくるまでどういうパンケーキか分からないわけだ。

 ……ふむ、ちょうどいいな。

 

「じゃあ、この『日替わりフルーツパンケーキ』にするか」

「お、いいね! じゃあボクは、このケーキにしようかな!」

 

 まもなく店員に注文を伝え、しばらく待ちの時間が訪れる。このタイミングで俺は、ずっと気になっていたことを切り出してみることにした。

 

「そういえば瑞希って、彰人の姉と知り合いなのか?」

「彰人って、弟くんのこと?」

「ああ。そうやって呼ぶんだから、姉のことも知ってるはずだろ?」

 

 少なくとも、確信がないとそんな呼び方はしないだろう。瑞希は俺の質問に対してちょっとばかり意外そうな表情をすると、確かに頷いた。

 

「うん。知ってるよー」

「やっぱりか」

「というか、ニーゴのメンバーなんだよね。『えななん』」

「……彰人の姉が、ニーゴのメンバーなのか?」

 

 さらっと暴露された重大事実に、今度は俺が驚いてしまった。まさか彰人の姉が瑞希と同じニーゴのメンバーだったとは。──よもや「えななん」さんも、自分のあずかり知らないところで堂々と素性をバラされているとは夢にも思わないだろう。

 まあ、俺も瑞希がニーゴのメンバーこと「Amia」であることは知ってるしな。それに今度ナイトコード内で対話することになっているし些細な問題だろうと割り切ってしまった方が得策そうだ。別にリアルで会うわけでもあるまいし。

 

「東雲絵名、っていうんだけど──結構面白い子なんだよね~」

「どんな人なんだ?」

「ん~……。簡単に言うなら、ツンデレ?」

「ツンデレ」

「うん。遠慮がない子、って言えばいいのかな。普段は割と言葉遣い荒いし、結構ネチネチ言ってくるよ。でも、困ってる人がいたら放っておけないタイプ。だから喋ってて飽きないんだよね」

「へぇ……」

 

 なんだか彰人にそっくりだな、なんて言葉はのみ込んだ。

 彰人がそんなにツンツンしているイメージはないが、なんだかんだ彰人も困ってる人は放っておけないタイプだし、通常モードだと割と遠慮ないからな。今の彰人の性格をさらにキツくしたのがその東雲絵名って女の子の特徴ととらえて問題なさそうだ。

 

「──あと、()()()()()()

「……はい?」

「絵名って、自撮りをSNSに上げるのが趣味なんだ。それに、うちのサークルに『雪』って子がいるんだけど……。ナイトコードから落ちるとすぐ陰口言い出すんだよね~。だから『陰険自撮り女』」

「それ、容赦ないのはお前もじゃないのか?」

 

 陰険自撮り女ってそれ100%暴言だろ。いくら気心知れた仲でも限度あるんじゃないのか。

 瑞希の交友関係とか性格に口出しする気はないが、こういうのは瑞希の悪癖だったりするのかもな。距離感が近いが故に、そういう言葉を吐いてしまう人間は少なくないと聞くし。

 

「まさか、今もそんな感じのこと言ってないだろうな?」

「え? ……いやいや! さすがに言わないって!」

「ならいい」

 

 声から嘘は感じられない。少なくとも、今は言っていないようだ。まあ「陰険自撮り女」なんて妖怪じみた呼び名がそのまま渾名になったらたまったものではないだろう。

 とはいえ一応、釘は刺しておくとしよう。

 

「──お前はそういうのに慣れてるのかもしれんが、本来それはただの暴言だからな。()()()()()()()()()()()

「!? は、は~い……」

(ちょっ、今の先輩なんかすごい怖かったんだけど!?)

 

 念には念を入れて、言葉に圧を乗せつつ軽く凄んでおく。

 ──少し前に一歌たちから言われたのだが、俺の凄みの威力は抜群らしい。具体的にはちょっと本気で凄んでみたら咲希が半泣きになった。実際軽めのそれでも瑞希に効果はあったようで、瑞希の声は多少震えていた。まあ、多少は瑞希に楔を打ち込めただろう。止めるかは別として。

 

 とはいえ、なんで俺の凄みにそんな圧があるのかは分からない。……確かに威圧的な音とか、迫力のある音の出し方はある程度熟知しているし、実際喉から出すこともできるが。

 そんなどうでもいいことを考えていると、近くに座っていた女子グループの会話が俺の耳に入ってくる。

 

「ねーねー、今年の正月ってどうするの?」

「アタシは初詣したらこたつにこもってるかなー。アタシ、コタツ、デタクナイ」

「私は友達とカウントダウンパーティーするんだ~。今日の夜から友達の家に泊まるの」

「へー、面白そう!」

 

(カウントダウンパーティー、か)

 

 ……そういえば、今日うちに咲希たちが泊まりに来るみたいなことを一歌が言ってたな。咲希が「みんなで遊びたい」って言いだしたから、一歌の提案でそうなったとかなんとか。パーティーになるかどうかは分からないが、咲希のことだし誰かが提案したら飛びつきそうだ。

 ふと横見ると、瑞希が何かを思いついたような顔をしている。

 

(……ま、あまり触れないでおくか)

 

 そうしているうちに出てきたパンケーキとコーヒーを美味しくいただき、瑞希と談笑しているうちに時は流れ、気が付けば時刻はすっかり夕暮れになっていた。

 

「あー、今日は楽しかった! ありがと、先輩!」

「それは何より。結構いい暇つぶしになった」

「も~、そこは『俺も楽しかった』くらい言ってくれないと!」

「そうか……? そうなのかもな」

 

 実際楽しかったかと言われれば、楽しかったと答える。

 やったことといえば瑞希とシブヤをぶらぶら歩いたのちにカフェに行っただけではあったが、それだけでも結構新鮮な体験だった。というか、こうして一緒に遊びに行ったこと自体初めてだった気がする。割と前々から誘われることはあったが、そういう日に限って予定が入っていたり、ピンポイントで悪天候を引いて中止になったり、瑞希が起きれなかったりしたのだ。

 ……予定や悪天候はともかく、最後に関しては完全に夜型人間と化している瑞希が自滅しただけの話なのだが。

 

「お前は家にまっすぐ帰るのか?」

「ううん。ちょっと寄ってくところができてさー」

「夜道には気をつけてな。俺はそろそろ帰らなきゃだし」

「分かってるって! それじゃ、年明けにまたね~!」

「ああ、またな」

 

 瑞希に手を振り返し、その場を後にする。

 何事もなく家に帰り着いたが、まだ咲希たちは来ていなかった。……なら咲希たちが来て騒がしくなる前に、あいつらに新年の挨拶くらいしておいた方がいいかもしれないな。

 

(まだ大晦日だけど……まあ誤差だろ)

 

 そして俺は、スマホの曲の再生ボタンをタップした。

 

 

 

 

 





プロセカプレイ歴はかれこれ4年以上になりますが、未だにキャラの口調等を完全に把握しきれていないので口調や正確に齟齬がないか不安ですね。

パラレルの次案を選ぶとしたら、どれにします?

  • 約束された気絶のみのり(みのり)
  • 夏夜と愛莉、ドラマへの挑戦(愛莉)
  • 桐谷夏夜、伝説の兄妹オンステージ(遥)
  • 星灯らぬ夜、眠りを知らず(完全新規)
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