皆様の感想や評価に後押しされる形で、早々に投下することができました。
原作イベントにおける「Color of myself!」に相当するストーリーとなります。
モモジャンとの顔合わせ回ですが、今回自分でも驚いたほどに経緯が無理やりです。
一応作中で理由付けはしていますが、納得いかなければご都合主義と考えていただければと思います。
【スクランブル交差点】
穂波の一件を解決し、音楽祭が成功したという知らせを聞いてから数週間後。俺はどういうわけか、雫に呼び出されていた。
……はずなのだが、指定時刻から10分を過ぎても雫が一向にやってこない。シブヤのスクランブル交差点を集合場所に指定してきたのは雫のはずなのだが、どうやらまたどこかで道草を食っているようである。
(……あと3分来なかったら迎えに行くか)
ただ遅れているだけならいいのだが、一番厄介なのはまた変な方向へと歩き出して迷子になっているパターンだ。その場合、下手を踏むと志歩たちすら駆り出して一斉捜索する羽目になる。前にはどういうわけか待ち合わせ地点からおよそ3キロも離れた場所で発見されたこともあった。しかもそれで自分が迷子だと気づいていないからタチが悪い。
もっとも、今日は土曜日。休日とはいえ一歌たちは朝早くから「バンドの練習があるから!」と言って家を出ていったので、なるべく邪魔したくはない。
俺がそんな思考にふけっていると、後ろから透き通った、されど聴き慣れた声が聞こえてきた。
「ごめんなさい! 遅くなっちゃって……。遅くなる、って連絡しようと思ったんだけど、
「……多分、電源入ってないんじゃないかそれ。ほら、貸してみろ」
「あら? ……本当だわ。だから動かなかったのね」
「しっかりしてくれ……」
到着して開口一番「画面が真っ暗のまま動かない」という雫のスマホを拝借し、電源をつける。……この幼馴染はいつになったらスマホの使い方をまともに学ぶのだろうか。だが志歩曰く「スマホじゃなくてガラケーでもダメでした」とのことだったので、もう手遅れなのだろう。
ちなみにゲームなんてさせた日にはほぼ確実に何かしらの形でゲーム機がぶっ壊れる。比喩表現抜きでゲーム機がおかしくなるのだ。コントローラーのボタンが外れたり、ディスクを読み込まなくなったり、エラーが頻発したり……パターンも多種多様である。
このような経緯で今までにかれこれもう3台くらいのゲーム機および周辺機器が雫の手によってお釈迦になっているので、雫に間違ってもゲーム機を貸してはならないというのは俺と司、一歌たちとの間で交わされた暗黙の了解である。
「遅れてきたのはいいとして……。なんで俺を呼んだんだ?」
「そうだったわ! あのね、前に私たちが『MORE MORE JUMP!』っていうアイドルユニットを結成したって言ったわよね?」
「ああ、公式チャンネルも目を通したぞ。でも、まだ本格的に活動を始めてはいないんだろ?」
「ええ。それでね、今日夏夜くんを呼んだのは、
「うん。……うん?」
この幼馴染、今なんて言った?
……アイドルの生配信に協力? アイドルとか何も知らない俺が? 見知った顔ならともかく、雫以外のメンバーとは面識もないのに?
(……爆弾なんて生温いものじゃないぞ、それは)
いや、確かに動画撮影・動画編集の心得とかは一通り身に着けている。そうでもないと現代では投稿者としてやっていけないからだ。
だがそれが実際の撮影、それもアイドルの生配信となると話は大きく変わってくる。
(待て待て、落ち着け俺。まずは状況を確認するんだ)
そうだ、ここは一旦落ち着くべきだ。まずは「いつ、どこで配信して、どのような内容の配信なのか」を確認しなければどうにもならない。
──もうすでに嫌な予感がするが、俺は勇気を出して聞いてみることにした。
「えーと、その配信はいつやるんだ?」
「明日だけど……どうかしたの?」
「あ、明日!?」
……いきなり問題発生。撮影がなんと明日。心構えすらさせてもらえない。
いくら雫がポンコツとはいえ──普通撮影の前日に頼むかね。せめて頼みに来たのが一昨日とかならまだなんとかなるんだが、まさかの明日。この幼馴染、危ない橋を渡り過ぎである。
確かに明日予定はないけれども。一応日程に関してはクリアとするけども。だとしても行き当たりばったり過ぎるだろ。
「ま、まあ分かった。で、どこでやるんだ?」
「宮益坂の屋上よ」
「ほう」
ちょっと待て。今なんて言った?
──「宮益坂」?
「って、宮女でやるのか!?」
「……? ええ」
ここで第二の問題発生。場所がよりにもよって宮益坂女子学園である。
──もう一度言っておく。
宮益坂「
いや、なんでそれで俺に頼みに来るんだよ。確かに力になるとは言ったけどさ、限度あるだろ。なんだ。俺に女装しろと言っているのか、この天然幼馴染は。確かに俺は本気で変装すれば一歌と見分けがつかないと言われたことはあるが、いくらなんでも誤魔化し切れるわけがないだろ。
確かに、一歌が忘れた教科書を届けに中に入ったことはあるけどさ。でもそれって一時的なものだぞ。さすがにそこまでガッツリ踏み入っていいわけがないだろ。
(そもそも宮女って女子校だからな? 普通俺みたいな男子は入れないんだぞ? まさかとは思うが、雫はそれを理解してないとかないよな?)
「……参考までに聞くが、仮に俺が撮影を手伝うとして、どうやって宮女に入ればいいんだ? 普通は入れないぞ?」
「確か、来客用の手続きを済ませば入れるはずよ」
……あてにはならないが、どうやら一応入れる方法はあるらしい。ここはとりあえずクリア、と考えよう。
ついでにどんな内容なのかと聞こうとしたが、やめた。まだ協力すると決めたわけではないうえ、一番重要な事を聞いていないしな。
「──とりあえず、話は分かった。でも、他のメンバーはいいって言ったのか? 俺は部外者だぞ?」
「ええ。愛莉ちゃんが良いって言ってたもの。それに、夏夜くんは男の子だってちゃんとみんなにも説明してるわ」
(いいのか……)
一番重要なところはちゃっかりクリアしているあたり、さすがと言ったところだろう。
……仕方ない、明日は休日返上を覚悟しよう。
「分かった、協力するよ」
「本当? ありがとう、夏夜くん!」
「力になるって言ったしな。約束は守らないとな……」
かくして俺、星乃夏夜は「MORE MORE JUMP!」、通称「モモジャン」の初の生配信に協力することになったのだった。
──女子高に入るのは気が引けるなんてものではないが。
【宮益坂女子学園】
そして迎えた次の日、俺は朝8時から宮益坂女子学園にやってきた。入り口にある事務室に行くと、事務員さんがいたので声を掛ける。
「すみません」
「はい?」
「あの、星乃夏夜といいます。日野森雫さんに頼まれごとを……」
「日野森さん? あぁ、そういう……」
俺が話し終えるよりもはるかに早く、雫の名前を出した時点で事務員の人は得心がいったように頷いていたが、俺は訳が分からず困惑する。
まもなく、事務員さんはどこか間延びした口調で事の顛末を教えてくれた。
「実は少し前に日野森さんがここに来まして……『今日は男の子が1人来るので、よろしくお願いします』って言ってきたんです~。その時は何が何だか分からなかったんですけど、そういうことだったんですね~」
「ああ、そういう……」
「というわけで、もうすでに許可は取っていると見なされますので大丈夫ですよ~。ではこちら、入校証となります~。ちなみに失くしてしまうと最悪通報されますので、常に見える位置につけておいてくださいね~」
「あ、はい」
(いや怖いな。でも当然か……。ここ女子高だもんな)
まったく……雫のやつ、手際がいいんだか悪いんだか分からないな。
事務員の女性から入館証……もとい入校証を貰い、宮益坂女子学園の校舎内へと足を踏み入れる。朝9時の宮女の校舎は日曜日ということもあり、しんと静まり返っていた。俺は雫に指定された屋上を目指して階段を上っていく。そして数分もすれば、屋上につながる扉の前だった。
一気に気持ちを仕事モードに切り替える。意を決し、扉を開けた。
(──よし)
「皆さん、おはようございます」
【宮益坂女子学園・屋上】
屋上のドアを開け放つと、既にモモジャンのメンバーらしき4人は集まっており、その目線が一斉にこちらに向けられた。
真っ先に来訪者が俺だと気づいた雫が、俺に駆け寄ってくる。
「おはよう、夏夜くん! 来てくれて嬉しいわ」
「ああ。おはよう、雫」
「ちょっと雫ー? わたし達そっちのけで話進めないでくれる?」
雫と挨拶を交わす俺に、ふわっとしたピンク髪が特徴的な女子が近寄ってきた。
──なるほど、彼女が「そう」なんだな。
「桃井──愛莉」
「あら、わたしのこと知ってるの?」
「見たことがあります。それに、雫が時々話題に出してたので」
「ふふっ、ありがと! それで、貴方が雫の言ってた幼馴染さん?」
「ええ、星乃夏夜です。よろしく、桃井さん」
そう言って互いに手を差し出し、桃井愛莉と握手を交わす。
「桃井愛莉よ。もう知ってるみたいだけど、改めてね。雫と同い年だって聞いてるし、敬語は使わなくてもかまわないわ。わたしのことも、気楽に『愛莉』って呼んでくれていいわ」
「そうか? ──なら、そうさせてもらおう。俺としても、そっちの方が堅苦しくなくて接しやすい」
どうやら接した感じ、だいぶさっぱりした性格のようだ。それでいて雫の手綱をしっかりと握ってくれているような雰囲気を感じる。どうやらこのグループにおけるまとめ役は彼女のようだ。
……そんな彼女からはなぜか、穂波とは別ベクトルの母性を感じ取れてしまった。
「雫から話は聞いてるわ。協力してくれてありがとう。……実は私もこうやって自分たちで配信するのは初めてだから、ちょっと不安だったの」
「やるからには手は抜かないから、そこは安心してくれ」
「頼もしいわね。──あ、そうそう。他のメンバーも紹介するわ。みのりー! 遥ー!」
すると、愛莉に声を掛けられた残りの2人がこちらへとやってくる。1人は前に写真で見たことがあるから知っているが、もう1人の茶髪の元気そうな子は完全に初対面だ。
「1人は知ってるとして……君は?」
「はい! 私は花里みのりです! 今日はよろしくお願いしま
(……あ、噛んだ)
花里みのり。なるほど、彼女が雫が話題に出していた「みのりちゃん」か。
俺はもう完全に自然体モードだが、向こうは初対面で緊張しているのか、動きはガチガチだし噛み噛みだ。向こうも噛んだことには気づいているようで、顔を真っ赤にして俯いてしまっている。……確かに初対面でこれは恥ずかしい。だが、元気があるのはいいことだ。
そしてもう1人、冷静そうな青髪の女の子。彼女が──
「桐谷遥、か」
「はい。ご存知だったんですね」
「いや、正直よく知らない。元『ASRUN』だって聞いたことはあるけど、それだけだ」
「「えっ?」」
遥が明らかに驚いたような表情をする。ついでに言うと、その隣のみのりも驚いている。というか、話題の中心である遥以上に隣のみのりが驚いている気がする。
……俺、何か変なこと言っただろうか。
「何かあったか?」
「えっと……本当に私のこと知らないんですか?」
「……? ああ、全く」
そもそも桐谷遥という名前自体、一歌から言われるまで知らなかったのだ。アイドル時代の「桐谷遥」がどんな存在だったのか、俺にとっては知る由もない。前にネットで調べた時に凄い量の記事が出てきたので、相当な人気があったのは疑う余地もないが。
見ると、遥は冷静そうでありながら目を若干見開いていた。みのりに至っては「ひょえ~!?」と声を出してしまっている。驚きを隠す素振りすら見せない。
「そうだったんですか。なら、自己紹介を。桐谷遥です。よろしくお願いします」
「星乃夏夜だ。いつも一歌が世話になってるな」
「星乃……? もしかして、一歌さんのお兄さんですか?」
「ああ。妹と仲良くしてくれて、ありがとう」
「いえ、そんなことは全然……」
「2人ともー? そろそろ配信始めるわよー?」
妹談議に入りそうになったところで、愛莉の鶴の一声で、4人が定位置についた。
どうやら今回の配信がモモジャン全体としては初めてなのもあり、さっきの茶髪の子……花里さんはだいぶガチガチに緊張している。みのり、遥、雫の3人が身だしなみの最終チェックを行っているその間に、俺は愛莉と打ち合わせを始める。
「それじゃ、大体は台本の通りに進む……と思うから、それに合わせてね。機材一式はここにあるけど、使い方は大丈夫?」
「問題ない。それよりも、愛莉は大丈夫なのか?」
「……正直、わたしも緊張してるのよね。こうして顔出しするの、久しぶりだし。何より、私たちの復帰がこういう形になったのをよく思わないファンもいるかもしれないもの」
「……そうだよな」
「でも、それでもやるって決めたんだもの。覚悟はとっくに決まってるわ」
愛莉のその言葉に、俺は心を揺さぶられる。
一度引退したはずのアイドルが復帰──だなんて、早々ない。それはアイドルなどの商売に対しての知識がほとんどない俺でもよく理解しているつもりだ。それに今ここには元「ASRUN」に元「QT」、さらには元「Cheerful*Days」というの3人という年末番組でも早々みられないであろう超豪華メンバーが集結しているのだ。
フリーとして活動していくという案を雫に出したのは俺とはいえ、その結論に至るまでには相当な葛藤があったはず。でも、ここにいる4人は逆境に屈することなく前に進もうとしている。ならば俺も、それに全力をもって応えねばならない。愛莉と打ち合わせを進めつつ、機材の準備も同時に行う。
(……一番怖いのは、コメント欄で反応が丸わかりになるってところか)
無論過激なコメントは見つけ次第ある程度ブロックしていく方針ではあるが、やりすぎるとモモジャン全体のイメージにも悪影響を及ぼしてしまう。……難しいところだ。とはいえ、そこは実際にやって感覚を掴むしかないだろう。
俺は機材を調整し、配信の準備を完了させた。
「──よし、準備オッケーだ」
「分かったわ。皆、そろそろ始めるわよ!」
「雫、
「……? ええ、分かったわ」
「扱い慣れてるわね……」
雫を機材から遠ざけるのも忘れない。
正直この幼馴染は機械に近付くだけでも何が起きるのか分からない。下手を踏むとそのまま機材を壊されるんじゃないかと思ってしまう。それを見た愛莉が、感心したような声を出していた。
──まあ、10年来の付き合いとなれば扱い方も自然と身につくというものだろう。
「始めるぞ!」
「こっちも準備出来てるわ!」
まもなく、配信開始のカウントダウンが開始される。俺は素早くスマホの撮影範囲から抜け、カメラの後ろ側へと移動した。
「3、2、1……スタート!」
俺の合図と同時に、配信が開始される。
音楽はかけれないし、初配信ということもあって配信画面は質素なものだが、それでも一定数の視聴者が集まっている。
「──みんな、こんにちは。桐谷遥です」
「桃井愛莉よ! みんな、今日はわたし達の配信を見に来てくれて、ありがと!」
再び公共の場に舞い戻ってきた人気アイドル達を前に、視聴者たちのテンションにも火が付いたようだ。
『はるかちゃん!? すごい、本物だ!』
『また愛莉ちゃんを見られるなんて!』
『雫様が今日も尊いです』
『え、はるかちゃんに愛莉ちゃんに雫ちゃんも? これどういうメンツ? 何が始まるの??』
予想以上の盛り上がりだったのか、モモジャンの4人は意外そうな表情をしている。
「わ、いっぱいコメントついてる!」
「すごい盛り上がりね……」
「ちょっと2人とも、挨拶忘れてんじゃないわよ」
「あ、そうだったわ……!」
もうここまでの流れだけで確信できた。
このユニット、ツッコミ役の愛莉がいないと破綻するやつだ。遥がまだツッコミかボケかの判断が付かないのだが、正直ボケ枠として雫が強すぎる。みのりは……まぁ十中八九ボケ側だろうし。雰囲気からしてツッコミではない。
(でもまさか、俺以外にも雫の手綱を握れる人間がいたなんてな)
そんな俺の的外れな感想をよそに、雫たちが挨拶を始める。それと同時に、俺は雫たちにカメラのフォーカスを向ける。
「日野森雫です。今日はよろしくお願いします」
「わ、わたしは花里みのりです! よろしくお願いします!」
よし、今度は噛まなかったな。
だがすでにアイドルとして名が売れている雫はともかく、知名度補正が全くないみのりへの印象は芳しくない。現に今も、「誰?」だったり「そんなことよりも遥ちゃん映して!!」といったコメントがちらほらと目についている。
「あうう……」
「これくらいでへこたれてんじゃないわよ。誰だって最初はこうなんだから」
みのりが愛莉に励まされているのをよそに、台本通り俺は遥にカメラを向ける。
「今日は、私達から皆に伝えることがあるんだ」
またコメントが流れる。さすがに元国民的アイドルからの言葉ということもあってか、視聴者たちはすっかり聞き手ムードだ。
「……私達がアイドルを辞めたせいで、みんなには心配を掛けさせちゃったと思うんだ。だからまずはそのことについて、ここで説明させてほしいの」
それは配信を見ていた視聴者も、疑問に思っていたことだろう。
なにせ桐谷遥が芸能界を引退するというニュースが流れてからというもの、誰1人としてその原因にまでたどり着けた人がいなかったのだから。
雫の脱退の件は本人の口から直接聞いたから知っているが、世間的には公になっていないはずだし、愛莉がなんでアイドルを一度辞めたのかもわからないしな。
「私達がアイドルを辞めた理由は、みんなそれぞれ違うの。でも共通して言えることがあって……。それは、『アイドルを続けていく自信がなくなってしまったから』なの。でも、今ここにいる仲間のおかげで、またアイドルをやりたいって思えるようになったのよ」
コメント欄の勢いは絶えず、質疑応答は進んでいく。「元のグループに戻る気はないのか?」とか、「結局なんで辞めたの?」とか。
その流れで新しいグループで活動していくと発表した時のコメント欄は、それはそれは酷いものだった。「それって裏切りじゃない?」だったり、「他のメンバーがかわいそうとか思わないの?」とか。さらには雫が「Cheerful*Days」を脱退した際に流れた噂の1つである「雫とメンバー不仲説」の話を持ち出す者まで現れ、コメント欄は地獄と化す。
それを見た4人の顔は、少しばかり……いや、かなり沈み込んでいた。
(覚悟は決めてると聞いてはいたが……これじゃあな)
俺から言わせてみれば、
だがここにいるアイドル達は皆、その
みのりが雫たちを全力で擁護するも、ほとんど意味をなしていない。それどころか「だから誰だよww」とか「素人はひっこんどれ」、果てには「ぽっと出の奴が喋るな」といった心無いコメントが流れ出し、火に油を注ぐ結果となってしまっている。明らかに冗談では済まされないような過激なコメントもあったため何人かは即コメント削除、ついでにブロック処分といった対応を取らざるを得なかった。
見かねた俺は愛莉に向けて「どうする? 配信一度止めるか?」と書いたカンペを見せたが、愛莉は力強く首を振って拒否した。どうやら、今の状況を現実として受け止める覚悟は固めているらしい。
そうしている間に、遥が視聴者たちの間を上手く取り成す。見事なトークだ。遥の発言により視聴者も表面上は鎮静化したようで、「これからどうするの?」や「それ気になってた」といった未来のことに目線を向け始めている。
(ひとまず、落ち着いたか)
ようやく台本に沿ったテーマに軌道修正できたところで、遥と愛莉の口から今後の方針について語られる。
今後は新ユニットのアイドルとして、フリーで活動していくこと。しばらくは、練習風景の配信がメインになるだろうということ。その他諸々も、遥や愛莉が質問に丁寧に答えていったおかげか、いつしか視聴者たちの間にも好意的な意見が生まれつつあった。
そしてそんな好意的なムードのまま、第1回の配信はお開きとなる。俺は配信終了のボタンを確実に押したことを確認し、4人の下へと向かった。
「皆、初配信お疲れ様」
「ええ。……やっぱり台本通りにはいかないわね。辛うじて凌げたって感じかしら」
「それでも上出来だと思うぞ。少なくとも、最後は好意的な意見が多かった」
実際、俺が思っていたほど低評価は少なくない。それでもやはり視聴回数の比率で見ればそれなりに多いのが実情ではあるが、高評価の方が多いだけマシと言える。
「急に辞めてまた戻ってきたんだし、みんなが戸惑うのも仕方ないよ。だから、私達は、私達のやり方で頑張ろう。応援してくれるファンのみんなに、応援してもらえてよかったって思ってもらえるように」
「うんうん!」
そう言った感じで、話がある程度綺麗にまとまる。すると、愛莉がこんなことを言いだした。
「そうだ。夏夜さんさえよかったら、これからもわたし達の配信に協力してくれないかしら?」
「……俺は構わんが、皆はいいのか?」
俺のその疑問に対し、否定意見を述べる人間はこの場にはいなかった。
なら俺も、断る理由を探すことはないな。
「分かった。ただし日程が合わないこともあるかもしれないから、そこは許してくれ」
「もちろんよ。協力してくれるだけでも、じゅうぶん心強いわ」
こうして、俺はモモジャンの配信にこれからも協力することが決まった。
打ち合わせの連絡先ということで愛莉の電話番号とメールアドレスを受け取り、宮益坂女子学園を後にする。その時だった。
「マスター」
「IA? どうした?」
突如としてスマホから現れたIAは一呼吸置くと、俺の思いもしなかったことを言い放った。
「──緑の扉の、鍵が開きました」
「……!」
ついに開かれた、3つ目の「セカイに通じる扉」。
──俺を取り巻く何かが、大きく動き出そうとする気配を感じた。
アンケートの大勢が決してしまっていたため、早々に締め切らせていただきました。
まさかここまで設定集の反響が大きいとは想定していませんでした。今後も設定集等は公開していきます。
その他知りたい設定等があれば、遠慮なく感想欄にお寄せください。
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