久しぶりの更新となります。私自身の文章力不足があまりにも露呈した回となります。
どうにも完全オリジナル展開を考えるのは、今の私は苦手なようです……。
【星空のセカイ】
「鍵が開いたって、本当か?」
「はい。つい先ほど」
MORE MORE JUMP!が初配信を終えてすぐ。校門を出たところで、IAから「扉が開いた」という報告がもたらされた。早速セカイに向かってIAから話を聞いてみれば、今回開いたのは、緑色の扉だという。前に立った時には、未来への明るい希望を感じ取った扉だ。
──しかし、このタイミング。赤の扉が開いて以来、IAから「他の扉が開いたらすぐに教えてくれ」と頼んではいたが……タイミングが出来すぎている。そして緑の扉が開いたタイミングは文字通りついさっきだという。
ここから推理できる答えは……たった1つだろう。
「『MORE MORE JUMP!』の誰か……あるいは全員のセカイ、か」
というか、それしか考えられない。
ミクの言うことが正しければ、この扉は「俺の曲を聞いたことがあって」、かつ「セカイを持つ人物全員の顔と名前が俺の中で一致していれば」開くのだ。前者の条件は三日月夜としての知名度的にもう考えても無駄だから省くとして、実質的に必要な条件は後者だけとなる。
そして今日このタイミングで、俺は花里みのり、桐谷遥、桃井愛莉という3人の顔と名前が一致した。つまり、緑の扉の先に広がるセカイの持ち主がこの中に最低1人はいることになる。もしくは一歌たち「Leo/need」みたいに、「MORE MORE JUMP!」というグループのメンバー全員が1つのセカイを共有している可能性も十分考えられる。
しかし、そうだとすれば相当レアケースなのではなかろうか。前に教室のセカイのミクは、「別のセカイを持っている人が近くにいることはあまりない」と言っていた。しかし今回の一件で、俺の身近にセカイを持つ人間、あるいはセカイの存在を知っている人間が最低でも5人以上はいることが確定したわけだ。
……そんなことを考えていたその時。視界の先、遠くから何かがものすごい勢いで近づいてくるのが見えた。
「なんだあれ?」
「あれは……」
正体が分からず首を傾げる俺をよそに、IAはそれの正体をなんとなく察したような反応を返す。そして俺が困惑しているうちに、その「何か」はどんどんと大きくなる。
そして──。
「おっまたせーーーっ!!!」
「うわ!?」
猛進してきた黄色い何かが、俺とIAの前で急停止した。それに加えて司もかくやと思わせるほどの大音声で、こちらに出会いの挨拶をかましてくる。
その背格好を目の前にして、俺はようやくそれの正体に辿り着いた。
「……リン?」
「うん! リンだよー!!」
見間違えるはずもない、鏡音リン本人だ。
リンのトレードマークとも呼べる鮮やかな金髪のショートヘアと煌めく碧眼が目を引く彼女は、皆の知るリンのイメージと大差ない。違う点を挙げるとすれば……皆の想像しているより10倍はパワフルだ、という点に尽きる。
確かに鏡音リンはパワフルという印象を持たれやすいキャラクターだが、俺のセカイのリンはもうそんなレベルじゃない。もはやここだけ気温が数度上がってるんじゃないかと思うくらいには元気がすごい。
そんなリンは開口一番に俺達の方が声の圧で吹っ飛ぶんじゃないかと思うレベルの爆音をぶちかまし、今も何かしたくてたまらないと言わんばかりにウズウズとしている。司ほどうるさくないと感じるのは、彼女から垣間見える人懐っこさゆえか、あるいは司のハイパーボイスを聞きすぎてもう感覚が麻痺しているのか。
赤の扉が開いてからやってきたレンとMEIKO、青の扉の先で変化があった後に現れたルカのような前例から鑑みるに、恐らくこのリンは緑の扉の先のセカイの影響を受けているのだろう。
(それにしても元気だな……。疲れないのか?)
本当に、見てるこっちが驚くほどのアクティブさだ。正直咲希や司ですらこのアクティブさにはかなわないかもしれない。なんというか、一度「やる!」と言ったらその方向へ向かって爆走し続けそうな勢いがある。
ONEのような制御不能ではなさそうなのが幸いだろう。あの天災が2人とか3人とかに増殖してきたらたまったもんじゃないし。
──おっと、リンのインパクトに負けて大事なことを忘れるところだった。
「IA。今から、緑の扉の先のセカイに行ってみようと思う」
「分かりました」
「え、もう行っちゃうの!? もっとお話しようよー!」
(いやほんと勢い凄いな!?)
天馬兄妹の影響でこの手の相手には慣れているはずなのだが、そんな俺がたじろぐほどのパワフルさだ。咲希とか目じゃないくらいにぐいぐい来る。熱気も元気も常軌を逸しているとしか言いようがない。さっきからこの調子なのにまったくエネルギー切れを起こす気配がないあたり、どうやら俺のセカイのリンのデフォルトはこれらしい。
……よもや緑の扉の向こうのセカイのリンもこんな調子じゃないだろうな。もしそうなら相手取るだけでどっと疲れるぞ。
(とはいえ、そこは行ってみないと分からないか……)
なおもうずうずしているリンといつも通り俺の後ろを追従してくるIAを連れ立って、俺は扉のあるログハウスの中へと足を踏み入れる。
少し前にMEIKO達の手によって増築+魔改造されたログハウスの一角は、今やバーチャル・シンガーたちが集うカフェに大変身していた。今日も今日とてMEIKOは新メニュー作りに励んでいるようで、GUMIがそれを手伝っている。
すると、リンを視界に捉えたMEIKOが声を掛けてきた。
「あら、リンも来たのね」
「うん! 久しぶりー!!」
「ええ、久しぶりね」
どうやらMEIKOはリンと会ったことがあったらしい。どのタイミングで会ったのだろうか。
そんな中でいつの間にか近くに来ていたGUMIが、俺に耳打ちする。
「えっと、あれがリンちゃん?」
「ああ。GUMIは会ったことがないのか?」
「うん。わたしは初めましてなんだけど……。リンちゃんって、すごく元気なんだね」
「ちょっとびっくりするくらいにな……」
「うん。わたしも……ちょっと驚いちゃったな」
どうやらGUMIも俺と同様、リンのハイパーテンションに圧倒されてしまっているらしい。まあ、物静かな気質のGUMIと超ハイテンションのリンとではまず相性が良くないだろう。不仲になるとは思えないが、GUMIの方がリンについていけないのは目に見えている。普段から天馬兄妹の言動を見てきている俺ですらこれなのだ、すぐに適応する方が難しいのは疑いようもない。
……リンがMEIKOときゃいきゃいやっている間に扉の向こうに行ってしまおう。見つかったらまた飛びつかれそうだし。
「なんかもう疲れたが……。後は頼むぞ」
「はい、お任せください」
「気を付けてね……!」
──やはりIAは安心できる。
そう思いつつ、IAとGUMIの見送りを背にしながら扉を開き、緑の扉の先のセカイへと初めて足を踏み入れた。
【???のセカイ】
「──っと、ここは?」
扉を開けた先は、どこかのステージの控え室のような場所だった。というか、まんま控え室のそれだ。適度に広いスペースに、鏡に、整然と並べられた椅子。テーブルの端にはメイクセット一式まである。さらには差し入れのようなものまで置かれているし、花束みたいなものまで選り取り見取りだ。
そういえば、と俺はスマホを確認する。ここがセカイなら、「想いから生まれた歌」があるはず。それは探すまでもなく見つかった。
「『アイドル新鋭隊』、か」
俺のセカイの曲である「Connecting the World」の下に、このセカイの想いの歌と思わしき曲が追加されていた。
今俺がいる控え室のような場所といい、アイドル親衛隊という曲名といい……どうやら緑の扉の先であるこのセカイは、「アイドル」というものに対しての強い想いで構成されたセカイらしい。ふと耳を澄ませてみると、控え室の外からは誰か……というより、不特定多数の人間が盛り上がっているかのような声が聞こえてくる。
(こういうのはやっぱり歩き回りたくなるのが、人の性だな)
控え室らしき場所から出た俺は、この新天地を歩き回ってみることにする。
道なりに少し歩くと、ステージらしきものが見えてきた。光に向かって歩いていくと、まもなくこのセカイの全容が見えてくる。
(これは……!?)
光の正体。それは、輝くステージの群れだった。文字通りの群れだ。1つか2つではすまない。大きさに大小こそあれど、見渡す限り一面にステージというステージが存在している。
そして、視界を埋め尽くすほどに光を放つ無数のサイリウム。あらゆる色のサイリウムが光の海となって、このセカイ全体を照らしている。それがどこまでも、果てしなく続いていた。日本中、いや世界中のどこを探しても、これほどのステージとサイリウムが輝いている場所など存在しないだろう。
文字通り、「ステージのセカイ」というべきだろうか。
「いらっしゃい! はじめましてだね」
ふと背後から聞こえてきた声に、俺は振り向く。
そこに立っていたのは、やはりというべきか初音ミク本人だった。それも、今まで見てきた3つのセカイのミクたちの中で、一番オリジナルのミクに近い姿だ。
髪型は皆のよく知るツインテールで、髪の色もおなじみの青緑色。違うのは格好くらいだが、それを除けば違和感はまったくない。この世界のミクの装いは分かりやすく舞台衣装で、白を基調に一部、ミクのイメージカラーである青緑色がちりばめられている。いかにも「わたし、アイドルです!」と言わんばかりの風貌だ。
それ以外に少し違う点を挙げるとすれば、ツインテールがやや細くまとめられているのと、俺から見て右側のツインテールに白黒チェックの髪留めがされていることだろうか。
「ああ。会えてうれしいよ、ミク」
「うん! わたしも、会えてうれしいな♪」
ここのミクは、性格までしっかりアイドルらしい。少し会話しただけでも、それを肌で感じられた。なんというか、底抜けのアイドルオーラとやらを感じる。
すると、奥からもう1人の人影が見えた。
「ミクちゃ~ん! そろそろ休憩終わるよ~っ! ──って、あれっ?」
「そこにいるのは……リン?」
「うん! はじめましてー!」
奥から姿を現したのは、紛れもなく鏡音リンだった。こちらもまた、よく見慣れた姿だ。それと、どうやらこのセカイのバーチャル・シンガーたちは皆白黒チェックのアクセサリーを付けているらしい。カチューシャの上のリボンが白黒チェック柄になっている。
(どうやら、このセカイのリンは俺のセカイのリンほどエネルギッシュではないようだな)
俺のセカイのリンのような超パワータイプのような感じはしない。どちらかというとひたむきな後輩アイドルのような雰囲気だ。
ミクが先輩で、リンが後輩。アイドルらしい構図だといえば、そうなのかもしれない。それを抜きにしたリンのイメージ的にも、ミクの背中を一生懸命に追いかける後輩サイドのキャラというのはしっくりくる。
するとそこで、ミクが今気づいたと言わんばかりのトーンで喋り出した。
「えっと……君のお名前は?」
「──ああ、そうだった。星乃夏夜だ。よろしくな。ミク、リン」
「「よろしく!」」
どうやら、この世界のミクは俺のことを知らなかったらしい。
教室のセカイのミクは最初から俺のことを知っていたみたいからスムーズに話が通ったが、冷静に考えてみればあれは俺が
「あ、そうだ! よかったら、わたしたちの練習を見ていかない?」
「いいのか? ほとんど部外者みたいなもんなんだが」
「いいのいいの! こういうのって、見てくれる人がいると『やるぞー!』って気持ちになるんだよ♪」
「そういうものなのか」
そのまま自然と俺は、ミクとリンによって練習場所と思わしきステージへと誘導される。俺が最初に見た巨大なステージとは別で、こじんまりとした小さなステージだったが、ステージであることには変わりない。どうやらこれだけステージがあると、ただの練習にもステージを使えるらしい。「練習は本番のように、本番は練習のように」とはよく言ったものだが、ここまで本番に近い環境で練習ができるアイドルはこのセカイの持ち主を除いて存在しないのではなかろうか。
そんな中俺は、ステージの端で飲み物を飲んでいたロングヘアーの女性が目に留まった。
「ルカもいるのか」
「ふふ、はじめましてかしら?」
ピンク色のロングヘアーに、どことなく茶目っ気を感じる女性。巡音ルカだ。
このセカイのルカからは、教室のセカイのルカや俺のセカイのルカとはまた違った形の「年上の余裕」を感じる。雰囲気だけでも、面倒見の良さが伝わってくる気がした。それにどことなく、立ち振る舞いは雫に似ている気がする。魅せ方的には清楚系というべきだろうか。
ちなみにミクによればルカは最近メンバーに加わったらしく、初披露の舞台を間近に控えているらしい。
「ルカちゃんは、歌もダンスもトークも全部得意なんだよ!」
「うんうん! ぜんぶ
(……)
その言葉を聞いた時、俺の心に僅かな淀みが生まれた気がした。
本来なら、手放しに褒めてもよかったのかもしれない。しかし俺は何故か、ルカを手放しに褒めるつもりにはなれなかった。
……
皆から「完璧」を求められ続けた1人の少女と、目の前の巡音ルカというバーチャル・シンガーの姿が。
だからこそ、次に俺の口から発せられた言葉は完全に自分でも意図していなかったものだった。
「──ルカは」
「あら、どうかしたの?」
「……ルカは、
自分が何を言っているのか理解してしまったのは、その質問のすべてを言い切った後のことだった。目の前のバーチャル・シンガーに自分の幼馴染のことを投影してもどうしようもないというのに、俺の口は勝手にそう動いてしまっていた。
だがルカは、俺のその言葉を咎めることなく、また貶すこともなく、純粋な微笑みで答えてみせた。
「そうね……。アイドルっていうのは、たくさんの人の想いに応えなきゃいけないから、完璧を求められるのならそれに応えなくちゃいけないのかもしれない。でも、私は『完璧』かどうかよりも──自分に誇れるアイドルでありたいわ。だから、心苦しさなんてないの」
「自分に誇れる……か」
その答えに、迷いは一切感じられなかった。
完璧なアイドルになるのではなく、自分を誇れるようなアイドルになれるよう、輝きつづける。ふと傍目に見ると、ミクとリンも感心したかのようにうんうんと頷いている。どうやら、ルカの想いはこのセカイのバーチャル・シンガーたちの総意らしい。
それを聞いた時、俺の中にあった幼馴染の幻はもう消えていた。らしくないことを考えたなと思いつつ、頬を叩いて一度自分をリセットする。
「よし。ものはついでだ、俺もレッスン付き合うか」
「え、いいの?」
「ああ。──俺だって、人並み以上には踊れるからな。昔はダンスを教えてたことだってあるんだぞ」
「ふふ。それなら私達も、頼りにさせてもらおうかしら?」
たまには、こういうのも悪くはないだろう。なにせ、現役アイドルにダンスのイロハを教えたこともあるのだから。
そうして俺は、しばしの間ミク・リン・ルカの3人のダンスレッスンを時に見届け、時に一緒に踊り、時に指導を行い、なかなかに満足の行く時間を過ごすことができた。
──ステージのセカイの持ち主が誰か聞くのを忘れたことに気づいたのは、星空のセカイに戻った直後にリンから「どこ行ってたのー!?」という爆音波の直撃を受けた時のことだった。
星乃夏夜について⑥
夏夜の才能をダンスに特化させた場合、その腕前はプロセカキャラ内で1位になる。ただし活かされる場面が他の才能と比べて明らかに少ないため、夏夜のダンスの才能を知るのは直接ダンスの手ほどきを受けた雫くらいのもの。
才能は両立できないという夏夜自身の弱点もそれに拍車をかけており、基本的に夏夜が人前で踊ることはめったにない。
パラレルの次案を選ぶとしたら、どれにします?
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