本編投稿の合間に、もう1つパラレルシリーズが完成したので投稿させていただきます。
先述したデータ消滅の件もあり、本編を楽しみにしていただいている読者の皆様には大変ご迷惑をおかけしますが、いましばらくお時間を頂きたいと思います。
今後の反響次第でパラレル時空をシリーズ化するか否かを決定したいので、アンケートにご協力いただければ幸いです。
感想等を頂けると作者のモチベーション向上に繋がります。よろしくお願いします。
また、駄文にはご注意ください。
【ビビッドストリート】
それは、春の陽気が夏の熱気に変わろうとしていた初夏のこと。
東雲彰人は、いつもの通りビビッドストリートを訪れていた。彼は今シブヤのストリートでめきめきと頭角を現している4人組ストリートユニット・「Vivid BAD SQUAD」──通称ビビバスのメンバーであり、ストリートにかける想いは人一倍の努力の天才だ。しかしながら今日はユニットでの練習は休みであり、本来ストリートを訪れるような予定はない。
だが、彼の足は自然とここに戻ってきていた。ここまで来たのだから行きつけのカフェの店主のパンケーキでも食べていこうか、などとなんとなしに考えていた、そんな時。
「すまん、ちょっといいか?」
「はい?」
不意に彰人に声を掛けてきたのは、どこかクールな出で立ちの青年だった。
外見的には、彰人より少し上くらいだ。どこにでもありふれた無地の黒いパーカーを着て、首にはヘッドホンがマフラーの如く装備されている。ファッションには一家言ある彰人から見ても、青年の風貌は地味寄りとはいえ見事にこのストリートに溶け込んでいる。それとは別に、彰人は目の前の青年から物静かさと大胆さという相反する2つの個性が共存しているような雰囲気を感じ取った。
「何かあったんすか?」
「あー……。実は、道を尋ねたくてな」
「なるほど……。どこに行きたいんすか?」
「『WEEKEND GARAGE』ってカフェなんだが……。知ってるか?」
WEEKEND GARAGE。
それは、彼にとってはよく知った名前のカフェだった。シブヤのストリートを知る者であれば、その名を知らない者はいないと言っても過言ではないカフェ。彰人もまた、そこのマスターにはありとあらゆる場面でお世話になっていた。そしてそこは、彼が今から行こうと思っていたところでもある。
「それなら、こっちっすよ」
「知ってるみたいだな。なら、道案内を頼んでもいいか?」
特に青年の頼みを断る理由もなかった彰人は、その青年を素直にカフェへと案内することに決めた。しかしながら、しばらくして彰人はある違和感を持ち始める。
(道を聞いてきた割には、迷いが無いように感じるな……)
道案内を頼んでくるということは、基本的にこの場所に何があるかなど分からないはずだ。だが今彰人の隣を歩いている名も知れぬ青年は、その足を止めることを知らない。なんならどこか懐かしいものを見るかのような目を時々している。
しかしこの時の彰人は、違和感こそ持ったものの結局は「まあそんなこともあるだろう」と結論付け、大して疑問を持つことをしなかった。
「ここっす」
「おう、助かった」
歩くこと10分ほど。程なくして、彰人と青年は目的地であるWEEKEND GARAGEへと到着した。青年はしばらく店の外観を眺めると、静かに呟く。
「──しっかし、何も変わってないな。ま、そっちの方が“らしい”けど」
「……?」
「ああ、気にすんな。こっちの話だ。……ん?」
どこか意味ありげな呟きを耳にした彰人だが、青年がすぐさまはぐらかしたので詳しく質問することはできなかった。すると、不意に青年の目線がある点に集中する。それにつられるようにして彰人の目線もまた、そこに向いた。
2人の目線が向いた先は、ドアだった。入り口のドアに、1枚の紙が貼られている。その紙には、手書きでこう書かれていた。
「開いてないのか?」
「謙さんいないのか……。珍しいな」
「ったく、こういう日に限って運がないな……」
青年は困った、と言わんばかりに頭を掻く。彰人もまた、今までにない出来事に困惑していた。
しかし、既に道案内という要件は済ませている。用は済んだと言わんばかりに彰人が去ろうとした、その時。青年はとんでもない行動に出た。
「……まあいいや、入っちまえ」
「──は?」
ドアに掛けられた「CLOSE」のプレートも、店主不在という張り紙も何もかもをガン無視して、その青年は入口のドアを開けて中へと入ってしまった。
彰人は何が起きたのか分からずしばし硬直していたものの、同伴していた青年が明らかに、目の前で、自然に、堂々と不法侵入をしていることに気づいたことで慌てて自らも店内へと入っていく。
店内は「店主不在」という貼り紙の通り誰もおらず、今店内にいるのは見知らぬ青年と彰人の2人だけだ。そうこうしている間にも、青年はずかずかと店の奥へと入っていく。青年は「変わってないな」やら「まだこれ使ってるのか」と呟きながら店内を見て回っていたものの、程なくして、カウンター席の向こう側に立つ。そして彰人に対し、ジェスチャーで「座れ」と促した。
何が何だか分からないまま、彰人はジェスチャーの通り席に着く。頭の中の整理が追い付かず、彰人は一言疑問をこぼすのがやっとだった。
「何してんすか、アンタ……!?」
「どうせだし、道案内の礼の1つでもしようと思ってな。コーヒー、飲めるか?」
「え? あ、いや……」
「そうか。なら、パンケーキは?」
「それなら、まぁ」
「ならいい、食ってけ。味は保証する」
青年の行いを問いただすはずだったのだが、「パンケーキ」という単語を出されてしまったのが運の尽き。大のパンケーキ好きである彰人の思考は完全にそっちへとシフトしてしまった。
それから程なくして、店主不在のカフェの中を香ばしく甘い匂いが満たす。青年は慣れた手つきでパンケーキを作り、皿へと重ねていく。数十分後、彰人の眼前には3段重ねのふわふわなパンケーキが置かれていた。
「ほらよ。せっかくだし、スフレ風にしてみた」
「……ありがとうございます」
第三者目線から見れば「何処からともなく現れた不法侵入者によって何故かパンケーキを振る舞われている青年の図」という訳の分からない光景なのだが、今の彰人は脳内が目の前の美味しそうなパンケーキで埋め尽くされていたため、そこまで頭を働かせる余裕がなかった。
彰人はふわふわとしたそのパンケーキを丁寧に切り分けると、一切れ口に放り込む。その瞬間、彰人の全身に衝撃が走った。
(……う、美味ぇ!?)
彰人が最初に出てきた感想は、それだった。
(まず口に入れて最初に感じるのは、ほんのりとした優しい甘さ。パンケーキそのものの甘さと程よくかかったメープルシロップが、完璧に口の中で調和してやがる。それでいて食感も非の打ち所がねえ。──表面は軽くてサクサク、中身はスフレケーキみてえにふわふわで、しゅわっとした軽やかな食感が病みつきになる。そして何よりこの、口の中で勝手に溶けていくような感覚。スフレ風とはいえただのパンケーキのはずなのに、満足感が半端じゃねえ……! こりゃ、オレが今まで食べてきたパンケーキとは比べ物にならねえ美味さだっ……!!)
もし仮に食べログみたいなものがあれば、間違いなく最高評価を付けていただろう。それほどまでに極上のパンケーキだった。一流のパティシエが作った、と言っても納得できるくらいには。この味を知ってしまったら、二度と市販のパンケーキには戻れないような気がしたほどだ。
(こりゃ、絶対絵名には食わせられねえな)
食べた瞬間に誰にも横取りされたくないと本心で思ったのだ、姉である東雲絵名がこのパンケーキの存在を知ったら最後、好きなものが一致している自分たち姉弟の間で壮絶な争奪戦が開始されることは目に見えている。このパンケーキの存在はたとえ死んでも姉には教えないと、彰人はひそかに決意した。
食べ進める手は止められない。皿の上にあった3段重ねのパンケーキは跡形もなく無くなっていた。
「ごちそうさまでした。……その、美味かったっす」
「そいつは何より」
しかし、彰人からしてみればそれはそれ、これはこれである。
パンケーキを食べたことで思考が元に戻った彰人は、再び青年を問いただした。
「……って、そうじゃねえ! 勝手に他所の家に入った挙句料理までって……あんた捕まるぞ!?」
「……? 何を言ってる? 家のものを勝手に使って何が悪いんだ?」
「──『
「ああ」
そうして青年は、彰人の思考を全て彼方へと吹き飛ばす一言を放った。
「
「……は?」
あまりにも突拍子もない一言に、彰人の思考は完全に停止した。
その言葉の意味を理解するより先に、店内にカラン、と小さな音が鳴る。入り口のドアベルの音が、無音と化した店内に響く。
「……ん? なんで鍵が開いてるんだ?」
落ち着いた、聞き慣れた声。紙袋を片手に、いつものラフな服装で入口に立っている。
白石謙。この「WEEKEND GARAGE」の店主だ。そして、かつてこのストリートで「伝説の夜」を作り上げた1人でもある。謙は一瞬何故戸締りしたはずのドアが開いているのか困惑したようだが、カウンターの向こうにいる青年の姿を見るや否や、その理由を察したようだった。
「お前……」
「久しぶりだな、
絶賛不法侵入中の青年は、特に悪びれもせずにそう言った。その発言を聞いた彰人は、物言うことすらできず硬直する。一方の謙は「はぁ……」とため息をつくと、青年に呆れたような視線を向ける。
「せっかく帰ってきたってのに、俺の留守中に何してんだ?」
「こいつに道案内の礼をしてたんだ」
「だからって『勝手に店を開けていい』とは言ってないぞ」
「そいつはまぁ……許してくれ」
そのやり取りを聞いて、彰人の中で嫌な予感が一気に膨れ上がる。
青年の言った、「俺の家」という発言。まるで勝手知ったる仲であるかのように話す2人。それに加えて、謙を指して放った「親父」という言葉。
……彼の正体にたどり着くには、あまりにも十分すぎた。
「……謙さん。この人、もしかして……」
「ああ。察しはついてるだろ?」
謙は苦笑しながら、青年の肩に手を置いた。
「俺の息子だ」
「──!?」
沈黙。いや、絶句だった。
当然だろう。謙に娘がいるということは知っているし、なんなら同じユニットとして活動している。だが謙に息子がいるなんてことは初耳だし、同じユニットで活動している彼女からも兄がいるなんてことは聞いたことは一度もない。
青年は思い出したかのように、彰人に対して名乗った。
「そういや自己紹介してなかったな。──
「それと、3年前にアメリカに行ったっきり、今日まで何の音沙汰もよこさなかったバカ息子だ」
「バカは余計だ、バカは」
彰人の脳内で、今までの違和感が一気に繋がった。道案内中の歩みに一切迷いがなかった理由も、店内をどこか懐かしそうに見ていた理由も、厨房を迷いなく使った理由も、何もかも。
だがそれ以上に、彰人にはある一言がこれ以上なく刺さった。
「アメリカ、って……」
ぽつりと零れた彰人の言葉に、謙が頷く。
「ああ。こいつはストリートを極めるって言って聞かなくてな。高校卒業してすぐ1人でアメリカ行っちまったんだよ。それが3年くらい前の話だ」
「……」
高校卒業後、すぐにアメリカ。その決断だけでも、彰人にとっては途方もないものだった。
混乱の中、彰人はどうにか質問をひねり出す。
「あの」
「なんだ?」
「その……夏夜さんは、向こうでどんな生活をしてたんすか?」
それに対してパーカーの青年──白石夏夜は特に考えるような素振りも見せず、さらっと即答してみせた。
「どんなって言われても……シンプルだ。毎日街角に立って、自分の音だけで勝負する日々だったよ」
「……それで、どうなったんすか?」
「生き残った。だからここにいる」
そう語る夏夜の声はどこか淡々としていたが、一言の重みは計り知れないものがあった。
「……やるべきことは済ませた。だから、帰ってきたんだ」
「それだけか?」
「ああ、それだけだ」
謙の問いを、夏夜は無条件に肯定する。その目には一切の揺れが無ければ、迷いもない。
だが、彰人は直感的に理解した。今自分の目の前にいる青年は、「それだけ」という軽い言葉では済まされないほどの経験を──否、「戦場」をくぐってきたのだと。
2人の間に、奇妙な緊張状態が出来上がる。それを打破したのは、他でもない謙だった。
「そうだ、彰人」
「は、はい?」
「こいつのパンケーキ、どうだった?」
予想外の質問に、一瞬言葉に詰まる。だが、その問いに対して彰人が示せる答えは1つだった。少なくとも、夏夜の作ったパンケーキは絶品だった。それだけは間違いなかったからだ。
「……正直、めちゃくちゃ美味かったっす。今まで食った中で、一番」
それを聞いた謙は一瞬だけ目を見開き、すぐに小さく笑った。
「そうか。ったく、向こうでまた腕を上げてきたか」
「ほぼおまけみたいなもんだ。とはいえ向こうでも皆『美味い』って言ってくれたから、そうなんだろ」
「……」
彰人は何も言わず、ただ夏夜を見ることしかできない。すると夏夜は、不意に彰人の方をまじまじと見つめ──そのまま語り掛けてきた。
「なあ。お前──ここで歌ってるだろ?」
「……なんで、それを」
「見ればわかる。向こうに長いこといたんだ、そんなのは嫌でもわかるようになる。お前は、『歌っている人間』だ」
彰人の心臓が跳ねる。
少なくとも、向こうは自分がストリートで活動していることなど知らないはずだ。だが目の前の青年は、それを的確に当ててきたのだから。
「……いずれ、お前の歌を聞く日が来るかもな」
──挑戦的な目線が、彰人を捉える。それと同時に彼から放たれるのは、幾百もの修羅場を潜り抜けてきた圧倒的強者の風格。
その気に当てられた彰人は、冷や汗をかかずにはいられなかった。
「……すみません。ちょっと外行きます」
返事を待たずにドアを押し開ける。外に出ると、まだ昼時のビビッドストリートの喧騒と空気が一気に流れ込んでくる。それでも胸の奥が、ざわついて仕方がない。
そうしてふと冷静になったとき、最初に思い浮かんだのは一緒に活動しているある仲間の顔だった。
(──杏はこのこと、知ってんのか?)
謙ですら知らなかったのだ、杏が知らなくても何ら不思議ではない。彰人はポケットからスマホを取り出し、迷わず名前をタップする。いつもなら何でもないはずのコール音が、今だけはいやに長く感じられる。
電話の向こうから聞き慣れた、溌剌とした声が聞こえてきたのは5回目のコールが終わろうとしていた時のことだった。
『もしもし? どうしたの彰人?』
「……杏。お前、今どこだ?」
『……え? シブヤの交差点だけど……なんかあったの?』
杏も、彰人の声から何かただならぬことが起きていると察せられたらしい。自然に会話のトーンが低くなっていた。
どうやらこの反応的に、杏は兄が帰ってきたことを知らないようだと彰人は判断する。
「──お前の兄貴が帰ってきてんだよ」
『……はっ?』
兄が帰ってきている。
その事実を伝えただけだというのに、電話の向こうの空気が凍るのがハッキリ感じられた。まもなく電話越しに聞こえてきた声は、今まで彰人が聞いたどんな声よりも冷たいものだった。
『今、どこ?』
「お前んとこのカフェ」
『……嘘でしょ?』
「こんなことで嘘つかねえよ。道案内もしたし、パンケーキまで食わせてもらったんだからな」
『いつの話?』
「ついさっきだ。今店ん中で、謙さんと話してるぞ」
電話越しの杏の語気が、どんどんと強くなっていくのが分かった。最後に数秒の沈黙があったと思った、その直後。
『──今すぐ行く』
今までにない強い口調で、杏が言葉を返した。電話越しだというのに、凄まじい圧力が伝わってくる。
「はぁ?」
『場所、間違いなくウチだよね? 絶対そこに居るんだよね?』
「……だから、嘘なんかついてねぇっての」
『分かった。すぐ行くから』
それだけを言い残して、通話はそれっきりつながらなくなった。彰人は物言わなくなったスマホを見下ろし、短く息を吐く。
(即決かよ……)
だが、その反応にどこか納得もしていた。
杏からしてみれば久しぶり──最低でも3年ぶり──に実の兄が帰ってきたのだ、そういう反応にもなるだろう。だが彰人には、なんとなくそれだけでは済まされないような予感もしていた。電話越しに感じた空気は、それほどまでにただならぬものだった。
(ま、オレの家は絶対そうはならねえだろうけどな)
自分の家のことを考えられるほど冷静になった今、「本物」を知る白石夏夜という青年に聞きたいことは山ほどある。
こんな機会はまたとない。それを確信した彰人は、再び店内へと入っていった。
【WEEKEND GARAGE】
──ドアベルが鳴ったのは、それから数分後の話。
彰人や謙が開けた時とは、比べものにならないほどにドアが強く乱暴に押し開けられた。あまりの激しさに、ドアがきしむような音を立てる。
「……っ!」
息を切らして店内に飛び込んできたのは、その場の全員がよく見知った長いロングヘアー。このカフェの看板娘、白石杏だ。肩で大きく息をしながらも、視線だけは一直線に店の奥を射抜いて逃さない。その視線の先には、当然白石夏夜がいる。
──カウンターの向こう。父の隣に立つ兄と、入口に立つ妹。2人は、互いに顔を認識した。
「……ほんとに、いる」
杏の声は、震えてはいなかった。されど普段の杏を知る者からすれば異様なほど低く、硬かった。
「久しぶりだな、杏」
そう言った夏夜の声は、彰人ですらわかるほどあっさりしたものだった。
同時に彰人は、ひどく驚かされた。夏夜と杏は3年も顔を合わせていないどころか、謙の話が正しければ連絡すらよこしていなかったという。だというのに夏夜のそれは、まるで昨日も顔を合わせていたかのような口調だったからだ。
「……っ」
夏夜の声を聞いた杏は一歩、前に出る。
その手は固く握りしめられていて、指先が白くなっていた。まるで、今すぐにでも殴りたいという衝動を抑えているかのように。
硬く冷たい声色のまま、杏が静かに口を開く。
「何年ぶりだと思ってるの?」
「──3年と少し、ってとこだな」
「……そんなにちゃんと、覚えてるなら……」
杏の声が、跳ね上がった。
「答えてよ! なんで突然いなくなったの!? どうして何も連絡くれなかったの!? 電話も、メッセージも、手紙すらくれなかった! ──私も、父さんも、兄貴が生きてるか分かんなかったのに!!」
杏のその叫びは、3年間必死に心の中に溜めていたものだった。店内の空気が、一気に張り詰める。それと同時に彰人は、思いがけず驚かされた。
(コイツ……こんな怒れるもんなんだな)
──こんな姿の杏は見たことがない。いつも勝気で、前向きで、人前で弱音を吐くことがない杏が。今自分の目の前で、ありったけの激情をぶつけている。
杏の激情をぶつけられた夏夜が、少しだけ目を伏せて語った。
「……悪かったとは、思ってる」
短く、不器用な謝罪の言葉だった。
しかし、それ以上言い訳を重ねることはしなかった。いや、できなかった。杏が一気に距離を詰めて、彰人と謙の眼前で夏夜の襟首を掴みあげたからだ。
「謝ってほしいんじゃない! 帰ってくるなら、帰ってくるって言ってくれればよかったじゃん! 帰らないなら、帰らないって──!」
「……言えなかった」
夏夜の声が、杏の叫びを遮るように伝わる。その声は今までにないほど低く、されど確固たる意志を感じるものだった。
「帰るって言ったって、いつになるか分かったもんじゃない。それに中途半端なままじゃ、戻れなかった。中途半端で戻るのは、俺の信念が絶対に許さなかった」
「……なに、それ」
その一言に、杏が言葉を失う。襟首をつかんでいた拳が、ゆっくりと放される。2人の会話の一部始終を見届けた彰人には、ハッキリと理解できた。
──この2人の間には、どうしようもないくらいに長い時間と感情の断絶がある。自分たち姉弟のそれとは比にならないくらいに。
まもなく長い沈黙を破ったのは、謙だった。
「……立ち話する内容でもないだろ。座れ、杏。彰人も」
「……オレもですか?」
「杏をここに呼んだ時点でお前も当事者だ。それに、聞きたいこともあるんじゃないか?」
「……否定できねぇっす」
渋々と椅子に腰を下ろしながら、彰人は2人を見る。真正面に座った兄妹は、どこか似ていて、そして決定的に違っていた。
やがて、杏がぽつりと口を開く。
「……それで、なんで今更帰ってきたの?」
杏の発言は静かなれど、どこか鋭いものだった。それに対して夏夜は怯む様子を見せず、少しだけ間を置いてから答える。
「──証を、持って帰ってきた。逃げることなく、誤魔化すこともなく、自分の音だけで立ち続けた、その証を」
「……それで?」
「だから、ここに戻ってきた。自分のやりたいことを、やり終えたからな」
──「やり終えたから、帰ってきた」。非常にシンプルな理由で、答えになっていない答え。
しかし、杏にとってはそれでよかったらしい。数秒黙り込んだあと、ふっと息を吐いた。
「……勝手だね。相変わらず」
「昔からだろ」
「でも」
杏は、夏夜を真っ直ぐに見た。
「──ちゃんと、帰ってきたんだよね」
その言葉に夏夜はほんの一瞬だけ、微かに笑った。
「ああ」
短くも、されど確かな肯定の返事。今の杏にとっては、それだけで十分だった。
束の間の沈黙が、その場を包む。最初に口を開いたのもまた、杏だった。
「……さっきから、ずっと引っかかってるんだ」
視線は真っ直ぐ、兄を捉えている。杏達の興味は、すでに別の場所へと移っていた。
「さっき、『やりたいことをやり切った』って言ったよね。それって、どういう意味?」
夏夜はすぐには答えなかった。
コーヒーカップに視線を落とし、静かに息を整える。
「世界を相手に戦って、勝ってきた。言葉通りな」
「……世界を相手に、勝ってきたって」
静かに、されど力強くされたその宣言を、杏も、彰人も、謙すら、すぐには飲みこむことができなかった。
世界を相手に戦い、勝った。その言葉に嘘偽りがないのであれば、白石夏夜という人間は、世界の頂を見たということになるのだ。
「……それ、格好つけて言ってるわけじゃないんだよね」
「当たり前だ。今更、くだらない嘘をつく理由もない。そもそも、世界は前提が違う。何の準備もないまま、向こうから一方的に殴ってくる。世界で勝ってきたってのは、そういう修羅場を生き残ってきたってことだ」
その言葉には、夏夜が重ねてきた経験そのものがあった。そこまで語ると夏夜は目線を上げ、杏を見た後、彰人へ目線を移す。
「お前ら、たぶん組んでるだろ?」
「……そうだけど」
「なら覚えとけ。向こうの人間は、楽器がどうとか人数がどうとかじゃない。『自分たちの音を示すため』に歌ってる」
それなら自分たちも同じだと、杏も彰人も同時に同じことを考える。だが、夏夜の回答はその先を行っていた。
夏夜の視線が瞬く間に、今までとは比べ物にならない程鋭くなる。
「だがな、向こうは
杏と彰人は、言葉を失った。
ストリートで己の音を轟かせること。人の視線を奪うこと。──それが、『生』という当たり前の事象と直結している世界。夏夜が見てきたものを知った杏は、ゆっくりと息を吐いた。彰人は、無意識に拳を握りしめていた。
しばしの沈黙が、カフェの中を包み込む。今度は彰人が、その静寂を破った。
「……その、聞いていいっすか」
「なんだ?」
「向こうで夏夜さんは──何を『武器』にしてたんすか」
それは、彰人にとって最大の疑問だった。ストリートで生きている以上、その人間には何かしらの「武器」があるはずだった。トークでも、歌でも、ダンスでも。誰だって、それを個性にして戦っていくのだから。
杏は目を見開いたが、彰人を止めることはしなかった。むしろ、自分もその答えを求めていたからだ。
「……歌」
夏夜が示したのは、「歌」。静かに、絞り出すような答えが示される。そして、そこから先の言葉はなかった。杏の眉が、わずかに動く。
「……それだけ?」
「それだけだ」
いやに、シンプルな回答。それがかえって不審だった。杏が思わず口を挟む。
「向こうには、もっと派手なことする人もいたでしょ。そうでなくても、声量とか、細かい技術とか、そういうの」
「ああ、山ほどいたさ」
「じゃあ──」
「それでも、俺は歌1つだけを武器にした。俺が作った、俺だけの歌で、向こうで歌い続けたんだ」
歌を武器にするというのは、別に珍しいことではない。それは、杏も彰人も共通の認識だった。そのために自分だけの曲を作るというのも、何ら不思議なことではない。
だがその直後に夏夜から発せられた答えによって、その認識は生温かったということを2人は思い知ることとなる。
「そして俺は、その曲を作るために──『作曲ができる自分』を全部殺した」
「えっ……?」
「は……?」
驚愕で思考が停止した2人をよそに、夏夜は言葉を繋いでいく。
「コード進行の引き出しも、展開のパターンも、耳に残る構成も。『こうすれば聞いてもらえる』とか、『これなら面白くなる』って感覚を、全部削り取った」
まもなく、再起動した杏が思わず身を乗り出す。
夏夜の、自分の兄の作曲の才能を、よく知っていたからだ。なのに目の前の兄は、それをすべて殺したという。
「そんなことしたらもう、曲を作れないんじゃ……」
「そうだな」
迷いも淀みもない肯定が、杏の心を貫く。
「もう、
淡々と語られる事実に、その場の誰もが言葉を失う。気付けば、店内の空気は完全に凍り付いていた。
当然だ。ただ1曲を作るためだけに、自分の持つ才能すべてを破壊する。──誰が聞いても、正気の沙汰ではないと答えるだろう。
「俺は世界と渡り合うために、
「……それって」
喉が乾く感覚すら忘れたまま、彰人は夏夜に絞り出すような声で尋ねた。聞きたいことがあれほどあったはずなのに、今の彰人の頭からそんなことはすでに吹き飛んでいた。
「怖く、なかったんすか」
「そりゃ、怖かったさ」
迷いのない、正直な答え。あまりの答えの速さに、彰人は顔を上げる。
夏夜は遠い何かを、あるいは過ぎ去った時間を見つめるような眼をしながら、淡々と語った。
「分かるんだよ。曲のフレーズが出来上がるたびに、自分の中の才能ってやつが消えていく。形にはなってないけど、理解できるんだよ。でもそうやって曲の半分ができた時には、もう戻れないところまで来ていたし、覚悟も決めてた」
杏は、言葉を失ったまま、兄を見る。
──何が言いたいのか、理解できた。できて、しまった。だからこそ、背筋が冷える。
「結果として俺はその1曲を残すために、10曲……いや、100曲分の才能を捨てた。傍から見れば、頭のネジが外れたバカだろうな」
そうして夏夜は、自分の進んできた、選んできた答えを静かに締めくくる。
「でも、それが俺の選んだやり方だ」
誰も、すぐには言葉を返せなかった。特に彰人にとっては、衝撃的な話だった。
──才能を持たず、それでも抗っている人間を知っているからこそ、彰人は目の前の青年のしたことを信じられなかった。
(……才能なんて、喉から手が出るほど欲しい奴がいるはずだ。コイツは、それを、切ったのか)
だが、彰人は夏夜を侮蔑する気にはなれなかった。いや、できなかった。いたずらに才能を捨てたのではなく、才能を使うために才能を切り捨てたのだと、心のどこかで理解ができたからだ。
杏は、唇を噛みしめたまま動かない。ようやく出た声は、震えていた。
「そんなの、覚悟って言葉で済ませちゃダメでしょ……?」
「当然だな。一歩間違えれば自殺行為だ。だから誰にも勧めないし、推奨なんてできないさ」
夏夜は冗談めかしたように少しだけ笑いながら、話を締めくくる。だがそれを冗談だと笑い飛ばせるような人間は、この場には誰もいなかった。
しばらくしてからある疑問を口にしたのは、意外なことに謙だった。
「……で、その曲は? なんて名前なんだ?」
その言葉を機に、注目が夏夜に集まる。夏夜が、自分の才能すべてを使い果たして作り上げた曲。興味がわかないわけがない。
だが夏夜はその注目を意に介さないように、ただ一言だけ答えた。
「──たぶん、聞いても分からない」
──「聞いても分からない」。
その答えを理解するのに、杏と彰人は相当な時間を費やした。フリーズする杏たちに対し、謙が静かに質問をぶつける。それに対して夏夜は前の言葉に付け足すように答えを語った。
「曲名がない、ってことか?」
「いや、それも違う。曲名はちゃんとある。けど──本当の曲名を知っている人間はほとんどいない。俺を含めてせいぜい3~4人ってとこだ」
その解に対して謙がなんとなく理解を示すような反応をする傍らで、杏は相変わらず停止している。彰人はどうにか自分を取り戻すも、訳が分からなくなってしまい、我慢できず夏夜に尋ねた。
「……どういうことっすか?」
「向こうのストリートで生きてる人間なら、歌詞はみんな知ってる。絶対聞いたことがあるだろうからな。でも、なんて名前の曲か誰も知らないんだ。当然だな、曲名なんてわからないんだから。検索なんてできたもんじゃない。それに俺はこの曲を公表してない。『公表してない曲を歌ってはいけない』なんてルールはないわけだからな。そんな理由があるから、歌詞で調べようとしたところで出てくるわけもない。だからこの曲を聞いた奴らが勝手に名前を付けてる。そのせいで、ますます情報が錯綜する」
その言葉の重みは、計り知れなかった。夏夜が自分の才能を潰してきたという話を聞いた後ということもあり、余計にその言葉は重く感じられた。
「もちろん『言え』って迫られたこともある。でも、そんな奴には俺は絶対に言わないって決めてるんだ。──無理強いして聞いてくるような輩に、この曲を、俺の生き様そのものをひけらかしてやりたくはないからな」
それだけ言って、夏夜は話を締めくくった。
白石夏夜という人間の生き様すべてを込めた、無名の曲。それがどんなものなのか、その場の誰も想像することはできなかった。
────────
やがて、彰人が店を立ち去った後。
店内の照明が、少しだけ落とされた。誰もいないカフェの中で、親子3人が静かに向かい合う。謙も、夏夜も、杏も、誰もすぐには口を開かなかった。
永遠に感じられる沈黙を破ったのは、杏だった。
「……兄貴、言ってたよね」
その言葉は普段の陽気な杏からは想像もつかない程に、感情を抑えた、静かなトーンで発せられた。
「世界がどうとか、歌がどうとか」
「ああ」
「……それについても聞きたいことはあるけど、正直、今はどうでもいい」
夏夜の視線が、杏に向く。杏はなおも、鋭い視線を夏夜に向け続けている。2人の視線が、確かに交差した。
「私が一番ムカついてるのは、
その一言は、異様な重みをもって夏夜にのしかかった。杏の僅かに掠れた声が、カフェの中を静かに反響する。
「置き手紙も、連絡も、説明もなんもなかった。ある日起きたら、突然兄貴がいなくなってた」
謙と夏夜は、それを黙って聞いている。
杏の言葉を、謙は止めない。遮らない。夏夜がある日突然消えた後の、杏の慟哭を、茫然自失ぶりを知っているから。
「私さ。兄貴が死んだんじゃないか、なんて思った。事件に巻き込まれたとか、事故に遭ったとかで」
「……!」
その言葉に、空気が張り詰める。
杏がそんなことを言うことを想定していなかったのか、夏夜の目が、僅かに見開かれたのが謙には分かった。
「でも、誰も何にも知らなくて……生きてるかどうかも、分かんなかった。だから、兄貴が世界で戦ってきたとか、世界の頂点に立ったとか。……そんなの、今はどうでもいい。私が言いたいのは、1つだけ。──私にとっては、黙っていなくなった兄貴が全部だったってこと」
沈黙。長い、静かな時間。杏は怒りや悲しみといったあらゆる感情を込めた瞳で夏夜を見つめ、夏夜はただ黙って、杏を見ているだけだ。
謙が、ゆっくりと息を吐いた。
「……杏」
「止めないで、父さん。これは、私が言うことだから。言わなくちゃいけないから」
杏の覇気すら感じられるその声に、謙は黙って頷いた。
しかしそこで、今まで黙っていた夏夜がポツリと口を開く。
「……そうだな。お前が正しい。全部、全部」
杏は、少し目を見開く。自分の兄は、白石夏夜という人間は、昔からどこか素直じゃないところがある。それに加えて、杏と喧嘩になると頑なに自分の非を認めようとしないのだ。少なくとも、杏の記憶の中の兄はそういう人間だった。
そんな兄が、率直に自らの非を認めたのだ。驚くのも無理はないことだろう。
「言い訳はしないし、できっこない」
「……っ」
「ただ、止められたくなかったんだ」
夏夜は、静かに言った。
「アメリカに行くなんて言ったら、絶対止められるって分かってた。親父ならともかく、杏は絶対止めると思った。だから、夜逃げ同然で家を出た」
「……勝手だな」
「承知の上だ」
それは夏夜が日本を発つ前に行った、最大級の我が儘だった。謙が鋭く、夏夜の行為を咎める。夏夜はそれに対して文句を言うことすらせず、自分の行いの勝手さを肯定した。
それは開き直りとも、過去の懺悔ともとれる返事。それを聞いた杏が、低く笑った。
「……ほんと、最っ低」
「そうだな。妹ほっぽり出して1人だけで出ていった、最低の兄貴だ」
杏の率直な罵倒に対し、夏夜は苦笑しながらどこか自嘲気味に言葉を続ける。
「でも、出ていかなきゃ……多分俺は一生後悔してたと思う。世界を知ることもなかったし、自分のやりたいこともできなかった。それだけは絶対に間違いない」
「……兄貴が後悔してないってのは、分かったよ。それでもさ──残された方の気持ちも、考えてよ。何にも言わずにいなくなっちゃうなんて、ひどいよ……!」
「──返す、言葉もないな」
杏の言葉に、瞳に、すこしずつにじみが生まれていく。それを見た夏夜は、深く息を吐いた。そして、杏に向かって頭を下げる。
「……すまなかった」
短い言葉。だがその謝罪は、一切混じり気のない本心から出た謝罪の言葉だった。
杏は、すぐには答えを返さない。しばらくの静寂が、カフェの中を包む。程なくして杏は、絞り出すように言の葉を紡いだ。
「……今更謝られても、どうすればいいのか分かんないよ」
「分かってる」
「でも……帰ってきたのは、本当のことだよね」
「ああ」
「……だったら」
そこで、言葉が切れる。その後の言葉は、それまでの過去や感情すべてを乗せたような声色から放たれた。
「今度は、いなくなるなら言って」
真っ直ぐな目が、夏夜を捉えて離さない。杏の視界が、どんどん滲んでいく。
「どこに行くか分からなくてもいいから、言ってよ……!」
「……いなくならねえよ」
夏夜はそれだけ言うと、杏の頭を静かに撫でた。
夏夜は潤んでいく杏の目を見たことで、自分がこの場所に残してきたものが、どれほど重いものだったのかをようやく理解した。
あまりにも遅すぎた理解。だが、2人を繋ぐ糸がもう一度繋がるには十分なものだった。
「あ……」
「──やることは全部やったんだ。だから戻ってきた。もう、勝手にいなくなりはしないさ」
切れていた線が、3年の時を経てやっと結び直される。杏は目に涙を貯めながら、一言だけ、小さな声で言った。
「……ずるいよ」
頭の上に乗せられた手は、杏の記憶よりずっと大きくなっていた。ここで杏はようやく、強がりも、怒りも──胸中に込めてきたあらゆるものを──少しだけ下ろすことができた。
それを見た謙が、静かに立ち上がる。
「……コーヒー、淹れ直すか」
「相変わらずこういう時不器用だよな、親父は」
「うるさい。黙って飲め」
謙が淹れたコーヒーを、夏夜が口へと運ぶ。夏夜が軽口を飛ばし、謙が呆れたようにそれに応える。数年ぶりの、家族の団欒。それを見た杏の顔に、少しだけ笑みが戻る。
その笑顔は今日初めての、自然なものだった。
一応、時系列的には「STRAY BAD DOG」の少し後です。
世界観についてはキャラ紹介の一覧で開示しています。
【白石夏夜】
妹に黙って自分1人で勝手にアメリカに行った挙句そのアメリカのストリートで頂点に立ってしまった青年。設定が根本から異なっており、こちらの世界ではすでに成人済み(たぶん20もしくは21歳)。
世界を相手に戦っていく中で、ストリートで歌ううえで必要な才能を残しそれ以外の才能を自らが戦うための燃料にしてしまった。夏夜は
本来であれば「作曲」の才能を失う必要は無く、10曲でも100曲でも人の心を震わせる曲を作って歌えたはずなのだが、彼はその才能すべてをただ1曲を作るために使い果たした。その結果として、ただ1曲だけを武器にすべての挑戦者を真っ向から叩き潰す怪物が誕生してしまっている。
恐らく筆者が想定しているパラレル時空の夏夜の中でも1,2を争うレベルの狂人。それでも、「音楽を楽しむ心」は彼の根幹として残り続けている。
【白石杏】
ある日目覚めていつものように兄を起こしに行ったところ、大好きな兄が置き手紙すら残さず蒸発していたカリスマシンガー。
兄が消えた後は三日三晩引きこもって泣き続けた。友人たちの助けもありどうにか立ち直るも、「兄を思い出してしまう」という理由でしばらくストリートから離れてしまっていた。その後ストリートに復帰こそしたが、ふとしたことで兄を思いだしてしまうという割と綱渡りのような状態だったので、ベストパートナーであるこはねがいなかった場合割と危なかったかもしれない。
この世界の杏は夏夜が原因で、「近しい人がいなくなること」が強烈なトラウマになっている。つまり……そういうことである。
【東雲彰人】
筆者の筆力不足が原因で、途中からただパンケーキを食べに来ただけの存在になってしまった。
「才能を使うために才能を捨てた」という夏夜のやり方に戦慄しながらも、同時に心の何処かで納得している。また今回の一件以降、夏夜のパンケーキ目当てにカフェを訪れることが多くなる。
なんだかんだ言いつつも夏夜とは気が合うため、歌を通して少しずつ理解を深めていく。やがて彰人は夏夜との練習、ひいては「戦い」を通して、世界という遥か高みへ至るための何かを掴んでいくこととなる。
【白石謙】
実は夏夜がアメリカに行くことを前もって知らされており、杏に黙っておくよう念を押されていた。
謙はそれを律儀に守っており、夏夜が帰ってくるその日まで口に出すことはなかった。音信不通だったことについては最初こそ文句の1つか2つ言ってやろうと思っていたが、杏が代わりにキレたので呆れの感情を出すにとどまっている。
それはそれとして、いつの間にか息子が自分をはるかに超えるパンケーキの腕を身に着けていたことに対しては内心悔しさを覚えているとかいないとか。
※こはねと冬弥の2人に関してですが、未登場ということもあり説明を割愛します。申し訳ありません。
ただし原作と違い、家庭環境が違うことから冬弥と夏夜の顔馴染み設定が消滅しています。
パラレルの次案を選ぶとしたら、どれにします?
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約束された気絶のみのり(みのり)
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夏夜と愛莉、ドラマへの挑戦(愛莉)
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桐谷夏夜、伝説の兄妹オンステージ(遥)
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星灯らぬ夜、眠りを知らず(完全新規)