星の翼 短編集   作:スクワイア

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ボルゾイで一本…というよりCMYK口刂星導使で書きたいなぁという感じで書きました。
ボルゾイとシグナスが、争い合う前のユナイテッドシティに赴き…?といったストーリーです。

思いついたもん書いてるのでテーマとかブレブレ…まぁ雰囲気でお読みください!
ちょいシリアス?

あといつも通りハイパーアルティメット妄想世界観浅読み捏造設定のオンパレードです!

それではどうぞお読みください~!


ボルゾイと同じ歩幅の星導使

「ユナイテッド・シティにようこそ。シグナスさん。元気そうでなによりです」

「皆、久しぶりね」

「ガルザからは、変わらずにお前か」

「毎度思うけど、こちらはそれなりの役者を出すのに、元属州民をよこすなんて、意味不明よねぇ」

 

余所行きの服装に身を包んだ女性が10人弱、同じ建物に集まっている。

封権国同士の連合を形成しているユナイテッド・シティは、国同士での会談が多い。

ここは国代表者が一体一で使うには大きく、各州が集まるには狭過ぎる、小〜中規模の議事堂だ。

この場にいるのは、ユナイテッドシティの有力者とガルザからの使者役の星導使だ。

 

「忠誠心の審査と人材喪失リスクの合理を突く…と言った、いかにも帝国らしい人選よ。咲迦殿」

「知ってるわ。ほーんと変わらない」

 

懇談会に出席した事のあるメンツなら知っている事柄を、わざわざ皮肉げに小言として言った咲迦へ、真面目に返すシグナス。

今日は、新規の参加者が多い。言う必要のなかった言葉はそれらに向かってのパフォーマンスに近い。

 

「にしても器用なもんだぜ。アタイだったら、ぶっ飛ばしちまうのになぁ?」

 

皇帝を。

 

全員の耳に注釈の副音声が付くようなパラスの発言に多くの人間は苦笑いを浮かべる。

その中にはシグナスも含まれている。

言うのは簡単、やるのは何人(なんぴと)も不可能なことの実現。

…しかしこの女ならやってしまいそうな、実力を伴った雰囲気があるから余計に笑いを誘っていた。

 

器用というのは、鬱憤が溜まるだろうに、もうガルザに併合された亡国の国民達が、一等国民として扱われるように立ち回り続けていることに対してだ。

 

「パラス卿。ユナイテッド・シティとガルザ帝国は同盟とまでは進んでないものの、不可侵を結んでいる間柄ですよ?あまり過激な発言は…」

「わぁってる。ジョークだジョーク!」

 

アリスがパラスの無遠慮な発言を咎めたが、軽い調子で返される。

 

ユナイテッド・シティとガルザ帝国の関係は非常に繊細な状況の元に成り立っていた。

ガルザ帝国は覇権的拡張主義を全面に押し出した国家戦略を取っており、支配圏を広げようと様々な小国に侵攻し、星導テクノロジーを応用した圧倒的な戦力で飲み込み続けていた。

 

現在は大規模な拡張の反動か、戦後処理に手間取っているようで、目立った作戦は行われていない。

 

なお、ユナイテッド・シティとは、まだ全面戦争に発展していない。

この二勢力の国力はほぼ互角。帝国からしても油断のならない相手と見なされている。

ガルザ帝国の戦力は個々の戦闘能力は並で物量を重視。ユナイテッド・シティは戦闘能力の高い兵士が多いが、数が劣る。また、領州単位で軍を持つため、指揮系統が複雑。

 

通常戦力的にはガルザ帝国が優勢ではある。しかし、星導使戦力を含めると話が変わってくる。

 

星導使戦力では、ユナイテッド・シティが優勢。

天使とも渡り合える星導使は、数が少ないものの一騎当千。通常戦力では太刀打ちできない存在だ。

この人数が、ユナイテッド・シティは頭ひとつ抜けて多い。

よって、二国は互角であると評価されていたのだった。

 

帝国も易々と攻略できる相手ではない。

 

その拮抗がこの奇妙な交流会を成り立たせていたのだった。

 

 

パラスがジョークだとジェスチャーを交えて発言を繕った後、ロビーの時計が時報のチャイムを鳴らした。

 

「さて、定刻ですね。人も集まったようですので、皆さんこちらへ」

「そーだな。さっさと済ませちまおう。…マジで近況報告だけだかんな〜」

「面倒だけど、政治的なポーズを取るだけで平和のまんまなら何よりよねぇ〜」

 

アリスが先導し、会議室へとユナイテッド・シティの星導使がぞろぞろと入っていく中、シグナスは立ち止まって、今日の付き添い人に声を掛けた。

 

「それじゃ、私は話してくる。ボルゾイ、ここで待機…暇なら遊んでてもいいわよ」

「はっ、了か─…護衛の任務は…?」

「今から会議終了までその任を解くわ」

「!?」

 

シグナスの付き添い、護衛を任務として、ボルゾイはユナイテッド・シティに来ていた。

彼女は、初めての異国の土地で子供らしくワクワク、護衛任務を任された軍人らしくピリピリ、それら半分ずつを雰囲気としてまとっていた。

しかし、外国の星導使を複数人目の前にして、その全員が黒い猟兵団の面々と遜色ない強さであると感じ取り、警戒心を逆立てていた。

 

そもそもシグナス程の星導使に護衛が必要。という任務の内容で、より一層気を張っている状態。

 

「き、危険なのでは…!?」

「現在、帝国はユナイテッドシティに戦争行為も工作もしていない。そして、私や貴女を捕らえた所でシティ側にメリットもない。つまり安全」

「は、はぁ…」

 

シグナスの淡々とした説明にボルゾイは相槌を返すが、今ひとつ護衛として連れてこられた訳が、分からくなっていた。

ユナイテッド・シティの代表者星導使達をどうにか不意打ちする、と言われていた方がまだ納得できる。

 

「それに…彼女たちは私の出自を知っていたでしょう?」

「…」

 

シグナスは元々、ロセスという国の星導使。

属州化の後、帝国の一領土になった国が出自だ。

猟兵団の仲間としてボルゾイも経緯を知っている。

 

「これまでの会議も…無視しても構わないはずなのに、帝国が私を除去しないよう、有意性を示せるように参加してくれている。…皆優しいのよ」

 

通常、元敵国の人間を兵役につかせるのは、帝国が貴族制の排他的側面を持つ権威主義国家であることを考えれば異常だ。

ましてや、最上級の星導使で構成される特殊部隊、"黒の猟兵団"のポジションにつかせるなど、任務の重要度を考えれば、どの国家でも避ける行為をその帝国が行っているのだ。

これは、星導使として優秀なシグナスを安全に、かつ従順に運用するための施策を帝国が巡らせているから実現できている。

 

「…」

 

ボルゾイは静かに聞き、自分にも当てはまる部分がある考えた。

帝国は権威主義的だが、こと軍事に関しては実力主義を徹底している。

そして、示した実力に伴った御恩を与える。シグナスであれば、亡国の民の純粋な帝国民と同等な権利の保証。

 

ボルゾイは純粋な帝国民ではあるが、孤児だ。

その立場は何時、何処でも危ういものだ。

もし、なんの力も持たない子供で、帝国が実力主義ではなかったら…家族の温かみなど感じれない場所にまとめられていたかもしれない。

 

「出発前に伝えなかったのは悪かったわ…。気の抜いた様子を団員以外に見られると面倒なのよ」

 

軍人が軍服を着たままヘラヘラした様子で外国へ向かっていたのなら不思議がる。

 

ボルゾイは、浮遊ビークルでの移動時の様子を思い出していた。

シグナスは確かに出発して帝国を出るまでは、軍人の気配を出していたが、国境を超えたあたりから薄れていた。

 

先程のユナイテッド・シティの面々と話している時など、猟兵団の仲間内で雑談している様な気安さを見せていた。

 

「…随分と気を張っていたでしょう?ちょっとした休暇だと思っていいわ」

「はい…了解しました」

 

指示を聞き入れ、平常に務めてシグナスを見送った。

とは言え、土地勘も何も無い国で少し自由にしてろと言われても不安が勝る。

ボルゾイの頭の中では、飼い主にお留守番を言い渡された飼い犬は、こんな気持ちなのだろうかというのが浮かんだ。

 

そんなボルゾイに、後ろから近付く3人の人影。

猟犬たるボルゾイは、特に隠されていない気配を感じ取り振り返って相対した。

 

「おーし、インソツも居なくなったし、仲良くしようぜぇ」

「ふわぁ、やっぱり僕らと同じくらい…」

「ねぇねぇ!君も星導使なんでしょ!?星導器はどんなの使ってるの!?」

 

その3人は極めてフレンドリーに話しかけた。

 

「おいおい!まずは自己紹介からだろ?」

「え、さっきボルゾイって…」

「アタイらんだよ!初めましてで困るだろうが!」

「…」

 

信号機みたいだな。

 

ボルゾイは目の前に並んだ赤、黄、青の頭を見ながらそう思った。

赤くボリューミーな髪の女の子はこういう状況に慣れているようで、リーダーシップ…というよりオカン気質を発揮して、青髪ミディアムショートの娘を窘めていた。

 

「んじゃアタイから、ブリーカーだ。ストリートファミリーに世話になってる」

「ぼくはキャッティっていいます!ローランの騎士団員です!」

「ワタシはノーラ!ドーリアの戦士だよ!」

 

順番に、そして矢継ぎ早に名乗る。

全員、陣営はユナイテッド・シティではあるが所属が違った。

ボルゾイは、今日集まっている上役の星導使達とセットな事に気づいた。

 

「へへっ別に取って食いやしねぇよ?…名前は?」

 

その意味を考える前に、ブリーカーが緊張をほぐすように茶化して、名乗りを促してきた。

 

「…ボルゾイ。ガルザ帝国軍、黒い猟兵団に所属している」

 

思案を辞め、ボルゾイは名乗った。

しかし、内心は勢いのまま猟兵団所属を付け加えたことに、少しまずいかと後悔した。

こういった時、猟兵団へ侮りの目線を受けるのが常だったからだ。

 

子供を精鋭とする程にガルザは人材不足なのか。タカが知れる。自分が変わってやる。など。

それらが思いやりで吐かれたことはなかった。

 

ボルゾイは部隊を馬鹿にされると、どうも抑えが効かなくなってしまい、そう言い放つバカ共を全て捻ってきた。

 

いつもなら身内模擬訓練だったと事後処理されるが、ここは外国。

手を出してしまえば、連れてきたシグナスにも迷惑がかかってしまう。

ボルゾイはなんと言われようと我慢するように心構えたが…

 

「ほぉん。エリートなんだな!」

「よろしく!」

「やっぱりそうなんですね!?」

「!?」

 

皆、害意なく反応を返してきたことに驚いた。

 

名乗りのあと、もっとも大きく反応したのは、やわらかそうな猫耳のついた女子、キャッティだった。

興味津々のと顔に書いてあるままに身を乗り出し、ボルゾイに顔を近づけている。

 

「そう…だけど…?」

「わ〜!やっぱり僕くらいの歳でも精鋭部隊でバリバリ活躍してるんですね!…そう考えるとモチベーションが上がります…!」

「???」

「アハハ!キャッティは最年少の騎士団員で──」

 

キャッティの要領を得ない発言と興奮にハテナを浮かべたボルゾイに対して、ノーラが補足した。

纏めるとキャッティはローランの精鋭部隊である騎士団に歳若くして入団。

成人団員達と比べて遜色ない…というかトップのアリスに迫る能力を持つものの、歳のせいか何かと世話を焼かれるし、マスコット的な扱いは収まらないし、etc…などの扱いを受けているらしい。

 

フラストレーションと言うには弱いが、センチな部分を刺激され続け、クサってしまいそうだったとの事だ。

 

それが、こと軍事に関しては妥協しないガルザ、その精鋭部隊員に同年代の存在がいることを知れて、気持ちが前向きになれたという意味だった。

 

ボルゾイは話を聞き、たぶん歳のせいだけではないだろうなと思った。

 

この短い間でも、キャッティの人好きのする雰囲気は驚愕的だった。表情、目線、仕草、ピコピコ動く耳、上品な程度に振られる尻尾。全てにつくろった感じがなく、自然。

 

捻くれた解釈をしたくても、不思議と悪感情が湧いてこない。

確かに、この調子で毎日過ごすとなったら、本人が望まない庇護欲に悩まされそうだな。と名も知らぬ騎士団員にボルゾイは同情した。

 

「2人とも精鋭部隊かぁ、凄いよね」

「むっ。それをいうならノーラちゃんだってすごいんですよ!」

「いやいや、ワタシはただの平戦士でして…」

 

ノーラは謙遜した言葉を言うが、キャッティが補足してくれることを知っているのか、なんだか得意げだ。

そんな様子を知ってか知らずか、キャッティはボルゾイの方を向いてノーラについて語り出した。

 

「いいですか?ノーラちゃんはね──」

 

ドーリアの戦士部隊で戦争機械駆除作戦をする時は、いつも一番槍を勤めていて、スコア順位は一位か二位。

ものすごい力持ちで、闘い方は、身の丈程に長くて分厚い刀身の特大剣を振り回し、敵の攻撃をものともせずに突撃して粉砕していく脳筋スタイル。

得物の特大剣は射撃も変形も可能でそれはなんと自作だと言う。

 

ボルゾイは驚愕した。

ガルザで星導器は、バベルと技術連携を取りながら専門の技術士官が設計、製造し、各部隊に支給されるのが一般的だ。

性能は、ガルザの設計思想で量産性が重視されて、上等ではない。

猟兵団では特別にカスタムしたり、特注品や優良品を装備したりするので他国の星導器と劣らないものにまでなっている。

 

ボルゾイは、他国では個性を重視する星導使運用のことを知っていたが、自作までしていることに驚いたのだった。

 

キャッティがノーラの紹介を終えたところで、ノーラがなにか閃いたような顔をした。

 

「そうそう!ガルザの星導器見せてよ!あ、ワタシの断空剣も見せてあげる!」

「出す場所気をつけろよ!?あと床ぁ!」

「わーかってるって!取り落としたりなんてしないよ!」

 

ノーラが星導器を召喚しようとして、ブリーカーは咄嗟にノーラに待ったをかけた。

何が出てくるか知っているようだ。

 

ここは鍛錬所でもなんでもない議事堂のロビーなのだが?

ボルゾイがそう突っ込む前にノーラの手元が光だした。

 

現れたそれは、剣と言うには あまりにも大きすぎた。

大きく ぶ厚く 重く それでいて精巧に組み上げられた特大剣だった。

 

キャッティの談の通り…というか誇張してるのでは?と思っていた武器が想像以上のサイズで、目の前に現れると無表情に定評のあるボルゾイでも驚いた表情を見せた。

見た目通りの超重量武器。それを水平に支えるノーラの膂力にも驚愕する。

 

「ふふ、持ってみる?」

「…やめておく」

 

見せてもらっていて、あからさまに興味のないしぐさをすると失礼かと思い、刃の厚みや砲口を確かめていると、ノーラからそう提案された。ボルゾイは断った。

 

ボルゾイでも頑張れば持てないことはないだろうが、万が一落としたら、鋭く研がれた刃が高そうな床材をいとも容易く裂き、砕いてしまうだろう。

 

ノーラは、冗談!と笑う。

 

「変形は見せないんですか?」

「そうだね!特別に見せてあげる!まずは拘束用の開閉機構!」

 

キャッティの催促に答えるようにノーラは大剣を操作する。

がしょんと両刃が前進して開き、砲身が露出した。

 

…これでどうやって拘束するのだろうか?

ボルゾイは尋ねた。

 

「…どう使うの?」

「このまま突撃して、目標をキャッチする」

「ほう?」

「あとは引き金を引くだけ!」

「は?」

「こうすれば絶対に外さないでしょ?」

「それは間違いないけど…」

 

エグくないか?少し引いてしまうボルゾイ。

 

「そしてここから変形!機関銃モード!」

 

ボルゾイが引いてるのにも関わらず、ノーラはさらに断空剣を変形させ、拠点防衛用の重機関銃めいた形になった。

展開した巨大な左右の刃が、防楯とバイポッドとして機能するようだった。

…刃が床を傷つけないように浮かせてある。とんでもない膂力だ。

 

「このまま相手に向ければ穴あきチーズが作れるようにしたんだ」

「…」

「どう?すごいでしょ?」

 

なんかもう常識外すぎて、参考にならない逸品にぽかんと口を開けたボルゾイ。

その様子を見て満足し、アハと笑いノーラは星導器を格納した。

 

そしてワクワクと目を輝かせてボルゾイを見つめている。

言葉を出さずとも星導器を見せてと催促しているのがわかる。

 

ボルゾイは軍事技術の保護に詳しくないが、そう易々と武器を見せるのは良くないことは知っている。

ろくにカスタムもしていない量産品の正式擲弾銃とナイフだが、腐っても星導器である。

しかし、目の前であんなぶっ飛んだものを見せられてしまっては、あらゆる星導器が霞む。見せたっていいか。みたいな気持ちになった。

なお、断空剣と比べて、シンプルな構造のガルザの物をみせるのは、ちょっと申し訳ない気すらしてきていた。

 

「どうぞ」

「おお!」

 

ボルゾイは右手に擲弾銃、左手にナイフを召喚してノーラに手渡す。

 

「ふ〜む、上下2連召喚装填式…滑腔銃身で弾種の幅を広くしてるのかな…すっごい割り切った設計だねぇ。撃鉄機構以外殆ど前装式短銃だ!」

 

まず、ノーラは擲弾銃をぐるぐる回して素早く確認した。

次にナイフを見る。

 

「こっちはボウイ系で至って普通…。あいや、スタンギミック付きか。ナイフの方が先進的なの面白い…これどう使うの?」

「普通の使い方以外なら…複数本を広がるように投げる。…今は3本が限界かな」

「この大型ナイフを3本!?…器用だね」

 

ボルゾイからしたらパッと見で大体の機能を読み取っているノーラの方が器用だと思われる

 

「ありがと」

 

そう言ってナイフと擲弾銃を返す。

ボルゾイは返して貰う際にノーラの顔を見たが、満面の笑みだった。

そんなに面白いものだったろうか?と首をかしげた。

 

「どんな星導器でも国の差みたいなのが見て取れて面白いよ!星導使運用の違いとも言えるか…」

 

ノーラ曰く、ユナイテッド・シティはオーダーメイドの星導器が主で個人の技能を伸ばし特化させるスタイルが多い。

バベルは新技術を盛り込んだ星導器に、星導使が合わせていくようなものばかり。

エデンや出雲、東洲の星導器は、特筆するような代物ではなく個人の星導エネルギーを本人の望む形に出力するための補助具といった扱いらしい。

ガルザは…、単純な機構の星導器を個人のスキルで昇華させる。

単純な分より多くの星導器を作って数を運用させる…そういった思想を読み取っているらしい。

 

「かー小難しい話してんなぁ。ていうか、アタイ以外軍属か」

 

得意げに語るノーラの話の区切りを狙って、ブリーカーが口を挟んできた。

 

「お前らが働けてるんだ。日稼ぎ雇われを辞めて、身を固めるのもありかなって思えてくるぜ」

 

ブリーカーはどうやら星導使ではあるものの、明確な武力集団に所属しているわけではないらしい…とボルゾイは読み取った。

 

では、ストリートファミリー所属とは…?

そもそもその組織をよく知らない…。そこで働いているわけではない…?

口ぶりから、別の仕事をしなければならない程度組織で…でも、この会議に呼ばれるくらいには、あの角と羽、尻尾の生えた、エミカと呼ばれる星導使が重要で…?

 

ボルゾイが得られた情報を頭の中で整理しようとするも、まとまり切る前にブリーカーは面々に尋ねかけていた。

 

「なぁ、給料ってどんぐらい入るんだ?貯金も余裕か?」

「ボクはお小遣い制ですね。基本、騎士団の見習いは装備衣食住が対価です!あ、"褒美"を賜ればまた話が変わりますね!」

「ワタシは歩合制。でも星導研究とか断空剣の改良とかに殆ど使っちゃってるから貯金はできてない!」

「マジかよ。参考にならねー」

 

質問の答えは、おおよそ一般人の給与感覚とは違うものだった。参考にはならなそうだ。

ちら、とブリーカーがボルゾイを見た。

流れで給料の話をしたが、初対面で出す話題じゃなかったな…。と反省の色がブリーカーに伺える。

 

ボルゾイは話せそうな内容なので乗ることにした。

 

「私は月給が口座に振り込まれている」

「おっガルザは普通か」

「…らしい」

「おっと?」

「上官に預かって貰ってる」

「えぇ…?それ大丈夫なのか…?」

 

ブリーカーは、悪い大人に騙されているのではないかと頭をよぎったようだ。

ボルゾイは、黒い猟兵団の正式隊員に任命された時、スノーウォルから給与形態諸々を教えられたが、通帳を見ることなく預かってもらっていた。

信頼の置いてる大人に任せているつもりだが…ブリーカーは、心配の多分に含まれた訝し目な雰囲気だ。

 

「買い物とかどうするんだよ…」

「大体同行の上官が払ってくれる。後で口座から引いてると聞いた」

「信頼してんだな? …まぁ、額は見といた方がいいぜ?」

「…わかった」

 

そこまで心配してくれるとなると、なんだか気になってきたボルゾイ。

後に確認した時、一回も引き出された形跡ないことに首を捻ったのは別の話──。

 

「てか?親に任せてねーつーことは、孤児か?」

「ッ!?」

 

突然の無遠慮な物言いにボルゾイは嫌悪感を抱いたが──

 

「なーんだ!アタイら似たもん同士だったか!」

「…え?」

 

続く似たもの同士という言葉と、ブリーカーの身の上は分かっていて当然と言った態度に今度は困惑した。

 

「って、あ〜…、ユナイテッド以外じゃあんま知られてねぇよな…ストリートファミリーってのは、まぁ…孤児院ってやつだ。アタイも孤児だぜ?」

 

要領を得ていない様子のボルゾイに対して、ブリーカーは少しバツが悪そうに、頭を掻きながら弁解した。

同族意識に気づいて、そのままつい言ってしまった。というのが、先程の発言の訳だとボルゾイは理解した。

ブリーカーはそのまま、ストリートファミリーについて説明を続ける。

 

「エミカねぇちゃん…角と翼と尻尾が生えた星導使いたろ?あの人がうちらのビッグママ。…育ての親をしてくれて、ガキを狙おうとするイカれ野郎からも守ってくれてる。」

 

ボルゾイが先程同じ空間にいた時に感じた実力は、確かに天使が相手でも通用するレベルだった。

しかし、ボルゾイにはまた新しい疑問が浮かんだ。

 

いくら強いとはいえ、なんで孤児院長が国代表の話し合いに?

 

「訳わかんねぇって顔してるな!大丈夫だ!アタイもわかってねぇ!」

 

この会場に呼ばれている本人すら、把握していないらしい。

とは言いつつも、ブリーカーに思い当たるところがあったようだ。

多分。と続けて、

 

「アタシらが生まれる何十年も前にストリートファミリーはできてたって話だ。それとな…」

 

耳を貸せというジェスチャーの後、つついとボルゾイに近づいて耳打ちする。

 

「…あんまり大きな声で言えねぇけどよ?エミカねぇちゃんは創設者らしい」

 

思わず耳を離してブリーカーの顔を見るボルゾイ。

驚いただろ?といった顔をしている。

 

若すぎる…ボルゾイから見て、更年にはとても見えなかった。

耳が尖っていたからもしかしてエルフ…いや、エルフに角は生えない…ボルゾイの混乱は深まるばかり。

 

「そんなんで顔が広いもんだから、ここに呼ばれてるんじゃねーかな?」

「なるほど…」

 

小さな秘密の暴露を聞いたボルゾイの反応に満足した笑みを浮かべた後、ちょっと真剣な表情になる。

 

「…アタイが分からなかったくれぇだし、大丈夫そうだな!」

「…。なにが?」

 

既に結論づいたようなブリーカーの言葉が理解できなくて、尋ねた。

 

「ああいや、お前んとこがどうこうって話じゃないんだけどな?酷い目にあってそうなら、ねえちゃんに相談するとか考えてたんだ」

 

相談の内容はおそらく、ボルゾイを何らかの方法で猟兵団から引き剥がすことだろう。

 

ブリーカーは、でもな。と息継ぎを挟む。

 

「分かんだよ。大人から良いように扱われてるガキの"ニオイ"がさ。お前からは、そういうの感じねぇ。まともに生きてる"ニオイ"だ。」

「…」

 

ボルゾイは猟兵団に拾われて、色々と世話を焼かれた思い出がある…親のように、姉妹のように、未来を考えて、学校に通うように仕向けてくれたことも…愛を受けて育ったことに疑いはない。

しかし、日々の生活で目に入る親子の姿に、時には比べてしまい、自分の境遇に腐ることもあった。

 

「猟兵団の噂なんてあてになんねーなぁ。良い親なんだろ?」

「…うん」

 

ボルゾイに不幸はあったが、親代わりの猟兵団がいて、その環境にいる自身も、まともの内に入ると、そして"家族"を良い親と言ってくれたことに何処か…胸がすいていた。

 

「…ありがとう」

「いや、踏み込んで悪かったな…」

 

また、バツが悪そうな仕草をするブリーカー。

 

「さて、しんきくせー話しちまったけど、なんかして時間つぶそーぜ!」

 

繊細な話題にちょっぴりそわつきつつも見守ってたノーラとキャッティ、そしてボルゾイに向け、雰囲気をパッと明るくさせて提案した。

 

「いいね!素手組手でもする?」

「腹筋競争しましょう!」

「こういう時は遊ぶんだよ!脳筋共!」

 

幼い時から強い意志を持ち、自ら志願して星導使として戦っている2人は、鍛錬も暇つぶしになるようだ。

 

「アタイら集まるって連絡だったろ?なんか持ってきてねーのかよ」

「持ってきてないけど」

「ボクもです!」

「脳筋共が…そうだった。集まっときは、いつもこうだった…」

「…」

 

ブリーカーは、ボルゾイを見る。首を横に振った。

ボルゾイは純粋な公務だと考えて来ている。

娯楽用品の類は持ち込んでいない。自由時間は無いと思っていたし、同年代と遊ぶなんて思いもしてなかったので仕方ない。

対して、ブリーカー達はいつものメンツで集まることは知っていたようだ。そして、持ってこないのもいつもの事のようで──

 

「しゃーねぇ、…ボルゾイ!ウィルウィンド・ベイって知ってっか?」

 

ブリーカーは、メカメカしいコマを幾つか召喚した。

 

 

───数時間後───

 

 

「そ───う──?」

「──な──!───た─、───い──」

「…ん、むぅ…」

 

エミカの少し張った声に対して、キャッティが身動ぎし、目を開けた。

 

「ふぁ…あれ?アリス様に…皆様?…わ!ボルゾイちゃん起きて!」

「…ぅん?…あ、が、ご!」

 

自分のトップの顔を見た瞬間、一気に覚醒して抱きしめていたボルゾイを激しく揺らして起こす。

 

「んぁ?なんだぁ…うお!エミカねぇちゃん!」

「…くぅ〜、ん〜。あ、パラスねぇ、おあよ〜」

 

ブリーカーとノーラもキャッティの声で目覚め出した。

ボルゾイはキャッティの揺らす手を止め、少し恥ずかしそうにシグナスと目を合わせた。

 

「おはよう…ございます…。」

「ふふ、おはよう。」

 

ボルゾイたちが寝ている間に、交流会は終わり、机の上に置いたままだったおやつや飲み物、玩具、ボードゲームは片付けられていた。

ソファから起き上がり、各々うーんと体を伸ばす最中、部屋の中でグゥと誰かが腹を鳴らす。

 

「あぁ、アタイだ。こっちは話し込んで腹ぁ減っちまったぜ。」

 

アハハとみんなの笑いが、個室に広がる。

パラスは恥ずかしがる素振りを見せずに扉に向かい、外に手招きする。

 

「おめーらも腹減ったろ?全員で飯だ!」

 

一行は場所を移し、年少年長問わない食事の席で親睦を深めた。

ボルゾイはやけにフランクに絡んで来る陣営トップ達に戸惑いつつも、交流の輪を広げていった。

 

そして、ボルゾイとシグナスが浮遊ビークルに乗りガルザ帝国へ戻る時、見送りを受けた。

 

ブリーカー、ノーラ、キャッティが、大きく手を振っている。

1日だけの親交とはいえ、かけがえのないものを築けたようだ。

 

ビークルが浮かび、速度をあげて離れていく中、姿が見えなくなるまでボルゾイは窓から発着場を見続けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

───ボルゾイ達が起きる前───

 

面々が会議室から出てきた。

数時間に及ぶ交流会は、いつも通り、乱闘騒ぎに発展すること無く終了した。

 

「今回のは長引いたなぁ」

「パラス卿…ほとんど寝ていたじゃないですか」

「ありゃ目ぇ瞑ってただけだ」

「それを…」

「まぁいいじゃーん。ほとんどがガルザの遺跡制圧予定地の話だったし!」

「アタイらんところ近くじゃねぇしな!…援助してくれってなら、ちゃんと聞いてたさ」

「…」

「フフ、こちらの貴族が他国に助けを求めることがあれば、その日は隕石が降るでしょうね…あら?」

 

会議室すぐのロビーに、ボルゾイ達の姿はなかった。

議事堂のスタッフに聞くと、全員が休憩用の個室に入って行ったと伝えられる。

 

「…あら」

「寝てるね」

 

代表者一行が教えられた部屋に向かい扉を開けると、子供達はスヤスヤとソファに体を預けていた。

テーブルの上には飲み物とお菓子、遊んでいたであろう玩具やカードゲームが置かれたままだ。

 

仲良く遊び、そのまま眠気が訪れて寝てしまったのが見て取れる。

ボルゾイはキャッティに手を捕まれ、尻尾が足に巻きついている。

 

「なんだか和みますね」

「ああ。だけど散らかってんな…しかたねぇ…片付けてやっか」

 

あまり音を立てないように、年長の面々はゴミをまとめ、玩具をしまい込んで行く。

 

「ねぇ?」

「何かしら…」

 

エミカがシグナスに静かに尋ねた。

 

「アンタからだったわね?若いのを1人連れてくって言ったの。」

「そうよ」

「もてなしはいらない代わりに、こっちも同じ年頃を連れて来いって話しで、なんもせずほっといたわけだけど。目的は、まさかコレ?」

 

エミカの言う"コレ"。

言い表せば、同年代の星導使と顔を見せ合い、友達として仲良くさせたかったのか?というものだ。

 

「随分リスキーなことするわね〜。なんかあったら子供の喧嘩じゃ済まないかもしれないじゃん?」

「その時はその時よ。…リスク以上に、この子の未来を広げたかったの。この子には…ガルザにいなければならない理由はない。」

 

パラスとアリスは、若干の張りつめた空気を意図して無視した。

 

「ボルゾイは私達と戦える程に強い。自分で選んで強くなったけれど、きっかけは歪。」

 

黒い猟兵団に居続ける選択をしたのは本人だが、その選択のきっかけは、孤児になってしまったこと。

そこを猟兵団が拾い上げて、育ててしまったこと。

あまりにも、外を知らなすぎる。

 

「ガルザはいずれ、また動き出すでしょう。その後、逃げたいと思っても逃げる術を思いつかないかもしれない」

「そんな時の為ってこと?」

「ええ、猟兵団とイの一番に戦うのは、貴女達でしょう?少しでも知っている顔を作って、頼る糸口になればいい。…そう願ったのよ。」

 

厚かましい願いだが、帝国に縛られるシグナスにとって、この場が唯一の当てだった。

 

「ふぅん?…まぁ、覚えといてあげる。…けれど、あまり子供からの愛を舐めない方がいいよ?」

「それはどういう意味?」

「教えな〜い!わかった時、存分に悩むがいいわ!」

 

 

 

───未来。何処かの戦場で───

 

 

 

「何があろうと、任務を完遂させる!」

 

相対するのは、歩幅の同じ───。

 

ボルゾイは、帝国(カゾク)の為に戦い続ける。

 

 

 




お読みくださりありがとうございました~!

ユナイテッドシティのちみっこ達、仲良さそうだよね。
そこにボルゾイも足すんだよぉ!!!!

はぇ?クリスタちゃんは?って?
彼女はほら…童顔成人女性だから…。

キャラクタ―出しすぎて、口調とかn人称がガバしてるかも…。
指摘などよろしくお願いします~。


また何か投稿できました際は、お読みいただけたら幸いですン。それでは。
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