不死のデビルハンターはツーマンセルを組ませてもらえないようです 作:──
物語は数年前、桐生燦火が未だ高校生だった頃まで遡る。
彼の暮らす地域は悪魔の発生が少なく、それ故にそこに住む人たちも悪魔に対する意識がゆるい、ほのぼのとした雰囲気の小さな街だった。
だからこそ、悲劇が起こった。
彼の通っていた高校を悪魔が襲ったのだ。
“デビルハンターはまだ来ないのか!?”
“まだだ!全員非番だから、到着までまだかかる!”
そこはまさに地獄絵図だった。
彼の住む地域がどれだけ悪魔を甘く見ていたのか、住民の全員が思い知った。
悪魔が出にくいからとデビルハンターの全員が非番の日があるなど、普通ならばあり得ない。
だが、現実として起こってしまった。
出現したのは鴉の悪魔、それは大勢の鴉を伴って現れ、生徒たちの生き血を啜り肉を啄む。
桐生も例に漏れず、片目をなくし、骨が見える腕で息も絶え絶えに逃げようとして、つまづいて床に倒れ伏した。
そんな時、彼の目の前に燃え盛る炎が降り立った。
契約。贈呈、我が力の全て。対価、お前の死後の痕跡その全て──
それが提示した契約に、彼は首を縦に振った。
次の瞬間には彼を中心に炎が巻き起こり、鴉たちが地面に落ちて悶え苦しみながら焼け死んでゆく。
身体中の傷が癒え、桐生は諸悪の根源である鴉の悪魔を見据えた。
鴉の悪魔は恐れをなしたようにけたたましい叫び声を上げて飛び去っていった。
そうして全てが収まったあと、彼は警察から事情聴取を受けていた。
緊急事態と言えども、一般人の悪魔との契約は禁止されているからだ。
「君ねぇ、デビルハンターが来るはずだったんだから契約なんてしなくて良かったでしょ?」
「……もしもあなたが、片目がなく腕を骨まで食いちぎられた状態で正常な判断ができるのなら、その主張は正しいと思います」
「…っ、お前、年上になんちゅう言葉遣いだ!」
「年上年下という問題ではありません。僕は今、正当性の主張ができなければ前科が付く状態なんですから」
「年上か下かって話だろ!俺はお前よりずっと長く生きてんだ、そんな中で悪魔と契約せにゃならんってことなんざ一度もなかった!」
「それは、あなたがその必要がない安全な人生を生きてきたからだ」
桐生と相対した警察官は、良くも悪くも過去の価値観に色濃く囚われた人間で、桐生とは相容れない相手だった。
彼と警察の戦いは長く続いた。
起訴前の二十日の勾留と、起訴後長期化した裁判の最中の勾留。
それによってかなりの月日が流れた頃、彼の前に赤髪の女性が現れた。
「私はこういう者です」
女は警察になんらかの手帳を差し出して、二言三言話すと警察官と交代するように燦火の目の前に座った。
「初めまして、私はマキマ。公安のデビルハンターなんだ」
「……公安の方、ですか」
「そう。それで、悪魔と契約した君に提案をしにきたの。犯罪者として捕まるか、デビルハンターとして働くか」
燦火に残された選択肢は一つだった。