一般通過シシ神転生者   作:ヤックルたんペロペロ

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*おまけに名前ありのオリキャラが出てくるので苦手な方はご注意。


14話 シシ神、海に行くってよ・下

 ポニョの母でもあるグランマンマーレと出会ったシシ神は、助けられた流れで彼女の住まいにお邪魔することになった。(住まいと言っても、いくつかあるうちの一つらしい。ちなみに場所は海である)

 

 途中で夜の姿に変わったシシ神に合わせるように、グランマンマーレも大きさを変える。

 

 くらげの中にある住まいは彼女の魔法で作り変えられた。

 

『どうぞお掛けになって』

 

 シシ神はこれまたくらげの形をした……というか完全にくらげな椅子に座る。天井から垂れる触手のカーテンがキラキラと輝き、内部を照らしている。

 その光にグランマンマーレのまばゆい光と、デイダラボッチの青白い光が重なって、幻想的な世界を作り出していた。

 

『神に会うことはたまにあるけれど、山に住む神に会ったのは本当に久しぶりだわ』

 

 若い川の神がそのまま流されてしまい、海に迷い込んでくる……なんてハプニングもある。大概は川の先にある河の神が気づいて助けるのだが、それでも例えば出かけているなどの理由で見落としてしまい、グランマンマーレ()の中に入ってくることがある。

 

『可愛らしい神もいるものでしょう?』

 

 “そうッスね…”

 

『ふふ……それで言ったら、溺れてしまう神も可愛らしいわね』

 

 “……ッ!………!!”

 

 シシ神の体が波打つように光った。表情こそわからないが、その反応で相手が羞恥を感じているのは丸わかりだった。

 

『それで、あなたはなぜ海を渡っていたの?』

 

 “……行きたい場所があったのだ。その場所がこの世に本当にあるかどうかはわからないが”

 

『そのあるかどうかわからない場所へ行って、何をされたいの?』

 

 “………叫びたいことがある”

 

 シシ神はラピュタに行き、「バルス!」と叫びたかった。まるで聖地巡礼をするファンの心境で、それをしたかった。

 もしあったとしても空にある場所にどう向かおうとか、そういった考えは完全に二の次である。前世の彼はきっと、行き当たりばったりで旅行に行くタイプの人間だったに違いない。

 

『…そうね。もし大まかな位置が分かるのだったら、送ってあげることもできるけれど』

 

 “本当か!?”

 

『でも、どこにあるか分からないのだったら、できないわね』

 

 “………この石が、光った先に…”

 

 シシ神の手の中から、小さな物体がニュルンと浮かび上がる。それは紐のついた蒼い石だった。二柱が巨大なため、その小ささがより際立っている。

 

 いや、それよりも。

 グランマンマーレは言いたいことがあった。

 

『石が光っているというより、あなたが光っているわね』

 

 “ち、違う!吾輩は光ってないもん!!”

 

『ずっと光っているけれど?青白く』

 

 念話で送られてくるシシ神の声は涙声だ。

 この神は無表情な割にその内心はとても豊からしい。

 

 グランマンマーレとしては、好ましい豊かさだった。

 

 

『でも、あるか分からないものを追い求めるというのは、ロマンね』

 

 “男の子(オス)という生き物は、いつの世でもロマンを追い求めてしまう生き物なのだ…”

 

『……オス?』

 

 “うん?……あぁ。吾輩の存在に性別はないが、吾輩の自認はオスである”

 

『オス………』

 

 グランマンマーレはシシ神の爪先からてっぺんの触角までじぃっと観察した。

 その視線に、シシ神は妙な居た堪れなさを覚える。

 相手の神格がレジェンド級なだけあって気後れしてしまうが、グランマンマーレ自体は絶世の美女である。(少なくとも人に模している姿は)

 

 グランマンマーレはクスリと笑ってから、ずいっと体を前のめりにした。

 

 くらげのテーブルを超えて、彼女の顔がシシ神の顔に迫る。

 

『ねぇ、シシ神さん』

 

 “はい…!?”

 

 グランマンマーレの伸びた手が、シシ神の顔に添えられる。

 青白い光が忙しなく明滅する。

 

『私はこの海の神でもあります』

 

 “それは存じ上げているが……”

 

『私はそして、この海を()()()()()使命も持っているのです』

 

 互いの鼻先が触れた。触手がビビビッと逆立つ。

 

 

『私と(つが)いませんか?』

 

 

 要は、エッチしませんか?という問いに、シシ神は椅子から緩慢なスピードでひっくり返った。

 

『身体的にまぐわうことができなくとも、あなたの体をいただければ、私の魔法で子を作ることができます』

 

 “えっちするなら身体的なまぐわいがいい!!!”

 

『では、身体的なまぐわいにしましょう』

 

 “いや違うッ!!いや………ぜひともお受けしたいけど……あのですねェ…!!!”

 

 お誘いは非常に嬉しいが、フジモトの妻を奪うわけにはいかない。

 それに自分とグランマンマーレがもし結ばれるようなことがあれば、ポニョンヒル……ブリュンヒルデが生まれなくなってしまう。

 

『何か勘違いしているようだけれど、夫は他にもいるわ』

 

 “……えっ!!!?”

 

『うふふ…』

 

 つまり……つまりグランマンマーレはフジモトと結婚しながらも、他にも夫がいたということだ。シシ神は愕然とする。

 森にいると乱婚はしょっちゅうあることだが、それでもやはり人間の常識を持っているため、一夫一妻が普通だよね、の認識が抜けきらない。

 

 “……あっ、そうだった!そもそも吾輩は『生死の権能』を持つがゆえに、命を作る行為はできないんだった…!!”

 

『あら』

 

 “だから………くっ、できないのだ…!”

 

 一婦多夫制ならいいんじゃないか…と心が揺らごうとも、『理』がダメだよーと告げている以上は子を作れない。

 

 

『ふむ……』

 

 何か考え込んでいたグランマンマーレは、顔を上げる。

 

『先ほど申し上げたように、私の役割は海を豊かにすることです』

 

 “…?”

 

『つまり、あなたにとっての「命の循環」と同じように、「海を育む」ことが私の使命なのです』

 

 グランマンマーレにとっては海を育むこと、すなわち種を増やすことが『理』によって定められている。

 一方でシシ神は『理』によって生命を作ることは禁止されている。

 

 この二つをかけ合わせれば、プラマイゼロになるのではないかとグランマンマーレは考えた。

 プラマイゼロと言っても、だいぶグレーではある。

 

 

 “………”

 

 ゴクリと、シシ神は唾を飲み込んだ。(実際に飲み込んだわけではないが)

 

 

『魔法で子を調整すれば、そのラインもさらに緩められるでしょう』

 

 “………”

 

『どうされますか?』

 

 

 しばらくの沈黙ののち、スッと顔を上げたシシ神の顔は心なしか画風が変わっていた。今にも北斗神拳をかましてきそうなタッチに変わっている。

 シシ神は『シシ神』として理は絶対に守らなければ……と考えたところから、脳内に響いてきた「逆に考えるんだ」の精神でグランマンマーレの手を握った。

 

 

 

 “吾輩(おれ)、グランマンマーレさんとえっちしたいです”

 

 

 

 すまない、フジモト…。すまない、ポニョンヒルデ…。あと、ついでに宗介やリサさん…。

 

 

『わかりました。ではどうぞ、私に身を任せていて…』

 

 

 脳を揺るがすような声に、シシ神は瞳を閉じた。

 彼はこれから、大人の階段を登ることになる。

 

 

 

 “え?”

 

 

 

 デイダラボッチの肉体が、グランマンマーレの体の中に沈んでいく。

 

 え?と、彼はもう一度つぶやいた。

 

 

『調整が難しいので、私の中にあなたを取り込んでから行いますね』

 

 “待って待って待って”

 

『?』

 

 “これは身体的なまぐわいではないのではッ!?”

 

『身体的に今、まぐわっているでしょう?』

 

 “いやこれ身体的にまぐわっているっていうか、身体的に融合しとるんですが!!?”

 

『暴れると完全に吸収してしまうかもしれないので、気をつけて』

 

 “誰か助っ……………ギャアアアアアッ!!!”

 

 

 

 

 

 この後、グランマンマーレの中に混ざり合っていたシシ神は、無事に体外から出された。

 

 この出来事がトラウマとなり、彼は海の女神(グランマンマーレ)恐怖症を患うことになる。

 

 

 

 

 


 

 

【おまけ】

 

 

 そこは海の底にある、とあるアジト。一人の魔法使いが自身の野望に向けて日々あくせくしている場所である。

 

 家主が使っている潜水艦はなく、現在本人は不在だった。

 

 そのアジトに小さな影が近づく。

 

「!」

 

 影がアジトに近づこうとした瞬間、見えざる物体にバチッと弾かれた。その衝撃で海の中をくるくると後転した体が大きな魚にぶつかる。

 

(フジモトめ…。オレ様を弾く結界を張ったのか)

 

 フジモト。それがこのアジトの家主の名前である。

 彼が水棲生物をはね除ける結界以外にもう一つ「オレ様」を侵入させない結界を張ったのは、ひとえにこの「オレ様」の所業にあった。

 

 フンと鼻を鳴らした「オレ様」は、結界に手を伸ばす。何か呪文のようなものが呟かれた瞬間、まばゆい光を伴い結界に穴が空いた。

 

 その生じた光に黒かった「オレ様」の姿が露わになる。

 

 

 歳はおよそ10歳ほどだろうか?中性的な見目の少年は、およそ人とは思えぬほど整った見目をしている。

 

 彼は空いた穴に体を滑り込ませ、アジトの窓から中へ侵入する。

 

「ぐふふふ……」

 

 そして、悪どい顔をしたと思えば、どこから取り出したのか、手にしたクレヨンでアジトの中に落書きを始めた。

 

 

 

「なかなかの力作だぜ!」

 

 

 ひと通り落書きし終えた後は、水槽の中にいる人面魚の魚たちにお菓子を与えた。

 

 きっと彼女たちの父親が見れば、落書きをしたこと以上に怒るだろう。

 

「このお菓子、すごーく美味しいでしょ?」

 

 口をパクパクさせている人面魚たちは、『人面』という割には可愛らしい顔を綻ばせて「ぅまあ!」と叫んだ。

 

「かわいいなぁ。オレ様の妹たち……ん?」

 

 少年はそこで、一匹だけ微動だにしていないことに気づいた。

 その一匹は手にしたお菓子のカケラをじっと見つめている。

 少年が「食べないの?」と尋ねると、その一匹は今度は彼を見つめた。

 

 真っ黒なまあるい瞳と、赤い瞳が交差する。

 

「……仕方ない」

 

 少年は懐から、小さな箱を取り出した。

 その中にはビー玉やきれいな石など細々としたものが入っている。彼が取り出したのは銀紙に包まれた小粒の菓子である。

 

「これはな、“ちょこれーと”って言うんだ。スゲェ美味しいから、今度お母様に会った時に渡そうと思って取っておいたんだけど………お前にあげるよ」

 

「まままーぉ?」

 

「そう。ちょこれーとだ」

 

 少年は銀紙を外し、水槽の中にチョコを落とした。

 

 他の妹たちがその妹が取る前に食べようとしたので、少年は「コラ、だめだぞ」と注意する。

 

 その妹は持っていた菓子のカケラを落とし、チョコを手に取った。

 

 小粒のチョコレートは彼女にとっては自分の体の大きさほどもある。

 

「あ」

 

 大きな口が開いた。その口はチョコを一気に半分も食べてしまう。

 もぐもぐ咀嚼することしばし。まあるい瞳がキラキラと輝き、その場でクルクルと回り出した。

 

「ふふふ……そうだろうそうだろう。ちょこれーとは美味しいだろう」

 

「ぅままぁ!」

 

 その妹に合わせて、他の妹たちも水槽を揺らす勢いで踊り出した。

 

 ああ、なんて可愛い妹たちなのだろうか!と少年が顔を綻ばせていた時である。

 

 家の中から怒号が聞こえた。

 

 

「ユウゥ〜〜〜!!!」

 

「げえっ!」

 

 

 家主が帰ってきたようである。

「ユウ」と呼ばれた少年は、入ってきた窓から体を滑り込ませた。

 

「じゃあな、オレ様の天使たち!また遊びに来ちゃうから!!」

 

 ちょうどその瞬間、部屋の扉が開かれる。髪をワカメのようにうねらせているフジモトは、キッと少年を睨めつけた。

 

「貴様ッ、またイタズラをしたな!!いつもやめろと言っているだろう!!」

 

「あっ、お義父さん(パパ)にもお土産があるから」

 

「私はお前のパパでは………コラッ!まだ話は終わっていないぞ!!」

 

 フジモトの手にはクレヨンで落書きされたシャツがあった。

 

 小袋を残して逃げて行った少年の姿はあっという間に海の中に消えていく。

 

 フジモトはため息を吐き、小袋を手に取った。その間妹たちは証拠隠滅のため、フジモトの気が逸れているうちにお菓子のカケラを食べ尽くす。

 

「……中身はなんだ?」

 

 以前は中から大量の鳩が飛び出てきた。その結果、部屋中が糞まみれになった。

 内心フジモトは開けたくなかったが、あんなイタズラ小僧でも正真正銘、自分の敬愛する『グランマンマーレ(あの人)』の子どもである。

 鬼が出るにしろ蛇が出るにしろ、渡されたものを蔑ろにすることはできなかった。

 

 

「ナマコ……」

 

 

 中身は、ナマコだった。




【裏話】

ユウは愛称で、書き方は「Ygg」。元ネタはブリュンヒルデと同じ系列。
最初はグランマンマーレのヤンデレが見たいと思って書き始めた話だけど、主人公にトラウマができただけで終わった。
将来、湯屋に海の女神が来る可能性アリ。頑張れ!湯婆婆!

②主人公の脳みそ
多分ダチョウ


そのうち別枠としてヒロアカを引っ越して、その枠の中で色々と別作品ともクロスオーバーするかもしれないです。
そうなった場合いくつかの話を移して、エピローグもジブリ単体として読めるように魔改造すると思います。

最近書く時間がない、またはあっても別の趣味に気を取られて執筆がまったく進んでいないので、今後は気長にお待ちいただければ幸いです。誰か書いてくれてもええんやで…
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