一般通過シシ神転生者   作:ヤックルたんペロペロ

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みんな拙作なのに読んでくれてありがとナス!


3話 一般通過系花咲じいさん

 吾輩は一般通過系シシ神テンセイシャである。

 

 変化の術をある程度ものにできるようになった吾輩は、人里へ堂々と降りることができるようになった。

 

 と言っても、気を抜くと角が生えたり、髭が生えてくる。目も意識しないと離れ目になってしまう。

 転生する前は吾輩も人間であったはずなのに、人間になるのは非常にむつかしかった。

 

 また夜になると、人間に化けていても強制的にデイダラボッチになる。髪の先が触手に変わっていき、体がどんどん巨大化するのだ。

 

 吾輩のこの昼から夜の変身は、生死を司るシシ神にとって唯一の弱点と言ってよい。

 

 変化しないというわけにもいかないのだ。吾輩のこの変身は、自然の摂理なのである。皆とて、例えばヤックルたんがあの短くてかわゆい尻尾をふりふりさせていたら、垂涎しながらむしゃぶりついてしまうだろう?

 

 そのように、抗おうにも絶対に抗えない事象なのだ。吾輩の変身は。

 

 

 ただ弱点をそのままにしておくわけにもいかない。

 

 いつの世とて、人は不老不死を追い求める。人間の社会が発展していけば、吾輩の首もさらに容易く狙えるようになるだろう。

 

 さすれば吾輩はまた黒い濁流を以てして、数多の命を奪うことになる。

 

(弱点の克服をどうするかはまだ考え中なのだが…)

 

 少なくとも、日本が近代頃になるまでには弱点を克服しておきたい。最悪ネットが普及するまでに……。

 

 

 

 まあ悩みすぎても仕方ないゆえ、吾輩は久しぶりの人間社会を楽しんだ。

 

 見目は人間基準の非凡を意識してつくった。

 

 一つ難点なのは、せっかく人間姿になったというのに声が出せぬことである。

 

 狸たちは人語をねいてぇぶに話していたにも関わらず、なぜ吾輩は声を出せぬのだろうか? シシ神の時は、体のつくりがそもそも人語の発声に適していないため、話すことができなかった。

 

 しかし、人語の発声に適した体のつくりに変わってなお声が出せないというのは、ここにきても吾輩の神格が邪魔しているのかもしれない。

 

 まあここは、身体的行動……ぼでぃらんげーじでアピールすればよい!

 

 

 吾輩は身振り手振りで村の人間に話しかけた。

 

 よそ者な上に、声も発せぬ吾輩にやさしく接してくれる人間はいなかったが、唯一孫娘のいる老婆が吾輩を不憫に思って家に招いてくれた。

 

 ちなみに吾輩の服装が死体から調達したものだったのも、村の連中が近づいてこない理由だった。服装については手頃の服がなかったのだ。大目に見てもらいたい。

 

 

 家にあげてもらった後、吾輩は山菜の料理をいただいた。老婆はその手に精通しているようだ。普段は薬師として生計を立てているらしい。

 吾輩に興味津々な娘の親は、老婆曰く母親は病気で、父親は狩りの途中でいのししに負った傷が原因で亡くなったそうだ。

 

「近頃はここいらの山菜も干ばつのせいか、育ちが悪くなっちまってね。畑の方はなおさらさ。村の者たちがピリピリしてたのも許してやっとくれ」

 

 苦笑いしながら老婆が言う。吾輩の口の中には、老婆に振る舞われた山菜があった。肉魚は食わぬ根っからの草食系シシ神であるゆえ、山菜料理はありがたかった。

 

「………」

 

 人が作った料理を食べたのは久しぶりだった。多分吾輩が最後に食べた人の料理は、ファミリーレストランのコックが作った料理である。

 

 不思議と……何だろうか? 腹の奥がムズムズする。

 

 自分でもよくわからぬ感情に、吾輩はいつもの癖で全身の毛をブルブルさせた。

 

 その拍子に変化の一部が解け、尻尾が出る。とっさに尻を押さえたが、幸い二人は気付いた様子はなかった。

 

「腕を差し出してきてどうしたんだい? まだ食いかけじゃないか」

 

「いっぱい食べていいんだよ! おなかが空いたら、おなかと背中がくっついて、悲しくなっちゃうから!」

 

 ズイズイと腕を戻される。吾輩は腹の奥にムズムズを飼ったまま、仕方なくまた食べ始めた。

 このムズムズは食べ終わっても消えず、いったい何だろうかと考えた。

 

 これは長いことシシ神として生きていた中で、抜け落ちてしまった吾輩の人間の感性(ぶぶん)だろうか?

 

 

 夜になる前に二人に別れを告げ、吾輩は森に入った。

 

 この森にもコダマたちがいる。だがその数は少ない。吾輩の周囲にポツポツと集まり出し、首を揺らし始めた。

 

 吾輩の髪の毛先からだんだんと透明になっていく。

 青白い光をともない、体が変化していった。

 

 空にも銀河があるが、吾輩の中にも銀河がある。

 

 この銀河は命だ。無数の命の奔流。それが吾輩の中にあり、この命そのものが吾輩。

 

 森を歩く。コダマが揺れる。

 

 森を歩く。コダマが(わら)う。

 

 このムズムズは何だろうかと、試しにコダマたちに聞いてみた。

 

 コダマたちは身振り手振りでそれぞれ伝えてくる。

 

 

 そうだ。吾輩は久しぶりに人の料理を食べて、胃の中がムズムズした。

 

 ああ。そのムズムズは確かに、不思議と温かかった。

 

 

 ────カラカラカラカラ……。

 

 

(……なるほど)

 

 

 吾輩はどうやら、人の温情に触れたから、ムズムズしたようだ。

 

 吾輩を見ていたコダマたちが、両手を合わせてくねくねと踊り、その手を天に向かってパッと開く。

 

 何をして欲しいか、理解した。ならば吾輩も、受けた一食の恩義を返すことにしよう。

 

 

 吾輩は歩いた。

 

 コダマたちは揺れていた。

 

 

 

 

 

 ◇

 

 

 ある老婆は薬師として村々をさすらいながら生活していた。

 

 そんな彼女は猟師の男に嫁いだ娘が病気で亡くなったと知り、急いで娘一家が住む村へ向かった。道中で通った村もここ数年の干ばつや飢饉の影響からか、人びとの顔に生気がなかった。

 

「そんな…!!」

 

 村に着いてわかったことだが、娘だけでなく、その旦那までも狩りの最中で不慮の事故により亡くなっていた。

 

 孫娘は寂れた家で、父親の形見を抱きしめながらうずくまっていた。

 

 村人も自分のことで手いっぱいだったのだろう。誰にも救いの手を差し伸べられなかった孫娘の体は、老骨の身である彼女より痩せ衰えていた。

 

「もう、もう大丈夫だからね…。ばあちゃんがいるから」

 

「おばぁ、ちゃん…」

 

 老婆は孫娘の体を強く抱きしめた。

 

 

 それから二人の生活が始まった。これまで転々としていた老婆は娘が住んでいた村に定住し、孫娘に薬師の仕事を教えた。

 相変わらず農作物の不作は続き、村は手入れのされていない水槽のように濁り、澱んでいる。

 

 

 そんな折、一人の子どもが迷い込んできた。おそらく両親が亡くなり、行く当てもなくさまよって来たのだろう。身なりもボロボロだった。

 子どもは話せないのか、通りすがる大人に身振り手振りで話しかけていた。大人たちはそのジェスチャーに、飯を欲しがっているのだと思い込んだ。

 

「お前にやる飯はねェ! 向こうに行け!!」

 

 男に押された子供が尻もちをつく。チラリとその様子を見ていた者もいたが、すぐに視線を逸らして去ってしまう。

 

「………」

 

 一部始終を見ていた老婆は、哀れに思いその子どもを家へ連れて行くことにした。

 

 

 孫娘は家にやってきた自分と歳の近い子どもを見るなり、最初は驚いた様子だった。しかしすぐに打ち解けたようで、あれこれと世話を焼いていた。さながら姉のように振る舞っている。

 

 その様子を老婆は微笑ましく思いながら飯を出してやった。調理した料理を、昔娘が使っていた椀によそってやる。

 

 子どもはコクンと頷き、両手で受け取った。

 

(何だか不思議な子どもだ)

 

 見た目はどこにでもいそうな、普通の子どもである。ただ、よく笑う孫娘と比べて一切表情が動かない。過去の不幸が原因で、今のようになってしまったなら申し訳ないが。

 

(それに、まとう雰囲気も……ううん、なんと言ったらいいのかねぇ…)

 

 老婆の長年旅をする中で経験した勘が、この子ども本当に人間なのかと猜疑心を与えている。人間に化けるなら狸、狐…あるいは猫の可能性もある。

 

 

 しかし過ぎった緊張に対し、特に何も起こることはなかった。

 子どもは相変わらず無表情のまま山菜をパクパクと食べている。はじめは箸を握るのに苦戦しており、孫娘がていねいに教えてやっていた。

 

「美味しいかい?」

 

 そう尋ねると、子どもはコクンと頷く。

 可愛らしい反応に、老婆も思わず微笑んだ。

 

 

 夕方ごろになり、子どもと遊んでいた孫娘はすっかり眠ってしまった。老婆はその隣で針作業をしている。

 

 子どもは身振り手振りで何かを伝えた後、外へ出て行こうとした。今の時間帯、夜行性の獣も活発になってくる。しばし見つめ合う時間が続く。老婆はハァー…と、深いため息をついた。

 

「厠なら家の裏手にあるよ。漏れる前にさっさと行ってきな」

 

 子どもはコクコクと頷き、外へ出て行った。

 老婆もさすがにその存在がもののけの類だと気づいていた。そもそも向こうは気づいていない様子だったが、やたらと尻を気にし出した頃からずっと瞳の色が赤くなっていた。

 それに知らんふりをしてやった、彼女と孫娘の優しさである。

 

「……ねぇ、ばあちゃん」

 

「おや、起きてたのかい?」

 

「………あのねっ、また、遊びにきてくれるかな?」

 

「それは……どうだろうねぇ」

 

 知らないフリをしたままでいれば、またフラッとやってくることがあるかもしれない。老婆がそう告げると、孫娘は嬉しそうに笑った。

 

「もうすぐ暗くなってくるから、寝なさい」

 

「はーい!」

 

 夜が深まっていく。針作業を終えて自分もまた床についた老婆は、孫娘の頭を撫でてやった。孫娘は白い毛皮の布団の中で小さな寝息を立てている。

 

 その手の中には、わずかな光を反射し煌めく小刀があった。

 

 

「おやすみ」

 

 

 

 代々老婆の先祖から受け継がれてきた、その小刀。

 

 老婆は親から。そしてその次は婚約する娘へ。さらにお守りの意を込めて娘から夫へと託され、今は父親の遺品として孫娘の手に渡った。────正確には、()()()()()()に、一人家に残してしまう娘を守ってくれるようにと、父親が渡したのである。

 

 

 そんな一族である彼らはかつて、『送り犬』の一族とも呼ばれていたそうな。




【書きたいネタ】
・喋る野良ネズミとの邂逅(雄英高校フラグ)
・あなた、トトロっていうのね!
・森で一人特訓に励んでる少年に餌づけされつつ、交流していくシシ神様。
(トーヤは救済したいけどエンデの曇りフラグが折れてしまいそうで悩みどころ。アンタは曇ってこそオレたちのNo.1なんですよ…!!!!!)

【思いついてるネタ】
・トトロ経由でおしら様と出会い、三匹で湯屋へ(湯屋で働くシシ神様も見たいけど、潜入する過程が難産。あとパヤオがシシ神は下位の神と言っているため、シシ神をどの位に位置付ければいいのか不明)
・ワンチャン外国にラピュタやハウルの動く城があるかもしれないやろ!!
 →もう歩くのちかれた…。
 →一般通過系グランマンマーレに拾われる。
全部が終わった世界(サイハテ)でナウシカと出会うシシ神様。
・AFOに目をつけられる(そもそも個性じゃないので奪えない)

もし湯婆婆がシシ神様を見た場合の格付け

  • 最上位
  • 上位(「名のある川の主」並)
  • 中位
  • 下位
  • 格付け不可(「カオナシ」枠)
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