ドラゴンボール×Re.ゼロから始める異世界生活   作:オレタチ青い人

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お久しぶりです!随分遅い投稿になってしまって申し訳ございません!
事情によって長い間投稿ができなくて、かなり待たせてし待ったことを深くお詫び申し上げます!
いつのまにか夏休みも終わって、リゼロも奪還編が始まってしまいました....
今回はニ話同時に投稿したいと思います!ぜひ見ていってください!


第二章11 唯一人

結ばれた意思

 

 

 

 直後、レムが凄まじいスピードでこちらへ飛びかかり、顔面目掛けて拳を突き出してくる。

グッと脚を固め、腕を交差させる。手首あたりに拳が当たったようで、直撃は防いだ。

殴られた勢いでその体制のまま、地面を滑る。

 

 

「おーいちちち…レムってあんな強ぇんだな…」

 

 

 普段の姿からは想像できないほどのパワーとスピード。レムの中のマナは多いとは言えないが、これほどまでの強さを見せつけられては認めるしかない。

腫れた手首を冷やすように振りながら、悟空はまっすぐレムを見つめる。

エルザもそうだが気とは違い、必ず''体内マナ量が多い=強い''というわけではないんだなと認識する。

 

 

 

「ウゥッ!!」

 

「おっと!!」

 

 

 追撃のようにモーニングスターが唸りをあげ、先端の鉄球が迫ってくる。

それをしゃがんで避け、その体制のまま脚に力を入れ、

 

 

「ふっ!!」

 

 

 力を一気に解放する。地面が爆ぜ、辺りに土埃が舞う。

そして、踏み込んだ悟空の身体が一瞬でレムの懐へと潜り込んだ。

 

 

「!!…ウアァ!!」

 

 

 いつの間にか目の前に現れた悟空に、レムは一層唸りを低くし、目の前の男を振り払うように右足を蹴り上げる。

 

 しかし、その脚は空を切った。

避けられたどころか、目の前に悟空は居なかった。

 

 

「すまねぇが、一旦眠っててもらうぞ」

 

 

 背後で、男の声が聞こえた。

レムの瞳が見開かれる。

 

 反応するよりも早く、悟空の手刀が首筋へと振り下ろされた。

 

 ビリッとした痛みが全身に広がる。意識が、無くなる────

 

 

「──ッッグアアァ!!」

 

 

 無くなりそうな意識を無理やり繋ぎ止め、脚を踏ん張らせ咆哮を上げる。

その時、彼女の純白の角が、より一層輝いて見えた。

 

 

「なっ!?」

 

 

 驚きのあまり目を見開かせる。反撃を恐れ一旦距離を取る。

確かに手応えはあった。意識を刈り取るには十分で正確な一撃だったはずだ。

 

 だが、レムは倒れない。

何が一体、狂気に染まった彼女をそこまでさせるのか──

 

 

「…まさかおめぇ、まだ意思が…?」

 

 

 ぽつりと呟く。

レムは呪いに冒された悟空達を救うため、森の中へ入っていった。もし、その意思がまだその''鬼''の中に残っているとしたら…?

 

 その瞬間、レムが、その悟空の呟きに反応したように腕を震わせた。

狂気に染まった青い瞳が揺れ、その奥に微かな''正気''が見えた。

鉄球を握る手も少し緩み、その姿はまるで何かと戦っているようだった。

 

 

「おい、レム!オラだ!孫悟空だ!」

 

 

 悟空は叫ぶ。届くかどうかも分からない。

だが、それでも叫ばずにはいられなかった。

 

 彼女の中にまだ正気が残っているのなら、届くはずだ…!!

 

 

「ゴ、クウ……」

 

「!!!」

 

 

 掠れた声が、レムの喉から吐き出される。

 

確信する。

レムはまだ狂気に完全に染まり切ってはいない。あの狂気の奥に、レムは居る。

 

 

「そうだ、オラだ!」

 

「ゴ、ク…ウ……さん」

 

 

 さらに大きく、レムの腕が震える。彼女の瞳の中で、だんだんと正気が狂気を押し上げることを示すように、レムは小さく唸る。

悟空は一歩ずつ、歩み寄る。彼女の正気が勝つと信じて、散らばる魔獣の屍を踏むことすらも気にせず、また一歩と進み続ける。

 

 

「なぁ、覚えてっか?一緒にお使いに行った時のこと…おめぇがくれた紙のおかげでオラ、一人で買い物できたんだ」

 

「グ…アアァ……!!」

 

 

 レムの表情が苦しげに歪む。

彼女のツノが点灯、点滅を繰り返し、その度に周りのマナが歪むのが分かる。

それでも悟空は止まらない。

 

 

「屋敷で一緒に飯食った時もそうだ」

 

 

 一歩。

 

 

「オラ、ここん事、最初は何も分かんなかったけどよ、おめぇ達が色々教えてくれた」

 

 

 また一歩。

 

 

「おめぇ、オラやスバルを助けるためにここへ入ってきたんだろ?」

 

 

 問いかけるような声だった。

責めるでもなく、止めるでもなく。ただ確認するように。暖かい声色で。

 

 

「そんな優しいおめぇを、オラは信じてっぞ」

 

 

 彼女が、狂気なんかに負けるわけない。そう信じて、悟空はレムの前に立つ。

狂気と戦うその姿を目の前で見つめる。真っ直ぐな目で、見つめ続ける。

 

 そんな悟空の意思が通じたのか、彼女の顔から狂気の色が落ちてきているのが見える。

後少し、あとちょっと────

 

 

 ─────そう、あとちょっとのはずだった───

 

 

 

「ギャウッ!!」

 

「っ!!?」

 

 

 左方からウルガルムが、大きく獰猛な口を開かせ飛びかかってくる。狙いはレムだ。

咄嗟に間に左腕を捻じ込ませ、レムへの直撃は防ぐ、が……

 

 

「くっ…!!」

 

 

 身代わりとなったその腕に、深く牙が突き刺さる。

痛みに悶えそうになるが、目の前の魔獣を振り払う事に意識を向ける。

 

 右腕で牙を食い込ませたままのウルガルムの首根っこを掴み、その手に一気に力を込める。

メキメキっ!と音を立て、魔獣の首元に指が食い込み、次第にその顎が開き、腕から牙が抜かれていく。

 

 

 

「邪魔すんじゃ…ねぇっ!!」

 

 

 ボールでも扱っているかのように、その魔獣を崖へ向かって投げ飛ばす。

その勢いのまま壁に落ち続け、ついにベチャッ!!と音を立て、ウルガルムの体は壁と衝突し潰れる。

 

 悟空の魔獣の歯形が深く残った左腕からは、鮮血が流れ続けている。

ドクドクと脈打つ傷口が痛む。しかし、まだ動く程度には────

 

 

──次の瞬間、凄まじい殺気が悟空を襲う。

 

 

 その殺気の方へ視線を向ける。

 

それを見て、悟空は沈痛した。

 

再び瞳を狂気で埋め尽くしたレムが、鎖をうねらせていたからだ。

 

 

「チキショウっ!!レム…!!」

 

 

 直後、悟空の視界の右端から迫ってくるのは棘付き鉄球。

それを上体を反らしてかわし、再び距離を取るためにバックステップ。

 

 しかしそれが悪手だった。

地面が足についたその時、足裏にぐちょりとした感触が走り、直後視界が反転した。

 

 

「へっ?」

 

 

 思考が追いつかなかった。

視界には青々とした晴天が広がっており、四肢が宙に投げ出されていた。

無防備に、そのまま背中から地面へ落ちていく。

 

 何が起こった?そう思うと同時に、生臭い匂いが鼻腔を突き、脚に何かが絡みついている感覚がした。

下半身を見ると、そこには鮮血を張り巡らせた魔獣の腸が、脚にしがみつくようにそこにあった。

 

 理解した。自分は腸に足をとられ、転倒したのだと。

併せて悟る。自分は今とても隙を晒している状態だと。

 

 

 

「ウアアァッ!!」

 

「ッ!!やべっ…っ!」

 

 

 空からレムの声が聞こえ、その方向を見る。

そこにはすでに、鉄球が豪風を纏いながら、こちらへと落ちてきているのが見える。

 

 

「ちっ!!」

 

 

 間一髪だった。

両手を突き出して、棘の生えていない部分を掴みその一撃を止めた。

目の前には、あと数寸でも遅ければ頭蓋を貫いていたであろう一本の図太い棘が、視界いっぱいに広がっている。

 

 しかし、安心している暇などない。この状況はとてもまずい。早く立て直さなければ。

そう思い、その鉄球を押し返そうと腕に力を入れた瞬間。

 

 

「ガアァッ!!」

 

「なっ…ぐっ!!?」

 

 

 レムの右足が、その受け止められた鉄球の上を踏みつける。

再び、凄まじい重量が悟空を襲う。

眼前にはまた棘が迫り、悟空の眉間を貫かんと、ジリジリと距離を詰めて来ている。

 

 

「界王拳…二倍…!!」

 

 

 全身を纏う赤白いオーラがより一層熱を増し、風が吹き荒れる。

このままではまずいと直感し、一段階界王拳のギアを上げた。

 

 しかし…………

 

 

「ぐっ…ぎぎぎぎぎ……!!!」

 

 

 一瞬だけ少し押し返すことが出来たが、負けじとレムも脚に入れる力をより一層強くしてきた。

再び押し返され、鉄球を掴む腕からは軋む音が聞こえ、抉れた左腕からは血が吹き出る。

 

 

「三っ…倍……!!」

 

 

爆風にも似た熱風が悟空の身体から放たれる。

 

 赤白い気炎が荒れ狂い、辺りを照らす。

周囲に散らばる魔獣の死骸が吹き飛び、木々が大きくしなる。

 

界王拳三倍。

 

ウルガルムの呪いに侵され、体が悲鳴を上げる今の悟空の体が許容できる力だった。

 

 

「うおおおああっ!!」

 

 

 筋肉が膨張していくのと比例し、咆哮もより一層覇気を大きく纏う。

鉄球をどんどん押し返し、レムの体制が崩れそうになる。

 

 

「ウアアアアッ!!!」

 

 

 レムも負けん気で鉄球を踏む力を強める。

鉄球が押し返され、界王拳三倍をもってしても、鬼化したレムの怪力は容易に崩せない事を悟る。

 

 

「だあああぁぁっ!!」

「ガアアアアアアァっ!!」

 

 

 二人の咆哮が入り混じり、重圧により、大地には蜘蛛の巣状の亀裂が走る。

その空間にはウルガルムでさえも踏み入ることが出来なかった。

 

 二人の力量は拮抗しているようで、ある一定の場所で鉄球は止まる。

 

 おとらく、これよりも一段上。四倍を使えば押し勝てることはできるだろう。

しかし、今の状態でそれを使って仕舞えば、たとえ鉄球を押し返したとしても後がまずい。

再び限界を超えたことによる反動で、身体は痛みにより動けなくなり、周囲のウルガルムに全身を咬まれ続け死に至る。

 

背筋の凍る想像をしたことで、額から冷や汗が一筋流れ、その他の汗と混じって頬を伝う。

 

 そんなの御免だ。死ぬ事自体ではない。

何もできずにそうなるのは、絶対に嫌だ。

 

 だが、そんなわがままも言ってられないくらい、今の状況もかなりまずい。

力は拮抗していると言っても、いずれ界王拳の反動が来て、この状態が維持できなくなる。そうすれば本当の終わりだろう。

 

 

「ぐっ…ぁああああぁぁあ!!!」

 

 

界王拳四倍を使っても詰み。

このままでも詰み。

 

 そんなどうしようもない状況に、悟空はただ叫ぶことしかできなかった。

 

 じわじわと界王拳の反動が体に現れ始め、痛みが全身を覆い、痺れが腕を震わせる。

痛みがジンとくるたびに一寸ずつ、鉄球の棘が悟空の眉間に向かって降りてくる。

悟空の顔に、苦悶の表情が浮かぶ。

 

 アハハハハハハハハハッ!

 

 笑い声がした。

鬼が笑っている。

 

 やっとうざったい虫を仕留められると、そのような気持ちを籠らせた笑い声だ。

 

 その笑い声は、森中に響き渡っていた。

 鬼は勝利を確信している。

 

 あと僅か。

 あと指一本分、鉄球が沈めば、この男の頭蓋は砕け散る。

 

 悟空の腕は震え、赤白い闘気も少しずつ乱れ始めていた。

 

 

「界っ…王…拳ッ…!!」

 

 

 悟空は決心する。どうせなら、全力を出し切って力尽きてしまった方が今よりかはマシだ。と自身を納得させる。

一言ずつ悟空の口から発される。

 

 

「四…ば……」

 

 

 苦渋の顔で、最後の一言が放たれるその瞬間────

 

 

 

 

 

「やめろぉ!!!」

 

 

 ───希望の星が、現れた。

 

 

 

 

 叫びにも似た声が聞こえ、衝撃音と共に突如鉄球にかかる重量が無くなる。

何が起きたかもわからない、だがチャンスが来たというのは確かだ。

 

 無我夢中で鉄球を眼前から突き放し、勢いのままそれは視界から外れていった。

 

 

「…っなんだ!?」

 

 

 勢いよく起き上がり、鉄球が逸れていった方を見る。

 

 

 

 

「おい、落ち着けって!変なトコ当たっちゃうからっ…本当にっ!!」

 

 

 そこには、少女の体に覆い被さり、暴れ鬼をなんとか抑えようと、体をくねらせているスバルがいた。

 

 

 スバルは困惑していた。なぜレムがこんな姿になっているのか。なぜ悟空を攻撃していたのか。

 

そんなレムは抜け出そうと手足をバタつかせ、その手足が自分の頬を横切ると、冷や汗が流れる。

今の一発で分かる、これに当たったら重傷どころではない。恐怖を抑え、もう一度鬼を抑えようと奮闘する。

 

 

「ちょっ、頼む!暴れんなって…ッ!?あぶなっ!」

 

 

 顔面目掛けて迫り来る腕を、なんとか前屈して避ける。

先ほどまでは疑問が頭を駆け巡っていたが、そろそろ話を聞かないレムに少し怒りが芽生えてきた。

レムの手首を掴んだ手が払われ、眉がヒクつく。

 

 

「…ッ!!いっぺんマジで落ち着けっ!!」

 

 

 そう叫びながら振り下ろされたスバルの右手に、むにゅっと、柔らかい感触が襲う。

 

 

「ぅえ?」

 

 

 間の抜けた声が漏れた。

勢い任せに振り下ろした手のひらは、大きなふたつの山のうちの一つ────そう、

 

 

 レムの左胸を掴んでいた。

 

 

 驚くほど柔らかい。

スバルの思考が完全に停止する。目は点になり、口は半開きのまま固まる。

先ほどまで暴れていたレムでさえ、その時だけは動きを止めていた。

 

 

…………………………?……

 

 

……………!!…………!!?

 

 

 少しすると、状況を理解したスバルの顔は赤く染まっていく。

 

 

「ごっ、ごごごごごめんっ!!ね、狙った訳とかじゃなくて…本当にただの事故で…!」

 

 

 急いでそこから手を引き、立ち上がって後ずさり、意識してやったわけではないと、右掌をレムに向けて左右に振る。

拘束が解けたレムは、深く俯きながら立ち上がる。

手にはモーニングスターの持ち手を掴んだまま、両腕をぶらんと垂らしている。

 

 

「レ……レム……?」

 

 

 やっぱり怒っているのかな…?と、不安を抱きながら、力無く項垂れている様子のレムに手を近づかせる。

 

 

「レムから離れろ、スバル!!」

 

 

 耳に入ってきたのは、友の大喝だった。

その声に、思わず肩をびくつかせる。

 

 

「な、なんだよ悟空、急にそんな大声出して──」

 

 

 呟きながら振り向くと、少し離れたところに、必死の顔でこちらへ走ってきている悟空がいた。

その顔を見て、なんだか嫌な予感がした。これから、何かろくなことが起こらないような…そんな気が。

 

 次に聞こえたのは、獣の唸り声のようなもの。

その声には背筋がゾッとした。それはあまりにも近く───真後ろで聞こえたからだ。

 

 唸りの元へ振り返る。

 

 

「───はっ」

 

 

 そこには、先ほど以上に殺意と狂気に瞳を染め、腰あたりに拳を構えているレムがいた。

冷たい空気が喉を通り、全身から血の気が引いていく。

 

 

「待っ──」

 

「ガアアアァッ!!」

 

「ぼごぉっ!!」

 

 

 レムの拳が腹に突き刺さり、引いた血の気が再び身体中を巡る。

次に襲ってきたのは灼熱の痛み、嘔吐感。喉を熱い液体が通り、赤黒い血が口から解き放たれる。

 

 

「ウガアァッ!!」

 

「ごぁ、あぁあっ!?」

 

 

 レムの拳が振り抜かれ、スバルの体が空へと投げ出された後、地面へ転がり続け、視点が回転する。

やっと回転が止まったかと思うと、腹に巡る激しい痛みと嘔吐感により涙腺が緩み、涙が溢れ出て視界がままならない。

 

 数回嗚咽を繰り返し、少し呼吸が落ち着いてきた頃、ジャラ、と鎖の唸る音がした。

 

 

「あ───」

 

 

 顔を上げる。

涙で滲んだ視界の先。

狂気に染まった鬼が、モーニングスターを頭上高く振りかぶっていた。

 

 その青い瞳には、もう一片の躊躇もない。

ただ目の前の獲物を叩き潰す――それだけの意思。

 

 鎖が唸る。

鉄球が豪風を纏い、一直線に振り下ろされる。

もう、ダメだ────

 

 

 

そう死を覚悟したとき……

 

 

ガキィッンッ!

 

 

 風が飛んできた。

鉄球の進行を阻むかのように、それは突然飛んできて、スバルの眼前から鉄球を弾き飛ばした。

 

 

「スバル!!」

 

 

 次に瞬きした時には、すでに悟空に抱き抱えられていた。

瞬時に元いた場所から遠ざかり、視界が素早く切り替わる。

 

 

「…っごめん助かった、悟空!それと、姉様!」

 

「まったく、本当にバルスは世話がかかるわ。急に飛び出していったと思ったらまたあんな無茶を」

 

 

 早すぎた動きに、脳が揺れる感覚を味わいながらも、顔を桃髪のメイドの方に向ける。

いつものように辛辣な言葉をかけられながらも、その間にしっかりと信頼を感じれる。

 

 

「オラもすげぇ危なかったぞ、サンキューな!…でも、なんでおめぇらここに?」

 

「妹が危険な状況だと聞かされて、何もしない姉がいると思う?」

 

「聞かされて……って」

 

 

 聞かされた。ということは、ラムは誰かにレムがこの森にいることを教えられたのだろう。

そのことを知っている人物に、悟空は思い当たる節が一つある。

 

 

「…もしかして、ベアトリスから聞かされたんか?」

 

「大正解。俺は呪いで後半日で死ぬこと、レムとお前が森に行ったことを聞かされたよ。

 俺はまだしも、お前ら二人共放っておけるわけないだろ?だから来た!

 …ていうかまたそんなにボロボロになりやがって…エミリアたんの負担増やしちまうだろーが」

 

「はは、すまねぇすまねぇ」

   

 

 なるほど、大体は理解した。やはりスバルも、ウルガルムの呪いに侵されていたようだ。

そこで一つ、悟空の中には新たな疑問が生まれていた。

 

 ベアトリスの事だ。

これまでのことを思い返すと、レムが呪いに侵されている事、そして呪いの解除方法。自分たちが呪いにかかっている事など…ベアトリスのお陰で、この魔獣騒動、なんとかなっていると言っても過言ではない。

彼女は、なぜこんなにも自分たちに良くしてくれているのだろう?

 

 自分たちを嫌いなはずの彼女が、何故─────

 

 

「気を引き締めなさい。まだ終わっていないわ」

 

 

 そのラムの言葉で、深い思考から意識が戻される。そうだ、まだ終わっちゃいない。

レムは魔獣のような唸りを上げながら、モーニングスターを周囲のウルガルムへと叩きつけている。

その様子に、もはや畏怖すら抱く。

 

 

「くっそ…なんだってあんな凶暴化してんだ…?やっぱ胸触ったの怒ったのか?」

 

「あれは鬼化。ラム達鬼族に伝わる、角を発現させ、周囲のマナを喰らい尽くすことで身体能力を極限まで引き上げる力よ。

 ラムは…今は理由があって鬼化できないけれど。

 今のレムは完全に鬼化してしまってるから、理性を失っているわ。あとバルス、死になさい」

 

「最後のやつ何!?…んまぁ、鬼化したはいいけど制御できない設定ってとこか…!」

 

 

 悟空の腕から降りて、立ち上がる。

先ほどレムに殴られた腹が、灼熱の痛みをスバルに味わわせる。多分肋骨折れてる。

そんな激痛を我慢しながら立ち上がり、レムを見る。

 

 

「…レムを戻す方法は、あるんだよな?」

 

「ええ……角よ。レムを鬼たらしめているのはあれ。その角に強い衝撃を与えれば、レムは戻るはず。多分。だといいと思う」

 

「曖昧なんだなそこんとこ…けど、美味しい情報だ。助かる」

 

「角か、よし!」

 

 

 悟空は踏み込み、ドン!と、辺りに風を巻き起こしながら再び鬼へと挑む。

 

 

「あっ!おいちょ、待て!」

 

 

 スバルの抑制も聞こえず、悟空は走り続ける。

迫り来る脅威にレムは気付いたのか、気配を感じる方向に鎖をくねらせる。

 

 先端の鉄球が地面に蛇の道を作りながら、こちらへ向かってくる。

それをさも当然かのように飛び避け、その勢いのままレムの元へと急接近。

 

 

「界王拳…!」

 

 

 赤白いオーラを纏い、すでに構えていた右拳をさらに強く握り、レムの角目掛けて突き出そうとする。

しかし……

 

 

 グラッ

 

 

「なっ…」

 

 

 一瞬、視界が揺れる。

赤白いオーラは霧散するように消え、拳は目掛けた場所とは大きく逸れた場所に突き出され、空を殴る。

 

 

「ウアァッ!」

 

「!?… っぐっ!」

 

 

 拳の勢いが弱まり、脅威が薄れた事を確認したレムが、横腹に蹴りを繰り出してきた。

その反撃はあまり早い速度ではない。腰をとっさに折り曲げ、避けたつもりだった。

 

 

「っづ!?ごはっ……!!」

 

 

 脚が完全に曲がる前に、レムの足が右腕の下を通り、腋窩あたりに直撃する。

メキメキと音を立て、肋骨が悲鳴を上げる。そして、勢いのまま悟空の身体が横へ弾き飛ばされる。

 

 

「悟空!!」

「ソン!!」

 

 

 二人の声が入り混じり、森に響く。

 

 背から地面へ叩きつけられる寸前、片手を地面につき、そのまま後転するように衝撃を逃がした。

ザザザッ、と土を削りながら数メートル滑り、ようやく体勢を立て直す。

 

 

「いっちち…なんだか、おかしいぞ…」

 

 

 右脇下を押さえながら、顔を顰める。

 

 悟空は、明らかに調子のおかしい自分の体に、違和感を持っていた。

いくらこの世界に来てから弱体化してるとはいえ、普段ならあの速度の攻撃を避けるのは何ともなかったはずだ。

そしてレムへ攻撃する直前、あの視界の歪み。一体あれは何なんだ…?

 

 いや、今はそんなことを考えている暇はない。レムを救うことだけを考えろ。

………ダメだ、何も浮かばない。角を狙おうったって、このボロボロの体じゃ厳しいだろう。彼女の周りには魔獣だって居る。

 

 

 …………一体、どうすれば…………

 

 

 

「おい、大丈夫か!?」

 

「へへ…まぁなんとかな……」

 

 

 本当は激痛で叫びたくなるくらいだが、虚勢を張って立ち上がる。

しかし、やはり顔には出る。顰めた顔と、明白な貼り付けた笑みを見破られ、スバルにため息をつかれながら、肩を貸される。

 

 

 

「…なぁ悟空、お前、いくらなんでも自分一人で解決させようとしすぎじゃないか?」

 

「へ?」

 

 

 突然吐かれたスバルのその言葉に、目を丸くするしかなかった。

 

 




僕、ピンポンという作品が好きなんです。
そのアニメの主題歌から、今回はタイトルを持ってきています!

見ているもの

  • リゼロだけ
  • ドラゴンボールだけ
  • どっちも見てる
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