ドラゴンボール×Re.ゼロから始める異世界生活   作:オレタチ青い人

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第二章14 みんな違ってみんな馬鹿

 

 

 

 

草むらから出てすぐさま、近くを彷徨く魔獣達の視線を浴びる。

 

 相変わらず、圧倒される数だ。パッと見ただけで十匹は超えている。

気圧されながらも森を駆ける足は止めず、魔獣を押し除け掻い潜り、できるだけ多くの魔獣の視線をこちらへ向けさせる。

 

 

「はっ!だっ!」

 

「はぁ…くそっ、やっぱ多いな…でも、そのほうがありがたい」

 

 

 横から襲いかかってくる魔獣はなんとか避けて通り、正面からのやつは悟空に対処してもらう。

そうやって猛攻を避けながら、森を進み続ける。

 

 少しして、息も絶え絶えになりながらも、なんとか魔獣の群れを掻い潜った先に待ち構えていたものとは…

 

 

「はは、マジか…」

 

 

 さらに多くの魔獣の群れ。そして後ろには、掻い潜った魔獣の群れが追いかけてきているときた。

悟空に追い打ちをかけるように、その中心には、''頭頂部が禿げている子犬''がいた。

絶望感が悟空を襲う。昨夜倒したはずなのに、なぜ……

 

 

「悟空、あれは多分だが、別個体だ。決して昨日の努力が無駄になったわけじゃねぇ。よく見てみろよ」

 

「…!確かに、あいつから感じるマナが全然ちげえぞ…サンキュースバル」

 

「えっ?あぁいやそこじゃないけど…まぁいいか。作(・)戦(・)を実行するぞ!」

 

 

 友からの叫びを受け取ると、帯の中からとあるものを取り出す。

それは、萎れた果実の実のようなもの。

 

 スバルから渡された、''ボッコの実''というものだ。

食べると体内のマナが回復するとか言う優れものらしい。

 

 それをパクりと口に放り込み、次の瞬間、

 

 

「うおおおっ!!」

 

 

 身体中に熱が走るような感覚が巡り、体内にマナが湧き上がり、じわじわと気に変換されていく。

マナの大多数が気に変換されると、先ほど草(・)む(・)ら(・)の(・)中(・)で(・)練(・)っ(・)て(・)い(・)た(・)気(・)を手中に持ってくる。

 

 気を練ろうとすると、なぜか目のくらみや嘔吐感が襲ってくる。おそらくだが、呪いのせいだと考えていた。

魔獣が餌を我が物にしたいがために、呪いを介してこのような事をしているのだろう。

 

 作戦のため、降りかかる不快感に耐えながら、先ほどの内になんとか気を練っていたわけだ。

これで準備は整った…

 

 

「スバル、いつでもいいぞ!」

 

「…分かった!」

 

 

 スバルがふぅ、と息を吐いてから、すぅっと一気に息を吸い込み────

 

 

 

「シャマァクッ!!」

 

 

 

 迷わず叫ばれたその名が、姿を表す。

 

 スバルの体を中心に黒煙が展開され、それが後続から迫る魔獣を飲み込んでいく。視界を奪われた魔獣達にとって頼りになるのは、鼻を通る''臭い''だけ。そのどちらもシャマクの影響で曖昧だが、それを元に、進み続けるしかない。

次に森に響くのは、けたたましい爆裂音。魔獣のギャオンという鳴き声。

 

 ブアッ!!と悟空の手によって黒煙が振り払われ、明らかになった地面にあったものとは。

 

 

「ギャオァッ!」

 

「グアッ!ギャルルッ!!」

 

 

 大きく、そして深い深い穴の中で、無数に積み重ねられた魔獣の姿。

各々がその状況を理解できず、穴の出口へ向かって壁をガリガリと爪で掻いたり、吠えたり、踏み台にされたり様々だ。

 

 

「よっしゃあ!''落とし穴作戦''、成功だぜ!!」

 

「ふぅっ、これで後ろは大丈夫そうだな」

 

 

 シャマクによって魔獣の視界を奪い、悟空の気弾によって地面に穴を作る。

これが友情の力。見たかウルガルムめ!

と、意気揚々としていられるのも束の間、

 

 

「グウウゥッ…!!」

 

 

 正面の魔獣の群れの中心の子犬の体が、みるみるうちに膨張し…

 

 

「ガアアァアァッ!!」

 

 

 もはや子犬という姿は微塵も残っていない、筋骨隆々の体に、超が三つついてもいいほどの大型犬がそこにはいた。

さらに鋭くなった牙を見せびらかすように、口を開け咆哮をぶちかましてきた。

 

 

「随分と変わりやがって…これが本当の姿ってか?可愛かったお顔が台無しだぜ…っとわ!?」

 

 

 スバルへ容赦なく剛脚が振り下ろされ、それをすんでのところで避ける。

彼が的になってくれたおかげで隙ができた。ボスガルムの前脚を駆け上がって、勢いよくその顔面へと飛びかかり、

 

 

「だりゃぁ!!」

 

「グウゥ!?」

 

 

 悟空の拳がボスガルムの顔面を捉え、勢いよく振り抜かれる。

確かに、殴った感触はあった。しかし、

 

 

「グルゥッ…!!」

 

「いっ!?」

 

 

 変わらず赤い瞳が輝きながら、こちらを睨んできている。

ボスガルムの表情が歪んでいるのを見ると、効いていないわけではないようだが、いかんせんダメージは少なそうだ。

気が練れず、舞空術が使えないこの空中の間、無情にもボスガルムの右腕が悟空の脇腹を捉え、

 

 

「ぅぐっ…!!」

 

「悟空!!」

 

 

 その前脚が横に振られ、悟空の体が勢いよく吹き飛ばされ、地面を滑る。

ようやく勢いが止まった頃には、木の幹へ背中から叩きつけられていた。

 

 

「いっ…ちちち」

 

「まだ来るぞ!避けてくれ!」

 

 

 木に手をついて立ち上がる。咄嗟に友からの喝が入り、視線を上げると、ボスガルムの巨体が既にこちらへと向かってきていた。

 

 

「ちっ!!」

 

「ギャオォウッ!!」

 

 

 踏み潰すほどの勢いで前脚を叩きつけられるが、横に飛んで避ける。

先ほどまで手をついていた木がグシャリと変形しているのを見て、一発でも喰らえば致命傷だと考えずともわかる。

地に手をつけて着地し、再びボスガルムの赤い瞳と目が合う。

 

 

「お、おい……すげぇ吹っ飛ばされてたけど大丈夫なのか?」

 

「へへ…まぁ、こんくれぇの攻撃、今まで何度も受けてきたからな…慣れてっぞ」

 

「答えになってねぇよ、慣れてても大丈夫じゃねぇだろあれ!?」

 

 

 攻撃を受けた左脇腹を抑えながら、立ち上がる。

あの群れのリーダーをなんとかしなければ、自らに呪いをかけたやつを倒そうにも出来ない。

スバルは、なんとかこの場を切り抜ける作戦はないか考えている。

 

 悟空も、何かあのボスガルムを倒す方法をないか、あまり得意でないが熟考する。

これまでの記憶を辿り、あの魔獣を倒すためのヒントとなるかもしれない単語を思い出していく。

気突槍、かめはめ波、界王拳、気円斬、太陽拳、魔法、気、マナ…………

この中で、何か、ないのか、何か……………………

 

 

 

 

「───、あ」

 

 

 一つ、思い当たる節があった。これなら、行けるんじゃないか?

 

 

「なぁ、スバル。確かあいつらって、マナを餌にするんだったよな」

 

「え?あぁ、ベアトリスがそう言ってた気がするけど…」

 

 

 フッ、と。少し口角が上がる。

 

 

「へへっ、それだけ分かりゃあ十分だ」

 

 

 痛みを誤魔化すように、グッと背中を伸ばして体をほぐし、確かめるようにその場で二回ジャンプする。

身体はボロボロだが、まだなんとかいけそうだ。

 

 

「ちょっとだけでいいから、気を練る時間を稼ぎてぇ。またあの魔法、出来っか?」

 

「……ああ、多分行けるけど…作戦があるんだな?」

 

 

 コクっ、と頷き、それを見たスバルも「合点承知!」と、拳を握る。

その握った拳を、こちらへとゆっくりと歩み迫ってくるボスガルムへ向け、

 

 

「お前は、俺と悟空でぶっ倒す!これ以上、てめぇの好き勝手にはさせてやんねぇよ!」

 

 

 その伝わるはずのない言葉で、ボスガルムの歩足が止まる。

グルルル…と低く重い唸りをスバル達に向けながら、偵察するように、赤い瞳で二人を見下ろしている。

 

 

「だから、さっさとかかってこいやぁ!ボスガルムゥ!!」

 

「ウゥ……グォアアァアァァアアア!!!!」

 

 

 スバルのはち切れんばかりの咆哮が森に響いた途端、ボスガルムやその周りのウルガルム達も咆哮をあげ、一斉に襲いかかってくる、

ボスガルムは前脚を二人を踏み潰そうと前脚をあげ、ウルガルム達は凄まじい速度で獲物へと向かっていく。

こんな絶体絶命の中でも、切り抜けられる保険。それが…

 

 

「また頼むぜ、シャマァク!!」

 

 

 再び森に、黒い煙が姿を現す。

スバルを中心に広がり、その場の全てを飲み込む。

 いつも通り期待を裏切らない成果をもたらしてくれる。

魔獣達の視界を奪い、聴覚、嗅覚を狂わせる。

 

 悟空とスバルはその黒煙の中を走る。もはや全てが曖昧になったここではそれぞれ二人の安全は確認できない。

しかし、信頼は明らかで、確かだ。お互いに絶対、あいつが死ぬわけないと信じている。

 

 

「スバルとは逸れちまっけど、仕方ねぇ。アイツがそんな簡単にやられちまうわけねぇし、時間が稼げりゃあ…」

 

 

 それでいい、と思った直後。

黒煙の中から、ボスガルムのマナを感じ取る。それは、確実にこちらへと近づいてきていた。

なんでだ?シャマクでこちらの位置は曖昧なはずなのに…

 

 

「くそっ、これも通じねぇのかっ…よっ!!」

 

 

 しっかりと地を踏んでいる感覚を意識し、しゃがみこんで脚に力を入れ、一気に飛び跳ねる。

ぼん、と黒煙の中から脱出し、悟空が見た景色とは。

 

 

「グルゥ…」

 

「へっ?」

 

 

 ボスガルムの顔面だった。

大きな赤い二つの瞳がしっかりとこちらを捉え、今にも噛み付いてきそうな予感がする。

運の悪いことか、当然というべきか。その予感が当たり、ボスガルムが牙に涎を纏わせながら噛みつこうと大口を開け、

 

 

「っとっ!!」

 

 

 ガチっ!!と瞬時に閉じらるその瞬間に、ボスガルムの鼻に手をつき、それを支えに上がって回避。

なぜこいつがこちらの位置が分かっていたのか、辺り全体を俯瞰して理解した。今のスバルのマナ量じゃあ、全てを包み込めるほどのシャマクは出せなかった。黒煙は、ボスガルムの胸あたりまでしか広がっていない。

 

そのまま魔獣の禿げた頭頂に着地し、なんとか一安心…できるはずもなく。

 

 

「おおぉ!?」

 

 

 ボスガルムがその悟空を振り払おうと激しく頭を動かし始め、耐えられず肩に乗り移る。

それすらも気に障ったのだろう、次はさらに激しく肩を動かし、危うく落とされそうになるが、なんとか次は背中に乗り移る。

 

 

「グアァァ!!!」

 

「ちょっ、落ち着けよ!…つっても、おめぇオラの言葉分からねぇもんな〜!!」

 

 

 大地が動いている。そう錯覚してしまうほどの巨体が、背中の男を振り下ろそうと体を左右に揺らしている。

悟空は、まるでサーカスでもやっているのかのように、その揺れに合わせて体を左右、前後に動かす。

その行動が、さらにさらにボスガルムの気を猛らせる。

 

 

「グルゥアアァッ!!」

 

「おわぁっ!!?」

 

 

 痺れを切らしたボスガルムが、ついに体を一回転させ、悟空を空中へ放り出すことに成功する。

回転の力を利用し、そのまま頭突きを繰り出す。

 

 その巨頭と空中に放り投げられた悟空がぶつかる瞬間…絶体絶命のはずのその男が、ニヤリと笑った。

 

 

 

 ブンッ!!と、空気を切り裂く音が響いた。

 

ただ、それだけ。捉えたはずの男の姿は、そこにはなかった。ただ一瞬、キイィィン。という空気が震える音が鳴っただけだ。

もちろん、頭突きが当たった感触はなかった。なら、今(・)頭(・)に(・)感(・)じ(・)る(・)こ(・)の(・)感(・)覚(・)は(・)、(・)な(・)ん(・)な(・)ん(・)だ(・)?(・)

 

 

「今さっき思ったんだけどよ、おめぇらの餌はマナじゃねぇのか?」

 

 

 次に耳に入ってくるのは、そんな声。

頭に乗る二つの小さな感覚からは、凄まじい熱気を感じる。

 

 

「オラの気ばっか食ってよ、そんなにうめぇか?」

 

 

 それを振り払おうと再び体を回転させる、

しかし、その前に''感触''は頭上から離れ、ボスガルムが繰り出すのは犬のような、ただ意味のないおまわり。

 

 一回転し、再び同じところに視線が戻った時、そこには……

 

 

「でもおめぇらが気に夢中になってくれてるおかげでよ、''これ''が使える」

 

 

 炎のような赤白いオーラを纏い、すでに拳を構えている男の姿。

その身体はボロボロで、一撃でも入ればすぐにも力尽きそうなほどだ。それなのに、感じる威圧感は凄まじい。

この男が何をしようとしているかはわからない。だが、第六感が告げる、この行動を止めなければまずいと。

 

 

「ゥグアァァアアアッ!!」

 

 

 これまでにないほどのスピードで前腕を、男の腹目掛けて突き出す。

それに合わせて、男の構えた拳も動き始める。

単純なスピード勝負。どちらかの一撃が入れば、その瞬間勝負は決すると言ってもいい。

防ぐことを捨て、攻めに特化した一撃。

 

 しかし、悟空は笑った。笑っていた。まるで勝利を確信しているかのように。

拳と前腕が交差する一瞬、男の口がゆっくりと開かれ────

 

 

「アクラ!!」

 

 

 直後、閃光のような一撃が横薙ぎに走った。

その時、

 

 

 

 ドパァンッ!!

  

 

 

 轟音と共に、森そのものが揺れた。

空気が爆ぜ、森を覆う黒い霧が霧散する。枯れ葉が一斉に舞い上がり、木々は大きくしなり、幹に絡む蔦までもが風圧で宙へ浮かんだ。

 

 その中心にいたのは、二つの存在。

すでに拳を振り抜いている悟空と、

 

 

 

 腰から上まで、全てを吹き飛ばされた、ボスガルムであったはずの肉体。

 

 

 残った下半身が倒れ込み、断面から大量の赤黒い血を地に広げながらピクピクと痙攣している。

やがて悟空の姿が地面へと降り、ボスガルムの死体を見るその顔は唖然していた。

 

 

「ひぇ〜…こんなにも魔法ってすげえものだったんか…おでれぇたぞ」

 

 

 界王拳との併用もあるだろうが、陽魔法の一種である''アクラ''がここまでの効果をもたらすとは。使用した自分自身でも少し引いている。

パックに修行の際、魔法の使い方を教わっておいて良かった。体内のマナが少ないせいで実用性はないと言われ少し落ち込んでいたが、一撃でこれほどまでの効果をもたらしてくれるのだから、十分だ。

 

 

「そういや、スバルは……うっ!?」

 

 

 群れのボスを倒したからといって、まだ終わっていない。まだ体から伸びる''糸''が、激しく波線を描いている。

 

 スバルの安全を確認するためにあたりを見渡すが、突然、嘔吐感と頭痛が悟空を襲う。

それだけじゃない、ひどい寒気や手足から力が抜ける倦怠感までもが降りかかる。今までで、一番ひどい感覚だ。

 

 

「くそっ……もう、時間がねぇか…」

 

 

 呪いが本格的に頭角を現し始めた。体内の気が凄まじい速度で失われていく。その度に、痺れにも似た力が抜ける感覚を味わう。

ここで力尽きるわけにはいかない。その思いで、なんとか立ちあがろうとする。

しかし、思いすらも飲み込む不調が襲い来る。

 

 すると、スバルの姿が前方から走り来るのが見えた。その後ろに付いてくるのはウルガルム達。

しかし、魔獣達が悟空のそばで倒れている''下半身''を見た途端、スバルの表情が明るくなり、ウルガルムは動きを止める。

その変化にも気づかず、スバルは悟空の元へ近寄ってくる。

 

 

「悟空、やったんだな!本当すげえよお前は…」

 

「へへ、なんとかな……けど、オラはもうダメかもしんねぇ…」

 

 

 その言葉を聞いたスバルが、驚きで表情を満たした。

これまでずっと「大丈夫だ」と平気な顔をしていた悟空が、初めてこんな言葉を口にしている。

悟空がゆっくりと、体を不快感で振るわせながら立ち上がる。

 

 

「だから、オラが動けるうちに逃げてくれ。おめぇはここで死ぬわけにはいかねぇ」

 

「………………」

 

 

 自分を信頼してくれている証だろうか。今の弱音も、これほどまでボロボロになっても戦おうとしているのも、そのせいなら……

 

 

「……スバル?」

 

 

 スバルが前に立つ。

 

 

「友達置いて逃げるわけねぇだろ。ていうか、困ったときは頼れって何回言ったら分かるんだよ」

 

 

 その言葉に、悟空は一瞬だけ目を見開いた。いつものように、スバルは震えていた。

身体は傷だらけで、呼吸も荒い。怖いはずなのに、それでも悟空の前から退こうとはしない。

 

 むしろ、鞘から剣を取り出し構え、魔獣達へ向けて一歩踏み出した。

 

 

「みんな馬鹿だ。でも、こんなことしてる俺はもっと馬鹿だな。俺も、レムも、お前も。みーんな大馬鹿だ」

 

 

その背中は小さい。

悟空よりもずっと小さく、戦える力だって比べるまでもない。

それでも、その背中だけは妙に大きく見えた。まるで、絶対に退かないとでも言うように。

 

 勝てるわけない敵に抗って、超えられるはずのない障壁に挑んで。本当に大馬鹿者だ。

しかし、それがナツキ・スバルを『ナツキ・スバル』たらしめる所以なのかもしれない。

 

 

「へへ、何回バカっちゅうんだよ」

 

「うるせぇ、本当のことだから言ってるんだよ」

 

 

 スバルの横に立ち、共に戦う意思を見せる。それを見て、スバルは微笑んだ。

目の前には、赤い瞳を輝かせ、けれど怯えている様子の魔獣。一匹一匹、スバル達が満身創痍ということを悟ると、ジリジリと、一歩ずつ。今ここで確実に仕留めるという意思を持ちながら、詰め寄ってくる。

 

 

「…っらぁ!!どうしたウルガルムゥ!!びびって動けねぇのか!!?」

 

 

 スバルが、体の状態に見合わないほどの煽りをかまし、手に握る剣の柄を強く握る。

詰め寄るウルガルムの動きが段々と速度を増す。

 

 

「「うおぉぉぉお!!」」

 

 

 二人の咆哮が入り混じりながら、同時に地面を蹴り、その大軍に挑む。

無理だと分かっていても、やらなきゃならねぇ時があんだ。

子供達とまた遊ぶって約束した。レムやラムとまた後でと約束した。

 

 その思いにかけても、ここで死ぬわけにはいかない。

 

戦いの火蓋が、切られ─────

 

 

「ウルゴーア」

 

 

 空から降り注いだ炎弾の直撃によって、切られる間もなくその火蓋は焼き尽くされた。

衝撃にも似た熱風がスバル達を襲い、通り過ぎる。次々と各地に炎弾が降り注ぎ、悟空の身体から出ている''糸''が一斉にプツリと千切れていく、

その状況に、呆気に取られる者達の前に現れたのは……

 

 

「いやぁ〜、随分と遅くなってすまなかったぁね。屋敷に帰ったら誰もいなくて驚いたものだぁよ」

 

 

 藍色の長髪を風になびかせ、青と黄色の色違いのオッドアイ。奇抜な服装を着こなし、身につけている帽子に手をかけながら、彼は悠然と魔獣の森に降り立った。

そう、ロズワールだ。

 

 

「……はっ、来るの超遅えよ。ロズっち」

 

「ロズワール!おめぇよくオラ達の場所わかったな!」

 

 

 この広い森の中、ドンピシャでここを見つけることはさぞかし難しいだろうに、よくぞ。と思う。

その理由が、ロズワールの口から明かされる。

 

 

「不思議に思って村に行ったら、まさかこんな事になってるなんてねぇ。それに、エミリア様にさぁんざん釘を刺されたからねぇ。『無茶でも無謀でも、追い詰められたらきっと魔法を使うから、空から見落とさないで』ってぇね」

 

「お前がエミリアたんの真似すんの気持ち悪いからからやめてくれる?あとちょっと似てんのがムカつく。

 はあ……あとは、任せていいんだよな?」

 

 

 そのスバルの問いに、ロズワールが燃え盛る森へ振り返りながら、

 

 

「そぉれが助けてくれた人に対する態度なのかぁな?任せてくれても構わないとも。

 私が不在の時に、君たちはよくやってくれたぁよ。このお礼は尽くそう。約束するよ」

 

 

 その言葉を聞いたスバルが、構えていた剣を下ろし、ため息をつきながらへたり込む。

やっと安心できる。やっと、やっと……

 

 

「あぁ、くっそ、まじ身体中が…いっ…てぇ……な…………」

 

 

「…ん?スバル?」

 

 

 スバルがそのまま俯いたきり動かなくなった。少し嫌な妄想が脳をよぎり、その肩をゆさぶってみる。反応なし。

まさか…!?と思って顔をのぞいてみると。

 

 よだれを垂らしながら、スバルが寝息を立てていた。すやすやと安心した表情で眠っている。

 

 

「アッハァ!こんな時に寝るなんて、随分と呑気なものだぁね」

 

「な、なんだ…びっくりしたぞ。オラ、てっきり死んじまったのかと…」

 

 

 まぁ、こうなるのも仕方ないか。こいつはよく頑張ってくれた。あとはロズワールに任せよう。

スバルの体をおんぶし、立ち上がる。

 

 

「サンキューなロズワール。おめぇ居なかったら死んじまってたかもしれねぇからな、今度オラからもなんかお礼させてくれ」

 

「君は客という立場で屋敷に住まわせているんだから、お礼なんてもってのほかだぁよ。こちらで解決させるべき問題を任せてしまったからねぇ。むしろ、こっちが感謝するべき立場なんだぁよ」

 

「へへっ、じゃああとは頼んだぞ?」

 

 

 互いに目でやりとりをし、ロズワールは了承の目線を送る。

悟空は友を背負い、後ろで魔法が魔獣を焼き焦がす音を聞きながら、森の出口へ向かって歩き始めた。

 

 まだ、これからもやるべきことがたくさんある。

でも今は、うんと休みたい気分だ。

 

 

 帰ろう、村へ。

 

 

 

 

 

 

 




次回、二章最終回です、

気突槍、どうですか?

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