独立傭兵ヴォルフ・シアン   作:何之

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壁がデカスギるので初投稿です。


グレートウォール(広義)

ベリウス中部、解放戦線防衛拠点……通称「壁」。

壁越えの舞台。まだ攻略戦は始まっていない様子だ。流石に来るのが早すぎたか……いや、そもそもベイラムの壁越えがいつなのか、まったく知らない。

勿論、だからといってはいそうですかと踵を返すつもりはない。こうなった時のことを考えて、ちゃんと用意をしてきている。

「壁」の索敵網に入らないギリギリのエリアに、早速前回のルビコン観光で手に入れた土産を放り投げる。地面に吸着したそれは、十分に展開したのち、周囲の機体情報を端末に送り始めた。

吸着型リコンだ。VDで初めて見たこれが、まさかルビコンで見られるとは思っていなかったので衝動買いしたのだが、役に立ってくれそうで安心する。買ったのはかなり長持ちするタイプのようで、一週間機能し、一時間の間隔でこちらに情報を送ってくれる。これなら、ベイラムの「壁」侵攻を探知できるはずだ。

あとは「壁」の遥か遠く、解放戦線と企業、どちらの警戒網にも入らないエリアに、ベースヘリを停める。ベイラムが攻めに来たら、即座に対応できるようにしておく為だ。これで準備完了。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

端末からのアラート通知で目が覚める。今日は珍しく、夢を見なかった。しっかり眠れた、ということだろうか?

端末を確認する。リコンが、ベイラム部隊であろう大量のMTの接近を知らせている。壁越えが始まったようだ。

こうしてはいられない。早速機体を起こし、「壁」に向かうとしよう。アセンを再確認する。

 

 

右腕 MA-T-223 KYORIKU(ジャミング)

左腕 MA-T-223 KYORIKU(ジャミング)

右肩 EULE/60D(パルスシールドランチャー)

左肩 EULE/60D(パルスシールドランチャー)

 

頭部 VE-44B(アンテナ頭)

コア 07-061 MIND ALPHA(アルファ胴)

腕部 AR-012 MELANDER C3(C3腕)

脚部 06-041 MIND ALPHA(アルファ足)

 

ブースター FLUEGEL/21Z(フリューゲル)

FCS FC-006 ABBOT(アボット)

ジェネレーター VP-20C(20C)

 

コア拡張機能 PULSE PROTECTION(PP)

 

ヴォルタを守るためだけに組んだ機体で、攻撃性能は皆無だ。こちらが攻撃されればたまったものではないが、そのための武器構成だ、問題はないだろう。早速出撃。

 

 

 

 

 

≪メインシステム 戦闘モード起動≫

 

再び「壁」に戻ってきた。既にベイラムの攻撃は始まっているようだ。

思いのほかMTが少ない。物量によるなんたら、というのがベイラムのやり方ではないのか? それにしては、至極普通と言わざるを得ない物量だ。というか、既に疲弊の色が見える見える……。

こいつらは見殺しにするのか、と一瞬脳裏に矛盾がよぎった。今から助けるのはこの大群の中のたった一人。それも正史では死ぬ人物だ、運命が何を言い出すか分かったものではない。

だが構うものか。傭兵をやっている時点で、そんな綺麗事は必要ない。むしろ俺は、ヴォルタが生き延びることで何が変わるのか、あるいは何も変わらないのか。それが楽しみなのだ。

 

ABを吹かして上方向へ機体を向ける。EN切れギリギリまで吹かしたのち、滞空。スキャンを連打しながら、上空からヴォルタを探す。ジャミングをチャージして発射し、機体の周りを白煙と金属片で包み、ベイラムと解放戦線、双方からロックオンされないようにしておくのも忘れない。

とはいえ、滞空にも、それから双方の注目を集めないでいるのにも、限界がある。さっさとヴォルタを見つけて救出したいところだが……MTしかいない……?

 

もしや、と思い、カメラを街区へ向ける。ベイラムのMTはガトリング砲台にやられてか、まばらにしかいない。街区の奥、壁面は未到達なのかまだ綺麗で、あまり進攻の歩は進んでいない様子だ。

街区の左奥を覗いてみる。解放戦線のMTらしき影が集まって、どこかへ集中砲火を……!?

 

絶対あれじゃねぇか! ABを吹かし、急行。しかし、20Cではいまいち容量が足りない。ちょくちょく息切れを挟んでしまう。きっとサンタイでも同じようにEN回復を挟んでいただろう。しかしこの瞬間だけは、20Cの決して多くはないEN容量が、酷く足枷のように感じる。

恐らくはフリューゲルも悪さをしている。フリューゲルのAB消費ENは、全体的に見ても重めだ。きっとこれが余計に悪さをしているに違いない、そう感じてしまうのだった。

 

気の遠くなるような時間を経て、やっとヴォルタの機体を補足する。しかし、ジャミングもパルスシールドランチャーも射程が足りない。ロックオンはしているのに、何もできない。ENもそろそろ切れてしまう。……クソ!

両肩のパルスシールドランチャーをパージ。ENが切れる前に着地、高速でENを回復させる。機体の速度も上がる。もう一度ABを吹かして、ヴォルタの機体をジャミングの射程内に収める。すかさずジャミング弾を発射して、ヴォルタへのロックオンを外す。解放戦線のMTの動きが止まったところに、ヴォルタの前へ躍り出る。

パルスプロテクション(PP)を起動。パルス防壁のドームが、ヴォルタの機体と、それから付近の解放戦線MTを周りの攻撃から守る。

ヴォルタから通信が入ってきた。

「てめぇは、あの時の独立傭兵!? なんでここに……」

「じっとしてろコラ!」

もう片方のジャミングをチャージ、ヴォルタを守るジャミングを追い焚き。

まずは周囲の安全確保だ。PP(パルスプロテクション)とジャミングの双方が切れる前に、周りの解放戦線MTを片付けなければいけない。

MTに向かってキックを連打する。スタッガーさせたら両腕のジャミングをパージ、交互にパンチしてMTを追い出す。残りの2機も同様に、キックとパンチでPPの外に追い出す。これで安全確保とする。

急いでキャノンヘッドのコックピットに近付き、ヴォルタに通信を入れる。

「G4、まだ生きてるな? 急いでACから出ろ、そのままだと死ぬぞ!」

こちらの戦闘能力はもうない。ヴォルタと協力して壁越え、なんてことは出来ないし、そもそもそんなことは考えていない。

「あんたにはここから生きて出てくれなきゃならない、早くしてくれ!」

「……駄目だ」

「駄目ぇ!? 何故だ!?」

「ハッチが開かねぇ」

「……ッ!」

よく見ると、コックピットあたりが少し凹んでいる。まさかこの程度の損傷で、と思ったが、機械というのは大抵そういうものだ。全てがどんな状態でも十全に動くというのは、不可能に近い話なのだ。それが脱出装置という、最優先で十全に動くべきものだとしても。

……だが。

「そんなものでは!」

その程度の障害など、越えるためにあるのだ。それでも、と言い続けるのだ。

「ちょっと離れてろ! 出来たらの話だけどな!」

コックピットハッチを無理矢理掴み、思い切り剝がすように引っ張る。メキメギと音はするものの、装甲はびくともしない。おまけに、周囲のジャミングが薄れ始めている。このまま続けていたら、PPもジャミングも消え、周りの解放戦線MTから、ヴォルタごと集中砲火を食らってしまうだろう。そうなれば死あるのみだ。それだけは本当に勘弁してほしい。どうする……!?

ふと、キャノンヘッドが持っている重ショが目に入る。

 

 

!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!*1

これだーーーーッッ!!

「ヴォルタ! そのショットガンを寄越せぇ!」

重ショをを無理矢理手から剝がし、自機の右手に持ってみる。機体のOSが重ショを認識し、火器管制がONになる。こいつ、撃てるぞ!

コアパーツと脚部の接続部に向けて、マニュアルで重ショを撃ち込む。しかし一発では壊れない。リロードを待つ間、コックピットハッチのこじ開けも継続する。リロードが済めば、もう一度接続部に撃ち込む。

これらすべてがマニュアル操作だ、神経を使うとかそういう次元ではない。AC過去作を初めて遊んだ時のような、あるいはエクバを初めて遊んだ時のような。とにかく、こんな風に動く、という映像は頭の中に浮かんでいるのに、体がそれを再現できない。おまけに、動かす物の量が半端ではない。両腕の操縦桿だけでは足りず、両足のフットペダル、両脇のレバー、上を向けば無数のスイッチ、etc……。頭が機体の操作方法を知っている、ということだけが救いでもあり、マニュアルで動かすことを選択肢として選べてしまうことは呪いでもある。

ジャミングは既に消え、PPもそろそろ消える。ここに留まるのはどう考えても自殺行為だ。ここから離れなければ。

コアパーツを掴み、ABを吹かす。しかし、脚部の損壊した履帯のせいで、ほんの少ししか動かない。ENが切れる。パワーもENも、まるで足りない。方法はないのか!?

 

待てよ……

戦闘モードになっているメインシステムを、あえて通常モードに変更する。装甲を守る防御スクリーン*2に使われているENを全てカットし、ブーストに回す。これで実質リミッター解除だ。

再度ABを吹かす。ギギギ、とコアパーツと脚部の接続部から音がする程度で、まだ動かない。

更にブーストを吹かす。ブースタが悲鳴を上げ始める。接続部の音が、大きくなり始めた。

ブーストを全開にする。ブースタの耐熱性能が負け始め、融解していく。あと少し吹かし続ければ完全にブースタが駄目になるすんでのところで、

 

バキィッッ!! 接続部が完全に壊れ、コアパーツと脚部が別々になる。

そのままの推力で宙に舞い上がる。浮かび上がる瞬間、PPが消滅した。瞬間、背後から爆発音がする。ギリギリのところで、なんとか助かったようだ。進路をベースヘリに向け、速やかに戦場から離れる。

 

 

 

 

 

キャノンヘッドのコアパーツを抱えながら、白銀の世界を巡航する。ヴォルタに通信を入れる。

「G4、生きてるよな?」

「なんとかな……。にしてもお前、さっきまでのは一体どうやってたんだ?」

「マニュアル操作だよ、全部。今お前を担いでいるのも含めてな」

「はっ、バケモンめ……。

 ……なんで俺を助けた? ガリア多重ダムの時とはえらい違いじゃねぇか」

 

「……さあな。死なれると困る、で満足してくれると助かる」

「……あぁ?」

 

 

 

 

 

ベースヘリに帰還してからは、それなりに忙しかった。

キャノンヘッドのコックピットハッチを無理矢理開けるために、AC丸々一機分の金が飛んだ。

死にかけのヴォルタに救命処置を施し、ベイラムの依頼仲介人――G6 レッドだ――に迎えをよこすよう連絡する。通信越しのレッドは驚きと、それから安堵の色を隠せないようでいた。

 

 

ベイラムの「壁越え」は、正史通り失敗に終わった。少し経てば、アーキバスが621に依頼を要請し、621とV.Ⅳ ラスティの活躍によって、解放戦線の「壁」は落ちるだろう。

ヴォルタが生き延びたことは、直近の戦況には一切の影響を与えなかった。きっとこれから、何かが変わるのだろう。そして、もしかしたらそれこそが、俺が傭兵をやる何かしらの理由足りうるのかもしれない、そう思えた。

 

後日、G1 ミシガンから直々に感謝のメッセージが届いた。内容には、見ず知らずの傭兵がベイラムの作戦を把握していたことに対する警告と、ヴォルタを救出してくれたことに対する感謝、そして、レッドガン加入の勧誘。

わちきおどろいた。まさか、ミシガン総長――ベイラムの「歩く地獄」――から直々にレッドガンへのお誘いが来るとは、非常に魅力的だ。

だが、俺はあくまでも傭兵として活動したい。それに正史では、レッドガンは総長の戦死という形で壊滅している。それを考えると、二つ返事でレッドガンに入る気にはなれなかった。丁重にお断りさせていただく。ついでに、レッドガンが参加する仕事はこちらにも回してくれ、とも言っておいた。

 

 

 

 

 

後日、解放戦線の「壁」がアーキバスの手に落ちた、という情報が流れてきた。

「壁」は落ちた。次に621が受ける依頼はおそらく、捕虜救出か強制監査妨害だろう。強制監査妨害はケイトが出てくる程度で、俺が出たところで大した違いは無いだろう。むしろ、オールマインドからマークされる可能性もある。となれば、次に介入すべきは捕虜救出。

サム・ドルマヤンの救出、G2 ナイルの登場、戦死。ドルマヤンは一旦置いておくとして、ナイルは最重要救出対象だ。ナイルの戦死は、最終的にはレッドガン壊滅の原因に繋がる。そうなれば、ヴォルタを助けた意味が無い。

だが、ベイラム側として出撃するということは、621と敵対することになる。激戦は必至、最悪死だ。思考を巡らせる。

……やはり、話し合いによる平和的解決が一番だ。621にメッセージを送る。内容は「G2 ナイルについて」だ。

*1
雁木にいくら貰った?

*2
防御スクリーン技術:ACに搭載されている防御機構の一つ。装甲を強化する技術の様で、いくつかの公式資料で名前のみ登場する。詳細不明。




今回のヴォルフ・シアンのアセンです。
https://matteosal.github.io/ac6-advanced-garage/?build=60-60-31-31-127-130-153-166-200-203-224-229
ロックオンを阻害するジャミングと、弾をかき消すパルスシールドランチャー、PPです。
フレームは比較的汎用的なものになっています。
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