貞操逆転世界のヒロアカー序ー   作:あかんヤー

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今回は第13話で言及してたミルコとの遊園地デート短編です。


番外編肆(改):雄兎と雌兎と陰謀渦巻く遊園地

 まだ冬の冷気が肌を刺す二月下旬の日曜朝七時。

 結城界離は吐く息を白くしながら駅へ向かっていた。

 今日は――甘露寺先輩のパーティーをハブったお詫びとして、ミルコと遊園地デートをする日だった。

 

(・・・緊張してきた)

 

 界離が駅前に到着すると、すでにミルコが腕を組んで待っていた。

 

「お待たせ! 待ちました?」

「別に。精々十分くらいだ」

 

 そっけない態度。

 だが界離には分かっていた。

 

(・・・寝不足だなミルコさん。匂いでバレバレだ)

 

 デートが楽しみすぎて眠れなかったらしい。

 界離は結界で竈門禰豆子似の姿に変装し、ミルコも耳と尻尾を隠して一般人の姿に変えている。

 

「姉や他の奴らにはバレてねーだろうな? 折角の休日に邪魔が入るなんて嫌だぞ私は」

「誰にも言ってませんよ。ちょうど雄英の寮に引っ越したばかりですし」

 

 界離が安心させるように言うと、ミルコは鼻を鳴らした。

 

 二人が向かったのは――如月グランドパーク

 

 界離が前世で読んだラノベに登場した遊園地と同名のテーマパークで、ミルコが持っていたのは特別イベント“ウェディング体験”参加券付きプレミアムチケット。

 入園すると――

 

「「「いらっしゃいませ! 如月グランドパークへようこそ!」」」

 

 見覚えのある五人のスタッフが出迎えた。

 

「・・・梅雨ちゃん? ヤオモモ? 何してるの?」

「何のことかしら? 私はただのスタッフよ。お客様のことなんて何も知らないわ」

 

 白々しい。

 界離は問い詰めるのを諦め、プレミアムチケットを提示した。

 

「記念撮影お願いします」

「ではカメラマンさん、どうぞ」

 

 ヤオモモの呼びかけで現れたのは――狼愛。

 

「なんでお義姉さん居んだよ!? どっから漏れた!」

「女の勘よ。それより・・・いい歳して男子中学生とデートとか、いい度胸してんじゃない」

 

 ミルコと狼愛が早速バチバチし始め、界離は内心で頭を抱えた。

 

(・・・今日、絶対まともに終わらない)

 

~~~~

 

 ギスギスした空気はあったものの、密着して撮ったツーショット写真にミルコはご満悦。

 二人はパンフレットを見ながら園内を歩く。

 

「やっぱ定番はジェットコースターか? メリーゴーランドも悪くねぇ」

「お化け屋敷はどうです?合法的に抱きつき放題ですよ

 

 界離が小声で囁くと、ミルコの耳がぴくりと動いた。

 

「・・・行く」

 

 単純な師匠に苦笑しつつ、界離は結界で“姉たちの位置”を探る。

 

(誰も配置にいない・・・行くなら今だ)

 

 二人はお化け屋敷へ向かった。

 

「こっちの動きが読まれてる・・・結城くんたち、お化け屋敷に入っちゃったよ」

 

 透が無線で報告する。

 

『油断してました! 結城サンの個性は色々と便利にchangeしてたんでしたネ!』

『そんな事より急ごう! 最後のウェディング体験だけは阻止しないと!』

 

 愛狸の言葉に、全員が頷いた。

 

「いや~、お化け屋敷舐めてたわ。結構びっくりしたぜ」

「俺もです。個性無しであそこまで驚かせるとは」

 

 ミルコは“怖がっているフリ”をしながら界離に抱きつき、匂いと感触を堪能していたため機嫌は最高だった。

 

「楽しんでいただけたようで何よりです、お客様。次はあちらのアトラクションなどいかがでしょう?」

 

 スタッフに扮した愛狸が、コーヒーカップを勧めてくる。

 

(罠だな・・・)

 

 界離は匂いで即座に察したが、ミルコは上機嫌のまま飛び込んでいった。

 結果一時間ほど離れ離れにされ、後で八つ当たりされる界離だった。

 

 再合流後は、事前に調べていたアトラクションを回りまくった。

 屋内ジェットコースター、スーパーバイキング、地上五十九mの回転ブランコ、ウォータースライダー。

 ウォータースライダーでは風向きが変わり、二人仲良くずぶ濡れになった。

 

(・・・まあ、楽しかったけど)

 

 ミルコは満足げだった。

 

~~~~

 

「すっごい本格的だな・・・」

 

 そして迎えた目玉イベント――“ウェディング体験”。

 新郎用着付け室でタキシードに着替えながら、界離は驚いた。

 そして――

 

「ミルコさん・・・とても似合ってます」

「そ、そうか・・・?」

 

 ウェディングドレス姿のミルコは、普段の豪快さとは違うどこか照れたような、柔らかい表情をしていた。

 写真撮影では、ミルコは界離の腕にしがみつきながらニマニマが止まらなかった。

 

(・・・満喫してくれたなら、よかった)

 

 界離は心からそう思った。

 

 デートは無事終了。

 だがその後――愛狸、梅雨ちゃん、ヤオモモ、透、ポニーらが“真っ白に燃え尽きた状態”で界離を取り囲む大騒ぎが発生したのは、また別のお話。

 


 

 夜の帳が落ち、街の喧騒が遠くに沈んでいく頃。

 ミルコはソファに身体を預け、天井をぼんやりと見つめていた。

 暖房の効いた部屋の空気は柔らかく、しかし胸の奥は妙に熱い。

 

 スマホの画面には、今日撮った写真がずらりと並んでいる。

 指先でスワイプするたび、胸の奥がじんわりと温かくなる。

 

ああ、今日は・・・本当に、最高だった。

 

 一枚目。

 ウェディング体験の写真。

 純白のドレスを着た自分が、界離の腕にそっと触れている。

 

 普段の自分なら絶対に見せない、柔らかい表情。

 界離の隣に立つだけで、あんな顔になるなんて――自分でも驚く。

 

 二枚目。

 お化け屋敷で抱きついた瞬間のブレた写真。

 暗闇の中、界離の肩にしがみつく自分。

 界離の腕が、自然に自分の背中に回っていた。

 

 その瞬間の体温、匂い、呼吸の近さ。

 思い出すだけで、胸がきゅっと締めつけられる。

 

 三枚目。

 ウォータースライダーで二人ともずぶ濡れになった写真。

 界離の髪が額に張り付き、笑っている。

 その笑顔が、どうしようもなく眩しい。

 

 ミルコは画面を見つめながら、ゆっくりと息を吐いた。

 

「・・・なんだよ、これ。私、こんな顔・・・するんだな」

 

 照れくさくて、でも嬉しくて胸の奥がじんわりと熱くなる。

 

 ミルコはソファに寝転び、目を閉じた。

 界離の匂いが、まだ鼻の奥に残っている。

 石鹸の香り。

 少し汗の混じった、でも嫌じゃない体温の匂い。

 風に揺れたときにふわりと漂った、あの柔らかい香り。

 

 匂いは記憶を呼び起こす。

 ミルコはそれをよく知っている。

 

 だからこそ――今日の記憶は、鮮明すぎるほど鮮明だ。

 

「・・・界離、ほんと・・・反則だろ」

 

 思わず呟き、枕に顔を埋める。

 耳まで熱くなるのを自覚しながら、足をばたつかせた。

 今日の界離の言葉を何度も思い返す。

 

「誰にも言ってませんよ」

「ミルコさん、似合ってます」

「楽しかったですね」

 

 どれも短い言葉なのに、胸の奥に深く刺さる。

 界離の優しさは、まっすぐで嘘がない。

 その優しさが、時に危ういことも分かっている。

 

 だからこそ――独占したくなる。

 

 誰にも渡したくない。

 誰にも触れさせたくない。

 誰にも甘えさせたくない。

 

 その感情は、決して醜いものではない。

 ミルコにとっては、守りたいという誓いの裏返しだ。

 

「・・・私、ほんと・・・界離のこと・・・」

 

言葉にしようとして、喉が詰まる。

 代わりに、胸の奥がじんわりと熱くなる。

 

 ミルコはノートを取り出し、ペンを走らせた。

 

――次に会うときの作戦。

 

 大胆すぎず、でも確実に距離を縮める。

 界離が困らない程度に、でも心に残るように。

 

 界離の好きな匂いを覚えておく。差し入れを自然に渡す。次はもっと自然に腕を絡める。

 界離が疲れていたら、さりげなく肩を貸す。褒めるときは短く、でも真っ直ぐに。

 

 ミルコは自分の字を見つめ、ふっと笑った。

 

「・・・私、何やってんだろ」

 

 でも、嫌じゃない。

 むしろ、楽しい。

 界離のために何かを考える時間が、こんなにも心地いいなんて。

 

 窓の外では、街灯が淡く揺れている。

 ミルコはノートを閉じ、写真をもう一度だけ見返した。

 

 界離の笑顔。

 自分の笑顔。

 二人の距離。

 

 そのすべてが、胸の奥に静かに沈んでいく。

 

「・・・界離。私は、お前を守るよ」

 

 その言葉は、誰に向けたものでもない。

 ただ、自分自身への誓いだった。

 

 強くあるために。

 優しくあるために。

 そして――界離の隣に立つために。

 

 ミルコはスマホを枕元に置き、スクリーンセーバーを今日のツーショットに設定した。

 眠りにつく前の最後の視界に、界離の笑顔を置いておきたかった。

 

 目を閉じると、今日の続きが浮かぶ。

 次に会うときの言葉。

 次に触れるときの距離。

 次に見せる笑顔。

 

 余韻は静かに、深く、ミルコの胸の中で燃え続けていた。




バカテスとか他のギャグラノベアニメで友人たちと死ぬほど笑った中学生時代を送った作者です
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