1つ.一年A組生徒たちは、界離の事で頭がいっぱい
2つ.猫に上着を盗られた界離と共に、校舎内を爆走
3つ.この騒動で、全校生徒の八割近くが被害に遭うのだった
戦闘訓練編です。ちょっと長いです。
ついでに今作品の雄英の生徒数は
ヒーロー科:一クラス20名の二クラス計40名
普通科:一クラス40名の三クラス計120名
サポート科:一クラス30名の三クラス計90名
経営科:一クラス40名の三クラス計120名
となっています
A組で迎えた雄英生生活二日目の界離の時間はただただ普通に流れていった。
「んじゃ、この中で間違っている英文はどれだ?」
(((普通だ・・・)))
「Everybody,heads up!!盛り上がれ~!!」
(改めた思うけど、プレゼント・マイク先生も相澤先生もいつ教員免許取得したんだろ?)
実技試験の司会兼アナウンスを担当していたプレゼント・マイクが担当をしている英語の授業を受けつつ、界離は素朴な疑問を抱いていた。
午前中の授業が終わり、昼休憩になるとクックヒーロー・ランチラッシュ*1の料理を求める生徒たちで食堂が溢れていた。
「あ、結城君!結城君はお弁当なんだね」
「緑谷・・・と飯田と麗日さんも一緒なんだ」
「良ければ君も一緒にどうだい?ちょうど席が空いているぞ」
「どうぞどうぞー」
「じゃあお言葉に甘えて」
庭で食べようかなと考え始めた矢先に緑谷たちと鉢合わせた界離は三人の好意に甘え同席する。その瞬間周囲から三人に向けて空気が軋む音がするほどの凄まじい殺気が三人に向けられ、ギリギリの戦いを繰り広げている野球選手のスライディングに匹敵する勢いで突っ込んできた梅雨ちゃん、透の六人で食べることになった。
余談だが、周囲の席には緑谷に先を越された他のA組クラスメイトたちがおり、彼女らを梅雨ちゃんが“ザコが”と目で嗤っており、界離はそれを梅雨ちゃん最近隠さなくなったな~と呑気に眺めるのだった。
そして午後。待ちに待ったヒーロー科の目玉と言えるヒーロー基礎学が始まる。
「わーたーしーがー、普通にドアから来たッ!!!」
「オールマイトだ!!?」
「本当に雄英の先生やってるんだ!?」
「あの
「1人だけ画風違うよ。思わず鳥肌たった」
オールマイトの登場にクラスのテンションが上がる。
「私が担当するのは"ヒーロー基礎学"!それはヒーローの素地をつくるため、様々な訓練を行う科目!1番単位の多い科目でもあるぞ!早速だが、今日やってもらうのは戦闘訓練だ!!」
「戦闘!」
「訓練ッ!」
オールマイトがリモコンを操作すると、壁から1年A組全員の出席番号が書かれたアタッシュケースが現れる。
「入学前に送ってもらった“個性届”と要望に沿ってあつらえた
「「「はいッ!!」」」
着替えたら順次グラウンドβに集まるようにと言って先に向かったオールマイトを追うように、各々自分の番号が記載されたケースを持って更衣室へ向かう。
皆が出ていったのを確認した界離も、『21』と書かれたアタッシュケースを開けて
再びの余談だが、忘れ物を取りに行くふりをして峰田が界離の裸体を覗こうと試みたが見回りをしていた相澤先生の手により無事お縄に就くことになったそうな。
◇◇◇◇
界離がグラウンドβに着いた頃には、
皆揃っておしくらまんじゅうをしてるかのように陣取っており、界離の呼びかけにもどこかぎこちないうえに緑谷に至っては顔が雄弁に物語っていた――結城君にだけはバレるわけにはいかないと。
「あれ?八百万さんはどこに・・・」
「呼びましたか?」
一人見えないことに気づいた界離が呼ぶと、おしくらまんじゅうしている皆の中から件のクラスメイトが姿を現し、界離だけでなくスレの仲間たちも言葉を失う。
それもそのはず、彼女の戦闘服は―界離の前世の世界でも―海辺ですら着用には勇気がいるであろう代物、黒のマイクロビキニとベルトだけなのだから。
「・・・寒くない?そのコスチューム」
―そこかい!?いやそうかもしれないけど!そこかい!!
十九人全員が固唾を呑んで見守ってる中、界離から出た言葉に皆の心が一つになる。
「少し寒いですが、これも立派なヒーローになるため。問題ございません!」
「そっか・・・なら大丈夫だね!」
―いや問題しかねーよ!!これじゃヒーローじゃなくて露出狂だよ!てか結城君も何言ってるの!?
いくら女子に寛容だとしても、さすがにこれを見られたらマズイと思ってたからこそ必死に隠していたのにあっさりと受け入れる界離に理解が追い付かなくなる十六名*2。そこにフリーズから復活したオールマイトがやって来る。
「おーい・・・その恰好はヒーロー倫理的にアウトだよ」
「「ええッ!?」」
―そりゃそうだろ。
オールマイトの言葉に動揺する八百万と何故か一緒になって驚いている界離を除いた全員の気持ちが一つになり、緑谷や爆豪をはじめ数人が空を見上げる。
何故、気持ちが一つになるという重要イベントが下ネタみたいなもので消費されるのか。
ヒーロー科の青春とは一体・・・。
◇◇◇◇
「いろいろ言いたいことはあるけど・・・・・・まず八百万少女!」
「はい!」
「論外!」
「何故ですかッ!?」
「え・・・・・・そこを反論されるのはさすがに想定外だよ」
「私の個性は『創造』。体内から造り出した物質を、皮膚を通して生み出す関係上これがベストのコスチュームですわ!」
そう言って胸元から無地のハンカチを造り出し、界離に手渡す。
一応クラスメイトとはいえ、女の体から出てきたものを躊躇いなく受け取り、あまつさえ一言礼を言う界離にあいつすげーと皆感心する。
「いやいやいや、だからってこれはマズいよ・・・仮に活動区域を海辺に限定してもアウトだよ。クレームばんばん来るから。これミッドナイトくんの経験談ね」
「乳首と性器が見えなければ法には触れないのでは?」
怪訝な顔でいまいち納得のいってない八百万を、皆*3が呆然と見つめる。
―なに言ってんだコイツ
「お尻や太ももとか胸もそうだけど、過度な露出は場合によっては公衆に嫌悪感を与えるという理由で軽犯罪法違反になるのさ。ところで君のコスチュームって本当ににそれだけかい?他に入ってなかったかい?」
「上着が一枚ありましたが、あれは冬用ですので」
「だからかぁ・・・たぶん企業は一年通してそれとセット運用すると思ってたわけだね。・・・一応聞くけど、まさか丈がメチャクチャ短いとか透けてるとかはないよね」
こんな無茶苦茶なコスチュームにリテイクが入らなかった理由が分かり頭を抱えるオールマイト。そして嫌な予感を感じつつ、どうか外れていてくれと祈りながら冬用のコスチュームについて問いかける。八百万は腰に手を当て得意げに答える。
「トレンチコートなので問題ありませんわ」
―それじゃ春先に出てくるヤバい奴じゃねーか。なにが冬用だ。
その場にいる全員の喉元まで出かけた言葉は、八百万があまりにも自信満々だったので飲み下された。
そして薄々勘付きだす。昨日更衣室で気の利いたことを言ってくれた勇者だと思ったが、まさかこいつ。
「あー・・・とりあえず下か上どっちか着込んでね」
その言葉に渋々と従い、ホットパンツを造る八百万に界離はコスチュームの上着を渡す。
よろしいのかと問いかける八百万に、予備があるから気にしないで・・・でも破くのはやめてねと言う界離に皆あいつスゲーなと感心させられる傍ら、蛙吹梅雨が舌打ちしあばずれがと悪態をついていた。
そして運悪く梅雨ちゃんの隣にいてしまった口田彩華は恐怖で震えていた。
ローライズだったため腰回りの紐が見えるおかげで、私はこんな悪趣味な水着をしていますと合法の範囲から主張しているようでかえって変態度数が上がってしまった気がする。
そんな八百万が界離に向き直り、不安そうに尋ねる。
「結城さん・・・私、オールマイト先生の言うように嫌悪感を抱くような身体でしょうか?」
その言葉にオールマイトにすら―宿敵と闘った時以上の―凍てついた緊張が走る。
―セクハラを火薬にした爆弾の生まれ変わりか!?嫌われたいなら勝手に嫌われてろ!あと今言うな俺らが巻き沿い喰らったらどうしてくれる!?
と叫びたくなったが左手で口を抑え、右手で首を絞めて何とかこらえる爆豪と顎が外れた緑谷といった具合にちょっとずつだがダメージが蓄積していく一年A組の女子たち。
それと同時に抱いていた懸念が確証に変わる。
たぶん八百万はただの天然だ。そこに男にセクハラして楽しむといった悪意は存在しない―ある意味でもっとも
喋り方に立ち振る舞い、細やかな仕草がどこか浮世離れした感があったしたぶん箱入り娘のお嬢様なのだろう。雄英に受かるくらいなのだから知識くらいはあるのだろうが、それは生理現象や子孫を残すためのものであって、付随する快楽方面はきっとからっきしなのだろう。
「他の人は分からないけど、俺は別に嫌悪感なんてないよ。むしろむしゃぶr・・・何でもないよ!」
思わず正直に喋ってしまいそうになり、慌てて誤魔化す界離。だがこの世界の女子たちにそんな小細工は意味がない。
―いま結城君むしゃぶりたいって言いかけたよね?男子が女の体に興味津々って、エロ本の中だけの話だよね?あれ、でも昨日から結城君って。
「あの・・・結城さん!」
「なに?」
「今から私と子d」
「言わせねーよポニーテールッ!!!!」
パニックになったのか、それとも上着から漂う界離の匂いにやられたのか、あるいは両方か。いずれにせよ洒落にならないことを口走りそうになった八百万を爆豪が爆破で吹き飛ばして止める。
それだけじゃ止まらず、鼻血を流しすぎて倒れる者にお手洗いに駆け込む者などが続出しグラウンドβは阿鼻叫喚の地獄に。
―どうして、こんなことに・・・て半分は俺のせいか。
予備の上着を着ながら途方に暮れる界離であった。
紆余曲折あったが、ようやく訓練が開始された。
ヴィラン側が核兵器をもってアジトに隠れ、それをヒーロー側が処理するという状況設定にヴィラン側は制限時間まで核兵器を守りきるかヒーローの確保、ヒーロー側は制限時間までに核兵器の回収かヴィランの確保で勝敗が決まるというのも原作通りだ。
ただ一点、原作と異なるのは今回のチーム分けは完全なランダムで五人一組―人数の関係上一組だけ六人になる―であること。何故って?原因は聡明な者なら見当付くからここでの説明は省きます。
初っ端から―普通じゃありえない―ハプニングに見舞われたものの、初の実戦形式という事もあって皆に緊張感が漂う。
チーム分けの際にこれまた原作通りの飯田と緑谷のやり取りが発生しそれを微笑ましく思いながら順が回ってきた界離はくじを引く。
◇◇◇◇
【ビバ!】戦闘訓練
前スレまとめ>>貞操逆転ヒロアカ転生者スレまとめ
1:貞操逆転ヒロアカ転生者
遂にやってきた実戦の時・・・やっぱり緊張するな
2:異世界森の民
そうだね・・・変なハプニングに見舞われてなければな
3:男女比1:5世界の新社会人
あれは六割八百万さんが原因だから
4:異世界Dキッズ
まさかマイクロビキニで来るなんて予想できなかったよ
5:男女比1:30世界のアイドルメンバー5
でもヤオモモって、原作でもコスチュームが過激すぎて一度リテイクしてるんだよな・・・さすがに原作でもマイクロビキニとは思いたくないが
6:転生元トップレス
それにしても界離君のコスチュームってウルトラマンメビウスのCREW GUYSのスーツだよな。スッゲー似合ってるぞ!
7:貞操逆転ヒロアカ転生者
そう?不安だったけど、似合ってるならよかった!
8:男女比1:30世界のアイドルメンバー4
ところでチーム分けってどうなったんだ?
9:貞操逆転ヒロアカ転生者
Aチーム:緑谷 麗日 蛙吹 轟 切島
Bチーム:常闇 瀬呂 芦戸 青山 角取
Cチーム:八百万 峰田 口田 葉隠 耳郎 障子
Dチーム:飯田 爆豪 結城 尾白 上鳴
こんな感じです
ついでに第一試合はヒーロー:Aチーム対ヴィラン:Dチームです。
10:転生波紋使い
初戦からして人数差で不利有りなのね・・・心してかかりなさい!
11:貞操逆転ヒロアカ転生者
はい!少し試してみたいこともあるので、失礼します
◇◇◇◇
五分が経ち、訓練開始の合図とともに緑谷たちヒーローチームが建物の中に入る。建物の見取り図に弱音を吐く麗日に任せてと言い梅雨ちゃんは耳を澄ます。
「五階に四人。一人こっちに向かってきてる」
「来てるのは多分かっちゃんだ・・・」
「私なら壁を伝って五階から侵入できるから、爆豪ちゃんを迎え撃った後三手に分かれて攻めるのはどうかしら?」
「スゲー!蛙って、そんなこと出来んのか!?」
驚く切島にケロロっと頷く梅雨ちゃん。
キハンシヒキガエルという蛙を皆さんはご存じだろうか?詳しい事は各自ググってもらうとして、この蛙は落雷のような轟音の中でも仲間の鳴き声を聞き分けられるほどの並外れた聴力を有しており、この特徴を使って索敵を行ったのである。
「外に出てろ」
緑谷が蛙の個性について考察を始めた矢先、轟が一階の壁に手を当てて建物全体を凍らせていく。凄まじい光景に皆呆気に取られ、緑谷は轟の個性についても考察を始める。だが次の瞬間彼らは再び驚くことになる。
建物全体を覆ったはずの氷が水滴一つ残すことなく綺麗さっぱり無くなったのである。さらに普通のビルの一階っぽかった中も、広いフロアに扉が七つだけというありえない物に様変わりしていた。
「先手を打たれたわね・・・この建物、界離ちゃんの個性で作り変えられてる」
「扉があるなら・・・どれか一つは正解があるはずだ」
轟が青い扉を開けると、何故か町を飲み込みそうなほどのミカンが転がってきたため首を傾げながら扉を閉めるとミカンは跡形もなく消える。今のはなんだ・・・と首を傾げつつ、漢なら迷いなくと叫びながら切島が赤い扉を開くと大量の猫が溢れ出てくる。
「あーまた違ったー!」
「どれか一つだけが次のフロアに通じている・・・昨日の結城君から考えられるのは・・・これか!?」
黄色の扉を開けて蜂蜜まみれになり、紫の扉で水浸しになる麗日をしり目に緑谷は得意の考察を駆使して緑の扉に狙いを定めノブを回すと同時に飛び込む。その先には――
「きゃー緑谷のえっち~」
何故か風呂場に繋がっており、シャワーを浴びていた界離の―やけに棒読みな―悲鳴と共にお湯をかけられ追い出される。何が起きたのか理解できず呆然としていた緑谷だが、時間が経つにつれて理解していくと同時に顔が赤くなり鼻血が垂れてくる。謎の光と湯気で巧妙に隠されていたが、確かに結城君の裸体が――
瞬間、緑谷の目に何かが映ったと同時に鋭い痛みが走る。あまりの痛みに立っていられず悶えていると誰かにマウントを取られ首を絞められる。
「緑谷ちゃん・・・何をしているのかしら」
いったい誰が、と考える間もなく地獄の底から聞こえたのかと錯覚してしまうほどドスの効いた声で梅雨ちゃんが問いかけてくる。
彼女の目からはハイライトが消え去っており、答えを間違えれば緑谷がヤバい目に遭ってしまうのは誰が見ても明らか。あまりの殺気に残る四人も迂闊には近寄れない。
「つ・・・梅雨ちゃん・・・僕は」
「梅雨ちゃんと呼ばないで!で、何をしていたのかしら?それとも、ナニを見たのかしら」
舌で首を絞めながら問いかける梅雨ちゃんに怯えつつ、殺されないようにしっかりと見たものを思い出しながら言葉を選ぶ。
「シャワーを浴びてる結城君が見たけど、泡とか湯気で覆われてたからほとんど見えなかったよ!」
「・・・・・・・・・・・・なら良いわ」
殺気が収まり、伸ばしていた舌を引っ込めた梅雨ちゃんを見て全員がホッとする――次の瞬間、赤の扉から爆豪が飛び出しその勢いのまま緑谷を捕まえ青の扉の向こうへ消えてしまう。
咄嗟に梅雨ちゃんが取り返そうと舌を伸ばしたが間に合わず、追いかけようと青い扉を開けたが鯖と鮭がトロッコで筋トレをしているトンチキ景色を見せられるだけで終わってしまう。
「やられたわ・・・」
◇◇◇◇
「引っかかってるね~皆」
場所は変わって五階の核兵器がある部屋では、爆豪を除くDチームの面々が炬燵で寛ぎながらAチームの様子を窺っていた。
「にしもよ、本当に良かったのか?爆豪を行かせて」
みかんを食べながら問いかける上鳴に、彼女の場合は好きに暴れさせたほうがいいとバナナを食べながら界離が答える。
「チームワークって、全員の息を合わせるって思われがちだけど・・・各々好き放題させるのもまた連携の一つなんだよ」
「そういう考えもあるのか・・・それより、これで良いのか!?授業中だというのに」
「今の僕らはヴィランだ・・・こんな風に惑うヒーローを嘲笑うのもヴィランの仕事のような物さ」
真面目な飯田はこの状況に戸惑いを覚えているが、界離の言葉を真に受けヴィランになりきって扉の罠にかかるAチームの皆を笑う。そんな飯田を真面目やな・・・と思いながらマスカットに手を伸ばす界離だった。
◇◇◇◇
制限時間残り七分をきったがAチームは三階の迷路で行き詰っていた。梅雨ちゃんの索敵を頼りに先を進んだがどこにもゴールが無く、轟に氷で足場を作ってもらい高い所から全体を見渡して見ても出口らしい物を見つける事は叶わなかった。おまけに諦めて引き返そうとした瞬間罠が動き出し、完全に袋のネズミ状態になっていた。
(罠を突破する方法はあるはず・・・過去を紐解けばその人の取る行動は自ずと見えてくるって界離ちゃんも言ってたわ)
界離との思い出を振り返りながら、ヒントを探す梅雨ちゃん。一つ、また一つと界離との思い出を巡っていく内に一筋の光が彼女を照らした。そう――あれは初めて界離の家に泊まった日の夜に。
「皆聞いて。もしかしたらだけど――」
「なるほど・・・やってみっか!」
梅雨ちゃんが気づいた突破口――それはかなり突拍子もない方法だったが、残り時間が五分を切った事と結城界離を良く知っている梅雨ちゃんの案という事もあり皆彼女の案に賭けることを選んだ。
まず轟が個性を使って入口まで道を作り、起動した罠は切島がガードしつつ入口へ向かう。あらかじめ全員を麗日の
飛ばされてる間も起動した罠―竹製の槍や矢―が襲いかかるが、限界まで硬化した切島には通じず投げられた勢いのまま入口の扉に激突する。
効果はすぐ現れた。物が当たったガラスのように空間に罅が入り、次の瞬間には砕け散りAチーム皆がDチームと核兵器がある五階の部屋に入り込んでいた。
「ありゃりゃ・・・もう少しかかると思ってたんだけど」
「昔界離ちゃんが見せてくれた・・・ふううん?城がヒントになったわ!」
両チームが核兵器のある奥の部屋で一堂に会する。
先手を取ったのはDチームの飯田。突破できた事に安堵するAチームの背後から襲いかかり、推薦合格者の轟を確保――しようとしたが、自身と飯田を囲うように氷壁を作られ逆に捕まってしまう。
だが界離には想定通りだったのか、飯田へ確保テープを巻こうとした轟の元に陽華突で突っ込んで来て飯田を救出して仕切りなおす。
「作戦通りいくぞ!飯田さん、翻弄よろしく!」
「任された!」
結界で遮蔽物が一切無くなった屋内で、界離が梅雨ちゃん、尾白が切島、上鳴が麗日、飯田がエンジンで他を翻弄しつつ轟を相手取る。
◇◇◇◇
均衡が崩れたのは一瞬の事だった。
轟が凍らせた床に足を取られた界離がバランスを崩した隙をついて、梅雨ちゃんの舌が凄まじい勢いで界離を拘束し動きを封じる。
モニタールームにいた者は、その鮮やかな手段に動揺する。一歩先を行かれた気分だった。
「蛙吹、あいつやりやがった」
芦戸は悔しそうに拳を握りしめる。アタシは普通のキスもまだなのに。
モニターの中では、しなやかで弾力性のある舌が猿轡ように界離の口を封じている。当然二人の舌は否応なく触れ合っており実質ディープキスだった。梅雨ちゃんの舌はそのまま視覚を遮断し、身体に巻き付いて自由を奪う。
―あっ!これヒーロー凌辱もののAVで観た事あるやつだ!
「あー!わたしこれ知ってマース」
思わず叫びそうになった峰田を遮り、角取ポニーが言った。
「丸飲みですねー。ジャパニーズHENTAIカートゥーンで観た事ありマース」
―エロアニメをそんな風に言うやつは初めて見た。
「オールマイト先生これいいんですか!?このままじゃ戦闘訓練じゃなくて、いかがわしい撮影会になるんじゃ・・・」
耳郎が羨まけしからん状況に可否を問う。
「まあ、舌による攻撃は合理的だし他意はなさそうだから・・・」
―マジかよ。
芦戸は額の汗をぬぐい、モニターを食い入るように見やった。拘束から脱けだそうと身を捩るたびに僅かに動く舌と、トロリとした唾液が淫靡な音を立てる。それがマズい。
―こんなの・・・こんなのエッチすぎる。
救援に行こうとした飯田を轟が妨害し、尾白切島に足止めされてるのを確認しつつ確保テープを取り出す梅雨ちゃん。
もちろん彼女の行動には一点の曇りも無く、たとえ同性でも同じように対処した事は間違いない。だが無力化したという事実からどこか油断していたのかもしれない。
近づこうとした瞬間、ヘルメットからドロリとした液体が溢れ一瞬拘束が緩む。
「油ね!」
「油断したね梅雨ちゃん!俺がこういうギミックを仕込んでる事は予想できたはずだよ」
その瞬間を逃すことなく、身を捩って脱出した界離はグローブからあふれ出た石鹸水で”シャボンカッター”を放ち梅雨ちゃんを間合いから遠ざける。
中身を失った舌がほこほこと湯気を立て唾液が滴り、界離は唾液と油でドロドロの身体で姿勢を低くして梅雨ちゃんと対峙する。
―なんの暗喩だよ!?やっぱAVじゃん!!
「蛙吹もう一回!頑張れ!やれー!」
モニタールームから下品なヤジが飛ぶ。だがヤジの主の願いは叶わない。
界離がヒノカミ神楽の大技を放とうとした矢先、タイムアップを知らせるアラームが鳴りDチームの勝利で第一試合は幕を閉じることになったからだ。
「緑谷と爆豪さん・・・上手くいったかな?」
メンバーがそれぞれモニタールームに向かいながら自分の立ち回りを振り返ってる中、界離の関心はビルの一階でコスチュームや体こそ無傷だが精神的な疲労で共倒れしている緑谷と爆豪に向いていた。
◇◇◇◇
A、D両チーム十人がモニタールームに戻ると、妙な熱気の残滓というか祭りの後のような寂しさが漂っていた。
「梅雨ちゃん、あんたはほんとによくやったよ」
瀬呂範子が背中を叩いて健闘を称える。だいたい皆同じ気持ちだ。
「にしても、緑谷と爆豪は何があったんだ?二人ともめっちゃヘトヘトになってるけど」
「色々あってね・・・ていうか、見てなかったの?」
モニタールームに居た全員が目を逸らした。緑谷たちが戦っている間に、色々とすごい事が起こっていてそっちに夢中だったのだ。
どうかしたのかと首を傾げる界離を何とか誤魔化した面々はその後講評を始める。
原作通りの素晴らしい八百万の講評*4に―想定以上に言われてタジタジになってるオールマイトには気づかないふりをしつつ―感心しながら他の面々の戦闘訓練を眺める。
モニターの中では次々と個性による理不尽の押し付け合いが繰り広げられ、そんなこんなで二十一人の戦闘訓練が終わる。
ほどよい疲労感と流れた汗、学友の個性と性格に触れられた事もあって不思議な充足感に満たされた。
良かった。最初はいいかがわしい撮影会になるかとヒヤヒヤしたが、やはり雄英だ。終わってみればしっかりとした戦闘訓練だった。
オールマイトも界離を除いた二十名も安堵する。
だが皆甘かった。身構えている時に
「オールマイト先生!一ついいですか?」
界離が手を挙げて、モニタールームから出ようとするオールマイトに声をかける。
「どうしたんだい?」
「今まで大がかりな個性の実戦訓練やるのも見るのも初めてだったので、皆の個性の使い方とか戦い方とか自習用に見直したいので記録映像とか貰えないでしょうか?」
瞬間、二十名全員の頭に電流が走る。ぶっちゃけると、界離の戦闘シーンが一回しか見れないのは惜しいと考えている者は結構居た。だがそこだけもう一回というのはいかにもスケベすぎるし、なにより梅雨ちゃんが怖いしこれがきっかけで失望されたら元も子もないので言い出せずにいた。
「あーそういうこと。じゃあ今回の映像ファイルは各自の端末に送っておくよ」
「ありがとうございます」
今度こそオールマイトはモニタールームから去っていった。
その夜、もちろん多くの生徒は映像ファイルを自習目的で再生した。後から自分の動きを見返すのは成長に有効な方法で、ヒーローのみならずスポーツ選手や俳優もよくやる。そこで甘かった動き、取れたはずの選択肢を反省して次に繋げることが出来るからだ。
映像は定点カメラのみだったが、意外と様々なアングルを切り替えられて非常に参考になった。
そして最後に残った第一回戦のファイルを再生すると同時にティッシュ箱を手繰り寄せる。勿論他意は無い。
一段落付くとなんともいえない倦怠感の中で、何故ヴィランは生まれるのか、ヒーローとは、平和とはなんなのかをぼーっと考え、一つの結論に至った。
時は少し遡り、放課後。原作では緑谷に初めて敗北し、プライドを砕かれた爆豪が改めて強くなることを誓う場面だがこの世界では少々異なっていた。
界離の策略で隔離された罠部屋で、身も心も限界まで消耗した彼女らは深層心理の奥まで落ちていく。
「嫌だった、見たくなかったで遠ざけたくて虐めてたっつう自覚はあンだよ」
「え・・・・・・」
「否定して優位に立とうとして・・・入ってまだ二日だが既に散々だ。テメェと見比べれば見比べるほど惨めになる」
頭を抱え込んでしゃがんだまま、爆豪は懺悔する。現実を受け入れたくなくて悪い方向に進んでしまったと、自分がソレを認めたくなくて逃げ回っていたのだと語る。
強烈な向上心とプライドの塊だからこそ、精神が未熟な頃から継続してきた否定も逃避もやめ時を見失っていた。
「デクだけじゃねえ、結界野郎も半分女もポニーテールも・・・俺より強い奴なんざゴロゴロいた」
「で、でも・・・」
「あいつの口車に乗って、嵌められて・・・テメーと戦って・・・・・・ガキの理想だけで出来ることを叩きつけられた。現実も見れてねえ奴が誰かに勝てるかよ」
ガバッと立ち上がり、そして───
「・・・・・・今までごめん!」
「・・・・・・ッ」
「これで終わり、なんざ思っちゃいねえ。許されるようなことでもねえし・・・お前からすりゃ身勝手もいい所だろうが」
頭を下げたまま、爆豪は続ける。
「言ってどうにかなるもんじゃねェけど・・・これは本音だ」
「かっちゃん・・・」
「緑谷さん・・・一発殴ってあげれば」
「結城君!?」
こっそり二人の様子を覗いていた界離が姿を現し、緑谷に提案する。
「君ら本音でぶつかったりとかしたことない?」
「本音で?」
「譲れないものがあって互いに納得出来なくて、譲歩も擦り合わせも出来ないならそうした方が早いよ」
原作知識のおかげで緑谷の異常性も、爆豪が緑谷を恐れていたことを知っていた。
人間同士の不和の原因の大半は、双方の誤解と不理解だったりする。
だがそれは悪い事ではない。生命とは未知を警戒して命を繋いできたのだから、それは先祖代々受け継いできた処世術と言ってもいいだろう。
「考えられるのは、こんだけ突き放してるのに何で付いてくるんだ、とか?」
「ッ!ああ・・・かもな」
「えっ!?」
爆豪曰く、何を考えているのか分からない。叩いても貶しても突き放しても張り付いて来て、無個性で何も無いはずなのに俯瞰したような目で見てくる。まるで何もかもを見下ろしているようにも見える態度が目障りだった。と。
「そりゃあ・・・普通はバカにされ続けたら関わりたくなくなるとは思うけど」
「・・・・・・」
「でも今言っていたように、何もなかったから・・・嫌なところと同じくらいに君の凄さが鮮烈だったんだ」
緑谷曰く、自分に無いものを沢山持っていた。個性もあって頭もよくて、だからこそ本気で追い抜きたくて。どんなヒーローよりも・・・・・・それこそオールマイトより身近な“凄い人”として見ていた。とのこと。
だからこそ、緑谷は爆豪を追いかけていたんだ。と。
「負けねえからな」
「僕だって!」
「結局やる事は変わらねえっ!俺はここからテッペンt」
「ちょっと待ったァッ!!」
雨降って地固まるか。―なんて典型的な感想を抱いたのも束の間、ズシャッ!と音を立てて現れたのはNo.1ヒーローオールマイト。
原作でも遅れて来ていたが、ここでも遅れて来た。
(原作読んでいた頃から思ってたけど、この人本当にヒーローであること取ったら何が残るんだろう?)
かなり失礼なことを考えながら、寮に戻る界離だった。
感想・高評価待ってます