1つ.界離のスレ仲間たちが謎の光に導かれ、雄英体育祭を観戦しに来ていた
2つ.再会したMt.レディとプッシーキャッツの間で修羅場勃発
3つ.開会式に遅れた界離だったが、派手な演出で乗り切るのだった
『聴かせて貰ったぜボーイ!!お前の熱い
『煩いぞマイク』
『お兄ちゃんファイト〜♪』
『あんた適応早すぎでしょ・・・』
大いに盛り上がる実況のプレゼント・マイク先生とは反対に、解説の相澤先生*1はいつものように気怠げだ。そして特別ゲストの愛狸は能天気に界離を応援し、狼愛はそんな妹に呆れ気味だ。
ちなみにミッドナイトは真っ赤に染まった顔を両手で抑えて悶絶していた。
『ミッドナイトさん、いい加減正気に戻って下さい』
「ハッ!さ、さて。開会式も終わった事だし、早速第一種目に行きましょう!」
B組の列に戻った界離がクラスメイトたちから熱烈な歓迎を受けている間に、相澤先生の言葉で正気に戻ったミッドナイトが声を上げる。
「いわゆる予選よ!毎年ここで多くの選手が涙を飲むわ!さて運命の第種目、今年は・・・」
全員の目が巨大スクリーンに向けられる。
「コレッ!!」
スクリーンにデカデカと、『ドキドキッ!?
「全クラスでの総当たりレースよ!コースはこのスタジアムの外周、約八km!我が校は自由が売り文句、コースさえ守れば何をしたって構わないわ!さあさあ、位置に着きなさい!」
「原作よりも長くなってんな・・・この世界故ってやつか?」
「ついでに言うと、
VIPルームでスタートラインに向かう選手たちを眺めながら、種目に込められた雄英の意図について考える楽郎と耕一。
他の皆も少し考えるが、カウントダウンが始まったので一旦考えるのをやめ目の前に集中する。
『スタートォオオッ!!』
赤く点灯していたシグナルが消え、青い三つの光が灯ると同時に始まりが宣言され選手一同が同時に走り出す。
「足が凍ったァ!?」
「あ、あたしのもッ!?」
「あいつだッ!ヒーロー科の、A組の野郎だァァァ!?」
と同時に轟によって地面が凍らされ、普通科とサポート科の生徒たちが足を凍らされ動きを封じられる。
「ここまでは原作通りね」
「だな・・・ここまでは、な」
『スタートダッシュを切ったのは轟ィ!地面ごと後続組を凍らせてトップに。独走態勢かーッ!?』
『いや、違うな』
リサリサネキとカガリネキの冷静な観察眼は、実況席にいた相澤先生と同じ見解に至ったようだ。
「チッ・・・やはりヒーロー科の奴らには先を読まれたか。だが、ここから先は通用させない」
合同特訓に参加していた界離、A組、B組の四十人は各々の個性を駆使して轟の氷から身を守っており、既に大接戦を繰り広げていた。
「すごいな・・・何人かは二学期どころかインターン編以降に披露した必殺技を既にモノにしてる子もいる」
「でも威力は原作初お披露目時と比べると劣ってる印象だな。まあ、今出せる最大出力で未来の技を再現してみたって感じか」
激しい首位争いを繰り広げている轟、界離、爆豪、緑谷だけでなく、他のヒーロー科生徒たちも少し離れてるが、充分逆転可能な距離に収まっている。
「最初の関門に到着したようね。峰田さんが仮想敵に殴り飛ばされたわ」
『さぁ、お待ちかねの障害物だ!まずは手始め第一関門!"ロボ・インフェルノ+
『相棒って、借り物競走の借り物の事だったんですね』
プレゼント・マイクと愛狸の実況の言う通り、仮想敵の先には小箱と沢山の小物が配置されたテント、そして審査員と書かれた襷をかけたロボットが設置されている。
更に、ミッドナイトがお題の品もしっかりと手に持っていることがゴールの条件と追加ルールを明かす。
「これって、将来自分の事務所を持った時
「考えられる事だな・・・」
最初の関門について考察し合うラルクネキと悲鳴嶼ニキの隣で、焦凍君が何か閃いたのかあっ!と声を上げる。
「どうしたの?『あっ!』って」
「いや・・・結城さん、そろそろ生徒どころか観客の度肝を抜くとんでもないことやらかす予感がして」
「流石に借り物競走と障害物競走で変なこたぁしねえだろアイツも・・・しないよな?」
不死川ニキが否定するものの、全員言いようのない不安が脳裏をよぎり口を閉ざしてしまう。
何というか、虫の知らせというか。
『ああッ!?紅白饅頭みたいな髪色の人がロボット凍らせたと思ったら、緑谷さんと爆豪さんとお兄ちゃんがロボット壊して先に行ってる!お兄ちゃんトップだ!!』
『最初の人もちゃんと名前で呼びな愛狸!』
愛狸の実況通り、轟が仮想敵の足を凍らせて動きを封じてる間に界離はフォーク、緑谷は黒鞭、爆豪はコスチュームなしの素手で
『先陣を切った結城に続いて爆豪、緑谷、轟もお題を取った!さあ果たして何が出るかぁ!?出口にいる審査ロボの判定に合格なるかぁって、あら?』
『カイ?何で逆走してんの?』
爆豪、緑谷、轟がプレゼント・マイクの実況通り監視ロボにテントから拝借した物品を見せて先に行くのに反し、界離は逆に仮想敵ひしめく広場の方に戻っていく。
「麗日さん!麗日さんいる!?」
「ここにおるよ」
フォークとナイフを駆使して大小複数の仮想敵を破壊しながらお茶子を探す界離。呼ばれたお茶子が手を挙げて返事すると、ちょっとごめんと一言伝えた界離が無駄のない滑らかな動きでお茶子をお姫様抱っこして爆豪たちを追って走り出す。
「「え?」」
突然の界離の奇行に選手一同、観客、マスコミ、テレビで観戦していた世界中の人々をはじめあらゆる人々が思考停止に陥る。
VIPルームで観戦していたスレ仲間たちは、焦凍君の予感が当たってしまったことに額を押さえる者、天を仰ぐ者、目を手で覆う者と反応は三者三様に分かれてるが、考えている事は皆同じだった。
ーああ、また面倒なことが起こる
『おおおお!なんと、ここでまさか女子生徒をお姫様抱っこして走り出したぞ結城界離!!一体何を考えてるんだあー!?』
プレゼント・マイクの実況に凪のように静かだった会場に喧騒が戻って来る。
そうしてる間にお茶子の分のお題を取り終えた界離が審査ロボに自分とお茶子の分のお題を見せ、合格判定をもらい第二の関門に向かっている轟たちを追いかけ出す。
『結城の引いたお題は・・・"休日の縁側で日向ぼっこしながらお茶を飲む姿が絵になる女"・・・こんなのあったか?』
『嘘でしょお兄ちゃん・・・そんな芋っぽい子に目付けてたの?』
審査ロボから受け取ったお題を読み上げ首を傾げる相澤先生と、兄を訝しむ愛狸。
『お?結城妹は何か引っ掛かりがあるようだな。何が引っかかったのか教えてくんねえかい!』
『えっ!?何で分かって?』
『愛狸・・・マイクがオンのまんまだから会場の皆に丸聞こえだったよ』
姉に指摘されてしまったと口を塞ぐ愛狸だったが、さっきの呟きを無かったことに出来ないと観念したのか俯きながら答える。
『前お兄ちゃんに戯れに結婚するならどんな女って聞いた時言ってたんです。"子供が独り立ちした後、休日の縁側で緑茶を啜りながら「界離さん」、「なんだい婆さんや」って穏やかなやり取りが出来る相手と結婚したい"って』
『そんな訳だからさ、愛狸は不安なのよ・・・カイがあの丸顔ちゃんと結婚したいと考えてるんじゃないかって』
愛狸と狼愛の説明を観客やマスコミだけでなく、選手たちも理解出来なかったのか動きが止まる。
いや、正確には脳が理解を拒んだのだろう。徐々に脳の処理が追いついてきたのか、お茶子の顔が茹蛸のように真っ赤に染まっていき、観客や他の生徒たちは別の意味で顔を赤くしていく。
「結城君・・・私、結婚したい人!?」
『なんて事だぁああっ!?結城界離、まさかまさかの体育祭中にクラスメイトへの求婚だぁああ!これは前代未聞どころじゃないぞおお!!』
「なんだと!?」
「ズルいぞ!」
「その男子を解放しろー!」
界離の逞しい腕に抱かれながら真っ赤にした顔を両手で隠し感激の声をあげるお茶子に合わせるように、プレゼント・マイクが捏造実況を入れたおかげで観客たちはお茶子に一斉にブーイングを浴びせる。
「あのDJ・・・余計な事言いやがって」
「無理もないやろなぁ・・・プレゼント・マイクの性格上、こんなおもろい情報黙っとるなんてでけへんやろし」
窓ガラスが揺れそうなほどのブーイングの集中砲火に辟易しつつ、茂昌たちは障害物競走の推移を見守る。
「うわぁ・・・観客だけじゃなくて他の女子生徒たちもお茶子ちゃんに嫉妬心むき出しだよ。緑谷と爆豪も思考停止してて界離に追い抜かれちゃったよ」
「そして界離の奴はお茶子をお姫様抱っこしたまま第二の関門を難なく突破して轟を抜いたな」
「麗日さん、明日の朝日を拝むこと出来るかな?下手したら変死体で見つかるなんてことになるんじゃ・・・」
楽郎、耕一、誠の心配にそんな事ないと言いたかったが、ヒロアカ世界の民度の低さに加えて男女比1:24の貞操逆転世界であるが故に、あり得るんじゃないかと思ってしまい全員何も言えなくなる。
『ハーイ!結城界離選手、トップを独走していた轟を抜いて愛しのプリンセスと共にトップだーッ!これはもう、ゴールインでウェディングベルかーッ!?』
『そんな訳ないでしょッ!!そんな易々と結婚するほどお兄ちゃんは安い男じゃ有りません!』
プレゼント・マイクの煽り実況に観客のブーイングが激しさを増し、愛狸が涙ながらに否定する。
頼むから余計なことを口にしないでくれと天に祈る不死川ニキを尻目に、界離たちは第三関門の地雷原に到着する。
原作同様後続が有利になるのを承知で地面を凍らせて先に進もうとする轟に対して、界離は風の呼吸壱ノ型で地雷を爆破させながらゴールへ向けて突進していく。
『いや結城の奴スゲーな!?避けもせず一直線かよ』
『爆発するより早く動き続けるか・・・だいぶ強引ではあるが、あの風の壁のおかげで後続も不用意に後ろを取ることはできない。随分便利な技だな』
プレゼント・マイクの実況と、相澤先生が解説している傍ら復活が遅れたせいで順位を落としてしまった緑谷がようやく地雷原に到着し、何かに使えると思って持って来た仮想敵の破片を使って地雷を爆破させて大ジャンプ。原作同様の派手な手段で一気にトップグループに躍り出た。
「結城君避けて!?」
「出久!?」
だがここで、かつて界離が緑谷に発破をかけた事が裏目に出た。
原作の同時期よりも筋肉と体重が増していたせいでバランスを崩してしまった緑谷が、地雷原を突破して風の呼吸を解除した界離への直撃コースに乗ってしまったのだ。
咄嗟にお茶子を放り投げて安全な場所へ着地させると同時に緑谷と衝突した界離は、ギャグ漫画のワンシーンのように転げ回った果てに緑谷に押し倒された格好になった。
『オイオイオイ、キスかーッ!?キスなのかーッ!?結城界離と緑谷が、熱い友情を交わしたのかーッ!それとも、激しい恋の火花かーッ!?』
プレゼント・マイクの扇情的な実況がスタジアムに響き渡り、観客席がどよめいた。マイクの言う通り、衝突の角度と勢いで二人がキスをしたように見えたからだ。
界離に覆いかぶさっていた緑谷は、顔を真っ赤にして動揺していた。
「ひ、ひえぇ・・・ごめんなさい!僕、とんでもないセクハラを・・・」
「気にすんな!それに、まだ競争は終わってないぞ!」
顔を青ざめていた緑谷の背中を叩いた界離は、お茶子を回収して走り出す。界離の背中を見て緑谷も我に返り、"フルカウル"を発動して界離を追う。
「来やがったか・・・ッ!」
先頭を走っていた轟と爆豪が、背後から迫って来る界離と緑谷を見て顔を顰める。
『さあさあやってまいりました。残り一km、トップを争うのはこの四人!!歴史上初の男性ヒーローとなるか、結城界離!No.2ヒーローエンデヴァーの娘にして推薦入試トップ、轟凍焦!圧倒的なタフネスとスタミナの産物、爆豪勝巳!驚異の成長速度、緑谷出久! 障害物競走の勝利は、誰の手にぃいい!?』
一進一退の攻防を繰り返す
誰もが最初の勝者か誰になるのかを見守る中、姿を現した五人が一斉にゴールテープを切る。
『ゴォオオルッ!!四人同時に見えたが、一体誰が一番にゴールしたぁ!?』
『お兄ちゃんに決まってるでしょ!?』
会場のメインスクリーンに"判定中"と文字が浮かび、やがて結果を映す。その結果はーー
となっていた。
『え!?なんであの芋女が!』
愛狸の困惑に同調するように、観客席もざわつく。何故、お姫様抱っこされてるだけの人がトップに立っているのか理解出来なかった。
メインスクリーンに映し出された画像から、確かに界離と緑谷より先にゴールテープを切る形になっていたがそれでも何故と誰もが判定ミスを疑う。
『ああっ!?そっか!』
『どうした、結城姉』
『最初の関門でカイ、あの子の分の借り物もしっかり取らせて合格判定貰ってた。だからあの子もしっかり走り抜いた事になってるんだ』
狼愛の言った事が本当か、相澤先生とプレゼント・マイクが第一関門の記録映像を確認する。
すると狼愛の言う通り、界離はお茶子を抱き上げた後すぐ突破せずお茶子にお題を取らせて一緒に審査ロボから合格判定を貰い突破していた。
「ええ・・・皆さん非常に納得いかないでしょうが、麗日お茶子さんは第一種目突破の条件を全て満たしています。よって、先ほどの判定は有効とみなし順位は変わりなしです!」
映像判定を見たミッドナイトが主審として審査結果を告げると同時に、再び観客席からブーイングが寄せられる。
「ふざけんな!」
「こんなのアリかよ!?」
「羨ましすぎるぞ!」
「表出ろそこの芋女!」
まだ始まったばかりだというのに一年の会場はブーイングの嵐に包まれた。
「なんか・・・ごめんねお茶子ちゃん。俺のせいで」
「いや結城君は悪くないよ!むしろ役得というか何というか」
「おいのほほん野郎・・・いつまで抱っこしてんだ!そろそろ下ろせや」
お姫様抱っこしたままお茶子に謝る界離に、お茶子は小声でむしろ役得だと答える。そんな二人に、さっさと降ろしてやれとツッコむ爆豪。
それもそうかと気づき、優しく下ろす界離。足がついたお茶子が立ち上がるが、力が入ってなかったのか界離の胸に寄りかかる形になってしまい更に観客のお茶子へのブーイングが増す。
「え〜・・・興奮冷めやらぬ状態ですが、第二種目の説明に入ります」
ミッドナイトの言葉と共に巨大スクリーンに競技名が表示される。次の種目は原作通り騎馬戦であった。
「チームは一つにつき、二〜四人で自由に組んで貰うわ。基本は騎馬戦と同じルールだけど、一つ違うのが先程の結果に従い各自にポイントが振り当てられること!」
(ここまでは青山君が四十三位で脱落したことと、一部生徒の順位が変動してる原作通りだな・・・待てよ、一位の人のポイントってたしか)
「与えられるポイントは下から五ポイントずつ増えていくわ。四十二位が五ポイント、四十一位が十ポイントといった具合よ。そして一位に与えられるポイントは・・・『一千万』ッ!!」
「「ハァッ!?」」
(やっぱりね)
明らかにおかしいポイント振り分けに、界離以外の皆が驚愕する。
「い、いいいいいいいい一千万ポイント!?」
「上位の人ほど狙われちゃう、下克上サバイバルよッ!!制限時間は十五分。その間にチームを作るのよ。騎馬戦自体は個性発動有りの残虐ファイト!!騎馬を崩してもアウトにはならず、どんなことをしても最後に首から上にポイントの鉢巻を巻いている者が勝者になるわ!でも悪質な騎馬狙いの攻撃は一発退場だから注意しなさい!!」
脳みそピンク一色だった気分が霧散し、絶望に顔を青ざめるお茶子にお構いなしにミッドナイトが騎馬戦の説明を続ける。
大慌てで一緒に騎馬を組んでくれる人を探すお茶子だが、誰も組もうとしない。むしろ憎たらしい相手を蹴落とすチャンスだと言わんばかりに、原作以上にメンバーを吟味してチーム作りをしている様にさえ見える。
「麗日さん、俺と組んでくれ!」
誰にも組んでもらえずオロオロしているお茶子と、そんなお茶子を眺めながらざまあみろと嘲笑っている観客たち。
罪悪感から見ていられなくなった界離は、お茶子にペア組を申し立てる。
(後の二人は、彼女らに頼もう)
ありがとうと、涙ながらに抱きつき喜びを表すお茶子とそんなお茶子に憎悪を向ける他選手と観客たちを見ないフリをしつつ、残る二人に声をかける界離。
超が付くほど波乱に満ちた騎馬戦が始まろうとしていた。
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