貞操逆転世界のヒロアカー序ー   作:あかんヤー

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貞操逆転世界のヒロアカ、前回の三つの出来事
1つ.お茶子とのあれこれを見たピクシーボブとMt.レディが、やさぐれていた。
2つ.界離と緑谷の頑張りもあって、轟は自身の炎を受け入れる。
3つ.特訓した事で、緑谷の体への負担が原作より増す懸念が生じるのだった


第31話: 決戦の行方wave.10

『Everybodyリスナー諸君!ノってるかー?! ガチバトルリーグ戦もいよいよ折り返しを迎えたwave.10最終試合!戦うのはなんと、これまでお互い無敗の結城界離と爆豪勝巳の二人だあ!』

『これって、実質勝った方が優勝確実って事だよね?』

 

 観客たちもプレゼント・マイクと愛狸と同じ考えなのか、かなり盛り上がっている。

 ただ、観客たちのコールが界離にばかり向けられているのが不満なのか爆豪の機嫌はだいぶ悪い。

 

「チッ・・・オイ結城」

「何だいかっちゃん?」

「かっちゃん呼ぶなやッ!最初から()()で来いや」

「アレって・・・もしかして、鎧のことか?」

「ああ。良いか、俺に舐めプしたら殺す!!最初から全力で来やがれ!!」

 

 どうやら爆豪は、轟に舐めプされた事もかなり根に持っていたようだ。そんな爆豪に、界離は好戦的な笑みを浮かべながら頷く。

 

「言われなくても、今の君相手に全力で行かなかったら勝てないのは分かってる。最初からフルスロットルで行くよ」

「ハッ!どんな力を使おうが俺はその上を行く!!いいか、俺はオールマイトをも超えるNo.1ヒーローになる!!相手が誰だろうがブッ殺すだけだ!!」

「俺だって、負けないさ!」

 

 ステージで向かい合う界離と爆豪は共に、いつでも戦えるようかまえる。

 

『レディ・・・スタート!!』

 

 ミッドナイトの号令に合わせて突っ込んでくる界離に向けて、籠手のピンを抜いて最大火力を放つ爆豪。

 避けずに爆風に飲まれる界離を見て、観客たちが悲鳴を上げるが爆豪は慌てる事なく手榴弾を手に取り握りつぶす。

 

「やっぱ来やがったか!焼夷弾(ナパーム)!!」

「風遁 大玉螺旋丸!」

 

【挿絵表示】

 

 爆風の中から"Ninja Raccoon"の鎧を纏った界離が飛び出してくると見越していた爆豪は、自身の手に滴る汗を利用して強化した爆破を界離の技にぶつけ相殺する。

 

「舐めプしたら殺すっつっただろ!俺に一度見せた技が通用すると思ったか!」

「思ってないよ。本命は、後ろさ!」

 

【挿絵表示】

 

 後ろへ跳躍して逃げようとした界離にアイアンクローをかました爆豪が追加の爆破を浴びせようとしたが、蜃気楼のように体が霧散し背後からウサギの鎧を纏った界離が踵半月輪(ルナアーク)を繰り出す。

 間一髪避けた爆豪は汗を波紋で操り、ウルトラ戦士の光弾のように連続発射して界離の追撃を阻止する。

 

『おおっとおっ!結城界離、今度はウサギっぽい鎧だあ!!ありゃなんて名前なんだ』

『あれは"Fight Rabbit"。遠近両方の戦いに対応できるバランス型らしいです』

『良いもんだろ?私に似て』

 

 ミルコが自慢げに胸を張っている間も、界離と爆豪の攻防は続いていた。

 爆豪の徹甲弾(A・P・ショット)を二丁拳銃のサポートアイテム*1で撃ち落とした界離が反撃に、拳銃を合体させて強力なエネルギー弾を放つが爆風地雷で捲き上げた土砂に阻まれる。

 

「喰らいやがれ、精密誘導弾(スマートボム)!」

「甘いよ!」

 

 爆豪が手榴弾内部の汗を波紋で操り巨大な水球を生成して殴り飛ばし、界離がは迎撃に風遁螺旋手裏剣を投げる。

 二つの球が衝突しそうになった矢先水球が弾けて五つに分裂し、それぞれが別々の軌道を描いて界離に襲いかかる。

 

「(おいおい・・・ますますウルトラマンの技みたいじゃないか)やってくれるじゃん!」

 

 全て避けながら左手のブレスレットのレバーを展開してエネルギーをチャージし、目にも止まらぬスピードで水球を弾いた界離は波紋疾走(オーバードライブ)全解放(レボリューション)を起動して爆豪に一気に攻めかかる。

 

『来たァッ!?お兄ちゃん最強の必殺技だ!これ絶対お兄ちゃんの勝ちだよ!』

 

 大興奮する愛狸に同調するように、観客たちも盛り上がる。

 残像が出るほどの高速移動で爆豪を翻弄しながら確実にダメージを与え続ける界離の姿に、誰もが界離の勝利を確信していたーーただ二人を除いて。

 

『それはどうかな?あいつ、結構面白いことやってんじゃねえか』

「あんなに楽しそうにしてるかっちゃん・・・初めて見たかも」

 

 ミルコと緑谷が似た事を口にしている一方、舞台では界離がトドメをさそうと爆豪の顔に向けて拳を振り抜いた矢先に異変が起きた。

 界離の右拳が突如爆破し、軌道がずらされたのだ。

 何が起こったのか分からず、距離を取ろうとした矢先にも、足元と背中で連続して爆発が起き動きを封じられてしまう。

 

「まさか、汗が爆発できるギリギリまで小さくして散布してたのか!?」

「ああ・・・調整にここまで手間取ったが、昔からセンスだけはピカイチでな。土壇場で上手くいったぜ」

『なんって事だぁああッ!!爆豪勝巳、やられてるだけかと思わせて、結城界離を逃げ場のない罠へと誘導していたのか!てかこれ、学生のスキルか!?』

 

 予想できなかった爆豪の罠に、相澤先生も愛狸も言葉を失う。

 何とか逃れようともがく界離だが、動くたびに爆発が連続で繰り返し発生するおかげで鎧にもダメージが溜まり所々ヒビも入り始める。

 

「逃がしゃしねえよ!絨毯爆破(クラスター・カーペット)!」

 

 波紋で操られた汗が凝縮しはじめ、爆破の規模も威力も大きくなっていく。

 前から後ろから右から左から。絶え間ない爆撃の連続に界離は姿勢を維持することすら困難となり、遂にはマスクの一部が割れ左目が露出する。

 

「マズイ!」

 

 界離がブレスレットに手をかけた瞬間、残りの汗が凝縮して界離に降り注ぎ大爆発を起こす。

 誰もが勝負あったとみなし、ミッドナイトが爆豪の勝利を告げようと口を動かす。

 

『勝者・・・爆g』

「風の呼吸壱ノ型 塵旋風(じんせんぷう)()ぎ」

 

 ミッドナイトが言い終わるより先に、粉塵の中から渦巻き状の突風が発生して爆豪に襲いかかる。

 難なく避けた爆豪は、かなり嬉しそうに笑みを浮かべながら相手を見据える。

 

【挿絵表示】

 

 狼のような意匠のマスクに、マントを纏った姿はこれまでの愛嬌ある姿とは異なり、力強さを第一に感じさせてくる。

 

『"Knight Wolf"まで使うんだお兄ちゃん・・・あれは免許獲得までとっときたいって言ってたのに』

「まさかこの姿まで披露する事になるなんてね・・・かっちゃん、君はプロヒーローをのぞいて俺が戦ってきた人たちの中で間違いなく一番強いよ。でもこの姿を出した以上、君にだけは負けられなくなったよ」

「上等だ!その鎧諸共、ぶっ潰してやるよ!」

 

 刀をかまえ、口から炎を吹き出す界離に対し爆豪はオレンジ色のオーラを身に纏う。

 

 

夕焼け色の波紋疾走(サンセットオレンジオーバードライブ)榴弾砲着弾(ハウザーインパクト)!」

山吹色の波紋疾走(サンライトイエローオーバードライブ)ヒノカミ神楽 輝輝恩光(ききおんこう)

 

 放った技と共にステージの中央で激突する二人。

 轟く爆音と衝撃波の規模は今までの比ではなく、会場の設備にヒビが入り一部では警報が誤作動を起こすほど大きかった。

 

『ど、どうなった?』

 

 技のぶつかり合いがステージを吹き飛ばし、土煙で完全に見えなくなる。衝撃波から身を守っていた観客たちも収まった事で身を起こし、破壊されたステージに倒れ伏す界離と爆豪の姿を発見する。

 両者共にコスチュームもボロボロであり、相打ちだった事が伺える。

 

『これって、引き分け?』

『いや違うな。二人はまだやる気だ』

 

 引き分けだと思った愛狸が相澤先生の言葉でステージに目を向けると、そこにはヨロヨロと立ち上がる界離と爆豪の姿があった。今にも倒れてしまいそうな程にボロボロで、もはや個性どころか波紋を使う余力も残ってなさそうだった。

 

「「うぅ・・・うおおおおおおっ!!」」

 

 界離の拳が爆豪の、爆豪の拳が界離の左頬に突き刺さる。

 そのまま両者は拳を振い相手に叩きつける。鳴り響く打撃音が壊れたステージによく響く。

 その光景に観客たちは静まり返っていた。

 “個性”の台頭によって既存のスポーツが過疎化され、かつてのオリンピックの代わりとして注目を浴びる雄英体育祭ーー多くの個性のぶつかり合いの果てに辿り着いた試合が、個性も派手もない地味で泥臭い殴り合いで決められようとしていた。

 しかし、観客席の者たちはその事に呆れる訳でも失望する訳でもなく二人から目が離せなかった。

 

「いっけえー!結城君!」

 

 その時、選手用の観戦席から界離へ声援が上がる。

 隠された事情を知っている葉隠が、心から楽しそうな界離の姿を見て思わず個性が不安定になっているのにも気付かず声援を送ったのだ。

 

「負けないで界離ちゃん!」

「ファイトです!結城サン!!」

「気合いですわ!結城さん」

 

 続けて梅雨ちゃん、ポニー、ヤオモモが声援を送ると決壊したダムの様に観客席から声援が溢れ出す。

 

「負けないで・・・負けないで、かっちゃーん!!」

「負けんな爆豪!」

 

 A組だけではなく、B組からも各々が応援する者に熱い言葉を投げかける。

 

「取り敢えず様子見ですね」

 

 今日一番の熱狂に包まれながら殴り合う界離と爆豪を見て、審判を務めるセメントスは二人に熱くなりつつも冷静に止めるべきタイミングを見極めている。

 

「ミッドナイト?」

『良いわよ二人とも!この展開!性別を超えた友情と青春の殴り合い!!超絶熱くてサイコーよ!!』

 

 無線越しに聞こえてくるミッドナイトは超ハイテンションになっていた。顔を上げてみれば、鞭をビシバシ振い声援を飛ばしていた。

 そんな二人の試合は当然テレビ中継されており、雄英に近い港に係留していた海自の護衛艦でも休憩中の自衛官たちがスマホで観戦していた。

 海自の中でも、界離を応援する者と爆豪を応援する者で分かれており食堂はかなり騒がしくなっている。

 

「・・・笑ってる」

「「え?」」

 

 そんな中、黙って試合を見ていた狼愛の不意の言葉に他の自衛官たちは思わず顔を向ける。

 重々しく叩き込まれる爆豪の拳に、口元から僅かに漏れた血を拭いながらお返しと拳を叩き込む界離の顔は晴れやかな笑顔だった。

 

「楽しいのねカイ・・・友達と心の底から本気で勝負できるのが楽しくて仕方ないのね」

 

 小六の時に遭遇した事件以来、どこか笑顔に陰りがあった弟が久しぶりに見せる心の底からの笑顔に、姉は感慨深くなる。

 きっと、祖母も母も妹も同じ気持ちに違いないと。こことは違う場所で界離の戦いを見守っている家族を胸に思い浮かべながら狼愛は持ち場へ戻る。

 なお、観戦に夢中になりすぎていた同僚たちは皆揃って上官に怒られる事になったそうな。

 

『結城ぃいい!!』

『かっちゃんん!!』

 

 互いに笑みを浮かべて、ここ迄凌ぎを削り合った好敵手(ライバル)の名を叫び拳を振るう。

 酷く鈍く生々しいく重々しい音が周囲に木霊した。

 互いの頬に突き刺さった拳ーー最高の一撃だった事だろう。それを受け、苦しみに溢れた声が漏れる。

 

「グッ!」

「あ・・・あ!」

 

『こりゃ・・・ダブルノックアウt』

『違うな!』

 

 再び静まり返る観客席。

 プレゼント・マイクがダブルノックアウトかと言いかけた時、何かに気づいたミルコが遮る。

 

「・・・あぁ」

 

 グラリと爆豪の身体が糸の切れた人形のようにバランスを崩し、前方の界離にもたれかかる。

 

「ちっくしょう・・・あと一歩届かなかったか」

「ちゃんと届いてるよ・・・でも、俺の方がちょっと先に行ってたかな」

 

 界離の言葉に満足そうに笑みを浮かべながら、爆豪はゆっくりと膝をついて大の字に仰向けになる。

 

「勝負あり! 勝者、結城界離!!」

『決まったぁああ!!wave.10最終戦、無敗同士の戦い遂に決着!勝ったのは結城界離だぁああ!!』

 

 主審のミッドナイトの声、そして実況であるプレゼント・マイクの声と観客の大歓声を聞きながら、界離は笑みを浮かべ拳を大きく天に向かって突き上げた。

 今大会一の激闘を制した覇者を、誰もが大歓声と共に迎えるのだった。

 


 

「立てるかい?かっちゃん」

 

 呼吸が落ち着いてきたところで、再び波紋を使って体力を回復させた界離が爆豪に肩を貸しながら問いかける。

 

「かっちゃん呼ぶなや・・・あと、俺だってテメェ程じゃねえが波紋が使えんだからいちいち心配すんじゃねえよ」

 

 相変わらずトゲがある言い方だが、その表情はとても晴れやかであり心から満足していることが窺える。

 ボロボロになったステージをセメントスが修復しているのを眺めながら控え室に戻ろうとした矢先、警報が鳴り響く。

 この時観客たちはまた故障した警報の誤作動だと最初は思っていたが、警備に当たっているプロヒーローたちの通報で雄英の教師陣はただならぬ事態だと気づき対応に動き出す。

 

『上空に未確認飛行物体接近』

『緊急警戒体制発令!緊急警戒体制発令!』

 

「あれは・・・グローカーマザー!なんでデラシオンのスペースシップがここに?

 

 雄英教師陣が市民たちの避難誘導を始めたようとした矢先、グローカーマザーから三つ光球が生成され地上に射出される。

 光球はグローカーボーン*2へと姿を変え、突然現れた正体不明のロボットに観客たちはざわつき始める。

 独特の機械音を出しながら、周囲を見渡していたグローカーボーンは雄英高校の校舎に狙いを定めてプレスバルブを放ち、校舎を破壊しだす。

 爆散する校舎にパニックになる観客たちと、即座に対応に動き出すプロヒーローたち。

 Mt.レディが巨大化してグローカーボーンの一体を取り押さえ、残りの二体もマンダレイの指揮の元プロヒーローたちが各々の個性を駆使して制圧に取りかかり、雄英の教師たちをはじめとした会場に居たプロヒーローたちは一般人たちの避難誘導を始める。

 

『動くな・・・結城界離、死人を出したくなかったら大人しく我々に従え』

 

 界離と愛狸も相澤先生たちの指示に従い避難しようとした矢先、グローカーマザーから()()()()()()()()がして表情が強張る。

 

「今の声・・・」

「まさかあんたが直接来るとはね・・・元保須市警察署署長、浅羽鹿檻(あさはかおり)!」

 

 その名前に、この場(雄英)にいたほとんどの者たちに衝撃が走る。

 三年前の冬に、日本警察史上最悪の不祥事として世間を騒がせた警察官たちのリーダー的ポジションにいた女の名前が出たのだから、無理もないだろう。

 名前を呼ばれた襲撃犯は、ホログラムでデカデカと己の姿をーーまるで神であるかのように空中に投影する。

 

『相変わらず吐き気がするような面をしてるな・・・結城界離と腰巾着の妹』

(ヴィラン)にまで落ちぶれた女がよくほざく。ま、あんたもあんたの部下も揃って脳足りんどもには分相応な所に行けたようだけど」

『貴様、種馬の分際で!』

『まあ落ち着きなさい。どうせ今日から、あいつは私たちにひれ伏すしかなくなるんだから、最後の悪あがきくらい水に流してあげな』

 

 逆ギレした部下を諌める姿に、界離と愛狸は違和感を抱く。前の態度から真っ先に噛み付いてくると思っていただけに、妙に冷静な対応が出来る理由が分からず訝しんでいたら別の部下が二人の人間を連れてくる。

 

『結城界離、もう一度言う。三年前の我々への無礼を土下座で詫びろ・・・刃向かえば、貴様の義母と昔の友人の命は無いぞ』

「勉!?それと・・・まさか麗日さんのお母さんか!?」

『さあどうする結城界離?早く詫びなければ雄英もこの二人の命もこの地球から消えて無くなるぞ!もっとも我々にとってはどっちでも良いのだがな』

 

 勝ちを確信しているのか気持ち悪くほくそ笑む浅羽鹿檻を忌々しく思いつつも、二人の身の安全を守るため界離は迷う事なく膝を曲げる。

 愛狸が止めようとしたが、それを制して界離は土下座し二人の身の安全を頼みこむ。

 

『ハハハハ!無様なものだな結城界離!!下等な種馬の分際で我々を愚弄するからこのような目に遭うのだ・・・それと一つ、今更謝罪しようが遅いわ!その女とガキを殺せ』

 

 初めから二人を殺す気だった保須市警察署職員たちは嬉々として二人を乱暴に床に叩きつけ、後頭部に銃を突き付ける。

 

『よく眺めておけ結城界離。これは犯罪ではなく、貴様のようなゴミムシ風情が人間様に逆らった罰だ。貴様のせいで二人死ぬのを、その目に焼き付けるが良い!』

「あんたたちいい加減n」

「あんたたちの事だから、そんな事だろうとは思ってたよ・・・一つ忠告しといてあげる。その二人を撃ったら一生後悔する事になるから、止めとくのをお勧めするよ」

 

 人質がいる事に加え、空高くにいる故にプロヒーローも迂闊には近づけない状況に調子に乗った元警官たちは二人を殺そうとするが、界離は努めて冷静に止めるよう忠告する。

 

『はぁ?後悔すんのはテメェの方だよ!』

 

 三年前からやたら喧嘩っぱやかった女がオラつきながら勉の後頭部に当てた銃の引き金を引き、もう一人の女も引き金を引く。

 銃声と共に飛び出した弾丸が二人の頭部を貫き、脳髄と血飛沫を撒き散らすかと思われたが、何か様子がおかしい。

 

『うわッ!?目が、目があぁああ!!』

『なにこれ!?唐辛子?!なんd』

 

 二人の体から吹き出した唐辛子を直に浴びてしまい、苦しみ悶える元警官たち。

 

『だから言ったのに・・・一生後悔するって』

『貴様!?何故ここn!?』

 

 いつのまにか現れた界離は、強烈なパンチを元警官たちの腹にかます。唐辛子を浴びた痛みと腹からの激痛に悶える元警官たちを生ゴミを見るような目で見下しながら、界離はため息をつく。

 

『あのさ・・・襲撃かけるんだったら、相手の個性くらい調べとこうよ。俺の個性を調べとけば、人質とダミー人形をすり替えるなんて朝飯前だってすぐ分かったろうに』

『ガハ・・・ッ、ゲフ・・・だが、貴様も終わりだ。ヒーロー免許を有していない者が、個性を使って他者に害を与えれば、それは立派な敵犯罪(ヴィランはんざい)として立件されるぞ』

 

 ゲロを吐きながらも勝ち誇る浅羽鹿檻に、再度ため息を吐きながら界離はある紙を見せつける。

 

『個性使用・・・特別許可証だと!?』

「そ。あの事件の一ヶ月後に、あんたの部下三名が俺と愛狸の学校で起こした銃乱射事件の警察の対応の悪さが問題視された結果、個性の無制限使用が特別に認可されたのさ・・・犯人があんたら元保須警察署職員だった場合限定だけどね』

 

 目論見が外れたのか、歯軋りしている浅羽鹿檻と不愉快な仲間たちを見下ろしながら界離は相変わらずの爪の甘さに三度(みたび)ため息をつく。

 

(こんな奴らに、俺も愛狸も皆も振り回され続けてたのかよ・・・)

『クッソふざけやがって!!テメェだって女が怖くて仕方ねえ雑魚のくせに』

 

 喧嘩っ早い奴が、唐辛子の痛みに悶えながら叫ぶ。

 

『皆知ってんだぜ!テメェが生まれて三日目にあのババアに誘拐されかけたってのはな!!お前の優しさも、所詮は見せかけに過ぎないってことさ』

(へ〜・・・ただの馬鹿としか思ってなかったけど、初めてちょっとは当たりを引いたじゃん)

 

 人のプライバシーを無遠慮に晒してくる喧嘩っ早い奴の言葉に、三ミクロンほど感心しつつ爆豪との戦いで外れていた狼のマスクを被る。

 

『あんたの言うとおり、俺だって女の人が怖いって思った事は何度もある。優しくするのも・・・酷い目に遭わされたくないからってのもたしかにある』

『でもそれだけじゃないってのも本当さ。あの日、俺が誘拐されかけた日に俺を助けてくれた姉ちゃんの掌の温もりを忘れた事は一度もない』

『あの思い出があるからこそ、今の俺がある。いつか会えるであろうかけがえのない人の隣に胸を張って立てる男に、その人に好きだと言われることが苦しくない男であるために、俺は俺の弱さと一緒にこれからも前に進み続けていく!』

 

 刀をかまえ、ヒノカミ神楽をいつでも繰り出せるよう体勢を整える。

 

『最後に選ばせてあげる。ここで投降して大人しくタルタロスに行くか、俺に徹底的にぶちのめされてからタルタロスに行くか!これがあんたたちの人生最後の選択肢だろうから、よく考えて選べ』

『お前が私たちにぶちのめされるんだよ!』

 

 界離の問いにキレた元警官たちが一斉に襲いかかってくる。それを界離は日暈(にちうん)(りゅう)頭舞(かぶりま)いで全員返り討ちにする。

 

『クソがぁ!!』

 

 やられて自棄になった元警官の一人がDANGERと記されてるボタンを押した途端、警報が鳴り響く。

 

『自爆スイッチを押したのか!?』

『ハハ!ザマァ見やがれ、テメェも道連れだ!』

 

 (やかま)しい喧嘩っ早い奴を蹴って黙らせた界離は、スピーカーで外のヒーローたちに受け止めてくださいと頼み、結界で作った鎖で拘束した元警官たちを結界を応用したワープゲート*3へ放り投げて脱出させる。

 

(今がチャンスだ!)

 

 二十四人もいる部下たちを二人、三人ごとにワープゲートへ放り投げる界離に浅羽は拳銃で狙いを定め、引き金を引く。

 

「甘いよ!」

 

 匂いで狙われている事に気づいていた界離は二十四人目を放り投げると同時に振り返り、飛んできた()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()を素手でキャッチする。

 

(あとはこいつを・・・!?)

 

 外に逃すだけだと走り出した矢先、体から何かが抜け落ちたような感覚が全身を駆け回る。

 妙な感覚を覚えたものの、自爆まであと三十秒を切ったため考えるのを後回しにし浅羽の足元にワープゲートを開けようとしてーー何も起こらなかった。

 

「え・・・なんで!?」

 

 結界を発動しようとしても何も起こらず、思考停止に陥り一瞬足を止めてしまったが、残り十秒を告げるアナウンスに意識が現実に引き戻された界離は大慌てで浅羽を持ち上げ窓に向かって突っ走る。

 

「間に合え・・・間に合え!」

『五・・・四・・・三・・・二・・・』

「いっけえ!」

 

 輝輝恩光を使い、窓ガラスを突き破ってグローカーマザーから脱出した界離はその勢いのまま浅羽を全力で投げ、船から遠ざける。

 

0(ゼロ)

 

 背後から襲ってくる衝撃波と耳をつんざくような轟音が聞こえ、やがて何も聞こえなくなる。

 鼓膜がやられたと理解すると同時に、衝撃波をまともに喰らったダメージで痛む体に鞭打って浅羽を探すが、視界がぼやけて見つけることができない。

 完全に選択を誤ってしまった自分に悪態を吐きながら落ちていく界離だったが、巨大化しピクシーボブの飛行型土魔獣に捕まって飛んで来たMt.レディに受け止められ九死に一生を得るのだった。

 

◇◇◇◇

 

1:貞操逆転ヒロアカ転生者

いや〜面倒な奴らが現れるわ、突然個性が使えなくなるわとんでもない体育祭になっちまったよ

 

2:迅雷風柱

それ以上にテメェは無茶しすぎだ!

Mt.レディとプッシーキャッツも言ってたが、オメェはまだ学生なんだぞ。無茶は厳禁だ

 

3:貞操逆転ヒロアカ転生者

すみません・・・でもあいつらの狙いは俺でしたから、俺が突撃した方が周囲への被害を抑えられると思ったんです

 

4:男女比1:30世界のアイドルメンバー4

いかんな・・・こいつ緑谷と同じこと言ってやがる。

相澤先生の胃に穴開くぞこれ

 

5:男女比1:5世界の新社会人

ま・・・まあでも、これで行方をくらませていた百十五人の元保須警察署職員は全員お縄についたから、今後原作イベント以外で無茶する事にはならないはず

 

6:転生波紋使い

今の所それが唯一の救いかしら・・・

 

7:男女比1:30世界のアイドルメンバー5

にしてもまさか、あいつらが個性消失弾を持ち出してきたのは驚かされたな・・・いや原作で登場したタイミングを考えると、試作品が出回ってたとしても何もおかしくはないんだけどな

 

8:貞操逆転ヒロアカ転生者

ええ・・・オールマイトたちにも報告しときましたから、あとは塚内さんたちの取り締まりの結果を待つ事になりますけど

 

9:キューピット岩柱

それはそれとして界離君・・・君はまたやってくれたね

 

10:貞操逆転ヒロアカ転生者

何をです?

 

11:雷門中のエアコンヒーロー

地上に降りた後、Mt.レディとピクシーボブのほっぺにお礼と言ってキスしたこと言ってるんじゃないか?

実際狼愛さんもそれにめっちゃ怒っていたし

 

12:転生ユザレ

おまけに全世界への中継も止まってなかったから、世界中に確実に流れたでしょうね。

ついでに鼻血流しながら幸せそうな顔して気絶したMt.レディとピクシーボブの姿も

 

13:転生元トップレス

でお前が追い回されてる間に、体育祭の中止が決まってヒーロー科生徒たちは半壊した校舎の復旧作業に従事する事になったな。

観客たちが不満を口にしそうになった時に、お前が修繕が終わったら踊りますと宣言したのは驚かされたぞ

 

14:貞操逆転ヒロアカ転生者

俺のせいで中止になったようなものでしたから、罪滅ぼしのつもりです。

観客たちが納得してくれたのは不幸中の幸いでした

 

15:男女比1:30世界のアイドルリーダー

あの世界なら確実に事を丸く収められる伝家の宝刀やで。

特に君から言い出したのが良かったで

 

16:異世界森の民

ところで、一体何を踊るつもりなんだい?

 

17:貞操逆転ヒロアカ転生者

それは、本番までのお楽しみという事で

 

18:異世界Dキッズ

焦らすね〜

 

24:転生森の民

午後六時・・・修繕も終わっていよいよダンスの時間か

 

25:国家元首なMS乗り

界離君も個性が使えるようになったってはしゃいでいたけど、三時間で元に戻るとかマジの最初期の試作品って品質だったんだな・・・

 

26:迅雷風柱

始まったか・・・てか、『WINNER!ゴジュウジャー!』じゃねえか!

 

27:男女比1:30世界のアイドルメンバー5

確かにスーパー戦隊の歌ならダンスもあるから、ヒーロー科生徒だけじゃなくて雄英教師陣やプロヒーローも一緒に踊れるだろうけど・・・

 

28:男女比1:30世界のアイドルメンバー4

戦隊名あたりの歌詞は見事にぼかしてるな

 

29:貞操逆転ヒロアカ転生者

まだまだ、これだけじゃありませんよ!

 

30:異世界森の民

お次はドンブラザーズの『俺こそオンリーワン』に三曲目はキラメイジャーVSリュウソウジャーの『キラフルパーティー de キラケボーン』か

 

31:異世界Dキッズ

これだけの振り付け、あんな短時間でよく覚えさせたな・・・てか結界使えるからその問題は解決済みか

 

32:転生ユザレ

お次はジュウオウジャーの『レッツ!ジュウオウダンス』に、デカレンジャーの『ミッドナイトデカレンジャー』ね

 

33:男女比1:5世界の新社会人

一気に飛んだね・・・ミッドナイトデカレンジャーは梅雨ちゃん、透、ポニー、ヤオモモと一緒に踊るんだ

 

34:貞操逆転ヒロアカ転生者

はい!中学三年の夏に皆で気分展開に踊った思い出の曲ですから

ついでに、まだまだ続きますよ。今度はウルトラマンの歌で行きます!

 

 

 こうして、中止になった体育祭のラストは、界離と雄英一年ヒーロー科withプロヒーローによるダンス披露で幕を閉じた。

 この後、ヒーロー科四十名*4はヤオモモの家に集まり界離主催の打ち上げカレーパーティーに参加して余韻に浸ったのはここだけの話だ。

*1
調整に手間取り届いたのはUSJ襲撃の翌日であった

*2
サイズはオリジナルよりも小さい

*3
ど◯でもドアみたいなもの

*4
飯田は家庭の事情で不参加




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