1つ.ミリオとの模擬戦は、喰らい付けたが敗北で終わる
2つ.ミリオ、環、ねじれも界離に興味を持つ
3つ.界離がレディ・ナガンにラブレターを送ったことが梅雨ちゃん経由で皆にバレるのだった
何やかんやとどったんバッタン大騒ぎな一週間が終わり、迎えた職場体験初日。
集合場所の駅に着いた界離たちは各々の担任から注意事項を聞いていた。
「全員コスチュームを持ったな。本来なら公共の場で着用禁止の身だ。落としたりするなよ」
「はーい!」
「伸ばすな。"はい"だ芦戸」
「はい」
元気良く返事する芦戸を相澤先生が注意する。
「くれぐれも体験先のヒーローに迷惑を掛けないように。以上だ、行ってこい」
「「「はい!」」」
各々が体験先へ向かうため電車に乗る者、駅を出て別の交通手段の乗り場に向かう者と分かれ始める。
「ねえ・・・結城君」
「どうしたの麗日さん?」
東京行きのリニアに乗るため新幹線ホームに向かおうとした界離は、麗日に呼び止められる。
「その・・・憧れの人に会えるわけだし、法律の問題もあるからそうなるのは仕方ないかもしれないけど・・・いきなり新しい妻ですって連れてくるのはやめてね!鉄幹だって五歳になったばかりなんだから!」
(((妄想世界の時間が更に進んでる!?!?)))
麗日のトンデモ発言に全員がずっこける。
朝早いおかげか一般の利用客が少ないのだけが不幸中の幸いだったが、相澤先生は頭だけでなく胃も痛めてるのか腹を抑えている。
(帰ったら、胃薬持っていこう)
そんなことを考えながら、変なことを口走った麗日にジャーマンスープレックスを喰らわせ正気に戻す界離なのだった。
◇◇◇◇
いざ、職場体験
1:貞操逆転ヒロアカ転生者
お茶子ちゃん大丈夫かな?ガンヘッドの元で変な事にならなければいいんだけど・・・
2:男女比1:30世界のアイドルメンバー5
大丈夫だろ。お前が結婚してやれば
3:男女比1:30世界のアイドルメンバー4
プッシーキャッツの皆さんとMt.レディ、ミルコも忘れずにな
4:迅雷風柱
麗日の事は一旦置いといて、お前レディ・ナガンの事はどうすんだァ?
5:貞操逆転ヒロアカ転生者
取り敢えず様子見ですね。ヤバそうだったら・・・その時はその時という事で
6:転生元トップレス
行き当たりばったり作戦か・・・まあ、無理もないか
7:貞操逆転ヒロアカ転生者
東京駅に着いたので、一旦退出しまs
8:異世界森の民
どうしたんだ界離君?
9:貞操逆転ヒロアカ転生者
『おう!待ってたぜ界離』
『あれ、ミルコさん今月は九州を巡回する予定だったんじゃ?』
ー新幹線ホームを降りて在来線ホームに移動していた界離の目の前でキャリーバックに腰掛けているミルコー
10:貞操逆転ヒロアカ転生者
『宿泊予定のホテルに泊まれなくなっちまったから、予定変更ってやつだ。お前の所に泊めさせてもらうぜ!』
『?でしたらホームは反対側じゃあ・・・』
『合ってるぜ!お前の
『あら、そうでしたか』
賑やかになりそうだな〜
11:男女比1:5世界の新社会人
何で受け入れてるの界離君!?
ここツッコミポイントだよ!
12:男女比1:30世界のアイドルリーダー
以前界離君が甘露寺ちゃんのパーティーに呼ばなんだ時はごっつグズっとったのに、今回は妙に聞き分け良かってんはこれ狙ぉてたからなのか・・・
13:転生元トップレス
強引な手を使ってきたな・・・まあでも、ミルコだったら原作でもギリやりそうな事・・・なのか?
14:雷門中のエアコンヒーロー
二人で練馬区行きの在来線に乗ったな。界離はミルコも連れてナガンの元に行くのか・・・
15:キューピット岩柱
もはや何でも有りだな・・・
◇◇◇◇
電車を乗り継いで四十分ほど経過した午前十時。
駅から出た界離とミルコは、地図を頼りに練馬区南側の歓楽街を散策しつつレディ・ナガンの事務所へ向かっていた。
「ほう、ここか」
中央通りにある一つのビル――七階建てで、一・二階がハンバーガーチェーン店、三階がカフェ、四階が皮膚科、五階が歯科医院になっており、六階がレディ・ナガンのヒーロー事務所、七階が住宅になっているビルを眺めながらミルコが呟く。
結界を使って盗み見た公安の情報では、四年前*1の再開発の際にビル一棟買い取ったようだ*2。
(あれ以来ヒーロー活動もメディア露出も一切せずにどうやって収入得てたんだろうって思ってたけど、テナント収入で生活してたのか・・・前世の世界だったら完全に勝ち組人生だな。本人のメンタルを見なければだが)
界離の予想は当たっていた。
事務所の六階は綺麗に整頓されていたが、七階にあるナガンの自室兼私生活スペースは見るも無残なゴミ屋敷と化していた。
インスタント食品のカップ、ビールやエナジードリンクの空き缶が積み重なり、脱ぎ散らかされた私服で足の踏み場はほとんどない。
碇シンジが来る前の葛城ミサトの家そのものな汚部屋のテーブルに突っ伏していたレディ・ナガンは疲れとストレスで濁った目をしている。
「よう・・・結城界離だったか?体育祭で派手に暴れ回ったそうだな」
ナガンの声は界離が予想していた通り、荒んだトーンだった。
「はい。今日から一週間、よろしくお願いします!レディ・ナガンさん!」
「あー、別に何もしなくていい。お前みたいな希少な男子に怪我でもさせたら面倒だ。適当に過ごしておけ」
投げやりな態度で界離に背を向けつつ、隣のやつは誰だ?とアイコンタクトで問いかけたナガンに俺の師ですと同じくアイコンタクトで答える。
「分かりました」
投げやりな態度にこいつマジか・・・と唖然としているミルコを尻目に、短く答えた界離は空のゴミ袋を手に取り足元に散乱しているゴミの回収を始めた。
「は?・・・何してんだお前」
想定外の行動を訝しみつつ、界離を見つめるナガン。
「何って、掃除ですよ。こんなゴミの山じゃ、リラックスなんてとても出来なはずです。なのでまず環境から整えます」
界離は次々と空き缶やカップを回収し、ま、そう来るよなと苦笑いしつつ脱ぎ散らかされた衣服をミルコが洗濯カゴに入れ始めた。
「やめろと言ってるだろ!お前に迷惑かけるつもりは」
「迷惑なんかじゃありません!困っている人がいるなら、余計なお節介と言われようが助けに行く・・・それが俺が目指し、憧れたヒーローですから!」
「・・・勝手にしろ。ただし、訓練はやらんぞ」
ナガンは止めようとするが、界離の邪気を感じさせない真剣な眼差しに毒気を抜かれたのかため息と共に一言残して事務所へと降りていった。
部屋のごみを回収し終え、台所へと向かった界離は冷蔵庫を開けて愕然とした。
「ビールとエナジードリンクしか入ってない・・・これじゃ、心身ともに休まらないのは当然だよ」
無理やり眠るためと、眠気を覚ますためなのだろう。だとしても、こんなものに頼りきりになるまでほったらかしにしていた公安の連中への怒りも湧いてくる。
実家で鍛え上げた家事スキルが脳を高速回転させ、レディ・ナガンに最適な夕飯と一週間の食育プランを練り上げる。
「いきましょう!ミルコさん」
洗濯機に服を放り込み終えたミルコと共に、残りの服を近くのコインランドリーに持っていくついでに夕食の食材を買いにスーパーへと向かった。
~~~~
「で、こんなに買い込んで大丈夫なのか?・・・いやまあ、ビールとエナドリだけよりはマシだろうけどよ」
ぎちぎちになった買い物袋八つを二つずつ両手で持ち事務所に戻ってる道中、尋ねてくるミルコ。
「一週間分ですから、問題ありません。余った分は長期保存できる調理するので」
「なら、大丈夫か」
界離の返答に納得したミルコは、買い物袋を肩に引っ掛け直して空いた手で洗濯物を入れた籠を持ち上げる。
界離もミルコから受け取った買い物袋を肩に掛け直して事務所へ戻ろうとした矢先――
「ああごめん。立てるか・・・い・・・」
突然路地の影から飛び出してきた少女に気づくのが遅れ、ぶつかってしまう。ぶつかった勢いで尻もちをついた少女に声をかけた界離は、その少女の姿を目にした瞬間動揺で声が詰まってしまう。
無造作に伸びた白髪に、額の右から生えた小さな角。手足にびっしりと巻かれた包帯――間違えようがなかった。
(壊理ちゃん・・・!)
僕のヒーローアカデミア原作時空において、三か月後のヒーローインターン編のキーキャラクターである壊理であると。
「大丈夫?痛い所はない?(あの神、やっぱり特大の原作崩壊イベントを用意していやがった!)」
スレ仲間たちから改めて聞き出した原作知識のフラッシュバックと、警戒していた未来が現実になったことへの動揺を押し殺した界離は買い物袋を下ろし、
原作・アニメの描写から壊理の恐怖心を和らげる方法を考えての行動であり、効果があったのかは定かではないが壊理から漂っていた怯えの匂いが僅かに薄まっている。
「ダメじゃないか・・・ヒーローに迷惑かけちゃ」
(来やがったか・・・治崎廻)
何食わぬ顔で、遊び盛りで怪我が多いなどと宣う治崎に殺してやろうと黒い考えが脳裏をよぎる。
「おおそうか。見た目によらず派手な娘なんだな」
様子のおかしい弟子に代わりに、治崎と会話するミルコ。一見すると普通の会話だが、さっさと立ち去らせて壊理を回収したい治崎と直感で怪しいと確信し尻尾を掴もうとするミルコの高度な駆け引きが行われてるのが匂いで分かる。
「じゃ、私らはパトロールとか回らないといかんから行くぞ」
「あ・・・はi」
今事を荒立てるのは得策ではないのは界離にだって分かる。ヒーローという職業は、何をしても許される無敵の人になれる訳ではない。
公安で鍛えられた冷静冷徹な
「い・・・いかな・・・」
反射的に返事をした界離の袖をつかみ、震えながらか細い声で助けを求める壊理を見て、かつて病床から眺めた画面の向こう側のヒーローたちを夢見た
「一体何をしたんですか・・・この子、だいぶ怯えてますよ」
壊理を抱きかかえつつ、内心の激情を表に出さないよう努めながら治崎に問いかける。
「・・・叱りつけた後なので」
苛立ったゆえに一瞬瞼がピリついたが、人目があるここじゃ厄介と踏んだのか路地裏へ界離とミルコを誘う。
(このあと手袋を脱ぐそぶりを見せて壊理ちゃんを脅したんだよなこいつ・・・)
「壊理ちゃん・・・大丈夫。ボクを信じて」
怯える壊理の手を握って周りに聞こえないよう言い、背中に隠す界離。
「難解ですよ。最近の子供は・・・自分が何者かになる・なれると本気で思っている」
原作通りの手段で脅しをかける治崎を見て、最悪の未来を予見してしまった壊理は反射的に界離から離れようと動きかけた――
『大丈夫。ボクを信じて』
瞬間、界離の言葉が壊理の脳裏をよぎる。手から伝わる温もりが治崎から与えられたトラウマを和らげ、この人を信じて大丈夫だと誰かが訴えてくる――そんな奇妙な感覚を味わった壊理は界離の手を握り返す。
「特定の仕草をすれば怖いことが起こると学習させることで子供を支配し、周囲へ助けを求めることを阻止する・・・婆ちゃんが言っていた面倒な虐待者の常套手段を今したなお前」
「・・・だったら何だと言うんだ。英雄症候群の病人ども!」
「思う存分蹴飛ばせるってことs!?」
壊理が思い通りに動かなかった事に加え、今最も重篤な病人と見做していた界離の言葉で堪忍袋の緒が切れた治崎は取り繕うのを止めて両手の手袋を脱ぎ捨てる。
それを見て個性を使う気満々だと察した界離は、治崎を蹴るため飛び出そうとしたミルコを押しとどめる。
「壊理を渡してもらおうか。邪魔をするなら男だろうが容s」
「これはこれは難しいことを
界離の目から鳥のような青白い光が瞬きする間もなく飛び出し、治崎の目に侵入する。侵入した光は治崎の脳を侵し、記憶と認識を書き換えていく。
「・・・・・・そのようだな。他を当たるとしよう」
さっきまでの殺気が嘘のように霧散し、壊理の事が見えていないかのように無視して路地を出ていく治崎を見送る三人。
ミルコと壊理は何が起きたのか分からず首を傾げているのに対し、犯人である界離は不快な存在が視界から消えてくれたことに安堵のため息をつく。
「カイ・・・何をした?」
「話はあとで。急いで事務所に戻りましょう!」
ミルコの追及を躱し、結界で壊理を別人*3に変装させた界離は置いてきた荷物を回収して足早に事務所へ向かう。
道中ウワバミの元で職場体験をしていたヤオモモと拳藤に出くわしてしまい、何故ミルコと共にいるのか?その小さい子は誰かと問いかけられるハプニングに遭ってしまったが、ミルコは偶々会っただけ。壊理は姪っ子と誤魔化して追及を逃れるのだった。
~~~~
「戻りました!ナガンさん居ます?」
急ぎ足で戻って来た界離とミルコが事務所と居住区を探し回るが、レディ・ナガンはまだ帰ってきておらず、取り敢えず壊理をソファに座らせることにした。
「ごめんね壊理ちゃん、まだヒーローのお姉さんがパトロールから帰ってきてないんだ。もう少しここで待っててくれるかな?」
周囲を気にしつつ、界離の言葉に頷く壊理。
ありがとうと伝えた界離は買い物袋の中からいくつか食品を取り出し、二階の台所へ走る。
(俺たちを信じてくれたとはいえ、植え付けられたトラウマは根深い・・・なんとか壊理ちゃんの恐怖心と洗脳を解きほぐさないと)
スーパーで買ったココアパウダーを煎り、砂糖・牛乳を加えて煮立たないよう注意して温める。
「うん・・・これならちょうどいいかな?」
完成したココアにマシュマロを入れ、一階で待っていた壊理の元に持っていく。
初めて見たのか、不思議そうにココアを眺める壊理に飲んで良いんだよと伝えると、恐る恐るカップ*4を手に取りココアを飲む。
「おいしい・・・」
程よい甘さと温かさに緊張がほぐれたのか、張り詰めていた表情が緩み夢中になって一気に飲み込む。勢い余って零れたココアがワンピースに染みを作っていくのを微笑ましく見守っていた界離はお代わりを作るため台所へ戻る。
(これなら何とかなるかもしれない・・・やってみせるさ!ナガンさんも、壊理ちゃんも、二人とも助けてみせる)
ミルコには片付けの最中でたまたま治崎の資料を見かけたと嘘をつき、協力して欲しいと申し込む。
仕方ねえなと頭を掻きつつも、夏休み期間に三回デートすることを条件に協力してくれたミルコに礼を言った界離は結界を展開し、ゲートを開く。
レディ・ナガンと壊理。
二人の心に傷を負った存在を助け出すための計画を立てた界離は、決意を胸に必要な物を取りに出かけるのだった。
今回から原作崩壊がさらに加速していきます。