貞操逆転世界のヒロアカー序ー   作:あかんヤー

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 治崎廻の恐るべき計画の全容が判明し、掃討作戦に乗り出した界離たち。
 順調に進んだと思われた作戦だったが、かつて界離を狙った重性犯に協力していた山羊角の女たちから情報を得ていた治崎廻の罠に嵌り、個性を奪われプロヒーローたちとも分断されてしまう。
 更に原作ではプロヒーローとインターン中の雄英生たちと交戦した八斎衆全員がUSJの脳無のようにウルトラ怪獣へと変貌し、静岡では山羊角の女たちによって壊理が捕らえられる。
 絶体絶命の窮地に陥ってしまった界離たち。彼らは果たして、この窮地を乗り越えることが出来るのか!?


第40話:ならず者たちの挽歌・前編

「こっちも暇じゃないんでな。さっさと終わらせるぞ」

 

 抵抗を続ける界離たちを痛め続けていた八斎衆は、ゴモラを筆頭に遠距離攻撃持ちがとどめを刺そうとエネルギーをチャージし始める。

 痛みを訴える体に鞭打って立ち上がろうとする界離たちだが、先に打たれそうになってしまい皆咄嗟に防御姿勢を取る。

 

「ぬわッ!?誰だ!?」

 

 だが、攻撃が来ることなく暴発したのか八斎衆が弾き飛ばされる。そしてこのチャンスを逃す界離ではなく、即座にHマグナム01と02で壁と床を撃ち発生させた煙幕で退却できる猶予を作り出す。

 

「分散しましょう!デクはルミリオン、バクゴー(仮)はサンイーター、トーコは俺と!あと、ルミリオンとサンイーターはこれを」

 

 波紋が使えないルミリオンとサンイーターに武器を投げ渡し、トーコと共に逃げ出す。

 

「あいつら、逃しやがったか」

「かまわんさ玄野。通信も遮断し、個性も使えなくした・・・何もできやしないさ」

 

 不甲斐ない八斎衆に苛立つ玄野に、治崎は勝利を確信しているのか目くじらを立てる必要はないと余裕とも取れる事を言う。

 

「奴らの始末は任せる。玄野、そろそろ彼女らも戻ってくる頃合いだ」

 

 時計を確認した治崎は、玄野と共に協力者たちと待ち合わせ場所として指定しておいた応接室へと向かって行く。

 八斎衆たちも各々チームを組み、界離たちを追い始めるのだった。

 

◇◇◇◇

 

「ダメだ・・・相澤先生にも、オールマイトにも繋がらない。どうすれば・・・」

「無理なものは諦めるしかないさ。今やれる事を全力でやるしかない」

 

 デクとルミリオンの二人は、階段裏で周囲を警戒しながらコスチュームの損傷具合を確認していた。

 相澤先生たちだけでなく壊理ちゃんにも脅威が迫っているのにそれを伝えられないもどかしさに苛まれるデクを、ルミリオンがなだめる。

 すると足音が近づいてき、見つかったのかと二人とも身構える。

 

「しっかし若頭も人使いが荒いよな~。自分で植物状態にした相手を丁重に扱えとか、訳分んねえよ」

「それ、口が裂けても若頭の前で言うなよ。分解されちまっても文句言えないぜ」

 

 足音は八斎衆でも幹部でもない一般構成員のようであり、二人はデクたちに気付くことなく無駄話を口にしながら通り過ぎていく。

 

「組長を運んだ機関室の機械・・・あれで個性を奪う薬を散布するって若頭もすんげーこと考えるな」

「だがおかげで十五分しか効かないようだがな。まあ、今回のような事態にはうってつけだったようだがな」

 

 ちげーねえやとげらげら笑いながら一般構成員の二人はエレベーターで上に行く。尾行していたデクとルミリオンはエレベーターが上で止まったのを確認してボタンを押すが、セキュリティが効いてるのか反応しなかった。

 

「エレベーター・・・構成員じゃないと使えないのか」

「でも、組長の居場所と個性消失薬の出どころは分かりました。何とか結城君たちにも伝えることが出来れば・・・」

 

 絶望的な状況を打破する希望が芽生えた矢先、再び足音が、それも走っているのかかなりの駆け足で近づいてくる。

 

「あれ?通形とデクくんだ。何でここに居るの?不思議!」

「波動先輩!?」

「ネジレちゃん!?どうしてここに!」

 

 デクとルミリオンが遭遇したのは、キュアスイートと共にどこかへ飛ばされたネジレちゃんだった。

 お互い困惑しつつも情報交換を行い、デクとルミリオンは治崎の言う通り壊理ちゃんが攫われた事、ネジレちゃんはここが死穢八斎會の地下施設で通信を遮断されているうえに個性消失薬の散布で個性が使えなくなっている事を知った。

 

「突入まで長く見積もってもあと八分・・・とてもじゃないけど皆を探してる時間は」

「いや、いい手がある。環とキュアスイートに伝わればなんとかなる」

 

 どんどん無くなっていく時間に対して、状況の好転が見込めないことに焦るデク。

 だがルミリオンは連絡を取る手段があるのか、デクを落ち着かせる。

 

「ここに居たか。そこの青い髪の奴は初めて見る顔だな」

 

 ルミリオンが策を話そうとした矢先に、シーゴラスとレッドキング、ゴモラの三体に見つかってしまうデクたち。

 ゲスイ笑みを浮かべながらどう料理するか皮算用を立てる三体に対して、ルミリオンはロビンから拝借したHマグナム二丁を連射して視界を奪いデク、ネジレちゃんを連れて移動を始める。

 

◇◇◇◇

 

「ほら、約束通り連れて来た。結城界離たちは?」

「もうじき連れて来るさ」

 

 地下施設に設けられた事務所で、治崎は山羊角の女が攫ってきた壊理ちゃんを受け取っていた。

 

「なによ・・・そっちは準備出来てないじゃない」

「よしな・・・私の舎弟が失礼したね。そっちが良ければ、あいつらが捕まるさまを私たちも鑑賞していいか?」

 

 肝心の界離たちがまだ捕らえられてない事に紫髪の女は不満気だったが山羊角の女に制されて口を噤み、治崎は壊理の再教育にちょうど良いと考え山羊角の女の頼みを快諾する。

 大きなスクリーンに地下施設内を駆け回る界離たちの姿が映写され、病人たちが無様に逃げ惑う姿と震えながら俯く壊理の姿に治崎は満足気にペストマスクの下でにやけつつスクリーンに目を向ける。

 やがて変電室に入りこんだルミリオンが照明用のブレーカーを下ろして暗くする。

 

「ふん・・・暗くしたところで、八斎衆(やつら)からは逃れられんぞ」

 

 その直後からルミリオンがブレーカーを上げ下げ繰り返す奇妙な行動を起こすが、悪あがきだと切り捨てた治崎は傍目に鑑賞しつつ山羊角の女との商談を再開する。

 

「あいつら・・・なんか動き出してない?」

「?・・・おい!小娘どこ行った!?」

 

 シーゴラス、レッドキング、ゴモラ、キングクラブが変電室に到着し、交戦を始めたのをスクリーンでつまらなそうに眺めていた紫髪の女が界離たちの動きに変化があったことに気付き、赤髪の女が壊理が居なくなっている事に気づき叫ぶ。

 

「まさか、暗くなった隙に!?」

「あのガキが」

「面白くなってきたじゃん。原作じゃギリギリまで治崎の手の中にいたのに、あんな僅かな時間でここまであの子を変えちゃうなんて・・・流石プロメテウスを継ぐ者と呼ぶべきかしら

 

 想定外の行動に怒る治崎と、それを宥めつつ壊理の捜索を始める玄野を嘲笑いながら眺めていた山羊角の女は意味深なことを呟きワープゲートを開ける。

 待たなくていいのかと尋ねる赤髪の女に、もう結末は決まったと答えた山羊角の女は試作品の個性消失弾(せんりひん)を手に死穢八斎會地下事務所を去っていった。

 

◇◇◇◇

 

「どうするんだ結城?このままじゃ皆全滅だぞ」

「分かってる・・・せめて組長の居場所さえ分かれば」

 

 治崎たちがスクリーンで界離たちを眺めていた同時刻、ロビンとトーコもキュアスイートと合流し情報交換をしていた。

 残り時間七分。どうするべきか悩んでいると、突然照明が落ちる。

 

「何が起きた!」

 

(ヴィラン)の作戦か!?クソが!舐めやがって」

「あ・・・あんまり大声を出さないで。見つかっちゃう」

 

 暗くなったことに轟が驚きの声を挙げた同時刻、トイレから周囲を警戒していたバクゴー(仮)・サンイーターコンビも証明が落ちた理由が分からずにいた。

 怒るバクゴー(仮)をサンイーターが震えながら宥めようとすると同時に、照明が切れたり点いたりを繰り返し始める。

 

「なんだ・・・配線がショートでもしたのか?」

「ちがう・・・これって」

 

「ここに居たのか、さっさと出てきな!」

「ルミリオン、見つかった」

「頼む!気づいてくれサンイーター、キュアスイート」

 

 変電室に入り込もうとする八斎衆をデクとネジレちゃんが抑えてる間、ルミリオンがブレーカーをいじりながら気付いてくれる事を祈る。

 

H(ヒーローズ)シグナル・・・」

「なんだそれは」

 

 H(ヒーローズ)シグナルとは、ヒーロー公安委員会が管理するプロヒーロー同士で使われている暗号である。長短二種類の符号の組み合わせで文字を表し、通信機が使えない状況でもメッセージのやり取りが可能なのだ。

 

「二年になったら習うけど、覚えといて損はないよ」

「なるほど・・・それで、なんて言ってるんです?」

「待ってね・・・『組長』・・・『機関室』・・・『機械』」

 

「『個性消失薬』・・・『効果』・・・『十五分』・・・そうか!組長は機関室に居るのか」

 

「急ぎましょう!次の散布までに助け出せれば、間に合うはず!」

 

「ちかちかちかちか鬱陶しいんだよ。手間取らせた分甚振らせてもらうぞ」

「デク、ネジレちゃん。あとはサンイーターとキュアスイートを信じてこいつらを喰い止めよう」

「「了解」」

 

 仲間たちを信じて変電室にシーゴラス、レッドキング、ゴモラ、キングクラブの四体を相手取るデク、ルミリオン、ネジレちゃん。

 一方のサンイーター、キュアスイートはバクゴー(仮)、ロビン、トーコを連れて各々機関室へ向かうのだった。

 


 

『かっちゃん!サンイーターも無事だったんですね』

『かっちゃん呼ぶなや!それより、あの二体どうする?』

 

 機関室に向かっている最中に合流出来たサンイーターペアとキュアスイートペア。両ペアは機関室へ続く通路に着いたものの、ハンザギラン、ベムスターのペアが見張りについていたため突破できずにいた。

 

『ここは、先輩の私たちに任せて』

『キュアスイート・・・一体何を?』

 

 ハンドサインでコミュニケーションを取りつつ、突破案を考えていたロビンにキュアスイートが策があると言いサンイーターを連れてどこかへ行ってしまう。

 何をするつもりなのか皆目見当がつかないロビンたちが揃って首を傾げていると、シャッターが開きその先で何故かSM嬢と客に扮したキュアスイートとサンイーターが寸劇を繰り広げていた。

 

「おら!こういうのが欲しかったんだろ!!」

「ブヒィイン!か、勘弁してくりゃち~」

「だぅあれが人間の言葉を喋って良いといったぁ!」

 

 ご丁寧に仮面にボンテージスーツと鞭とミッドナイトみたいな恰好のキュアスイートと、ギャグボールを咥えさせられ裸で三角木馬に跨がされたサンイーターの姿は場所が場所でなければ、そういうお店でそういうプレイの最中だと錯覚させられるほど違和感が無かった。

 

『なあ結城はここにいる・・・よな?サンイーターかキュアスイートに変装してあっちに行ったりしてないよな?』

『疲れたのかトーコ?俺はちゃんとここに居るだろ』

『だよな・・・ちゃんとここに居るな。(わり)ぃ、疲れてたみてぇだ』

『元はと言えば界離(おまえ)のせいだろうがよぉ』

 

 目の前の光景に結界寸劇かと正気を疑うトーコと、何食わぬ態度で接するロビンの頭をはたくバクゴー(仮)。

 アイコンタクトで先に向かえと伝えて来たサンイーターに礼を言い、先へ向かうロビン、トーコ、バクゴー(仮)。

 

「お前ら、一体何を考えてやがる!?素直に白状しやがれ!」

 

 いっその事目の錯覚であって欲しいと内心願っていたハンザギランとベムスターに、しょうがねえなとわざとらしく声を挙げたキュアスイートがサンイーターと自分に毛布をかぶせる。

 何をする気だと二体が注目していると、突如毛布が爆ぜてその中から羽毛と共にヒーローコスチュームに着替えたキュアスイートとサンイーターがそれぞれハンザギランとベムスターの肩に飛び乗る。

 

「私甘露寺蜜璃、もといキュアスイートは早着替えも得意なの!知ってた?」

「いや知らねえよ!?」

「さ・・・作戦に・・・のってくれてああありがとう。おかげで、後輩たちは先に進むことが出来た」

「いや声ちっちぇえなお前!!コミュ障かよ!?」

 

 後輩たちに先を託し、キュアスイートとサンイーターはハンザギランとベムスターを相手取る。――残された時間は、あと五分

 

◇◇◇◇

 

「この先の階段を昇れば、機関室に通じる通路に出られる。もう少しだ」

「言われるまでもねえ!俺が先に行kッ!?」

 

 ロビン、トーコ、バクゴー(仮)が先を競うように機関室を目指していると、突如バクゴー(仮)が首のあたりを抑えながら呻きだす。

 

「どうしたばくgッ!?」

「二人とも?一体なにgッ!?」

 

 バクゴー(仮)を心配して足を止めたトーコ、ロビンにも同様の症状が出始める。この現象の犯人は――

 

「まさかここまでやるとは・・・想定外でしたよ」

「だが俺たちがまだ残っていた。あの二人と分かれたのは失敗だったな」

 

 姿を現したのは、まだ誰とも交戦状態に入っていなかったイカルス星人とバラバだった。

 稲妻状の光のロープでバクゴー(仮)の首を絞めながら空間をガラスのように割って現れたバラバと、ロビンとトーコの首を両手で絞めながら姿を現したイカルス星人は三人を投げに叩きつけデスミサイルショットとアロー光線を放つ。

 爆風と衝撃で崩れた壁の向こうへ吹き飛ばされた三人相手に悠然と迫る二体に、ロビンはトライガーショットをレッドチェンバーにモードチェンジさせてビームを連射して動きを鈍らせる。

 

「おい結城!ここは俺と半分舐めプ女が引き受ける、お前はあのリフトを使って先に行け!」

「分かった!」

 

 トライガーショットを二人に託し、ロビンはリフトに向かうが、行かせまいとイカルス星人とバラバが猛攻撃を仕掛ける。

 

「やらせると思ってんのか!?」

「結城の邪魔はさせない!」

 

 バクゴー(仮)とトーコが波紋と武器を駆使して二体の足止めをしている間も、若頭派と思われる構成員たちがトリガーで強化した個性でロビンの前に立ちはだかる。

 

「何してんだ結城!早くいきやがれ!!」

「分かってる!でもこいつらが邪魔すぎる!」

 

 風の呼吸とヒノカミ神楽を駆使して構成員たちを片付けていたロビンだが、守りに優れた個性持ちが居たのに加えて木刀では強度が足りず折れてしまいリフトを操作するスイッチに辿り着けずにいた。

 

「結城!リフトに乗れ」

「何言ってんだ爆豪!リフトに乗るだけじゃ」

「いいから乗れってんだ!!さっさとしろ!」

 

 バクゴー(仮)の意図が分からず問いかけるトーコを遮るようにリフトに乗るよう叫んだバクゴー(仮)は、トーコから分捕ったHシューターで瓦礫片を撃ち飛ばす。

 撃ち飛ばされた瓦礫片はリフトのスイッチへ一直線に飛んでいき、スイッチを押してリフトを上昇させる。

 

「やるじゃんかっちゃん!・・・あんたらは邪魔だ、消え失せろ!!」

 

 バクゴー(仮)の起点に感心しつつ、目障りになった構成員たちを肆ノ型昇上砂塵嵐(しょうじょうさじんらん)でいっぺんに片付けリフトへ飛び移る。

 

「後は頼んだぞ――カイ!」

「え?・・・任せなかっちゃん!」

 

 かっちゃん呼びに噛みつかなかったばかりか、USJの騒動で入院した時に親愛の証としてカイと呼んでと頼んでもあっさり断ったバクゴー(仮)がカイと呼んだ事に驚きつつ笑顔で応えるロビン。

 アンカーをロビンに託したバクゴー(仮)とトーコは、二体の超獣と星人と構成員たちを相手に大立ち回りを演じるのだった。

 


 

「あそこか!」

 

 残り時間二分。界離は機関室から数百メートル離れた場所に到着していた。ゴールを目指して駆ける胸中には、必死で戦っている仲間たちの姿が去来していた。

 

(通形先輩、天喰先輩、波動先輩、甘露寺先輩、轟、緑谷、かっちゃん、そして、壊理ちゃん――見ててくれ)

「俺がきっちりアンカー務めさせてもらうぜ!」

 

 ロビンの前に、連絡を受けたであろう構成員たちがトリガーを打って立ちはだかる。

 

「どけえ!」

 

 折れた木刀で風の呼吸とヒノカミ神楽を連発し、構成員たちを蹴散らしていく界離。だがサングラスをかけた下っ端でなさそうな輩の射撃系個性によって残った刀身を撃ち抜かれてしまう。

 

「まだまだあ!」

 

 だがそれでも界離は諦める事なく、陽華突の容量で木刀を投げ飛ばす。

ゴギンッ

「ふん。どこを狙って やがる?」

 

 首を少しだけ傾けて界離の投擲を難なく躱したサングラスをかけた輩が嘲笑おうとした矢先、鈍い音が耳に届く。何事かと思い振り返ってみたら、壁に穴が開いておりその先に置いてあった個性消失薬散布用の機械に木刀の持ち手が深々と刺さっており火花を散らしていた。

 

「まさかっ・・・これが狙いか!?」

 

 ようやく界離の狙いに気付いたサングラスをかけた輩が界離の方を向いたと同時に、上顎に飛び膝蹴りが叩き込まれそのまま扉に叩きつけられる。

 サングラスの輩ごと機関室に侵入した界離がまだ生きている機械を蹴りで完全に破壊し、拘束されている死穢八斎會組長のベットに手をかけると同時に抜け落ちた何かが体にぴったりとはまる感覚が全身をかける。

 

『皆!拘束されてた死穢八斎會組長の身柄は保護した!ついでに個性消失薬を散布していた機械も破壊した・・・もう思いっきり暴れて大丈夫だ!』

 

「「何だと!?」」

「ハッ!やりやがったなカイ!」

「なら、これからやることはシンプル。反撃あるのみだね!」

 

 結界を発動し、地下施設中に反響させたメッセージに八斎衆の面々は驚いたあまり動きが止まり、その隙を突いて個性を取り戻した全員が反撃に転じる。

 

「ナイトアイ!イレイザー聞こえますか!?地下施設の入り口には罠が仕掛けられています!突入を中止してください!」

『なんだと!?』

 

 界離の通信がナイトアイたちの元に届いたのは、地下施設への扉が間もなく開こうとしていたギリギリのタイミングだった。

 

◇◇◇◇

 

「おのれ・・・病人どもが調子づきやがって」

 

 壊理ちゃんを追い詰めた矢先、界離のメッセージを聞いた治崎の機嫌はすこぶる悪かった。

 幼少期からの付き合いである玄野にすら八つ当たりするほどで、ぶたれた壊理ちゃんの頬も赤く腫れていた。

 

「さっさと来い壊理。これいじょう手間を取らせるな」

 

 壊理ちゃんを連れて行こうと手を伸ばす治崎。そこで再び想定外の事が起こる。

 いつもなら抵抗する事なく言う通りにしていた壊理が、治崎の手を跳ね除けたのだ。

 

もう、あなたの思い通りには・・・ならない。私は・・・私はお兄さんを、私のヒーローを信じる!!

「壊理・・・きさまぁ」

 

 恐怖に震えながらも、まっすぐ治崎を見据えて自分の意志を貫く壊理に苛立った治崎が今一度分解しようと手を伸ばす。

 治崎の手が壊理の顔を掴もうとした矢先、銃声が二回鳴り響き、背後から大きな影が飛び出し治崎を蹴り飛ばす。

 

「よく頑張ったね壊理ちゃん。あとは俺に任せて」

 

 この日、長きにわたって悪魔に弄ばれていた少女は初めて知るのだった。皆がヒーローに憧れる理由を、命をかけて誰かを守る者たちの背中の大きさを。




次回で職場体験編は終わりの予定です
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