なんだかんだと有ったが特に問題は発生せず、時は進んで終業式の日を迎える――
月曜日の朝。
教室の窓から入ってくる光はいつもと同じなのに、なんだか空気がそわそわしている気がした。
ランドセルから教科書を机の棚に移し終えた壊理は、手をぎゅっと握りしめながら席に座る。
「みんなー、席についてねー」
担任の轟冬美先生が、いつもの優しい声で言った。
冬美先生は、壊理にとって“学校で一番安心できる大人”だ。
声を聞くだけで、界離やメイドのお姉さん、雄英のお姉さん達と一緒に居る時のように胸の奥がふわっと温かくなる。
「今日は、ちょっと残念なお知らせがあります」
先生の言葉に、クラスの皆が何だろうと小さくざわつく。
「近くのショッピングモールで、
「ええええええええええええええええ!!」
教室が一気に爆発したみたいに騒がしくなる。
「楽しみにしてたのに!」
「ヒーロー科の訓練見たかったー!」
「体育祭の場所も見たかったのに!」
「ランチラッシュのうな重食べたかったのに!!」
皆が口々に文句を言う。
壊理は、胸の奥がぎゅっと痛くなった。
(ショッピングモール・・・お兄さん、一昨日帰ってきてすぐ、ベッドでぐったりしてた・・・)
壊理は、界離が疲れた顔で横になっていた姿を思い出す。
あの時、壊理は界離の手を握っても、すぐには笑ってくれなかった。
(・・・もしかしてお兄さん、こわいことにあった?)
あの夜ロケットの事をいっぱい話してくれた界離の姿を思い出し、胸がぎゅうっと苦しくなった壊理だった。
~~~~
「はぁ~~~~!! 雄英見学なくなったのマジ最悪!!」
ぽっちゃりした体が揺れて、給食の味噌汁がお椀から零れそうなくらい揺れる。
「しかたありませんよ万凛さん。今年の雄英は、USJに体育祭も襲撃されてかなり非難轟々でしたから・・・」
頬の電気袋がぷくっとしていて可愛い。
「でも、行きたかったなぁ」
小声は最初のお友達で、壊理はその表情を見ると胸がちくっとした。
「わたしも・・・お兄さんの学校、見たかった」
壊理がぽつりと漏らす。
その時だった。
「オーッホッホッホッホ!!」
高い笑い声が響き、クラスがざわつく。
「うわ来た・・・」
「めんどくさいの来た・・・」
(・・・リコちゃん、どうしたんだろう?)
万凛と光と小声が、同時に嫌そうな顔をした。
壊理は首をかしげる。
犀川リコが、胸を張って近づいてきた。
「じゃじゃ~~~ん!!」
今日も髪がつやつやで、リボンが大きくて、まるでハスキーさんが読み聞かせてくれた絵本のおひめさまみたいだ。と思っていたら、リコが何か書いてある紙を取り出す。
「これが何か分かる!? I・エキスポのプレオープン招待状よ!!」
「えええええええええ!?!?」
「マジで!? すご!!」
「なんで持ってんの!?」
少しの沈黙の末、クラスが大騒ぎになる。
壊理はよく分からず、また首をかしげた。
「えきすぽ・・・ってなに?」
「壊理さん、I・エキスポというのはですね・・・」
光が丁寧に説明してくれる。
「世界中のヒーロー企業が集まって作った研究都市、『I・アイランド』という場所がありまして、そこで行われるヒーローアイテムや個性技術の展示会が、『I・エキスポ』なんです」
「そうなんだ・・・お兄さんやミルコさんのコスチュームも、そこで作ったのかな?」
壊理が考え込んでいると、リコが顔を真っ赤にして近づいてきた。
「え、壊理さん・・・!!い、一緒に・・・い、行きません?」
「え? なんで?」
壊理は素直に聞き返す。
リコはさらに真っ赤になり、尊大なポーズを取った。
「べ、別に私は一人で行けるのよ!?でもあなたがどうしてもって言うなら・・・し、仕方なく連れて行ってあげてもいいわ!! そう! 仕方なくよ!!」
「・・・べつにいいよ」
「えっ!?」
リコの顔から血の気が引いた。
「犀川さん・・・素直に筒美さんと行きたいって言えばいいのに・・・」
「ほんとめんどくさい性格だよな・・・」
「相変わらず筒美の事好きすぎて空回りしてるじゃん・・・」
ひそひそ声が飛び交う。
壊理はよく分からず、また首をかしげた。
「な、なんでなの・・・?」
リコが震える声で聞いてくる。
「お兄さんが招待状持ってるから・・・お兄さんと行くよ」
壊理がそう言うと、クラスがざわっとした。
「壊理ちゃんのお兄さんって・・・どんな人?」
「ヒーローなの?」
「強いの?」
「かっこいいの?」
クラスメイト達に応えようとした壊理の脳裏に、界離たちとの約束が蘇る。
(お兄さんのことは、ひみつ・・・お兄さんと、メイドさんたちと、やくそくした・・・)
「・・・ひみつ、だよ」
壊理は小さく笑った。
~~~~
放課後。
壊理は雄英敷地内の界離の寮に帰ると、界離の服の裾をぎゅっと掴み学校での出来事を話した。
二学期の雄英高校の見学が中止になった事を皆が残念がっていた事。
クラスの犀川リコにI・エキスポに行かないかと誘われたけど断った事。
お兄さんの事を聞かれたけど約束守って秘密にした事。
楽しかった学校の思い出を話す時、お兄さんはいつも優しい顔で聞いてくれる。
壊理は思いきって、友達だけでも雄英見学できないか聞いてみた。
「・・・そっか。皆楽しみにしてたんだね」
界離は壊理の頭を優しく撫でながら、スマホを取り出した。
しばらく話し込んだ後、電話を切った界離は壊理に向き直る。
「壊理ちゃん。君と、君のお友達4人だけなら金曜日に特別見学していいって、許可が出たよ」
壊理はぱぁっと顔を明るくした。
「ほんと?」
「ほんとだよ」
壊理は界離にぎゅっと抱きついた。
「お兄さん・・・だいすき!!」
界離は優しく笑って壊理の頭を撫で、メイドたちはほっこりとした表情で見守っていた。
金曜日の午後。太陽がぽかぽかしていて、空はまだ青い時間帯。
雄英高校の正門は、壊理の背よりずっと高くて、まるでお城の門みたいに見えた。
壊理はハスキーと一緒に、門の前で立っていた。
「みんな、来てくれるかな・・・」
「大丈夫ですよ壊理様。皆さん、今日をとても楽しみにしていましたから」
ハスキーの落ち着いた声に、壊理は少し安心した。
でも、胸の奥がそわそわしている。
今日は“お兄さんの学校”に、友達を連れてくる日だから。
(みんな、よろこんでくれるかな・・・お兄さん、がんばってくれたから)
そんなことを考えていると──
「壊理ちゃーん!!」
元気いっぱいの声が響いた。
担任の冬美先生と一緒に、万凛、光、小声の三人が走ってくる。
「壊理ちゃん!今日よろしくね!」
「お邪魔します、壊理さん」
「わぁ・・・ほんとに雄英だ!」
三人とも目をキラキラさせていて、壊理は胸がぽわっと温かくなった。
その後ろから、髪をつやつやに整えた犀川リコが胸を張って歩いてきた。
「ふふん、遅れて悪かったわね。今日は特別に、あなたたちと行動してあげるわ」
「うわ来た・・・」
「めんどくさいのも来ましたね・・・」
「今日も元気だね、リコちゃん」
三人が同時にため息をつく。
(リコちゃん、なんでそんなにきらわれてるんだろう?お兄さんもわらってごまかしてたし・・・)
壊理は首をかしげた。
「お待たせ〜」
色気のある声とともに、黒いスーツを身にまとったミッドナイトが現れた。
「うわ・・・破廉恥ヒーローのミッドナイトだ」
「なんでこの人が引率なのよ・・・」
(ミッドナイトさん・・・やさしいのに。わたし、二か月前にいっぱい助けてもらったのに・・・)
三人とリコが、露骨に嫌そうな顔をしていて壊理は少しだけ悲しくなった。
「ハーッハッハッハ!!」
突然の大笑いに、みんながびくっとする。
「わーたーしーが・・・来た!!」
金髪が太陽みたいに輝く、No.1ヒーロー・オールマイトが現れた。
「すげぇぇぇ!!」
「本物だ!!」
「オールマイトだ!!」
(この人・・・『うっかりが過ぎます!』ってお兄さんにおこられてた人だ)
万凛も光も小声もリコも、目をキラキラさせて大興奮している。
でも壊理は、すごさがいまいち実感できなかった。
オールマイトは壊理に気づくと、にこっと笑った。
「筒美少女、今日は雄英をたっぷり楽しんでいってくれ!」
「・・・はい!」
壊理はぺこっと頭を下げた。
「皆さん、今日はよろしくお願いします」
冬美先生の挨拶が終わり、ミッドナイトとオールマイトが注意事項を説明する。
・勝手に移動しないこと
・今日見たことは学校の皆には話さないこと
・機材には許可なく触れないこと
「皆、ルールは分かったかな? 分かった人は大きく手を上げて返事してね」
「はーい!」
オールマイトの呼びかけに、みんな元気よく返事をして五人だけの雄英見学ツアーが始まった。
正門から入り、まずはヒーロー科の教室へ。
「ドアでっけぇぇぇ!!」
万凛が叫ぶ。
確かに、オールマイトの身長の三倍以上もある。
「ヒーロー科は個性事故に備えて、教室も強化されているんですよ」
光が説明する。
「普通科は・・・普通だな」
「経営科って、ヒーロー事務所の運営とか学ぶんだって」
みんな興味津々。
しばらく経って小腹が空き始める頃合いになると、ランチラッシュの食堂にお邪魔していた。
「なんだよ・・・うな重ねえのかよ」
「万凛さん・・・さすがに雄英でもお昼のメニューでうな重はありませんよ」
「でもすごいよね。こんなにおいしいのがこんなにやすく食べられるなんて」
うな重がメニューに無いことに落胆する万凛に苦笑いしつつ、腹ごしらえを終えた一同が次に向かったのはサポート科。
扉を開けた瞬間──
「うわぁぁぁぁ!!」
「なにこれ!!」
「機械いっぱい!!」
みんなが一斉に叫んだ。
巨大なアーム、工具、試作中のアイテムの山。
壊理は目を丸くした。
「ヒーロー科の生徒は、申請すればここでコスチュームを改造したりサポートアイテムを作ったりできるんだ」
オールマイトが説明する。
「なぜコスチュームを改造する必要があるのですか?」
光が質問した。
壊理は、界離から聞いた話を思い出す。
「実戦に出たり、個性が強くなったりするとコスチュームが合わない事も分かるみたいだから、変える場合もあるってお兄さんが言ってた」
「その通りだよ、筒美少女!」
オールマイトが親指を立てた。
壊理はちょっと誇らしくなった。
次に案内されたのは、入試などに使われる巨大な運動場。
「すっげー!!街じゃんこれ!! 本物の街じゃん!!」
万凛が叫ぶ。
「ライフラインもしっかり設備されています。授業で実戦に近い経験が積める・・・これが雄英高校」
光が感心したように言う。
「一体どれだけのお金がかかってるのかしら・・・」
リコが呆れたように呟き、壊理はただただ圧倒されていた。
「では次は体育館に行きましょう」
ミッドナイトが案内する。
体育館の扉が開いた瞬間、そこには──
「風の呼吸 肆ノ型
砂嵐が舞い上がった。
オレンジ色のコスチュームを着た界離が、同じくコスチュームを着ている波動ねじれと実戦さながらのぶつかり稽古を繰り広げていた。
花火のような激しい二人の打ち合いに、みんなも壊理も思わず息を呑んだ。
界離とねじれのぶつかり合いは、花火みたいに光って、風がびゅんびゅんして壊理は目を離せなかった。
(お兄さんすごい・・・ねじれさんもすごい)
そんな時だった。
「あれ・・・壊理ちゃん?」
優しい声が聞こえて、壊理はぱっと振り向いた。
「デクさん!」
緑谷出久が、驚いた顔でこちらを見ていた。
その後ろには──A組の皆がずらりと並んでいた。
「すっげー!緑谷出久だ。体育祭で男にチューしてた人だ」
「万凛さん・・・その覚え方はどうかと思いますよ・・・」
「すっごい。にゅうじぇねれーしょん・・・ヒーローズに会えるなんて」
乙女ヒーロー団の三人が大興奮している。
壊理は、ちょっとだけ誇らしくなった。
(お兄さんの学校の人たち・・・やっぱり、すごいんだ)
A組の皆も壊理たちに気づき、次々と声をかけてくる。
壊理は嬉しくて、胸がぽかぽかした。
「でも惜しかったな・・・もう少し早く来てれば結城の戦い全部見れたのに。凄かったんだぜ!この前は手も足も出なかった通形先輩に引き分けまで粘ったし、天喰先輩には勝っちまったし」
「ほんと!?」
「ああ本当だ。『妹分が見に来るかもしれないから、格好悪い所は見せられません』ってメッチャ喰らいついてたんだぜ」
切島の言葉で見届けれなかった界離の戦いに思いを馳せた瞬間、乙女ヒーロー団とリコが同時に固まった。
「壊理さんのお兄さんって・・・ゆうきかいりさんなんですか!?」
光が震える声で質問する。
「・・・うん。お兄さん、とってもつよくてやさしいよ」
お兄さんの名前は秘密にする。界離との約束を破ってしまった事に気付いた壊理はしばらく逡巡したが、ハスキーが『大丈夫ですよ。ご主人様はきっとお許しになってくださいます』と耳打ちしたおかげで勇気が出たのか、お兄さんが界離だと告白する。
最初こそ驚いていた皆だったが、すぐさま受け入れたのか『早く言ってくれてもいいじゃんかよ〜』といつもの和気藹々とした雰囲気に戻る。
その裏で、うっかり秘密を喋ってしまった切島は爆豪にシバかれてました。
「ところで結城さんのあのコスチュームは一体?体育祭ではウサギやオオカミ、たぬきの鎧をきてましたよね」
光が質問すると、梅雨ちゃんが答える。
「あれも界離ちゃんのコスチュームの一つよ。鎧の方は凶悪な
「どうしてそんなコスチュームでたたかってるの?」
小声が首をかしげる。答えたのはミリオだった。
「彼の提案さ!
五人が界離の心意気に感服している中、戦況が動き出す。
「チャージ満タン・・・出力三十!」
「
ねじれが、両手に装填したエネルギーを巨大な波動にして放つ。
空気を震わせながら迫って来る波動に相対する界離は、螺旋のように回転しながら波動の渦へと飛び込んだ。
直撃するかと思われた瞬間、界離は木刀の刀身を衝撃波の螺旋に
「波動を・・・巻き取った!?」
ねじれだけでなく、ミリオも、A組の皆も、冬美先生も、オールマイトやミッドナイトも驚愕の声を上げる。
「お返しします! 風の呼吸 玖ノ型
飛び込んだ勢いそのまま、ねじれよりも高く跳躍した界離は巻き取った波動と風の刃を混ぜた大小様々な斬撃を暴風の如く放つ。
「わわっ!?すごいすごい!」
ねじれも思わず声をあげる。
反撃する隙を与えない連続攻撃を間一髪避けながら、エネルギーを再度チャージするねじれ。
だが――
「捌ノ型
すれ違いざまに叩きこまれた渦のような斬撃にやられ、地面に落下したねじれは悔しそうに両手を上げた。
「力入らない・・・むぅ~降参!」
『勝負あり! 結城界離』
こうして雄英三年四天王の一人、波動ねじれと結城界離の勝負は界離の勝利で幕を閉じたのだった。
◇◇◇◇
模擬戦を終えて、体操着に着替えて体育館へ戻ると──
「お兄さん!!」
壊理が勢いよく飛びついてきた。
「壊理ちゃん、どうだった?」
「うん!! すごかった!!」
ぱぁっと満面の笑みを浮かべる壊理。その後ろで、見慣れない小学生が四人、緊張した顔で並んでいた。
「君たちが壊理ちゃんの友達だね。改めまして、結城界離です。壊理ちゃんの兄・・・みたいなものです。よろしく」
微笑んで声をかけると緊張が取れたのか、四人は一斉に自己紹介を始めた。
「声形万凛です!!」
「輝宙光と申します」
「と、時止小声・・・です」
「犀川リコよ。壊理さんの・・・その・・・お友達よ」
リコだけ、やたら顔が赤かった。
「結城君、すごかったよ!!」
緑谷が駆け寄ってくる。
その後ろにはA組の面々、そして三年のミリオ先輩達もいた。
「そうだ君たち、折角だから出久とお話してみたらどうだい?彼女も君たちみたいに、ヒーローの個性や戦術を研究しているんだ」
「本当なんですか!?緑谷さんって、僕たち
「垢離里・・・乙女ヒーロー団? なんだそれは」
爆豪が眉をひそめる。
「三人ともヒーロー志望で、ヒーローや
前世の世界で、三十年以上連載が続いている某探偵漫画に出てくるグループに似た名称に懐かしさを感じながら説明する界離。
その隣では、三人がまとめたノートを見て緑谷が舌を巻いていた。
「ねえ界離さん。ネジレちゃんさん以外の四天王との模擬戦はどうだったの?」
「勝ったのか!? それとも負けたの!?」
「僕も気になります!」
乙女ヒーロー団の三人と壊理が一斉に詰め寄ってくる。
「それはね・・・」
界離は苦笑いしながら答えた。
第一試合――ルミリオン戦は引き分け。個性:透過を駆使するルミリオンに波紋とHマグナム01と02で挑んだ勝負は、HYBRIDマグナムをブーメランにして背後からの不意打ちと頭突きで相打ちに持ち込むのが精一杯だった。
第二試合――サンイーター戦は辛勝。ミルコ直伝の蹴り技と、三秒だけの波紋疾走・全解放で挑んだ勝負。初めこそは蹴りのごり押しで優勢だったが、守りに徹し動きを見切ったサンイーターの“
第三試合――キュアスイート戦は完敗。ヒノカミ神楽を解禁しても、常人の八倍の筋繊維を有する特異体質に加えて食事によって体内に蓄えた栄養をエネルギー源に最大で通常時の八倍の身体能力を発揮する個性:ハイドープが合わさった恋の呼吸に酷似した技に手も足も出ず敗北。
第四試合は前述のとおり。
乙女ヒーロー団の三人は、皆界離の話に大興奮していた。
そんな中、リコが一歩前に出た。
「あ、あの・・・ゆうきさん」
「なんだい?」
「あなたも・・・I・エキスポの、招待状を持っていらっしゃるの?」
勇気を振り絞った声だった。
「? 持ってるよ」
答えた瞬間──リコがその場で崩れ落ちた。
「リコちゃん!?」
「大丈夫ですか!?」
「顔色悪いぞ!」
(・・・あ、これ壊理ちゃん誘ったら俺と行くからって断られたな)
「ねえ界離くん! I・エキスポ行くの!?行くんでしょ!?私も行きたい!! 一緒に行きたい!」
「は、波動さん・・・結城くんは壊理ちゃんと行く予定だから・・・」
心情を察した界離がどう元気づけるか考えていると、駆け寄って来たねじれ先輩がI・エキスポに一緒に行きたいとせがんでくる。
天喰先輩がどもりつつも止めようとするが、ねじれ先輩は止まる気配がない。
「やだ!! 行きたい!!」
「(・・・あ、これ使えるな)じゃあこうしましょう」
妙案が閃いた界離は、両手をポンと叩いて全員の視線を集める。
「波動せん「ねじれ」ーーねじれ先輩は俺の同伴で、壊理ちゃんはリコちゃんの同伴・・・君たち三人も、俺とメイド隊の誰かが引率でI・エキスポに行くってのはどうだい?」
「えっ・・・」
リコが顔を上げた。
「わ、わたし・・・壊理さんと行っていいの?」
リコの目に涙が浮かんだ。
「もちろん。壊理ちゃんがよければね」
「うん。皆と行きたい!」
壊理は笑顔で頷いた。
「じゃあ三人も、どうかな?」
「やった~!」
子供達は嬉しさで跳びはねる。
一方A組の皆は、デート演習開始の際に皆で結んだ淑女協定に引っかかるため行きたくても行けないと肩を落としていた。
こうして──壊理ちゃんと友達四人の“特別雄英見学ツアー”は幕を閉じた。
猟に戻るまでの間、壊理は界離の手をぎゅっと握りながら笑っていた。
(・・・さて、今夜から忙しくなるぞ)
公安用の端末に届いていたメッセージを思い出しながら、終業式を終えて幾分か静かになった校舎を見上げる界離だった。
ヒロアカこそこそ噂話
垢離里乙女ヒーロー団の三人の元ネタは本編で界離が想像した通り某探偵漫画の子たちがモデルです。