貞操逆転世界のヒロアカー序ー   作:あかんヤー

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梅雨ちゃん覚醒編になります


第5話:姫様カエルは王子様との夢をみる

"嵐の魔女カエル姫騎士"

 昔々あるところに、毎日が青空に恵まれる美しい国がありました。

 豊かな川は田畑を潤し、暖かな日差しは野山を花で満たし、人々は穏やかに暮らしていました。

 誰もがこの国は永遠に晴れ続けると信じていたのです。

 しかし、その幸福を妬んだ隣国の魔女が、ある日恐ろしい嵐の呪いをもたらしました。

 止まない風雨は草花を枯らし、人々を病にかけ、国は暗闇に沈みました。

 晴れの国の凛々しい王子もまた、病に伏してしまいました。

 そんなある日、一人の姫騎士が王子の前に跪き、静かに言いました。

 

『私が魔女を倒し、嵐の呪いを解いてみせましょう』

 

 王子は姫騎士の手を取り、指に赤いリボンを結びつけました。

 

『このリボンはどこまでも伸びる魔法のリボン。嵐の中で道に迷っても、必ず僕の元へ導いてくれるだろう』

 

 姫騎士は王子の手にそっと口付けると、旅立ちました。

 

 一月ほど過ぎた頃でしょうか。

 

 雲は晴れ、暖かな日差しが再び国を照らしました。

 姫騎士が嵐の魔女を倒したのです。

 しかし、それからまた一月が経っても、姫騎士は帰ってきませんでした。

 病が癒えた王子は、姫騎士を探すため、お供もつけずに城を飛び出しました。

 魔法のリボンを辿れば、必ず彼女に会えるはずです。

 指が擦りむけ、足が傷んでも、王子は歩みを止めませんでした。

 姫騎士を愛していたからです。

 野を越え、山を越え、谷を越えた先。

 大きな沼と、崩れた古い城がありました。

 魔女の住処の跡でした。

 リボンは、沼の奥へと続いていました。

 泥だらけになりながら進むと、蓮の葉の上に一匹のカエルが座っていました。

 そして驚くことに、リボンの端はそのカエルの足に結ばれていたのです。

 王子が息を呑むと、カエルは静かに言いました。

 

『あぁ、王子様。私は魔女を倒しましたが、呪いによってこのような醜い姿に変えられてしまったのです。あなたの元には・・・帰れません』

 

 王子は首を振りました。

 

『そんなことは許しません。呪いを解く方法を、一緒に探しましょう』

 

 王子は迷わずカエルの手を取ったのです。

 しかし――王子が笑いかけるたび、カエルの胸には痛みが走りました。

 なぜならカエルは、姫騎士ではなかったからです。

 ただ人の言葉を話せるだけの、名もなきカエルだったのです。

 魔女を倒した姫騎士は、引き換えに立ち上がれないほどの傷を負い、最期の時を一匹のカエルと共に過ごしました。

 姫騎士は語りました。

 自分の人生を。どれほど王子を愛していたかを。

 王子の物語に耳を傾けるうちに、カエルもまた王子を愛するようになってしまったのです。

 今際の際、姫騎士はカエルの前足にリボンを結びながら言いました。

 

『カエルさん。どうか王子には私の死を秘密にしてほしい。私がいなくなったら、きっと彼は悲しみ、世を儚むでしょう』

 

 カエルは姫騎士には戻れません。

 王子の愛する人には、なれません。

 だけど――彼女は決して不幸ではありませんでした。

 自分の名前と引き換えに、王子への恋を手に入れたのですから。

 晴れの国から遠く離れたどこかで、旅の王子とカエルの姫騎士の冒険譚が語り継がれているそうです。

 だけど、それはまた別のお話。

 

 

◇◇◇◇

 

 

「ケロ・・・わたしって、思ってた以上に嫌な人なのね」

 

 蛙吹家の布団の中で目を覚ました梅雨の心は、昨日の雨よりも重く沈んでいた。

 幼馴染に手をあげた。

 両親を心配させた。

 そして――傷だらけで倒れた界離を、心配より先に“嬉しい”と思ってしまった。

 

(わたし・・・最低だ)

 

 胸が痛む。

 胃がひっくり返るような嫌悪感が込み上げる。

 そこへ――あの言葉が蘇る。

 

知ってる蛙吹ちゃん?蛙はお姫様にはなれないんだよ

 

(やめて・・・思い出したくない)

 

 でも思い出してしまう。

 体育館で見た光景。

 界離にキスするクラスメイト。

 されるがままの界離。

 冷静になれば、界離が受け入れていないことなど分かる。

 でも――胸の奥が、焼けるように痛む。

 

(界離ちゃんは・・・あの子の方がいいの?)

 

 赤みがかった黒髪。

 青みがかった黒髪。

 活発な子と、大人しい子。

 絵本の中の王子様と姫様みたいに、二人は“絵になる”と思ってしまった。

 

じゃあ、わたしは?

 

 胸の奥で、黒い感情が爆ぜた。

 

わたしは・・・何?ただ見てるだけの、邪魔者?

 

 ヒーローとヒロインの愛を引き裂こうとする悪役?

 幼馴染を名乗るだけの、都合のいい脇役?

 

――やだ。やだやだやだやだやだやだ!

 

わたしが!わたしが界離ちゃんと!!

 

 吐き気が込み上げ、口を押さえる。

 

(やだ・・・こんな自分)

 

 冷静な部分が必死に鎖を巻きつけてくる。

 でも獣は鎖を噛みちぎり、問いかける。

 

このまま終わっていいの?本当に?

 

 母のベッドの下の薄いマンガが脳裏をよぎる。

 女が男を押し倒し――

 

「もういや・・・誰か、誰か助けて」

 

 嗚咽が漏れたその時。

 

「随分と抱え込んでるようだな」

 

 梅雨は顔を上げた。

 そこにいたのは――レディ・ナガン。

 

 界離がラブレター(本人はファンレターと言い張っている)を渡した相手。

 

(どうして・・・ここに)

 

「男子が関わっている事件だからな。昨日、彼から大雑把な事情は聞いた。だが――君の口からも聞いておきたい」

 

 梅雨は、全てを話した。

 界離との出会い。

 絵本のこと。クラスメイトの言葉。黒い感情。昨日の爆発。

 途中、過呼吸になりかけながらも、全部吐き出した。

 

「わたし・・・もうどうしたらいいか分からないわ。界離ちゃんと一緒にいたい・・・でも、こんなわたしがいても・・・」

「まあ、何だ。そんなに気になるなら会いに行けばいいんじゃないか?」

 

 梅雨は目を見開いた。

 

「界離だったか?あの坊や、熱にうなされながらお前を呼んでいたよ」

「“行かないで”ってな」

「友達なんだろ。だったら、さっさと会いに行ってやれ」

 

 胸の奥に溜まっていた黒い泥が、一気に洗い流されていくようだった。

 

~~~~

 

「来てくれたんだ・・・梅雨ちゃん・・・」

 

 熱で頬を赤く染めた界離が、弱々しく笑った。

 

(ああ・・・よかった)

 

 胸が締めつけられる。

 泣きそうになる。

 

「ねえ界離ちゃん・・・熱が下がったら、男子校に行っちゃうの?」

 

 狼愛が席を外した隙に、梅雨は震える声で尋ねた。

 

(怖い・・・でも聞かなきゃ)

 

 界離は少し間を置いて――

 

「・・・・・・俺は、男子校には行かないよ」

 

 梅雨の胸に、光が差した。

 

(よかった・・・本当によかった)

 

 界離は続ける。

 

「俺はまだ・・・梅雨ちゃんたちと一緒にいたい。未熟で、心配かけるかもしれないけど・・・それでも、みんなと一緒に世界を――」

 

 そこまで言って、界離は眠りについた。

 梅雨は、界離の寝顔を見つめながら呟く。

 

「界離ちゃん・・・ありがとう。でも、わたしは――」

 

 その時。

 

「ダメだよ梅雨ちゃん・・・離れるなんて・・・許さないって」

 

 寝言だった。

 でも――梅雨の心には、深く刺さった。

 

(許さない・・・?界離ちゃんが・・・わたしに?)

 

 その言葉は、梅雨の心に残っていた最後の理性を優しく溶かしていく。

 

(そっか・・・界離ちゃんも、わたしと同じなんだ)

 

胸の奥が熱くなる。息が苦しいほどに。

 

(だったら・・・もう我慢しなくていいよね)

 

 界離の家を出たあと、梅雨は自室のベッドに腰を下ろし、入園式と入学式の写真を手に取った。

 写真の中の界離は、どちらも自分の隣で笑っている。

 

(この笑顔・・・わたしだけのものだったのに)

 

 胸がズキッと痛む。

 でも、その痛みすら甘く感じる。

 

(界離ちゃん・・・わたしを選んでくれたんだよね)

 

 界離の言葉が脳裏で反芻する。

 

――梅雨ちゃんと一緒にいたい

――離れるなんて許さない

――俺のお姫様はカエルなんだ

 

(ねえ界離ちゃん・・・)

 

 梅雨は写真を胸に抱きしめた。

 

あなたがそう言ってくれたんだから、もうわたし、遠慮しないからね。

あなたが望んだんだよ・・・?わたしと一緒にいたいって。

だったら、ずっと一緒にいようね。

誰が何を言っても、絶対に離れないから。離さないから。

あなたはわたしの王子様で、わたしはあなたのカエルの姫騎士なんだから。

 

 瞳は深淵のように暗く、それでいて星のように輝いていた。

 梅雨は布団に潜り込みながら、明日からの学校生活を思い浮かべた。

 界離と一緒に登校して、一緒に給食を食べて、一緒に帰って――

 

(あの子たちがまた界離ちゃんに近づこうとしたら・・・)

 

 胸の奥で、静かに、しかし確かな怒りが燃え上がる。

 

(大丈夫。わたしが全部、守るから)

 

 界離の隣は、誰にも渡さない。

 渡せるはずがない。

 

(だって界離ちゃんは・・・わたしのものなんだから)

 

 梅雨は幸福そうに微笑み、ゆっくりと目を閉じた。

 

 

◇◇◇◇

 

 

【疲れた】クラスメイトと決着【大変だったよ】

1:貞操逆転ヒロアカ転生者

あれからニ週間。

なんやかんやありましたが、梅雨ちゃんの誤解も解けたし、件のクラスメイトとも決着がついて安堵しました

 

2:男女比1:30世界のアイドルリーダー

よう頑張ったよ界離くん。

あれの相手はめっちゃ疲れたでしょうに

 

3:貞操逆転ヒロアカ転生者

はい・・・滅茶苦茶疲れました。

結局ハッキリと「君たちが嫌いだ」って言うしかなかったのが・・・

 

4:男女比1:5世界の大学生

君はよくやったよ・・・

俺なんて、彼女たちのハイライトが消えた目を想像するだけで震えが止まらなくて・・・嫌いだなんて口にできないよ

 

5:貞操逆転ヒロアカ転生者

>>4

大学生ニキの場合は、皆友好的な関係を築いてる相手ばかりじゃないですか・・・

俺の場合はそこまで仲良くなった覚えのない相手ですから、まだ気が楽でしたよ

 

6:男女比1:30世界のアイドルメンバー5

>>5

それにしても、梅雨ちゃんすごかったなぁ・・・

これでまだ小学一年生なんだよなぁ。

将来が楽しみだよ

 

7:男女比1:30世界のアイドルメンバー4

>>6

震えてるな・・・まあ気持ちは分かる。

何なら俺たちの世界の女よりも怖かったぞ

 

8:転生Dキッズ

>>6

>>7

貞操逆転世界って、男が女にモテてウハウハってだけじゃないのか・・・

勉強になったなぁ・・・

 

9:転生森の民

アイドルリーダーニキ曰く、性欲メイン執着心メインかでだいぶ違うらしい。

大学生ニキの相手と梅雨ちゃんは、間違いなく執着心メインだな・・・

 

10:男女比1:30世界のアイドルメンバー4

何故か分からんが、近い将来に()()()()()()()()()()の雄英一年A組女子に囲われるあいつの姿が見えたんだが・・・

 

11:男女比1:30世界のアイドルメンバー5

>>10

多分皆見えてると思うぞ

 

12:迅雷風柱

ヤンデレ特有の邪魔者は全て排除するって思考にならなければの話だがな

 

13:貞操逆転ヒロアカ転生者

・・・・・・アイドルリーダーニキ。

皆さんはどうしてここまで俺にお節介してくれるんですか?

アイドルリーダーニキやリサニサネキ、風柱ニキから()()()()()の匂いを感じます。

前のスレで言ってた月光蝶ネキって人と関係してるんですか?

 

14:男女比1:30世界のアイドルリーダー

そら・・・

 

15:転生元トップレス

それは私が話すぞ

 

16:男女比1:30世界のアイドルリーダー

ラルクネキ!?

もう大丈夫なのかい!

 

17:転生元トップレス

いつまでもウジウジしていられるか。

それに、これから()()()()()()()に遭うかもしれないって奴をほったらかしにしてたら、それこそあいつに顔向けできなくなるさ

 

18:転生波紋使い

そうね・・・私たちもいい加減、前に進まないといけない頃合いなのね

 

19:貞操逆転ヒロアカ転生者

・・・だいぶ込み入った話のようですね

 

20:迅雷風柱

界離、お前∀ガンダムについてはどんだけ知ってるんだァ?

 

21:貞操逆転ヒロアカ転生者

大体は

 

22:転生Dキッズ

界離くん、ネタバレは平気な方?

 

23:貞操逆転ヒロアカ転生者

平気ですけど?

 

24:男女比1:30世界のアイドルメンバー5

なら問題ないな。

今から話すのは、俺たちがリーダーに会う前の出来事なんだ

 

 

 

 その後、遅れてきた二人が加わり話が始まった。

 以前のスレで月光蝶ネキと呼ばれていた転生者の少女のお話が。

 ∀ガンダムの主人公――ロラン・セアックの容姿を持ってヒロアカ世界に転生し、雄英の仲間たちとアイドルリーダーニキたちと共に世界を駆けた女の子に起きた悲劇の物語が。

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