異世界でゴーレムが最強だと証明するため、適当極まりない生活を送る転生者 作:トリスメギストス
俺の前世に関しては、「ゴーレムは異世界にて最強」って本気で考えるような人間だった、としか言いようがない。
オタクで、社畜で、仕事よりも趣味の方が大切だったどこにでもいる普通の凡人だ。
とにかく楽がしたくて、働かなくても暮らしていける金があれば、それが最高だと思うようなタイプ。
まぁだからこそ、転生した当初は正直あまりそれを嬉しいとは思わなかった。
なにせ異世界は文明レベルが相応に低いのだ。
特に娯楽という点で前世とは圧倒的な格差がある。
しかしそれも、自身のスキルが「ゴーレムクラフト」であると判明してから一変した。
ゴーレムは、この世界においても比較的ポピュラーな存在だ。
ゴーレムクラフトのスキルだけでなく、魔術によっても生み出すことができる。
俺はゴーレム作りに熱中した。
生活を楽にするゴーレムや、戦闘用のゴーレム。
時にはちょっとへんてこな使えるんだか使えないんだかよくわからないゴーレムまで生み出す始末。
まぁ、我ながらゴーレム一辺倒な幼少期を送ったと思う。
ただ、一つだけ問題があった。
それは俺がゴーレムクラフト以外のスキルを持っていなかったことだ。
基本的にこの世界の人間は複数のスキルを持っていることが普通である。
というかスキルの数イコール才能みたいなところがあり、その点でいうと俺はどちらかというと”無才”のうちに入る。
せめてゴーレムクラフトのスキルランクがSあればよかったのだが、
特に俺の実家は、優秀な騎士の家系で多数の優秀なスキルを持つ人間を多く騎士として排出していた。
ゴーレムバカで、ゴーレムしか作れない。
剣を握れば、重さで体をふらつかせてしまうし、魔術を使おうにも魔術系のスキルを何一つもっていない。
一応、魔術は魔術のスキルをもっていなくても使えるし、それなりに勉強もした。
だが、ゴーレムと比べれば片手間でしかなかったから、本職の人間と比べたら本当に趣味としか言いようのないレベルしかない。
おかげで、俺は「無能」の烙印を押されて実家を追い出された。
ただまぁコレに関しては、色々と思うところはあったけど追い出されて良かったと思っている。
そもそも騎士ってのが、朝早くから遅くまで仕事をする上に、戦争があったらまっさきに前線に出なければ行けない立場。
そのくせ普段から鍛錬を欠かさないように、と業務外での鍛錬を強要されたりもする。
ぶっちゃけブラックな職場だ。
なので、今の気楽な冒険者生活は気に入っている。
なにせ冒険者は、成果さえ出せば俺みたいな「無能」でもAランクまで上り詰めることができる。
正直、最初のうちはそこまでランクを上げて目立つつもりはなかった。
一人前とされるCランクか、一部の人間にだけ実力が知られているいぶし銀のBランク、くらいがよかったのだ。
ただまぁ、そうすると俺は自分の実力を隠さないといけなくなる。
特にこれは、普段からゴーレムに頼りまくりたい俺にとっては、あまり好ましいとは言えなかった。
一番困るのは、アレだ。
冒険者が家を持つのは、一般的ではないのである。
基本的に根無し草の冒険者、もし家を持つならせめてAランクの確固たる実績がないと、「お前将来のことどうするつもりだよ」と周りから思われてしまう。
加えて言うと、俺の理想的な生活を実現するには、やはりある程度以上の報酬がどうしても必要になるのだ。
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その日は休日、エメスも朝早くから友人の女性冒険者と女子会に出かけているので不在。
朝っぱらから、充実のゴーレム生活を満喫しようと俺は心に決めていた。
まず朝、起きてそうそう俺は
俺とエメスが暮らす自宅は、平屋の多いこの世界だと少し珍しい二階建ての一軒家。
俺とエメスの部屋、それからゲストルームが二つほどあり、リビングや風呂場、キッチンなど基本的な機能も備わっている。
特に風呂場は室内を全てゴーレムで形成しており、ちょっとした銭湯くらいの広さがある。
ここでゴーレムをジャグジー型にしたり、時には部屋全体をサウナにしてサウナを楽しんだりもできるのだ。
他にも大事な部屋があるが、そこは一端置いておこう。
「よし、ゴーレム。そのままリビングまで移動だ」
椅子に変形させたゴーレムを、俺は移動させる。
自分が歩いたりはしない。
移動中は読書をして、優雅に移動。
この世界は娯楽こそ少ないが、活版印刷の技術はそれなりに発展しており、庶民でも小説を気楽に楽しめる風土が形成されている。
他にも、魔術の論文とか、結構俺は好んで読んでいたりするのだ。
魔術でもゴーレムが作れるから、魔術師のゴーレムに関する論文とか読んだりな。
「キッチン、エメスの料理を温めてくれ」
リビングについたら、キッチンに変形しているゴーレムに指示を出して料理を温めてもらう。
基本的に料理は当番制で、今日は朝が速いからということでエメスが当番だ。
多分、俺の昼の分まで作ってくれてある。
あいつは凝り性だからな。
ちなみに俺も料理は普通にするぞ、前世では男のひとり飯程度だったが、異世界に転生してからはむしろ腕を上達させているまである。
娯楽が少ないからな。
「おー、うまそうな匂い」
エメスが作っていったのは、この世界におけるドリアみたいな料理だった。
ホワイトスープっていうシチュー相当の料理をチーズと一緒に米へかけて焼く。
そう、米があるのだ、この世界。
俺が住むアドベラの街周辺の主食ではないので比較的珍しい食材だが、俺は金に糸目をつけず蒐集し貯蓄している。
「あー、チーズが効いてて巧い。やっぱとりあえずチーズ載せとけば大体なんとかなるよな」
なんて感想をひとりでこぼしつつ、朝食を完食。
皿洗いもゴーレムがやってくれるので、俺はただ食べるだけでいい。
これぞまさに、理想の生活。
ゴーレムが異世界にて最強である所以だ。
前にも言ったが、ゴーレムは生活のほとんどを自動化してくれる。
魔術にしろゴーレムクラフトにしろ、ゴーレムを作る方法が一般的ではないので家庭で使われることは少ないが、建築現場だとあくせく働くゴーレムはよく見受けられる光景だ。
時にはギルドで受付をしてるゴーレムなんてのまでいる。
この街だと、まぁそういうゴーレムを作っているのはだいたい俺なんだが。
「んじゃ、今日もやりますか」
朝食を食べ終えた後、俺は早速作業にはいる。
休日はもっぱら、二階にある
この家は俺とエメスが暮らしていて、一回はリビングや風呂場、それからゲストルームがある。
二階に俺達の私室と――それから、俺がゴーレムを作って遊ぶ”工房”があるわけ。
中はゴーレムに関する論文や、私室から溢れた書物。
それから無造作におかれた制作途中のゴーレムによって、実に工房らしくなっている。
これでフラスコやビーカーがあれば完璧だな。
俺は使わないので、インテリアにしかならないが。
「今日こそ完成させるぞ、アダマンタイトとミスリルの合成ゴーレム」
――さて、俺の理想の生活のためには、どうしても報酬が必要だと言った。
理由がこれだ。
アダマンタイトとミスリル、どっちも異世界特有のレア鉱石である。
要するにお高い。
今目の前におかれている、光を帯びたこぶし大の大きさの鉱石二つで、一般家庭の食費数日分を賄えるほどに。
俺はこれを2つ並べて、ゴーレムクラフトのスキルを起動させた。
「ゴーレムクラフト、上位制作!」
この世界のスキルは、基本的にその全てがパッシブスキルだ。
持っているだけで効果がある。
剣術系のスキルを持っていれば、剣術を習得するのが早くなるし、魔術も同様。
俺の場合は、ゴーレムクラフトのスキルを持っていることで、魔術による過程を省略して魔力だけでゴーレムをクラフトできる。
上位制作は、その中でもより高度なゴーレムを作るのに適している”技術”だ。
ようするに技名。
んで、そんな上位制作によって、二つのレア鉱石が光を帯びて――
そして、砕け散った。
「ああー」
砕け散った鉱石は、レア鉱石――正確に言うとマナ鉱石という名称がある――特有の光を失い、ただの石に変わってしまう。
マナ鉱石は文字通り、特殊なマナを含んだ鉱石だから、そのマナが抜け落ちてしまったのだ。
そう、強いゴーレムを作るにはお金がいる。
それを満足行くまで稼げて、工房付きの一軒家を持っても周囲からやっかみを受けないためには、どうしてもAランクの称号が必要だったのだ。
「よし、次行くぞ」
とはいえ、俺にとってはそんな肩書なんてどうでもよくて、ゴーレムを作れればそれでいい。
だから今日も湯水のごとくレア鉱石をゴーレム制作に注ぎ込み――帰ってきたエメスからこっぴどく叱られるのだ。
スキルいっぱいあるとすごい世界でスキルひとつしかないけど極めてるのはすごいってやつです。
極めてやることか……と思いますが大事なことです。
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