【書籍化決定】かませ役♂に憑依転生した俺はTSを諦めない   作:不破ふわる

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第150話 迷子! ブリザードガール!

 

 途中までは良かった。

 マジで、凄く良かった。

 

 食いしん坊の臆病美少女に、クールな保護者美少女、そして無個性を気にする美少女。

 

 もうテンプレきららだった。

 完璧にほのぼの日常美少女パターンに入ったと思っていた。

 

 だから、油断した。

 

 いきなり現実に引き戻されるとはね。

 マジで怖いね、学園都市。

 

「ん、このハンバーグはしょっぱくて美味しいな。ワタシ様は満足だ」

 

 ところ変わってとあるファミレス。

 

 俺の向かいの席に座った美幼女はそう言った。

 

 あれから俺達はリュウコちゃんの指示の元、移動したのだ。

 

 ちなみに、今は全裸ではなくフリルたっぷりのゴスロリ衣装を着ている。

 付け加えて言うならば、チョイスは俺ではない。断じて違う。

 トアちゃんだ。

 

『かわいいねぇ^^ 』

 

 フォークを小さな手で握って、もっきゅもっきゅと口を動かすさまは可愛い。

 

 けど、この人たぶん騎双学園の生徒会長だよなぁ……。

 面影というか、一人称と自分中心の言動がモロにあの人だ。

 

 氷凰堂レイは、原作では敵というよりは災害に近い。

 六波羅さんがトウラク君サイドについたときに騎双学園のリーダーとして立ちはだかるのだが、敵らしい行動はそれだけ。

 

 あとは騎双学園の愉快な仲間達と共に問題を起こして「また生徒会か」と言われるような半ばギャグの集団と化していた。

 

 が、侮ってはいけない。

 この人、Sランクの中でも中々にやばい人である。

 

 彼女の能力である凍結は、概念に干渉し、時すら凍らせる。

 そして、相手の能力さえも。

 

 Sランクでこれに対抗できるのは無敵モードの六波羅さんだけであり、これこそが騎双学園にだけ二人Sランクがいた理由だ。

 

 なので、この子がもしもレイちゃんなら、俺達は敵に回ったその瞬間に敗北する。

 凍結ってズルだろ。どうやって勝つんだよ。

 

『? 凍結ごとき干渉すれば良いのでは? 私の事を舐め過ぎだねぇ』

 

 凍結って雑魚だろ。マジで楽勝過ぎるわ。

 

『相変わらず、見事な手のひら返しだ』

 

 よせやい、褒めても何も出やしねえ。

 

 が、俺が凍結に対処可能ならもう安心だ。

 なんで幼女になってるかわからないけど、遊んであげるね♥

 

 丁度ロリ枠が空いてるよ。四人それぞれ属性が分かれてておさまりがいいね。

 

『幼女すらコンテンツにしてる……というか良いのかい? レイは君の記憶ではこんなに幼くはないのだろう?』

 

 まあその辺は学園都市だし……。

 原作でもヒロイン達が聖遺物のせいでロリになる回とかあったし……。

 

 だから、驚くほどの事じゃない。

 マジで困ったらアリアンロッドに行けばいいしね。

 

「トア、ワタシ様のハンバーグを一口くれてやろう。だから、そのステーキを一切れ寄越せ」

「あ、いいよ。はい、どうぞ」

「ん! 美味いな! ワタシ様のもくれてやる!」

「ありがとう……うん、美味しいよ!」

 

 目の前で、トアちゃんとレイちゃん(幼女のすがた)があーんをし合っている。

 見たまえ星詠みの杖君。この光景が見られたのなら、彼女が幼女になった理由など些細な事だと思わないかね。

 

 どうせあっちでどうにかするんだし、俺達はこの幸せを享受しようではないか。

 

『おぉ……これが、愛。人の持つ心の輝きか……』

 

 ラスボスかな?

 

「ケイ、お前は食べないのか? このミートソーススパゲティを注文したらどうだ。そうすれば、ワタシ様のハンバーグと交換してやってもいいぞ」

「貴女が食べたいだけでしょ。私は遠慮しておく。もうお腹いっぱいだから」

「む、そうか。であれば無理強いはしない」

 

 レイちゃんはそう言うと、特段落ち込んだ様子もなくハンバーグを食べ始めた。

 その隣では、トアちゃんがメニュー表を見ている。

 

 そう言えば、パフェとか口走ってたね。

 ……え、マジで食うの?

 

「……あ、私の分もパフェ頼んでもらって良いかな。チョコモンブランパフェで」

「リュウコちゃん、戻ってきたんだ」

 

 声のした方を見れば、疲れた顔のリュウコちゃんがいた。

 

 彼女はSランクという事でレイちゃんが滅茶苦茶にしたクレープ屋の処理をしていたのだ。

 俺達に一旦レイちゃんを預けて一人クレープ屋に残ったリュウコちゃんの背中から漂う哀愁は今も忘れられない。

 

「だ、大丈夫? ステーキ食べる?」

「ワタシ様のハンバーグもくれてやる」

 

 食えばなんとかなると思っている二人に差し出された肉をそれぞれ食べたリュウコちゃんは「んまい」と元気がないまま言うと俺の隣に座った。

 

 はわわ!

 

「どうして六波羅さんいないんだよ……。どこ行ったかもわからないし……タタリちゃんも連絡つかないし、キリカちゃんは既読無視だし……。ユキヒラさんはなんか怖いし……」

 

 ぶつぶつと呟きながら、リュウコちゃんはどんどんと俯いていく。

 

 確かに、Sランク一番の問題児が幼女になっているとか、リュウコちゃんの立場なら関わりたくないだろう。

 

 君、本当は面倒臭がりの事なかれ主義だもんね。

 無個性なのが個性だもんね!

 

「良かったら、私からミズヒちゃんに連絡しようか……?」

 

 心配そうにトアちゃんがそう言った。

 

 その瞬間、リュウコちゃんは顔を上げてぱぁっと表情を明るくする。

 が、次の瞬間にはハッとして首を横に振った。

 

「い、いや、いいよ! 新入りにばかり頼っていては示しがつかないからね。うん、マジで。これくらい、Sランク渡雷リュウコがなんとかしてやらぁ!」

 

 もう半ばやけくそであった。

 が、リュウコちゃんの異能であるバルティウスは、たぶんこういう事には不向きである。

 

 ドラゴンで何が出来るってんだ。

 

『ふむ、ではそのバルティウスをドラゴン娘にしてみては?』

 

 何が「では」なんだよ。

 解決になってねえだろ。

 

「とりあえずパフェだ! 難しい事はそれ食べてから考えよう!」

「リュウコ、ワタシ様もパフェ食べたい」

「……そっかぁ! じゃあ頼みな!」

 

 リュウコちゃんの中の何かが壊れたようだった。

 俺には心配そうな顔のクール美少女を演じる事しかできない。

 

 ごめんね、いざとなったら俺がソルシエラするからね。

 

 まあ、そんな大したことにはならないと思うけどな、ワハハ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 クローマ音楽院の大元は、国家機関であった。

 その成り立ちから説明するとなると、学園都市ヒノツチの設立まで遡ることになる。

 

 騎双学園などに並ぶ最古の学園と言っても良いだろう。

 

 今でこそ観光客用に自治区は作られているが改造を繰り返されたこの都市の裏には明確な空白が存在する。

 

 クローマ音楽院の観光用商業区の地下100メートル。

 誰の目にも晒されないその場所に、一つの劇場があった。

 

 簡素な装飾と必要最低限の明かり。

 あくまで主役はステージの上の人間だとでも言っているかのようだ。

 

 ステージの上では、一人の男がピアノの演奏をしている。

 どういう訳か、彼の顔は随分と青い。

 

「――あー、つまりは逃げたんだろう、サブプランが」

 

 無数に並ぶ席の真ん中に座り、一人の女性は通話の相手に向けて吐き捨てるようにそう言った。 

 それからため息つき、頭をガシガシと掻く。

 

「見誤ったか、覚醒のタイミングを。別に良いさ、問題ないから」

 

 黒と緑が混ざった奇抜な髪色のその女は、よれた白衣の中を漁りながら言う。

 

「追ってくれよ、一応。必要になるかもしれないからな、あのガキも」

 

 キャンディーを取り出した女性は、それを口に入れるとボリボリとかみ砕いていく。

 その顔は、眉をひそめながらも口元は弧を描いていた。

 

「オリジナルを所有しているのは、私達。だから殺して回収でも良い、最悪」

 

 女性はもう片方の手で、銃の形を作る。

 その先には、ピアノを引く男性の姿。

 

「許すよ、この私()()が」

 

 銃を撃つ仕草をしながら、女性は嗤う。

 その瞬間、男の弾いていたピアノを氷が覆い始めた。

 

 それでも男はピアノを弾く手を止めず、しかしその顔は今にも泣きそうである。

 

 彼の感情に呼応して、演奏が荒々しくなっていく。

 そしてついに、男は恐怖に駆られて立ち上がり逃げ出そうとした。

 

「立ったな、席を。止めたな、演奏を」

 

 学者はそう言って手を叩く。

 まるで拍手のように軽快に、そして陽気に。

 

 が、拍手を送られている筈の男の顔は怯え切っていた。

 何度も学者に許しを請うその姿は、既に奏者ではない。

 

「罰ゲームだ、残念ながら」

 

 男の周囲に、霜が降りる。

 それはまるで死神の吐息のようで、男の足元を氷が覆っていった。

 

 それからは、あっという間だった。

 

 まるで映像の早回しのように男の足を覆っていく氷は、そのまま数秒ほどで男を飲み込んだ。

 

 ピアノの音も、男の嘆く声も聞こえず、辺りに静寂が訪れる。

 

 学者はそれを見て席を立った。

 

「ヴァイオリンだな、次は」

 

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