【書籍化決定】かませ役♂に憑依転生した俺はTSを諦めない   作:不破ふわる

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七章 ぞろぞろ偽者ソルシエラ
第188話 イチャイチャぬちゃぬちゃプロローグ


 最近、どっちが主か分からなくなっている気がする。

 

 星詠みの杖君にとって、立場上は俺がマスターなのだから当然偉いし色々と権利もあるはずだ。

 

 なのに、最近は「舐め」が発生している。

 ……いや、ペロペロじゃなくて、態度的な意味で。

 

 今だって、明らかに俺を舐め腐った発言をかましていた。

 

「――もう一度聞こうか。なんだって?」

 

 自室でベッドに腰かけた俺を前に、0号の姿で正座する星詠みの杖君。

 彼女? はその手に小さな水槽を持ちながら言った。

 

「天使を飼いたいんだ」

「狂ってんのか」

 

 ヒノツチ文化大祭まであと三日に迫った今日という穏やかな日。

 フェクトム総合学園は何もないから楽でいいね、とのんびり過ごしていた俺に星詠みの杖君からの爆弾発言であった。

 

 デモンズギアとしての誇りはどうしたんだ。

 

「でも、こんなに無害なんだが?」

「天使である時点で無害じゃねえんだわ。というか俺に紹介したい生物ってこれの事かよ」

「ねぇ~いいじゃないか~。ちゃんとお世話するからぁ」

「子供かな?」

 

 犬や猫とは訳が違うんだぞ。

 

「天使を支配下に置くソルシエラもかっこいいだろう? ここはミステリアスに貢献すると思ってどうだろうか」

「うーん……でもそれ、ウミガメじゃん。ミステリアス美少女が、ウミガメ……?」

 

 俺は水槽の中を優雅に泳ぐ小さなウミガメを指さして言った。

 

 なんで使い魔がウミガメなの?

 少なくとも強キャラではないよね、その使い魔チョイス。

 

「う、ウミガメも良いと思うけどねぇ。……ほら、君も何か言いたまえ」

 

 星詠みの杖君は水槽をコンコンと叩く。

 するとウミガメは俺の方を見て言った。

 

「美少女について学びに来ました」

「オタク留学生?」

 

 すっごく流暢にキモい事言うじゃーん。

 ドン引きする俺を放って、天使は言葉を続けた。

 

「私は幼いソルシエラと長い年月を共にした。彼女との穏やかな日々に、私は自分の中に名状しがたい何かが生まれたのを感じたのだ。そう……それが愛だったのだ。私はこの愛の正体を解き明かしたいと思っている。私があの子に何を思い、あの子の笑顔に何を見たのか。そして、私はあの子に再会した時どうするべきなのか。答えを知るべく、馳せ参じたのだ」

「……?????」

 

 俺は首を傾げながら星詠みの杖君を見る。

 彼女は天使の言葉にうんうんと頷いていた。

 

「あの、質問いいですか……?」

「勿論だ、マイロード」

「いや、マイロードではないんだけど……あの……幼いソルシエラと過ごしたって……何?」

「海の見える丘の上で、二人で過ごした日々の事だ。あの子は私のキッシュが好きなんだよ」

「知らん知らん知らん」

 

 怖いんだけど。

 幻覚見えてんだけどこの天使。

 

 第三の天使ってこんなだっけ……。

 なんか、もっとこう……手ごわい電脳系だった気がするんだけど……。

 

「見たまえ、相棒が怯えているだろう。あの姿も、可愛らしい」

「成程」

「取り合えず元凶が誰なのかは分かったわ」

 

 俺は立ち上がり、星詠みの杖君の前に立つ。

 そして、その頬をぐにぐにと引っ張った。

 

「このイカれデモンズギアめ……! 天使は駄目だろ! 人類の敵だぞ! つまりは美少女の敵だ!」

「で、でも天使にも美少女を享受する権利はある筈だ。それに悪の怪物が美少女になる展開はもはや王道だろ……!」

「…………天使、お前は美少女になれるのか」

 

 俺の言葉に、天使は泳ぎながら答えた。

 

「無理だ」

「捨ててこい!」

「そんなぁ!? お願いだ! 私がきちんと管理をする。そもそもコイツはもう人間には反乱できない! そう作り変えた!」

 

 さらっととんでもねえ事しやがる。

 

「君の良さを語る相手が欲しいんだよぉ! この感情をぶつける相手がぁ!」

「嬉しいよりもキモいが勝ってる」

「酷い! 相棒の言いつけを守って、美少女でもないし、人間でもない奴を選んだんだ。文句はない筈だ!」

「しつこいなぁ。駄目なものは駄目」

 

 天使はマジで危ないから。

 コイツも解体して武器にした方が安全だよ。

 

 そんな俺の原作知識を元に星詠みの杖君から水槽を奪い取ろうとしたその時だった。

 

「お願いだよ、ソルシエラ」

「……っ」

 

 水槽を奪い取ろうと近づいた俺の耳元で聞こえる星詠みの杖君の美少女ボイス。

 

 元はソルシエラなので、その声はまるで福音。

 脳天までも快感が貫き、俺はその場にへたり込むことしかできなかった。

 

「よっし、ベッドに行こうねぇ^^」

「や、やめろぉ」

 

 耳元で囁きながら、星詠みの杖君は俺を抱きかかえベッドに向かう。

 そして、俺を寝かせると水槽の方を見て言った。

 

「今から見せるこれが、ゼロソルだ。世界の根源であり、絶対の真理。その無駄に優秀な回路に焼き付けると良い」

「はい」

「ちょ、ちょっと待て受けに回るつもりは「でもこれ美少女コンテンツ的には美味しいよね?」……くっ」

 

 星詠みの杖君の言う通りだ。

 今の俺は、あまりにも美少女として美味しい。

 

 他の美少女がこんな目に遭うなら真顔で止めるが、俺なら……。

 

『録画は?』

『全方位』

『しょうがないなぁ……今回だけだよ♥』

『うん♥』

 

 テレパシーにより作り上げられる合意の百合乱暴劇場――開幕である。

 

 俺はソルシエラの恰好に変化し、0号をキッと睨みつけた。

 

「やっ、やめなさい……!」

「嫌だよ。……さて、我儘を言う子にはお仕置きしないとねぇ」

 

 いや、我儘言ってんのは君ね。

 

「なぜ急に着替えたのだろう……。その意味は? というか、なぜ囁かれただけで形勢が逆転した……? 理解不能――」

 

 水槽から聞こえる無粋な声。

 

 俺は星詠みの杖君と再びテレパシーを開始した。

 

『どうやら理解できていないようだけど』

『だが、理解しようという意気込みは感じただろう。既に君だってわかっているはずだ。あれがもう脅威ではないと』

『今は星詠みの杖君の方が脅威だと思っているよ』

『ありがと♥』

『褒めてない♥』

 

 耳元で囁く0号と、悶えるソルシエラ。

 その脳内で開かれる美少女会議。

 

 その場は粛々と会議が進行している。

 

『あれは優秀な演算システムになり得る。補助パーツとしての性能は充分だ』

『それはそうだね』

 

 でもウミガメかぁ。

 

『それに、保険は必要だ。私が無力化された際の別アプローチでの力が』

『君が無力化されたら詰みじゃない?』

『天使はソルシエラに対応して進化している。私達も進化しなければならないだろう』

 

 それは随分と真面目な言葉だった。

 てっきり星詠みの杖君の狂った愛情が布教活動をしたのかと思ったのだが。

 流石はデモンズギアだ。

 

 厄災に対して清濁を併せて吞む覚悟を持っている。

 

 ならば、こちらも応えなければならないだろう。

 

『……そこまで言われたらしょうがない。わかった、いいよ』

『ありがとう^^』

『けれど、天使に枷を嵌める必要があるな』

『枷かい?』

 

 星詠みの杖君はシステム面で天使が反乱を起こさないように対策してくれたようだ。

 なので、俺はその心を縛ろう。

 

『という訳で、天使の脳を焼きます』

『任せてくれたまえ^^』

 

 天使の中ではソルシエラは庇護対象のように思える。ロリシエラと一緒にいた影響が強い筈だ。

 だから、そんな庇護対象が今目の前でぐちゃトロにされる所をお見せしよう。

 

 なーに、天使といえども初心なお子ちゃま。

 R-15で充分だ。

 

 覚悟しろよ天使……!

 俺達の百合乱暴は、ちっとばかし響くぞ!

 

『キスもしようねぇ^^』

 

 星詠みの杖君が俺に覆い被さる。

 そしていざ天使と異文化コミュニケーションと洒落込もうとしたその時だ。

 

 突然、部屋の扉が開き誰かが入ってきた。

 

「ケイ、見てよこれ! これってソルシエラのにせも……の」

「ちょっと止まらないでください! クラム、聞いてますか!? 入り口で止まると私が入れないんですが!」

 

 大慌てで入ってきたのはクラムちゃんだった。

 その後ろではわちゃわちゃとヒカリちゃんが騒いでいる。

 

「け、ケイ……大丈夫?」

 

『やっべ』

 

 おいどうするんだ星詠みの杖君!

 かなりマズいぞ!

 

『というか鍵を掛けたまえ!』

 

 美少女相手にやましい事が無いから鍵は掛けないよ。

 

『その潔さが仇になっているんだねぇ! まあ、今はとりあえず私が誤魔化すさ』

 

 星詠みの杖君はそう言うと、首を無駄にぐいっと傾けてクラムちゃんを見た。

 

「……まったく、部屋に入るのだからノックくらいしたらどうだ。マナーがなっていない」

「コイツ……! ケイから離れて!」

「わかったよ、煩い人間だ」

 

 そう言って星詠みの杖君は俺の髪にキスをした後、光の粒子となり消える。

 

 あっ、逃げやがった!

 

『危ないねえ^^』

『間一髪だった』

 

 天使、お前も逃げてんじゃねーよ!

 というか少し前から頭の中にもう一体いると思ったらお前か!

 

『ほら私達に構っていないで、早くクラムの相手をしてあげたまえ』

 

 星詠みの杖君の言う通り、クラムちゃんは俺の元へと駆け寄ってきた。

 その眼は、完全に開き切っている。

 

「何かされた? 大丈夫?」

「大丈夫よ。ふふっ心配性ね」

 

 俺はクールに微笑み、クラムちゃんの髪を撫で誤魔化す。

 ミステリアス美少女に掛かれば会話の主導権を握るなんて造作もない。

 

「それで、何か用かしら?」

「あっ、そうだ! ケイ、大変だよ! 貴女のに「偽者のソルシエラですよ! ダークソルシエラです!」……まあ、そういう事なの」

 

 成程ねぇ、偽者のソルシエラか。

 ……まあ、犯人わかるけどね。

 

『私じゃないぞ』

 

 え?

 

『私を疑っているようだから先に言うが、私は違うぞ』

 

 ……え!?

 

 

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