【書籍化決定】かませ役♂に憑依転生した俺はTSを諦めない   作:不破ふわる

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第199話 コソコソ盗聴会議中

 

「あ、消えた……本当に消えた? 本当にいなくなった? 透明になって不意を突こうとしてるとかじゃなくて?」

「てめェと一緒にすんなリュウコ」

 

 ソルシエラが消えた後、リュウコは額の汗をぬぐって椅子に体を預ける。

 学者の死を見ていたリュウコは、一人だけソルシエラに対して本気でビビっていた。

 

 それ故、偽者に対しても全力ステルスからの全力状態異常で全力始末したのだが、あくまでそれをリュウコは華麗な暗殺術と呼んだ。

 

「ふぅ、じゃあ会議を再開しよっか。ダイヤ生徒会長、続きをどうぞ……ダイヤ生徒会長?」

 

 見れば、ダイヤはソルシエラの消えた場所をぼーっと見つめていた。

 

 まるで熱に浮かされたような表情。

 そして。

 

「――ロイヤルですわ」

「え?」

「あの方、とってもロイヤルでしたわ! 誰か、連絡先とか知りませんこと!? わたくし、是非ともあの方とお友達に――」

「ダイヤ生徒会長、皆の前ですよ」

「安心なさい。遊ぶときはリュウコも誘いますわ」

「やめてください……いや、遠慮とかじゃなくて。本気の拒否です」

 

 ソルシエラはリュウコの中で、歩く死と化していた。

 静謐な夜を連想させる彼女の心の内を知ることなど、どこにでもいる女子校生には理解できない。

 

 もしも、理解してしまえば廃人になってしまうのではないかとすら思えてしまう。

 

 しかし他のSランクは違った。

 その場にいる全員が、ソルシエラに対して怯えていない。

 

「あ、あの……皆は怖くないの? あの子、結構怖いと思うんだけど」

「そうかァ? 俺には、丁度良い遊び相手にしか見えねェなァ」

 

 一度ソルシエラと本気で交戦した六波羅は、ある意味でソルシエラを誰よりも理解していた。

 言葉ではない、殺意と必殺の応酬による会話。

 

 それは、ソルシエラと六波羅の間に特殊な関係性を築き上げていた。

 

「わ、私は怖いと思いますよぉ!」

「だよね! 良かったよまともな人がいて……!」

 

 リュウコは涙目のエイナと手を取り合い頷く。

 

 その姿を見て、ミズヒは手を上げて遠慮がちに言った。

 

「いや、ソルシエラは良い人だぞ。少なくとも、私は何度も助けられた。きっと、本当は心優しい少女だ」

「優しい……えっ、ソルシエラが優しい?」

 

 微笑むミズヒを前に、リュウコは言えなかった。

 

 学者に幻覚を見せて、心から殺していくあの残虐非道なソルシエラの姿を。

 それは子供に対して、サンタクロースの正体を秘密にする気分によく似ていた。

 

「いつか、きちんと礼がしたいな。フェクトム総合学園に呼んだら来てくれるだろうか」

 

(それって、大惨事になるんじゃ……)

 

 リュウコは勝手に最悪な妄想をして顔を青くする。

 

 この場にいるSランクで唯一正体を知っている六波羅は、特に返事はしなかった。

 別に興味はなかったのだろう。

 

「――食べ終わってしまいました……」

「あ、タタリちゃん駄菓子あるよ。飲み物欲しいなら、お吸い物も作ってあげるからね」

 

 そう言ってリュウコは拡張領域から魔法瓶とお吸い物セット、そして駄菓子を取り出す。

 今まで怯えていたとは思えないその様変わりに、その場にいる全員が改めて思う。

 

――なんだコイツ。

 

 どれだけ恐怖しようとも、困難を前にしても普通であり続ける。

 狂気に侵されることなく、常に平均の少女。

 

 リュウコは変わらず普通の少女であった。

 

「……やはり、リュウコもSランクですわね」

「え、はははは。まあそんなことないですよ~! あ、ダイヤ生徒会長もお吸い物いります?」

「もう飽きましたわ、それ」

 

 生徒会の所有する倉庫の一部は、リュウコが勝手に生産量を増やしたグッズの在庫で満たされている。

 かれこれ半年はリュウコのお吸い物を消費しているダイヤは、もう正直飽き飽きしていた。

 

 ちなみに、パッケージに写るリュウコの笑みが妙にウザイのも嫌になる原因の一つである。

 

 それでも、リュウコの行動を許容しているのは、偏に生徒会長にするためであった。

 

「渡雷リュウコ、やはり貴女は生徒会長に相応しいロイヤルです。これを機に、この学院の頂点に立つ気はありませんこと?」

「ないです。私、そういうの本当に無理なんで。……あ、エイナちゃんも食べる?」

「食べますぅ」

「食うな。夜食は体に悪ィ。朝に食うから、袋ごと寄越せ」

 

 エイナの健康を出来るだけ管理しようとしている六波羅は、お吸い物を一部受け取り拡張領域に放り投げた。

 それを見たエイナが「あっ……」と寂しそうな声を出したが気にした様子はない。

 

 六波羅は、リュウコを見て口を開く。

 

「外野が言う事じゃねェけどよォ。お前、そろそろ本気で生徒会長に向き合った方が良いんじゃねェのか?」

「は? 本気で嫌だって言ってますけど?」

 

 お吸い物を作りながら、リュウコは半ギレで答える。

 高級な会議室がどんどんお吸い物の香りで満たされていった。

 

「私に生徒会長なんて無理です。人気投票最下位なめんな……いや、言ってて悲しくなってきたな」

「そっ、それはクローマの生徒が捻くれているというか。好きすぎるが故、と言うか」

「いいんですダイヤ生徒会長……慰めは余計に傷に沁みます。どうせ、私が生徒会長になっても皆に舐められるし、それに聖域だって、使いこなせません……」

 

 リュウコは普通の女子校生である。

 なので、普通にいじけるし、普通に面倒臭かった。

 

 こうなると、スイーツを食べて勝手に復活するのを待つ他ないことを知っているダイヤは何も言えずに黙る。

 

 どれだけダイヤが本気の言葉をぶつけようとも、リュウコは普通を盾にのらりくらりと躱す。

 それがリュウコなりの明確な拒否であることをダイヤは知っていた。

 しかし、止めるわけにはいかない。

 

 ダイヤは心の底から、掛け値なしにリュウコという少女を評価しているからだ。

 

「……この学院も大概面倒臭ェな」

 

 何となく事情を察している六波羅には、ダイヤに同情の視線を向けることしかできなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 どうにか生徒会長から逃げようとしているけど、リュウコちゃんはクローマの生徒会長になるよ(ネタばれ)

 

 原作通りなら、君は最終決戦時点で生徒会長だ。

 よかったね、リュウコちゃん!

 

『マイロード、盗聴するぐらいなら普通に会議に参加した方が良かったのでは?』

『ミステリアス盗聴だからセーフだよ^^』

『何がセーフなんだ』

 

 ミステリアスならセーフなんだよ。

 

 今の俺は、夜風に吹かれて街を見下ろす孤高のミステリアス美少女をしている際中だ。

 会議に参加する暇はない。

 

『ずっと言っている意味が分からないぞ』

 

 いずれ魂で理解するさ。

 

 というか聞きたいんだけど……聖域って何?

 原作でリュウコちゃんが使っているところ見た事ないんだけど。

 

『すまないマイロード、私にはわからない』

 

 そんな設定あるんなら原作でも登場すると思うんだけどなぁ。

 聖域ってそもそも物? 現象?

 

『現象だよ。この学区全てに適応された特殊な魔法式だ。生徒会長と一般生徒の間に特殊な魔法式による契約が交わされ、共に現象を作り上げるんだ。私達で言う双星形態に近いだろう。アレは魔力を生み出す。聖域は、お互いの信頼を元に様々な現象が発生するようだ。うーん、興味深いねぇ』

 

 星詠みの杖君……!

 なんて頼もしいんだ。君がインテリジェンスなデバイスであることを忘れていたよ!

 

『全部パンフレットに書いてあるぞ。子供でも知っている事だ』

 

 なら知らない俺とカメ君が相対的にバカってことになるじゃないか!

 

『私は実体を許可なく生み出せないので、パンフレットを見ることができない。私はバカではない』

 

 遠回しに俺の事バカって言ってる?

 

『無知は恥ずべきことではないぞマイロード』

『バカシエラも需要あるよ^^』

 

 バカって言ってるー!?

 

『涼しい顔でお馬鹿な事ばっかりやるソルシエラ見たいねぇ。段差で躓いたり、だっせえTシャツ私服にしてたり、ビジュが良いバカもありじゃないか』

 

 だから、そういうキャラ崩壊系は二次創作なんだよ!

 ソルシエラに無知は許されないの!

 

 聖域について、お勉強わよ!

 

『なら、丁度良い場所がある。ここから少し行った場所に聖域の魔法式を管理する塔がある。一般開放されているし、歴代生徒会長の聖域の解説とかも見れるぞ。ここに行ってみないか?』

 

 歴代の聖域……!

 かっこいい! 行こう!

 

『はっはっは、そんなにはしゃいで転ぶんじゃないぞマイロード』

 

 子ども扱いするな。

 星詠みの杖君、さっさと案内してくれ。

 

『このまま転移魔法陣にまっすぐ』

 

 俺の前に転移魔法陣が生み出される。

 

 案内とかそういう次元じゃねえなこれ。

 

『さあ、行こう。今は時間的に閉場しているが、ミステリアス美少女には関係ない^^』

 

 俺は転移魔法陣を潜る。

 

 さあ、聖域わくわく記念館へと行くぞ。

 

『いや、魔法式の制御とかしている大事な施設なんだが』

『そんな場所に夜中に侵入して大丈夫なのか?』

『大丈夫だろう。どうせ誰も見ていないさ』

 

 そうそう。

 ミステリアス美少女なんだから、不法侵入は当たり前だよ。

 

「ここが……聖域の塔。やはり、そういう事なのね」

 

 俺はそれっぽい事を言いながら塔の中へと降り立った。

 

 中はかなり広い作りになっており、いくつもの展示品が並ぶ博物館のようになっている。

 そして中心には天を貫かんばかりに伸びる巨大な水晶の柱。

 

 これがなんか、良い感じに重要っぽいアイテムなのだろう。

 

『ふわっふわの予想だが、当たっているよ。これこそ、初代聖域使いが作り上げた聖域のシステムの演算装置だ』

 

 はえー、綺麗だなぁ。

 

『感想が幼女』

『幼女!? やはり幼女なのか!?』

 

 俺は二人を無視して水晶へと手を伸ばす。

 その時だった。

 

「やあ、お嬢さん。こんな夜更けに一人は寂しいでしょ」

 

 凛とした美しい声。

 振り返れば、そこには緋色の髪の美女が立っていた。

 

 誰????

 

『満花ネイ、この学院の教師であり女優だ。この女の出る舞台は全てのチケットが即完売。余程人気があるらしい……って、パンフレットに書いている』

 

 サンキューパンフレット!

 

 それにしても、この状況……俺マズいんじゃない?

 

『マズいねぇ』

『マズい』

 

 偽者がわんさか溢れている今のソルシエラなんて、あちらさんからすれば厄ネタでしかないだろう。

 

 仕方ない、行動を起こされる前にプランBで行くぞ。

 

『プランBとは?』

『ミステリアスな発言でふんわりお茶を濁す^^』

『じゃあ今までずっとプランBじゃなかったか?』

 

 うるさいやい。

 ほら、さっさと始めるぞ。

 

『とりあえず、魔眼でも出しておこうか』

『とりあえずで出していいものじゃないだろ』

 

 俺は右目に無駄な幾何学模様を浮かべながら、大鎌を構える。

 そして、首を傾げて言った。

 

「あら、ダンスのお誘いかしら?」

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