【書籍化決定】かませ役♂に憑依転生した俺はTSを諦めない   作:不破ふわる

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八章 そるしえらのなつやすみ
第224話 ぷろろーぐ


 いやぁ、ヒノツチ文化大祭は楽しかったですね。

 

『ああ、大満足だ。人類にマジ感謝^^』

『幼き命も皆、笑顔だった。とても素晴らしい。心地の良い世界だ。これならば、天上の意思の剪定を逃れる事ができるかもしれない』

 

 星詠みの杖君もカメ君も満足してくれたようで何よりだよ。

 

『私としては三日目のアレが良かったねぇ。まさかあそこまで君の取り合いになるとは。関係性を嗜む者として中々に興味深いデータが得られたよ』

『断然、二日目の幼き少女とのロリロリお散歩が好みである。レイと言ったか? あれは素晴らしい命だ。守護らねばなるまい。マイロード、一緒にフリフリのお洋服を着てお出かけするのだ』

 

 満足の方向性が少しばかりマニアックだが、良し。

 何故ならヒノツチ文化大祭は全てを受け入れる祭りなのだから。

 

 まあ、もう終わったけどね!

 

『喪失感^^』

『次はいつロリシエラになるのだマイロード』

 

 ならないよ。

 そもそも、あれだって星詠みの杖君がいないときの緊急形態だし。

 本来ならあの力を使うまでもないからね。

 

『出番が貰えただけでも満足したまえ。この子の相棒は私なんだ』

『別に私は相棒でなくとも構わない。ただ、親ではあるぞ』

 

 ねえよ。

 親じゃねえよ。

 

『そんな……反抗期……?』

『でも体は正直^^』

 

 何を言っても栄養を与えかねないな。

 全く君たちは本当に恐ろしいねぇ。

 

『恐ろしいのは君もだよ相棒。今、自分が何をしているのか言ってみたまえ』

 

 何って、この砂シエラの活用方法を考えているだけだが?

 

「…………」

「もう聖域使いを出せとも言わないね」

 

 ヒノツチ文化大祭を終えて、俺は貴重な休日を砂シエラの活用に消費していた。

 目の前には俺と同じ顔で無表情の砂シエラが一体。

 

 これ、マジでどうしよう……。

 

『同じ顔が二倍。私も入れれば三倍だねぇ!』

 

 そもそも、これを持ってきたのは君なんだからね。

 ほら、責任を持って一緒に有効活用する方法を考えるんだ。

 

『えっ■するとか^^』

 

 有効活用つってんだろ。

 誰が直球の欲望晒け出せって言った。

 

『マイロード、ロリにするべきだ。そうしよう』

 

 こっちも直球過ぎる。

 

「うーん、どうしようかなぁ」

 

 指揮者の管理から外れたのか、これだけは崩れることなく残っている。

 見た目は凄くソルシエラだが、既に能力を使うことはできないただの器となったらしい。

 

 一回ばらして砂にする?

 それからなんかいい感じのインテリアにしようか。

 それか、ミユメちゃんにお願いしてまた武器にするとかどう?

 

『短いスパンで武器まで増やすのは得策ではないぞ。既にソルシエラは沢山の形態で溢れている。これから君が正式にSランクとして活動を始めたとして、グッズの展開に困るだろう。だから、これはソルシエラのエッチなお人形として使おうねぇ』

 

 させねえよ。

 真面目に考えてくれ。

 

『……その、マイロード一つお願いがあるのだがいいだろうか』

 

 どうしたんだカメ君、急に改まって。

 

『私にその体を使わせてくれ。一度でいいから、マイロードを撫でたいのだ。よしよししたいのだ……!』

 

 熱意が伝わってくる言葉、しかし同時に明らかな変態性も伝わった。

 

 現状、カメ君は俺か星詠みの杖君の許可がないと外に出ることも自由に移動することも出来ない。

 これは天使という存在が危なすぎる故の措置なのだが、この子にはクローマでの恩があるのも事実だ。

 

 どうしよう星詠みの杖君。

 

『いいよ^^』

 

 えっ、いいの?

 意外とすんなり許可を出したね。

 君の事だから面倒臭い独占欲を発揮すると思ったよ。

 

『君が私の物なのは既に変えようがない事実だ。それに、この天使の感情は私のソレとは訳が違う。ぶつかり合うことは無いのだよ。ただ、一つだけ条件がある』

『いいだろう。どんな条件でも飲んでやる』

 

 カメ君、この変態デモンズギア相手にあんまりそういう事言わない方がいいよ。

 どうなるか分かったもんじゃないから。

 

『君には、ロリシエラと並んだ時のコンテンツ的美味しさを考えて――姉シエラになって貰おう。丁度、年上枠が空いているぞ』

『マイロード、既に先程の言葉を撤回したい』

 

 カメ君、この素晴らしき相棒の言う事に従うんだ。

 きっとその方が良いから。

 

『ああ、味方が急にいなくなった』

 

 今の俺はロリシエラとヤンデレデモンズギアとミステリアスなノーマルソルシエラの三パターンである。

 これでも十分素晴らしいのだが、ここに一つだけ足りない属性があるのだ。

 

 そう、お姉さん属性である。

 ソルシエラの事を甲斐甲斐しく世話を焼くでもいいし、だらしない姉に対して怒るソルシエラでも良し。

 そうなる場合、ソルシエラにも妹属性が付くのだ。

 

 家族が増えるよ! やったねソルシエラちゃん!

 

『これで存分に頭をナデナデしても違和感がないぞ。膝枕をしたり、ハグしたり。美しい家族愛じゃないか』

 

 ……ん?

 まて星詠みの杖君。

 それでは姉シエラではなくママシエラではないだろうか。

 別物だぞそれは。

 

『何を言っている年上の包容力こそが今求められているんだねぇ。なればこそ、それが姉シエラでもママシエラでも変わりはない! むしろ二つを兼ね備えたソルシエラを――』

 

 最近★ヨミ先生として人気だからって調子に乗りすぎてんじゃないのか?

 君の悪い所でたわね!

 目先のコンテンツに飛びつき、美少女の本質を見ようとしない!

 

 姉シエラはあくまでソルシエラという少女に寄り添う形で存在する、同世代型の年上属性。

 ママシエラは真正面から受け止める無償の愛、癒しの年上属性。

 

 役割が全然違う!

 

『細かい事にこだわり過ぎても消費者には伝わらないよ。大事なのはニーズに答える適応力だ。それに、今は属性の数で勝負をする時代だよ^^』

 

 作家の悪い所が出ているねぇ!

 美少女の輝きとは細部に宿るもの。

 

 ママシエラと姉シエラのルートが同じだとでも言うのか?

 攻略の手順からエンディングまで違うだろうが!

 

『くっ、それは確かに……だがそうやって一つの属性が一つの役割しか持てないという考えも前時代的ではないだろうか。蒼星ミロクを見てみたまえ。普段はお姉さんのように振舞っているが、ミズヒを叱っている時の彼女はどう見てもママだ。ママ星ミロクだ。姉とママ、この属性は両立する!』

 

 くっ、けれどそれはあくまで姉という属性があり、後天的にママが付与された場合だ!

 今回、カメ君には既に親という属性が()()()付与されている。

 そこから姉属性は加わらない。

 

 ママシエラは不可逆だろう!

 

『くっ……!』

 

 くっ……!

 

『私の知らない言語での会話だろうか。とりあえず、私には既に選択権がないのだということは理解できた』

 

 カメ君、最後は君が決めるんだ。

 君は、どうする。

 

『えっ』

『いつまで傍観者を気取っているんだい? ママシエラか姉シエラ、それかママ姉シエラか。選ぶんだ^^』

『三択全てが理解不能過ぎる。私はただマイロードを撫でたかっただけなのに……だが、強いて言うならばママシエラだろうか。私の持つ愛は親の愛。姉に成ることはできない』

 

 そうか、それが君の選択なんだね。

 俺達はその選択を尊重するよ。

 

『さあ、入ると良い。……あ、だが夜は返してね。色々するから^^』

 

 何してんだ夜。

 

『^^』

 

 笑ってんじゃねえぞ。

 

「では、失礼する」

 

 そう言って、カメ君は俺の中からニュッと飛び出してきた。

 手のひらサイズの小さなウミガメとなり、パタパタとヒレを動かしながら砂シエラへと飛んでいく様は妙に可愛い。

 

「その体、借りるぞ」

 

 そう言ってカメ君は砂シエラの中へと入る。

 すると、砂で構成されているはずのそれが一度透明なスライムとなり、再び人型へと成形された。

 

 いつものソルシエラの衣装ではない。

 フリフリのドレスを着て、可愛らしいリボンを付けたその姿は――。

 

「む、マイロード。急に成長したのか? 随分と大きくなったな」

「いや、君が縮んだんだよ」

 

 そこにいたのは、愛くるしい姿の幼いソルシエラであった。

 

『なぜロリシエラに……?』

 

 姉とママはどこ行ったんだ。

 

「カメ君、間違えてるよ」

「すまない、もう一度形を変えよう」

 

 ぺこりと頭を下げた後、カメ君は姿を変え始めた。

 そして次の瞬間には、再びソルシエラとして形が固定される。

 

 園児服を着て、黄色い帽子を被ったそれは――。

 

「駄目だ……! どうしても幼き命になってしまう……!」

 

『病気だろコイツ』

 

 どの口が言ってんだ。

 

「すまないマイロード。私には想像力が無いようだ。過去にあったマイロードとの出来事の中からしか姿を抽出できない。星詠みの杖やマイロードのように自在に形は変えられない……!」

 

 いや、ある意味ではぶっちぎりの想像力だけどね。

 今だって、存在しない記憶をさもあるかのように語っただろ。

 

「マイロード、この小さなおててでは私の欲は満たせない。それに、マイロードの大好きなキッシュも作れないだろう」

「キッシュ食ったことねえよ。いつの話してんの?」

 

『うーん、だがロリシエラにママみを感じるのも乙では……?』

 

 ソルシエラがロリシエラにママみ感じる構図想像してみろよ。末期だろ。

 

『クラムなら喜ぶだろ』

 

 確かに。

 また、色々と理由をこじつけてクラムちゃんの前でロリになろう。

 そして、おままごととかいって本気でママになってクラムちゃんの脳みそをバグらせよう!

 

 幼女になったソルシエラを守るためにしっかりしなきゃ、と思うクラムちゃんだったけどおままごととして始めた筈の膝枕や頭ヨシヨシにはまってしまう。

 それがいけない事だとわかりながらも、妙な背徳感のある行為から抜け出せない……!

 

『ロリシエラになると攻めになる展開……アリだねぇ^^』

 

「マイロード、また私を置いていかないでくれ」

 

 カメ君はオロオロしながら俺を見ていた。

 ロリシエラの姿でオロオロしているの可愛いね。

 ワッペンがカメなの自己主張強いけどね。

 

「もう少し練習してみる? お姉さんとはいかずとも、いつものソルシエラの見た目くらいにはなれるかも」

「ああ、やってみよう。しかし良いのだろうか。マイロードの貴重な時間を使わせてしまって」

「いいのいいの。だって今夏休みだし。やる事ないしね」

 

 クラムちゃんとヒカリちゃんは、ダンジョン攻略へ。

 ミズヒ先輩はいつものようにSランクの任務をこなしている。

 ミユメちゃんはジルニアス学術院とこっちを行ったり来たりで忙しいし、ミロク先輩も生徒会長としてやる事が多い。

 

 そしてトアちゃんはなぜか入院が長引いた。

 どうやら、食べ過ぎでお腹を壊したらしい。

 いっぱい食べる君は好きだけど、程々にね……。 

 

 というわけで俺だけが暇なのだ。

 というか、恐らくクラムちゃん辺りが俺の事を気遣って休みにしている。

 

『ソルシエラに少しでも休息を、という労わりを感じるねぇ』

 

 だからこそ、こうして趣味に没頭できるんだね。

 どうせここからは俺の手の届かない所での原作イベントだし。

 

 牙塔家での当主を決めるトーナメントが間もなく開催されることだろう。

 まあ、今のトウラク君はやたら強いし問題ない。

 

 がんばえー。

 

「マイロード、駄目だ。服のバリエーションばかり増えて身長が伸びない……!」

「せっかくだから写真撮っておくか」

 

『いいねぇ^^』

 

 俺達の楽しい夏休みは始まったばかりだぜ!

 

 

 

 

 

 蒼星ミロクは、目の前の人物を見て眉をひそめていた。

 その顔には、警戒や懐疑など、色々浮かび上がっている。

 

 が、何よりもミロクが思う事それは。

 

「なぜ今更会いに来たのですか……那滝家の人間が」

 

 フェクトム総合学園の応接室。

 立場のある人間と話すときにのみ解放されるその場所には、ミロクと一人の青年がいた。

 ミロクの対面に座る蒼銀の髪の青年は、どこか粗雑な態度ではあるが品もある。

 妙ではあるが、確かな存在感があった。

 

「貴方達からケイ君を追い出したと聞いていますが」

「らしいな。僕は兄さんと違って興味はねえよ。ここに来たのだって、折角だからっていう僕なりの優しさだ。……追い出された人間が一人であそこに行くのは少しばかり堪えんだろ」

 

 それがケイを思いやっての言葉だという事はすぐに理解できた。

 本来ならこの場にケイを呼びたい所だがそれが出来ない理由があった。

 

(どう考えても厄介事ですね。せっかく、皆でケイ君を休ませようとしているのに……)

 

 ソルシエラとして戦いが続いている彼女を休ませる事は、事情を知っているクラムとヒカリと共に夏休み前から計画していたのである。

 ここで明らかな面倒事にケイを巻き込む訳にはいかなかった。

 

「……もしも、私達で出来ることがあれば言ってください。力になりますから」

「ならケイを出せ。本土のバスは本数が少ない。時間ぎりぎりなんだ、僕を待たせるなよ」

 

 青年はそう言ってテーブルに身を乗り出してミロクを見た。

 間近で見れば見る程、その顔だちはケイに似ている。

 

 男子生徒の制服だからこそ青年として認識できているが、その気になれば絶世の美女にもなれるであろう端正な顔立ちだ。

 

「急に来た僕を警戒しているんだろう。わかる、けど事情が事情だ」

 

 青年はそれから一瞬考えるような素振りを見せたが、面倒臭そうに頭をかきむしった。

 

「あー、どうせもうすぐバレるしいいか。よく聞け生徒会長さんよぉ、緊急事態なんだ」

 

 そうして青年は再び口を閉ざす。

 もったいぶるというよりはこれから告げる言葉の重みを理解しているが故の躊躇に見えた。

 

「御三家の当主が全員殺された。那滝家もな。だから、これから三兄弟は強制的に実家に帰省だ」

 

 こうして、那滝家でのケイの夏休みは始まったのである。

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