【書籍化決定】かませ役♂に憑依転生した俺はTSを諦めない   作:不破ふわる

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第232話 こんせき

 カメ君の嘘つき!

 ロリ美少女なんてどこにもないじゃないか!

 

『むぅ……』

 

 むぅじゃないよ!

 近くにソウゴ君が落ちてたから誤魔化せたけどさ。

 

 危うくいるかも分からない美少女目掛けて走っていったと思われるところだったじゃないか!

 

『だ、だが本当に感じたのだ。幼き命の波動を……!』

 

 何言ってんだこの海洋生物。

 

『幼き命のみが放つ純粋なる波動それを私は感知した。間違いない』

 

 聞いたこともない波動を感知するな。

 ロリコンもここまで来ると病気だな。

 

『どの口が言っているのか教えて欲しいねぇ。私からすれば、美少女の輝きと何も変わらないのだが』

 

 は?

 美少女の輝きは存在するが?

 兄さん達を見てみなよ、輝いていただろう!

 

『美少女♂にも適用されているのが、余計に混乱の元だねぇ』

『ま、マイロード、もう一度だけあの辺りを探索しよう。そうすれば、今度こそ私が痕跡を見つけてみせよう』

 

 えぇ……。

 俺にはソウゴ君にえちえち看護をするという大事な仕事があるのだが。

 それに、兄さん達に妹だと教える為の準備もしなきゃいけないのに……。

 

 だが、カメ君がそこまで言うなら信じてみよう。

 カメ君は狂っているし、頭がおかしいけど嘘はついた事がないからね。

 

『ありがとう……! 流石は我が娘だ……!』

 

 やっぱ止めようかしら。

 

「ありがとうございました……! 弟を助けて貰って」

「いえ、むしろこちらの決闘に巻き込んだ可能性があります。那滝家の当主として、謝罪をしなければならないでしょう」

「そ、そんなっ。どう考えてもあそこで遊んでいたソウゴが悪いので」

「人類の盾である私達が企業の方を傷つけるなどあってはならない事。ただの謝罪で済ませられるわけがありません」

 

 横から堅苦しい言葉が聞えてくる。

 

 俺は今、布団に寝かされているソウゴ君を前に正座をしていた。

 そしてその横では、ヒナミちゃんとアイ兄さんがなんか難しそうなやりとりをしている。

 

 要約すると『御曹司が傷ついちゃったマジごめん。謝罪だけじゃなくて、なんかするぜ』だ。

 大丈夫だよアイ兄さん。

 この子は既に遊園地でとんでもねえ目に遭っているから。

 なんならこれから先も主人公として波乱万丈な人生を送るだろうから!

 

 というか、送らせる!

 ハーレム系主人公として覇道を歩め、神宮寺ソウゴよ!

 

『とんでもないものに目をつけられたソウゴが哀れでしかない』

『哀れな人の子よ……』

 

 まあ、シヤクちゃんも大丈夫だって言ってたし問題ないでしょ。

 問題なら、俺が治すし。

 

『耳かきしながら治してあげよう^^』

 

 うん^^

 

『なぜ自分達の需要も満たす必要があるのだ……』

 

 満たせるなら満たすぞ。

 隙を見せたソウゴ君が悪い。

 

「ケイ、彼を少しの間見ていなさい。私は、ヒナミさんと少し話をしてきます。さ、こちらに」

「は、はい……!」

 

 謝罪をして貰う側のヒナミちゃんがなぜか緊張して、部屋を出ていってしまった。

 

 俺はソウゴ君と共に和室に残される。

 アイ兄さんとヒナミちゃんの足音が遠ざかっていき、二人きりの空間には蝉の声だけが響いてくる。

 

 さて。

 

 隙 を 見 せ た わ ね。

 

『来 た わ ね』

『なにを始めるのだ』

 

 決まっているだろう、これから俺はソウゴ君の性癖を破壊する。

 

『破壊するものが残ってるのか?』

 

 ミンチにしてやる。

 

『おミンチ^^』

『いたいけな少年が……』

 

 考えてみて欲しい、目覚めた時に自分が憧れのお姉さんに膝枕されていた時のことを。

 自分にだけ見せる顔で、優しく頭を撫でて、そして油断から普段は歌わない鼻歌なんか歌っちゃう。

 

 そんなの、ひと夏の淡い思い出だろ。

 無形文化遺産だろこれ。

 

『誇るべき日本の夏^^』

 

 俺達、極東の人間は四季折々の性癖破壊を風流とするのだ。

 和の心を重んじるのだ、星詠みの杖君、カメ君!

 

『夏の季語はワンピースと膝枕^^ そして素足^^』

 

 最高^^

 

『また始まってしまった。こうなると私には止められない』

 

 なぜかカメ君が呆れているが無視である。

 どうせロリが絡んだら覚醒するしね。

 

 それに、今回はただの性癖破壊じゃない。

 一つ、実験も兼ねているのだ。

 

 干渉の力を使って、ソウゴ君の夢を操作したいのである。

 

『ほう、興味深いねぇ』

『意識への干渉か。脳の電気信号の掌握なら任せろ。私の得意分野だ』

 

 カメ君と星詠みの杖君がいれば、きっと出来る。

 ソウゴ君の妄想するソルシエラの夢を見せてあげることが……!

 

『そうして夢から覚めた時、本当に自分の目の前にはソルシエラ!』

 

 今まで見ていた夢のせいで、ドキドキが倍増するソウゴ君!

 これこそ、空想と現実の二つの螺旋が描く新たな性癖破壊!

 

『性癖破壊は次のステージへ――』

『私だけまだ最初のステージなのだが』

 

 行くぞ、夢を作り出すのだ!

 夢なら何やってもセーフだから!

 

 多少のえちえちも見逃されるから!

 

『うおおおおおお!』

『なぜ盛り上がる』

 

 ロリシエラも夢で作っていいよ。

 

『『うおおおおおおおおおお!!!』』

 

 熱っちぃ熱っちぃ夏の始まりだぜ!!!!!

 

 

 

 

 

 

 ソウゴを連れてアイ達は去ったが、カイは現場に残っていた。

 那滝家の探索者数人と共に決闘場からソウゴのいた場所までを捜査していたのである。

 

「そっちの森へ続く道も足跡は全て残しておいてくれ。あと、魔力の痕跡はこっちで見るから、物的証拠を探してほしい」

 

 ソウゴが倒れた原因は、何者かの悪意が絡んでいる。

 カイは直感的にそれを理解していた。

 

「決闘に現れたあの化物が無関係とは思えない。……それに、ここまでの道は複雑なはず」

 

 那滝家の中でも、決闘場の裏手は許可なしの立ち入りが禁じられていた。

 決闘場の背後にある森は、禁域と呼ばれている。

 代々、選ばれた人間だけが足を踏み入れる事が出来る禁域とされた森への道が簡単に繋がるはずもない。

 

 ケイのように塀を超えるのが一番手っ取り早いが、決闘場は広く人目に付きやすい。

 曰く、森の異常をすぐに察知できるようにと見晴らしよく作られた庭で、ソウゴのような子供を見逃す訳がないのだ。

 

(禁域って事しか僕は知らないけど、アイ兄さんの様子を見ているとただの昔話って訳じゃなさそうだ)

 

 怪物が現れた時、まるでそれが何かを知ってるかのように対処した兄。

 どう考えても、禁域と、その中に住まうナニカについて情報を持っている。

 

(当主だけにしか、教えられない秘密か。地絃天星埜御霊以外に何かあるのか……?)

 

 那滝家には秘密が多い。

 それは本家の次男から見ても変わりなかった。

 

「秘密主義は嫌だね、全く。あ、お前ら、今から魔力の痕跡探るから魔法も異能も禁止な」

 

 そう言うと、カイはソウゴの倒れていた箇所へと手を置いた。

 四大元素を操る異能は地面の微細な魔力痕跡を探ることが可能なのだ。

 

(なんか手掛かりがあればいいなぁ。なんなら原因をそのまま見つけてもいい。当主になったばかりで家のゴタゴタがあると、企業へのアイ兄さんの印象が悪くなる)

 

 本来とは違う形で当主になったアイを疎ましく思う者もいることは知っていた。

 

 人一倍の努力と我慢を経て当主として相応しくあろうとする兄。

 その背中を見てきたカイにとって、こんな事で那滝家が崩壊するのは到底許せることではない。

 

(それに、ケイが帰ってきたとき家がないと困るしな)

 

 破門を宣言された後も、カイだけはまだ諦めていなかった。

 

 そんな彼の諦めの悪さが実を結んだのか。

 はたまた、それを嘲笑いに来たのか。

 

 それは突然だった。

 

「……っ、見ているのか! そこでッ!」

 

 異能で地面を探っていたカイは、弾かれたように顔を上げた。

 その視線の先には、禁域とされている森。

 

 そしてその奥に、何かがいた。

 

「総員、武器を持て! 場合によっては、聖遺物やダンジョンコアの使用も許可する! 責任は僕が持つ!」

 

 その言葉に、探索者達の間に緊張が走る。

 それは那滝家の次男として持てる全ての権限を使った最大級の迎撃態勢。

 

 つまり、この場の全てを使用してでも勝たなければならない相手がいるという事だ。

 

(魔力の痕跡……? 違う、これは残されていたんだ、わざと。誰かが見つける様に。自分の存在をアピールするように!)

 

 カイには、それが自分の存在を訴える置手紙のように思えた。

 見ただけでは分からないが、異能を用いて探すとハッキリとわかるそれは、那滝家の人間が探すことを前提として残されている。

 

「アイ兄さんにも残ってもらうべきだったか……? いや、それは情けねえ泣き言か」

 

 カイはそう言うと、自分の土人形を作り出す。

 そして、天に輝く星の名を呼んだ。

 

「天星織主」

 

 瞬く光が大鷲へと変化し、土人形を喰らう。

 そうして贄で腹を満たした怪物は、主に付き従うように隣へと降り立った。

 

「相手が何をして来るかわからない。最悪、誰か一人でも情報を持ち帰る事ができるように覚悟しておけ」

 

 多くの敵と戦ったカイだからこそわかる。

 自分たちが対峙しているそれが、自分達を遥かに凌駕する化物であると。

 

 決闘の時に乱入してきたそれとは訳が違った。

 

(まだ死にたくはねえなぁ)

 

 刀を構え、カイは天星織主と共に森を睨みつける。

 下手に動けば死ぬだろうことは分かっていた。

 

「……」

 

 そうしてどれだけの時間が経っただろうか。

 一瞬のようにも、永遠のようにも思える時間、カイは怪物と対峙していた。

 

 が、それはある瞬間を境にパッとその場から気配が消えた。

 

「……あ?」

 

 それを理解したカイは声を上げて辺りを見る。

 その額には玉のような汗が浮かび上がっていた。

 

(逃げた……いや、見逃したのか……?)

 

 天星織主を宥めながら、カイは首を傾げる。

 

 しかし背後から聞こえた声で理解した。

 

「カイくーん♥ 手伝いに来ましたよー♥♥」

 

 近づいてくるシヤクを見て、カイは安堵の息を漏らす。

 

「もしかしてデモンズギアにビビったのか……?」

 

 カイにはデモンズギアが一体どれ程のものなのかは分からない。

 が、騎双学園の執行官や、御景学園の剣士の話からそれが相当な代物である事は知っていた。

 

 自分達なんかとは比較にならない戦力の登場を察して逃げたとしてもおかしくはない。

 

「アイが疲れていると思って膝枕しに行ったら、話し合いの邪魔だって言われちゃって♥ なので、手伝いに来ました♥」

「そうか、助かった……。お前ら、警戒を解いていいぞ」

「あら、そんなに嬉しいんですか♥」

 

 シヤクの言葉に、カイは素直に頷いた。

 そして、息を吐いて天星織主にもたれかかるように座りこんだ。

 

「本当に、助かった……。アイ兄さんの幼少期のおねしょ写真をくれてやる」

「♥♥♥♥♥!」

 

 声にならない喜びと共に、シヤクはカイへと抱き着く。

 普段なら押しのける所だが、今は誰かとこうして触れていたい

 

 そうした方が、生きているという事を実感できるのだ。

 

 

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