【書籍化決定】かませ役♂に憑依転生した俺はTSを諦めない   作:不破ふわる

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第242話 こなごな

 

 

 少年、祠を壊したのか!?

 

『もう助からないねぇ^^』

『まさかこんな事になるとは……哀れな人類よ』

 

 徹夜で星詠みの杖君とカメ君が頑張って、赫夜牟捕獲システムを構築してくれたというのに、何ということだろうか。

 俺達は、一歩遅かったのだ。

 

 祠へと向かいながら、俺は考える。

 ここから、どうすれば良いのかを。

 

『本来は、祠の中身だけを頂戴する予定だったが状況が変わったねえ。ソウゴに触れてみて分かったが、魂が一部抜かれている。シヤクがいなければ、とっくの昔に死んでいただろう』

 

 ソウゴ君は未来の主人公なんだぞ!

 こんな所で死なせてたまるかよ!

 

『恐らく、赫夜牟は魂の情報を少しずつ取り込むことで一体化するのだ。きっとカヨちゃんの時もそうだったに違いない……! 魂が徐々に抜かれていき、苦しむカヨちゃん……くそっ! マイロード、私はっ! 無力だっ……!』

 

 カメ君が荒ぶっておられる。

 俺も同じ気持ちだ。

 

 だから、絶対にソウゴ君は助けるぞ!

 そしてカヨちゃんも助けて、そして予定通り……。

 

 ソウゴ君のヒロインにする!

 

『傲慢も甚だしいねぇ』

 

 だって丁度良いんだもん!

 ソウゴ君、幼馴染クール和ロリが追加されるよ。

 良かったね^^

 

『つまりこれはソウゴエピソード0?』

 

 そういう事だ。

 何も問題はあるまい。

 

『相変わらず、君は変なところで倫理観が崩壊していて飽きないよ』

 

 ソルシエラの身体能力で全力ダッシュする事数分。

 俺は祠の前に到着していた。

 

「ほ、祠が粉々……」

 

『少年、あの祠を粉々にしたのか!?』

 

 それはもう少年側も何かしらの怪異だろ。

 

『ふむ。マイロード、祠の付近から放射状に魔力を放った痕がある。これは……ソウゴ君のものだろう。赫夜牟からの干渉を弾くために無理矢理魔力を使ったのかもしれない』

 

 流石はソウゴ君。

 既に、土壇場で使う自爆技のソウゴダイナマイトを習得していたとは。

 

『相変わらず凄まじい魔力量だ。これが異能という指向性をもったときが恐ろしいよ^^ どう改造してやろうかねぇ』

 

 ハーレム系主人公に相応しい強い異能がいいなぁ。

 

『後でまた鍛えてあげようねぇ。適当にSランクを言いくるめて特訓でもさせるのはどうだろうか』

 

 確かに、こういう事を面白いと思う人しかいないけど……。

 でもでも、ソルシエラを超えるのは駄目ー! ><

 

 数年後、絶対に超えれない師匠として君臨するんだぁ!

 

『長い目で見るコンテンツなんだねぇ。……さて、辺り一帯へのスキャンが終わった。やはりと言うべきか、ここに赫夜牟はいないらしい』

『別の位相にいるのだろう。ここからの探知は難しい。見つけるには、その位相に移動する必要があるはずだ。が、既に今までカヨちゃんが使っていた位相にも反応がない』

 

 お手上げって事ですか?

 

『赫夜牟がいない以上、事態は進展しないねぇ。エイナでも拉致して、赫夜牟の探知でもさせるかい?』

 

 それブチギレ六波羅さんとの戦いがセットじゃねえか。

 嫌だよ、俺まだ死にたくないよ。

 

『ああやってソウゴ君を襲いに来た辺り、直接摂取する必要があるのではないだろうか。つまり、赫夜牟は姿を見せる』

 

 ならば、その時に合わせて赫夜牟ゲット大作戦を実行すれば……いや、もうそういう話ではないか。

 

『ん?』

『また始まったよ』

 

 主人公が過去に呪いを受けていた。

 

 これは、コンテンツ的に美味しい。

 こんな素晴らしい展開を、俺だけが楽しんで良いのだろうか……!

 

 いくら俺が完全無欠なミステリアス美少女だとしてもやって良い事と悪い事がある。

 ミステリアス美少女は出しゃばらない。

 

 今回は、那滝家の美少女♂兄弟とソウゴ君のお話なんだ……!

 

『字面だけだとトンデモねえBLだねぇ』

 

 ヒロイン要素はカヨちゃんが補ってくれる。たぶん。

 

 だから、今から俺は裏方に徹するぞ。

 全てはソウゴ君の過去イベントのためだ。

 

 いつか、過去編として描かれるストーリーならば半端な事は出来ないぞ!

 テンションが上がって来たね!

 

『君はソウゴ君が好きだねぇ』

 

 うん! あの子は原作に関わってないから好き放題改造できて良い! あの玩具好き!

 

『そうかそうか^^』

『うーん、やはり人類は剪定するべきか……?』

 

 おもちゃだいすきー!

 カメさんはきらいなの?

 

『大好きだとも! 相変わらず可愛らしい子だ……!』

 

 他人の人生のアドバンテージを握るの大好きー!

 理想の主人公にしてあげるね♥

 

『ギリギリ人類へのクソデカ愛に収まるか……?』

『流石我が子、博愛の精神に目覚めたか』

『よくこんなチョロくて人類滅ぼしに来たなコイツ』

 

 ってな訳で、今回は那滝ケイの側面を出していこうねぇ。

 まだ妹作戦も実行していないし、ここは一つミステリアス美少女豪華特装版といこう。

 

 ソウゴ君を主人公として立てつつ、俺は妹としての責任を果たすのだ。

 

『無い責任を果たそうとしている』

 

 責任とは作るものなんだ。

 さあ始めるぞ二人とも、ついてこい!

 

『応ッ!』

『えっ? ……あっ、わ、わかった。応』

 

 

 

 

 

 

 ケイを追って森に入ったアイ達は、すぐに異変に気が付いた。

 

「森が枯れ始めていますね」

「これも赫夜牟の仕業か!?」

 

 昨日までは青々としていた木々は変色し、草花は黒ずみ始めている。

 今もなお枯れていく木々を見てアイは顔を顰めた。

 

(私がもっと当主としてしっかりしていれば……。祠に誰かが近づかない様に細工もできた筈)

 

 後悔だけが波のように押し寄せてくる。

 父の代わりとして毅然とした態度を保っていたが、既にアイは限界であった。

 

 が、それでも折れるわけにはいかない理由がいくつもある。

 

(赫夜牟が麓の居住エリアに行くのだけは避けなくてはなりません。ヒショウが来て、事態が好転すれば良いのですが)

 

 ここでアイが折れれば、怪物が解き放たれる事になる。

 かつて日本を滅ぼしかけた怪物が、再び日本を蹂躙するのだ。

 

(この戦い、私は必ず勝たなくてはいけません)

 

「兄さん、ケイだ!」

 

 その言葉に意識を思考の海から浮上させる。

 見ればそこには、立ち尽くしたケイの姿があった。

 

「ケイ!」

 

 名を呼ばれても、ケイは振り返らない。

 

「ケイ、返事を……なんですか、これ……」

 

 ケイの目の前には、粉々になった祠があった。

 昨日、アイが生み出した巨大な木は焼け焦げ大きくひしゃげてしまっている。

 

 辺りの草木は焼け落ち、祠を中心に焦土が出来上がっていた。

 

「なんだこれ!?」

 

 カイが驚き声を上げる。

 そして、祠へと駆け寄った。

 

「アイ兄さん、これはもうどう見ても赫夜牟が原因だ」

 

 地面へと手を添え、カイは異能を使用する。

 そして、魔力痕跡を探りながらケイを見上げた。

 

「お前は何か知っているのか?」

「……」

「ケイ、答えなさい。貴方、先程も何かを知っている素振りを見せていましたよね」

 

 ソウゴの姿を見て、ケイは真っ先に行動していた。

 何が原因なのか、確信を持ったその姿は事情を知らなければあり得ない。

 

「貴方は、赫夜牟について知っているのですね」

 

 ケイはその言葉に頷くことは無い。

 しかし、祠の破片を一つ拾い上げると口を開いた。

 

「祠を粉々にしたのは、ソウゴ君でしょうね。恐らく、赫夜牟に魂を掌握されそうになって咄嗟に魔力を放出した。……本当に、優秀な子だ」

 

 握りしめた破片が、手の中で脆く崩れ去る。

 

「那滝カヨとは違い、反抗の手段を持っていたことに奴は驚いたのでしょう。今は恐らく別の位相に身を隠している」

「那滝カヨ……? どこまで知っているのですか!?」

 

 ケイはアイへと振り返った。

 その表情は、今まで彼が見た事がない程に冷たく、どこか恐ろしい。

 

「赫夜牟は必ずもう一度ソウゴ君の前に現れます。アレは直接魂を吸収する以外の方法を持たない筈です。次は、もっと強力な使い魔を差し向けるでしょう」

「ケイ、お前……」

 

 赫夜牟の性質について深く理解した言葉に、カイは唖然とする。

 その情報はカイが昨晩時間を掛けても得られなかったものだったのだ。

 

「――旧館を探してみてください。望むものはそこにあります」

「え?」

 

 穏やかな口調で、ケイはそう告げる。

 その瞬間、凄まじい勢いで風が吹き荒れ始めた。

 

「っ、これは……!?」

 

 突風にアイ達は一瞬眼を閉じる。

 そうして眼を開けた次の瞬間には、そこにケイはいなかった。

 

「ケイ!? どこに行ったんだ!」

 

 辺りをキョロキョロと見渡しながらカイが大声で名を呼ぶ。

 が、声が木霊するだけでケイが返事をするわけもなかった。

 

(もしや……ケイはこのことを最初から父様に教えられていた……?)

 

 偶然知った、とは思えない詳細な情報。

 そして、最後の言葉。

 

「……旧館には、父様の書斎と母様の療養用の部屋がありましたね」

 

 手掛かりがあるとすれば、恐らくはそこなのだろう。

 

(ケイ、貴方は一体何を知っているのですか……!?)

 

 今までは、家のしきたりに反抗してただけの落ちこぼれの三男でしかなかったケイ。

 しかしそれは、偽りの仮面でしかなかったのだ。

 

「急ぎましょう、カイ。私達も赫夜牟についてより詳しく知らなければなりません」

「っ、ああわかった。ここの痕跡を辿っても意味はなさそうだしな」

 

 アイは踵を返し、その場を後にする。

 その姿を見て、カイもまたその後を追った。

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