【書籍化決定】かませ役♂に憑依転生した俺はTSを諦めない   作:不破ふわる

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第243話 とうちゃく

 うおおおおおお!

 今から旧館に急ぐぞ!

 

『転移^^』

 

 俺はすぐに旧館へと転移する。

 場所は当然、昨日の金庫の前であった。

 

 では、今からこの中に君たちの作り上げた赫夜牟乖離システムの一部を置いておきたいと思います。

 

『全部ではないのかマイロード』

 

 カメ君、ここで全部置いておくのは得策ではない。

 君たちのシステムはあまりにも完璧すぎるんだよ。

 

『マイロードとのピクニックがかかっているのだから、当然だ』

『へへっ^^』

 

 カヨちゃんの安全な保護に、赫夜牟の回収から使役までを完璧に行えるシステムなんて金庫の中に放置されている訳ないだろ。

 元の計画から原型ないよアレ。

 

 どうしてそれを過去に使わなかったのか、と疑問に思われたら駄目なんだよ。

 

 というわけで、一部情報を抜いて不完全な状態で渡しなさい。

 まだ未完成といった感じでね。

 

『後は君の兄弟♀が完成させるということかい?』

 

 いや、タイミングを見計らってカメ君に残りの情報を渡して貰います。

 

 那滝家で完成寸前まで作り上げたシステムに、最後のピースとしてカメ君が届けるんだ。

 ケイからの届け物と言った感じでね!

 

 そうしたら、俺のミステリアス度もうなぎ登りだよ!

 

『だが、完成させたところで、あれには膨大な魔力が必要だ。システムは完璧だが、要求される魔力が多すぎる。君でないと難しいだろう』

 

 果たしてそうかな?

 星詠みの杖君、今ここには呪いを受けた次期主人公がいるんだぞ!

 彼自身が解決しなくて誰がするんだ?

 

『えぇ……今彼は死にそうだって知っているのに……』

 

 気合で立たせる♥

 頑張れ♥ 主人公♥ かっこいい♥

 

『まあ、一時的に彼を目覚めさせるくらいなら可能だが』

 

 流石は星詠みの杖君。

 さて、金庫を開けずに直接中にブツを置こうね。

 転移って便利だね!

 

 開ける時間は無駄だからな。

 

『ミステリアスRTA?』

 

 そして、カメ君監修のこの写真も入れようね。

 

『私にかかれば現代の写真など偽造は容易い。例えジルニアス学術院でも判別できない本物を作り上げた』

 

 自信満々なカメ君の言葉の通り、その写真は作られたものだとは到底思えない。

 

 少し古びたその写真の中では、ワンピースを着て笑うロリケイの姿がある。

 その姿は、それはそれは女の子であった。

 

『素晴らしい。流石は愛娘だ』

 

 カメさんありがとー!

 

『!』

 

 喜びから俺の体を飛び出し、周囲をパタパタとカメ君が泳ぐ。

 早く戻ってきなさい。さっさとこの場所からずらかるんだから。

 

『これを敢えて見つけてもらおうという魂胆か。君は余念がないねぇ』

 

 へへっ、という訳で最後に金庫に魔法での施錠も頼むよ。

 翌朝にでも開くような難易度に調節してほしいんだ。

 

 夜の間にやっておきたい事があるからね!

 

『わかったよ。ダイブギアの基本的な開錠システムを使えば、数時間で開けられる程度のセキュリティにしようねぇ^^』

 

 ありがとね!

 まさか、これをすぐに開錠できる人がいる訳ないだろうしね!

 わはは!

 

『あっはっはっは^^』

『――むっ、マイロード。赫夜牟の反応だ!』

 

 何! まだ色々とフラグ管理が終わっていないぞ!

 キーアイテムの設置は最低限終了したが、過去回想はまだ一本も生やせていない。

 

 イベント進行は少し待ってもらうぞ!

 ソイツは俺が倒す!

 兄さん達には段階を踏んで徐々に強い赫夜牟の使い魔を送り出そうね。

 テンポってものがあるからね。

 

『全部倒そう、とはならないんだねぇ』

 

 それじゃ意味ないからね。

 よっしゃ、行くぞ! 転移だ星詠みの杖君!

 

『はいはい^^』

 

 カメ君も俺の頭の中に戻ってらっしゃい。

 

『わかった』

 

 カメ君を収納して、俺は転移をする。

 次の瞬間、俺の視界に広がったのはいっぱいの青空だった。

 

「空!?」

 

『空中から屋敷に真っ逆さまに落ちてソウゴ君を回収しようという作戦のようだねぇ』

『目の前にいるぞ、羽の生えたムカデだ! 毒があるかもしれないし、ばっちいから手袋はきちんとするんだぞマイロード』

 

 言葉の通り、そこには滞空しているムカデの姿が在った。

 こうして見ると、竜にも見えて少しかっこいいな。

 

「さて、お片付けといきましょうか」

 

 俺がそう言って大鎌を構えると、ムカデは大層驚いた様子だった。

 当然である。

 

 突然真横に天使とデモンズギアを扱うミステリアス美少女が来たのだから。

 仮に俺自身でも驚くだろう。

 

 さあ、細切れにするわよ!

 

『むっ、待つんだ相棒! 何かが急速に接近してくる!』

 

 え?

 

『凄まじい速度だ。高度一万メートルから此方へと真っすぐに……これは、自律型武装!?』

 

 ゑ?

 

『此方を補足される前に身を隠すぞ相棒。こんなところにソルシエラがいたとバレたら色々と面倒だろう!』

 

 え、あちょっと待ってよ。

 今カッコよくキメた所なのにぃ!

 

『転移転移ー!』

『マイロード、鳥さんがこっちに向かってきているな』

 

 その言葉を聞いて、俺はさらに上を見る。

 赤い装甲をもつ巨大な鳥型の自律型武装が一瞬視界に映った瞬間、転移により俺は森の中へと移動していた。

 

『なんだアレ。野生の自律武装?』

 

 んなわけねえだろ。

 俺のミステリアス美少女としての勘が告げている。

 

 これは……またチャートが崩壊する……!

 

 

 

 

 

 

 那滝家の上空、ソウゴを狙っていた赫夜牟の使い魔は目の前から突然ソルシエラが消えたことに動揺していた。

 

 急に現れて、そしてまた急に消えたのだ。

 

 使い魔に高度な知性はない。

 単純な機械のように判断するその存在にとって、一連の光景はその思考回路を一時停止させるに至った。

 

 だからこそ、次の瞬間に自分の体を襲った衝撃に気が付くことすらなく消滅したのだ。

 

「――何か知らんが倒したぞ! 流石はGM01! 速いし硬いし鋭い! 最強だな! はっはっはっはっは!」

「風のせいで何を言ってるのかわからなーい!」

 

 使い魔を倒した赤い影、それは自律武装であった。

 

 鷹を思わせるシルエットに、ヒロイックな塗装がされた武装。その背には仁王立ちした一人の男とその脚にしがみついた少女がいる。

 

 二人を乗せた自律武装はそのまま那滝家の庭の一つへと向かい――。

 

「この距離では安全な着陸は無理だ! 構えろニコ君!」

「は?」

 

 凄まじい轟音と共に、辺りに砂煙をまき散らしながら地面へと激突した。

 

 あまりの勢いに辺りが揺れ、すぐにあちこちが騒がしくなる。

 ぱらぱらと庭の残骸が舞い、綺麗に整えられていた景観は瞬く間に破壊された。

 

「なっ、何の騒ぎだ! 赫夜牟か!?」

 

 丁度森を抜け出したカイが、血相を変えて飛び出してくる。

 それに続いたアイは、砂煙の中のシルエットを見て何かを察したように顔を覆って天を仰いだ。

 

「来るのが早い……」

「アイ兄さん何か知っているのか!?」

「知っているというか……まあ、私から紹介しなくとも彼は勝手に名乗るでしょう。そういうのが好きな人ですから」

 

 その言葉と共に、アイは顎で砂煙の向こうを示す。

 すると間もなく、その中から何かが飛び出してきた。

 

「トゥアッ!」

 

 無駄な跳躍と回転、そして着地。

 

「いきなりの不時着で失礼した! 俺は三鷹ヒショウ! ジルニアス学術院のジーニアスな生徒会長だっ!」

 

 ボロボロの制服と乱れた青い髪など何のその。

 決めポーズと共に青年はそう告げた。

 

 その瞬間、カイは「あぁ……そういうタイプの……」と察したような声をあげる。

 

「アイ君から話は聞いた! ぜひとも我々にけんきゅ……ではなくソウゴ少年を助ける手助けをさせてほしい! 案ずるな、俺だけではなく生徒会メンバーのニコ君も……ニコ君?」

 

 辺りをキョロキョロとしながら、ヒショウが誰かを探す。

 が、砂煙が晴れてもそこには地面にくちばしが刺さり直角の状態で停止した自律武装の姿しかなかった。

 

 それを見て、ヒショウは眼を見開く。

 

「もしかして落としてきた……!?」

「「えっ」」

「ど、どうしよう。またルカ君に滅茶苦茶怒られる……! ルカ君はロジカルだがフィジカルも……!」

 

 ヒショウが訳の分からない事をぶつぶつと呟いていると、不意に空に羽音が響いた。

 

「っ、赫夜牟か!?」

 

 警戒しカイが空を見上げる。

 そこにいたのは、巨大なピンク色のクワガタであった。

 

「???????」

「あれはッ、GM03クワックガ! という事は――」

「何がという事は、だよー。後でルカに報告するからなマジでー」

 

 言葉とは裏腹に、柔らかくどこか間延びした口調。

 しかし、怒りがにじみ出ていた。

 

 クワガタの角の先端に、ピンク髪の小柄な少女がぶら下がっていた。

 

 ふんわりボリュームのあるボブカットに優しい笑顔。

 だが、何故だか怒っていることが分かった。

 

「ニコ君無事だったか!」

「おかげさまでー。じゃんけんで負けた自分を今、物凄く責めているところですー」

「あまり自分を責めるもんじゃないぞ」

「どの口が言っているんですか?」

 

 無事地面に降り立った少女は、突き刺さったままの鳥を指さして言った。

 

「あれ、引っこ抜いてくださーい」

 

 クワガタは主に従い、鳥の方へとのそのそ向かって行った。

 その姿を確認して、少女はアイ達の方を見る。

 そしてすぐに頭を下げた。

 

「諸々はジルニアス学術院生徒会宛に請求お願いしまーす」

「ニコ君!?」

「そして申し遅れました、私は桑花(くわばな)ニコって言いますー。二年生でーす」

 

 ほわほわとした笑顔と共に、ダブルピースでニコはそう告げる。

 その背後では、まさにクワガタが鳥を挟んで引っこ抜いていた。

 

「……アイ兄さん、彼等はその……なんだ?」

「助っ人です。……………………ええ、頼もしい助っ人ですとも」

 

 そう答えるも、アイは一度もカイと目を合わせなかった。

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