【書籍化決定】かませ役♂に憑依転生した俺はTSを諦めない   作:不破ふわる

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第25話 美少女ならば、時には代役を務めなければならない

 六波羅さんがいなーい!!!

 

 俺がそれを確信したのは、傷つき倒れたトウラク君と、彼を庇うようにダンジョンの主に対峙しているミハヤちゃんをすぐに見つけたからだ。

 

 原作だと、こんなにボロボロになっていない。

 

 トウラク君達が現在いるのは洞窟の奥深くに形成された大きな空洞で、ダンジョンの主の巣である。

 ちなみに、俺達は無数に存在する横穴の中でも高い場所にある横穴から様子をうかがっていた。

 

 カマキリを思わせる見た目の主は、二つの鎌が武器でそれ以外の特殊な能力はない。

 

 が、トウラク君がルトラの使い方をまだ理解していなかったり、ミハヤちゃんがまだ能力に覚醒していなかったりと、タイミングが悪かった。

 そのため、窮地に陥ってしまった主人公一行だったが、そこに六波羅さんが乱入する。

 

 と、いうのが本来のシナリオ。

 だが、目の前で起きていることは違った。

 

 めっちゃヤバイ。

 物語が終わっちゃう。

 

 トウラク君がいなくなったら世界が滅んじゃうって!

 見物してる場合じゃねえ!

 

「ケイ君!?」

「ごめん先に行く!」

 

 俺は一気に主人公一行様の前へと飛びおりた。

 そして、ダンジョンの主が鎌をミハヤちゃんへと振り下ろそうとしているその場所に割り込む。

 

「ッ!? 貴方がどうしてっ!?」

 

 答えている暇はない。

 

 振り下ろされる鎌を前に、俺の思考速度が上昇し全てがスローモーションに変化する。

 

 目前に迫る鎌。

 回避も迎撃も不可能だ。

 

 ならば、やれることなど決まっていた。

 

「っ!」

 

 魔力を全て右腕に集中させて鎌を遮るように差し出す。

 

 俺に出来ることは防御のみ!

 推しカプを守れるなら、本望よ!

 

「ぐっ、ぁ」

 

 強化された右腕に鎌が食い込み、骨が軋む。

 血が、笑っちゃうくらいに噴き出しているが、攻撃を止めることに成功した。

 

 こうなると、俺の勝ちである。

 

 俺は左手の短刀をダンジョンの主へと振り下ろす。

 刃に込められた麻痺毒が、切りつけた箇所から浸食を始め一秒と掛からずにダンジョンの主を麻痺状態にした。

 

「トアさん!」

 

 叫ぶように名前を呼ぶと、それに呼応するように頭上から黄金の光が降り注ぐ。

 

 それは、一切の抵抗を許さずにダンジョンの主を消し炭に変えた。

 

 流石、俺達の必勝パターン。

 痺れさせて、一撃必殺。これが結局一番早い。

 

「はあっ、はあっ……」

 

 ギリギリで間に合って良かったぁ。

 こんな所で原作終了とか笑えないからね。

 

 そう思って、主人公一行様の安否を確認しようと振り返る。

 

「那滝ケイ……」

 

 お会いするのは二度目ですね!

 ミハヤちゃん、こんにちは!

 

「ふん、お前らの顔をまた見ることになるとはな。今日は最悪の気分だよ」

「ッ、 アンタまだそんなことを言って……!」

 

 ごめんよぉ。

 でも、俺って那滝ケイだからぁ。

 美少女になったらその時は仲良くするからね。

 

 あ、勿論トウラク君は君の物だよ。

 俺は俺で百合ハーレムを築くから。

 

 という事でフェクトム百合学園に名前変更しませんか生徒会長。

 

「おいおい、せっかく助けてやったのにその態度か。この、那滝家の三男である俺がな」

「ふん、知っているのよ。アンタ、那滝家から追い出されて縁も切られたんでしょう?」

 

 そう言えばそうだったっけ。

 TSに関係ないから、その辺は忘れちゃった。

 

「その追い出されたやつに助けられたのは誰かなぁ?」

「っ」

 

 ……あれ、そう言えば六波羅さんがいないってなると誰がトウラク君にルトラの事を教えるんだろう。

 この後、割とすぐに戦うことになるボスとの戦いで必要な技術なんだけど。

 

 それも、俺がやった方が良いのか?

 

 でも原作に関わるのはなぁ。

 ってか、トウラク君これ話を聞ける状態か? 病院じゃない?

 

「アンタ、トウラクに近づかないでよ!」

「黙ってろ」

 

 座り込んで、トウラク君を確認する。

 うーん、大丈夫そうかなぁ

 

 原作通りの魔力切れっぽいし。

 

「……き、みはケイ君?」

 

 あ、起きた。

 

「よお、トウラク。死に損なったな。気分はどうだ」

「そうか、君がたすけて、くれたんだね。ありがとう」

「よせよ。野郎から礼を言われても、別に嬉しくねえ」

 

 嘘です嬉しいです。

 さて、どうやら俺はここで六波羅さんの代わりにルトラの使い方を教えなければならないようだ。

 

 正直、かませ役には荷が重すぎる。

 うーん、言動も六波羅さんっぽくした方が原作に近くなるだろうか。

 

 俺は原作での六波羅さんの台詞や行動を思い出しながらルトラの使い方を教えてあげることにした。

 

 代わりがかませ役でごめんね!

 

「――てかよォ、お前の戦い方を少しばかり見させて貰ったんだが……アレはなんだ」

 

 俺はトウラク君を睨みつける。

 そして、何かを言おうとしているトウラク君を無視して胸倉を掴み上げた。

 

 ああっ、苦しそう! でも俺も苦しいからぁ!

 

「デモンズギアの使い方がまるでなっちゃいねえ。使い手がカスだと武器まで腐っちまうなぁ」

「ぐあっ……」

「トウラクを離しなさいよ!」

「ほらよ」

 

 俺はトウラク君から手をわざとらしく離す。

 そして、彼の足元に転がった白い日本刀を拾い上げた。

 

 うんうん、やっぱり契約済みなら他人が持っても大丈夫なんだなデモンズギアって。

 

「このデモンズギアの真価はずば抜けた身体強化じゃねえよ。もっと、別の代物だ」

「……え?」

「せっかくルトラと会話できるんだろ? 聞いてみろよ、何ができるのか。ま、今まで黙っていたってことはお前は信用されていないって事なのかもな。ははっ」

「っ、僕は……」

 

 トウラク君の顔が曇る。

 当然俺も曇る。

 

 けど、ごめん。六波羅さんはこうして教えていたから……。

 

 というか、右腕めっちゃ痛いんだけど。

 これ、大丈夫なやつ? 俺の方が危なかったりしない?

 

『■■■』

 

 なんだよ今忙しいから後にしろって。

 

『■■■■■!』

 

 え、ルトラに興味あるの?

 駄目だよ、君みたいな厄ネタが近づいちゃ。

 

 はい、ルトラはトウラク君に返しますからね!

 もう! 最近、そうやってすーぐ俺の頭の中で騒ぐんだから。

 

「未契約なら俺が使ってやったんだが……ま、お前が死んだらその時にでもルトラは貰ってやるとするか」

 

 俺はルトラをトウラク君へと投げ渡す。

 トウラク君は俺の信頼通り、キャッチしてくれた。

 

 原作通りに進んだな、ヨシ!

 

「じゃあな、生きてたらそのうち会おうぜ」

 

 帰ろう帰ろう。

 トアちゃん上で待ってるし……え、トアちゃんいつの間に降りて来てたの。

 

 大丈夫? 怪我とかしてない? 美少女なんだから、肌を傷つけるような行動はしちゃ駄目だよ?

 

「ケイ君……」

「行きましょう、トアさん」

 

 ほら、帰ろう。

 腕がメッチャ痛いし。

 

「待ちなさいよ!」

「……なんだ」

 

 ミハヤちゃん、マジでごめんて。

 うーわ、バチクソにキレとるやん。

 

「貴方、一体なんなのよ! トウラクを何に巻き込むつもりなの!?」

「はっ、俺が知るかよ」

 

 それは原作という大いなる意志というかなんというか……。

 

「コイツッ!」

 

 ミハヤちゃんが銃を俺へと向ける。

 既に引金に指がかけられていた。

 

 え、マジで撃とうとしてない!?

 

「知っていることを教えなさい。でないと……」

 

 完全に、覚悟がキマッた目をしている。

 

 そんな彼女を前に、どうしようかと考えていると、気が付けばトアちゃんが俺を庇うように立っていた。

 

「……やめてください」

「どきなさい。貴女は関係ないわ」

「関係あります。わ、私は、ケイ君の仲間ですから」

「なら、ソイツが何を知っていて、何をしようとしているのか全て理解できているの?」

 

 ミハヤちゃんの問いに、トアちゃんが首を横に振る。

 しかし、次の瞬間には顔を上げて言った。

 

「ケイ君は無茶するし、きっとラッカちゃんと一緒で何かを知っているのは確かです。でも私を、私達を助けてくれたことも事実なんです」

 

 トアちゃん……。

 

「貴女達に対して、ケイ君が何をしたかなんてどうでもいい! 私は、ケイ君を信じたいんです!」

 

 クソデカ感情ありがとう。

 必ず美少女になって受け止めてやるからな……!

 

「トアさん……」

「行きましょう、ケイ君」

 

 俺の左手をとって、トアちゃんが歩き出す。

 しっかりと握られたまま、俺は引っ張られるようにしてその場を後にする。

 

 ふと、気になって後ろを見れば、ミハヤちゃんはこちらを複雑そうに見つめたままだった。

 

 やっぱり出しゃばると碌なことにならねえな!!!

 

 

 

 

 

「……ケイ君」

「はい」

 

 出口へ向かう最中、トアちゃんが俺の名前を呼ぶ。

 いつものおどおどとした様子とは違った。

 

「ケイ君が、わざとあの二人にあんな態度を取ったことはわかっています。私は、私達だけは、信じていますから」

「ありがとうございます」

「……せめて、無茶だけはしないでください」

 

 僅かに、手を握る力が強くなる。

 

 一般教養として、美少女に手を握られるには美少女である必要がある。

 そのため、なんとか抜け出そうとしているが、この子握力が強くて抜け出せない。

 

 もしかして、勝手に行動したからキレてる? ……一応謝っておくか。

 

「……すみません」

「っ」

 

 この子は、あまりにも友達想いで優しすぎる。

 トアちゃんの為にも、早急に美少女にならなければ。

 

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