【書籍化決定】かませ役♂に憑依転生した俺はTSを諦めない   作:不破ふわる

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第245話 かいじょう

 

 今回は完璧だと思ったんですけどね!

 不確定要素を出来るだけ排除して、上手くミステリアス美少女として立ちまわる予定だったんですけどね!

 

 誰がジルニアス学術院の生徒会が飛んでくるって予測できるんだよ!

 おかしいだろ! チャート崩壊するにしてもルールってもんがあるんじゃねえのか!

 

『そんなものはないよ^^』

『マイロード、起きてしまったものは仕方がない。切り換えるのだ』

 

 確かにカメ君の言うとおりである。

 

 現在、俺は天井裏を這いずりまわりカイ兄さんとニコちゃんを追っている最中であった。

 どうやら二人は金庫に向かうらしい。

 

 美少女の声を優先して聞き取る耳が、確かな情報をキャッチした。

 

『相変わらずイカれた体してやがる』

 

 ?

 これは普通ではないのかい?

 どのクラスにも二人くらいはいるでしょ。

 

『レア度は左利きレベルなんだねぇ』

『確かに、魂に対して鋭敏な五感を持つ人類は以前に剪定した世界に何人もいた。何もおかしい事ではない』

 

 ね?

 

『そうなのか……そうなのかも……』

 

 星詠みの杖君が納得したところで、チャートの組み直しにかかろう。

 まあ来るのがミユメちゃんとかじゃなくて良かったよ。

 

 あの子が来ると最悪俺達のシステム無しに赫夜牟を捕獲しそうだし。

 

 ニコちゃんとヒショウ君はまだ可愛い方だ。

 それに原作キャラでもある。

 拒む方が無礼という者だろう。拝んでおこうね、ありがたや。

 

『どちらもまだ出会ったことのない人間だ。しかし何故だろうか、ニコを見ていると何故だか親近感が湧くよ^^』

 

 ほう、わかるかい星詠みの杖君。

 ニコちゃんは、ビジュが良ければ性別関係なく将来のパートナー候補にしようとする子だ。

 特に、可愛い子が大好きである。

 今まさにカイ兄さんを見ているが、あの目は捕食者の眼だ。

 

 これがR-18版なら夏の過ちが繰り広げられていただろう。

 鏡界のルトラでは数少ない責める側のヒロインなのである。

 

『つまり、ソルシエラを一緒に責められる?』

 

 俺をシェアしようとするな。

 

『その言い方、まるで私だけに貪って欲しいみたいじゃないか!』

 

 カメ君助けてー!

 

『星詠みの杖、そういうのは良くないぞ。きちんと相手を尊重するのだ。一方的に気持ちをぶつけるだけでは誰も幸せにはなれない』

『保護者が出てきやがった^^』

 

 今日もカメ君のおかげで俺の脳内治安は保たれている。

 

「――ここが母様の部屋だ」

 

 下からカイ兄さんの声が聞こえる。

 天井裏をカサカサ動き回っている内に、気が付けば目的の場所に来ていたようだ。

 

 カイ兄さん達は、部屋の中へと入っていく。

 それに続いて、俺も天井裏を移動した。

 カサカサ^^

 

『ゴキブリかな?』

 

 ふふふ、やはりここに来たか。

 俺のミステリアス助言は無事に機能していたようだ。

 

 ここで金庫を開けることは想定済み。

 ミステリアス美少女の手のひらの上よ。

 

 まあ、横に強力な助っ人がいるんですけどね。

 けれどキングジルニアースが出てこない限りはまだ大丈夫。

 あれが出てくると話が特撮になるのだ。

 

『キングジルニアースとは』

 

 生徒会が持っているクソデカ合体ロボットだよ。

 これで天使と戦ったんだ。

 

 本来はヒノツチ文化大祭の後にイベントがあったんだけどね、いつの間にか無くなっていたね。

 厄介な都市型天使との戦いだったから、無い方が良い事ではあるけど。

 

 そこでダウナーなルカちゃん含めた生徒会とトウラク君が出会ったんだけど、そういうのも纏めてどこかへいった。

 どう考えてもソルシエラの影響なので謝罪します。

 

 ごめんね。

 

「この金庫を開けてほしいんだ」

 

 カイ兄さんがそう言って、金庫を指さす。

 俺が丁寧に鍵を閉めた金庫は、普通では開けるのに数時間を要する。

 

 はずだった。

 

「わかりましたー。ではこの『森羅万象! ドガチャンコV3』を」

 

 なんかパワーアップした気持ち悪い鍵持ってるんだけど。

 

「なんだこれっ!? キモッ!? 可愛くない!」

「でも凄く性能が良いんですよー。それにこれは人にも……いえ、何でもないですー」

 

 ニコちゃんは森羅万象! ドガチャンコV3を金庫へと向ける。

 すると、鍵の至る所から生えている細く赤黒い触手がウニョウニョと動き始めた。

 キモッ!?

 

『あれを使うならば、開けるのに十秒もかからないだろうねぇ』

『そう言っている間に金庫が開けられたな。どうする。ここは一つロリシエラで時間でも稼ぐか?』

 

 君が見たいだけでしょそれ。

 

「これは……メモリーカード? 少し型式が古いですねー」

「後は、なんだこれ――これはっ!?」

 

 やはり見つかった。

 ロリケイ写真は、もっと遅くに見つかる予定だったのだ。

 今のままだと、幼い頃に女装していたケイで終わる可能性もある。

 

 本来であれば、今俺はケイの自室にワンピースや、女の子が好む小物を隠している時間なのだ。

 

 他にもケイが女の子である事を隠して生きる苦悩を書き記したノートとかを入手するイベントもあったのに……。

 

 最初にそれを見つけて貰って徐々に「あれ……?」となっているところに、これが開錠され答え合わせの筈だったのだ。

 

『いっそのこと、彼等の記憶を消すかい? 無かったことに出来るよ^^ その間に準備しようか?』

 

 ……いや、それよりもここはミステリアスな方法で解決しよう。

 

『何か手立てが在るのかい?』

 

 この手だけは、レギュレーションぎりぎりなので使いたくなかったが仕方がない。

 星詠みの杖君とカメ君には、また負担をかけることになるだろう。

 

『問題ないよ^^』

『愛娘の頼みだ。私はこの身を喜んで捧げよう』

 

 ありがとう二人とも。

 特にカメ君、今回の作戦には君の妄想力が試される

 

『妄想か……やった事は無いが、善処しよう』

 

 その答えがもう頼もしいよ。

 

 では諸君!

 これよりプランβを実行に移す!

 

『^^』

『ああ!』

 

 

 

 

 

 

 金庫を開ける事は、想像よりも容易かった。

 かつて、父に開けないようにときつく言われ、その上で物理と魔法の両方から厳重に施錠されていた金庫。

 

 カイとアイの中ではこの金庫は一生開けることができないものになっていた。

 しかしそれは、ニコの持つ名状しがたい鍵により呆気なく開けられたのだ。

 

 小型の金庫の中は、がらんとしていた。

 中に入っていたのは、古びたメモリーカード。

 そして。

 

「どうして、ケイの写真が」

 

 そこには、笑顔のケイが写っていた。

 幼い姿のケイが白いワンピースを身に纏い無邪気に笑う姿が収められたその写真を見て、カイはすぐに違和感に気が付く。

 

「……こんな服、アイツは着たことが無い筈だ」

「あれ、なんですかこの写真。可愛いですねー。妹さんですかー?」

「違う。これは弟だ」

「弟……ああ、さっき言っていた人ですねー。にしても、うーん? 骨格は少女に見えますけどねー」

 

 ニコの言葉に、カイは静かに頷いた。

 この写真は、どう見ても少女に見える。

 

(女装しているのか……いや、でも僕達と違ってケイは幼い頃から女の恰好をすることを嫌っていた筈だ。こんな……こんな事は……)

 

 記憶の中のケイは、一度も女装をしたことがない。

 

 家のしきたりを嫌っていたのだろう。

 ケイは、物心ついた時から男であることを主張していたのだ。

 そんな彼が笑顔でワンピースを着るなど、あり得ない事なのである。

 

「この写真はどういう事だ。それに、なんで母様の金庫に……?」

「お母さんがこの子の事を大切にしていたんですよー。親子愛ですねー」 

「この写真だけをか? 僕には、もっと何か大きな理由がある気がするんだ」

 

 ケイが幼い頃に女装をしている写真

 それに一体なんの意味があるのだろうか。

 

 考えこむカイを見て、ニコは金庫の中をさらに覗き込んだ。

 

「んー、後は何もないですねー。この二つだけですー。……中身、読み込んでみても良いですかー?」

「ああ、頼む」

 

 考えこんだカイは、話半分に頷いた。

 ニコは頷くと、メモリーカードをダイブギアへと差し込む。

 

 自然と会話は無くなり、部屋の中は束の間の静けさに覆われた。

 が、すぐにニコが声を上げる。

 

「凄い……! これってダンジョン主と人間の魂の研究ですよー。随分と完璧というか、どこからこんな詳細なデータをー!?」

「昔は、那滝家にも諜報部隊がいたからな」

「そういう次元じゃないですけどー。うーん、完璧すぎる。けど、惜しいですね、あと一歩、というか1ピース? 欠けていますね。それでも凄い事ですが。これをジルニアス学術院で発表すれば、その時点で生徒会入りですよー」

「そんなに凄いデータなのか?」

 

 ニコは笑顔を崩さず、しかし興奮した様子で何度も鼻息を荒くして頷いた。

 

「はいー。人間の魂、つまりは閉じた次元深層領域に対する従来よりも正確かつ迅速なアプローチと、ダンジョン主の持つ性質を利用した使役術。うん……! これならヒショウ会長が完成までもっていけますよー。これを利用すれば、ソウゴ君を救えるかもしれません。……いえ、もしかしたらカノンちゃんも――」

 

 興味深そうにウィンドウを見るニコを尻目に、カイは写真を見る。

 

(ケイ、お前はこれを知っていたのか……?)

 

 ソウゴが倒れたと知って、ケイだけが唯一迅速に行動していた。

 今ここにいるのも、ケイが道を示したからである。

 

(いつからだ。いつからケイは……)

 

 写真の中のケイは無邪気に笑うだけで、答えない。

 

 

 

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