【書籍化決定】かませ役♂に憑依転生した俺はTSを諦めない   作:不破ふわる

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第257話 ほしよみ

 突然のソルシエラの乱入に、場は緊迫していた。

 

 赫夜牟によるソウゴの暴走が呼び寄せたのだろうか。

 ソルシエラはソウゴへと微笑みかける。

 

「それじゃあ、踊りましょうか」

 

 ソルシエラの前に一つの砲撃陣が展開された。

 彼女にとっては児戯に等しいただの魔力砲なのだろう。

 

 しかし、それはヒショウ達からすれば目を見開くものだった。

 

「あの魔力量、過去に観測された時よりも進化しているのか……!?」

「周囲の魔力の流れが完全に変わりましたねー。全てがソルシエラへと流れていますー」

 

 ニコの言葉に、ヒショウは思わず笑みを浮かべる。

 

「では、こちらは存分に観察させてもらうとしよう! アイ君たちも、下手に戦闘に参加しない方が良い。……どうした、アイ君」

 

 声をかけたが、アイは上の空でまともに返事をしない。

 その視線はソルシエラへと注がれている。

 

「もしかして」

 

 信じられない光景を目にしたかのようにアイは目を見開く。

 その視線の先、ソルシエラの横顔に妙な感覚を覚えていた。

 

「貴女なのですか……?」

 

 アイの問いは、砲撃によってかき消される。

 銀色の光はソウゴと赫夜牟へと放たれた。

 

 迫りくる砲撃に、赫夜牟は動かない。

 代わりにソウゴが一歩前に出ると、拳を構えた。

 

「僕が救わなきゃ」

 

 うわ言と共に、拳が放たれる。

 空気を切り裂く拳は、魔力を纏い真っ向から砲撃と衝突、そして一秒と経たずに魔力砲をはじき返して見せた。

 

 砲撃が消え去り、ソウゴの視界に夜空が映る。

 しかし、そこにはもうソルシエラの姿はない。

 

「力は申し分ない。及第点を上げるわ」

 

 背後、聞こえた声に迷わず回し蹴りを放つ。

 が、ソルシエラは動くことすらせずに障壁一つで攻撃を受け止めて見せた。

 

「でも使い方は赤点ね」

 

 足に銀の鎖が巻き付き、ソウゴを引き上げる。

 目の前には展開された砲撃陣。

 

 しかし、砲撃陣は起動する前に破壊され、ソウゴもまた横合いからの魔力砲により解放された。

 ソルシエラが目を向ける先には、すでに外殻が半分以上修復した赫夜牟の姿。

 魔力砲を放てるだけの回復を終えた赫夜牟は、大顎をカチカチと鳴らしてソルシエラを威嚇している。

 

「はぁ、邪魔ね。悪いけれど、アナタのダンスの誘いは受けられないわ」

 

 ソルシエラは自身の髪を払いながらそう呟く。

 そして。

 

「双星はここに顕現する」

 

 ソルシエラの足元に魔法陣が浮かび上がる。

 魔力が爆発的に増え、辺りに突風を巻き起こした。

 風に吹かれた髪をソルシエラは押さえる。

 

 彼女の白く細い指から風になびき零れ落ちる銀の髪へ、口づけをしながらそれは現れた。

 

「――いい夜だ。呼んでくれてうれしいよ、マスター」

 

 ソルシエラと同じ姿かたちをした少女。

 否。兵器、あるいは怪物。

 

「あれが、0号」

 

 漏れ出した言葉は誰のものだっただろうか。

 0号は辺りを見渡すと「ふむ」と一瞬思案する様子を見せたが、すぐに興味を失ったかのように視線を逸らす。

 そして、ソルシエラへと近づき愛おしい者を見る目で顔の輪郭をなぞった。

 

「私は誰を殺せばいい? この場にいる全員か? 君が望むのなら、瞬きの間に終わらせて見せよう」

「貴女が相手をするのはあの怪物よ」

「私が? ……おいおい、あんな出来損ないのダンジョン主もどきを? 冗談だろう?」

 

 0号は赫夜牟を見るが、観察もそこそこに鼻で笑うとそう言った。

 相変わらず、その目にはソルシエラしか映っていない。

 

 ソルシエラはそんな0号の手を振り払うとソウゴの方を向く。

 完全に赫夜牟からは背を向ける形だった。

 

「怪物同士、気が合うんじゃないかしら? 少なくとも、あっちはやる気みたいだけれど」

「相変わらず釣れないなぁ。いいだろう、兵器は兵器らしく働くとしよう」

 

 0号は肩をすくめるとその手に大鎌を召喚して赫夜牟へと向く。

 そして二人は同時に駆け出した。

 

 

 

 

 

 

 こんにちは、ソウゴ君をナーフしに来た運営です。

 

 うわーん!

 ソウゴ君、悪堕ちはまだ早いよぉ!

 暴走形態はもう少し段階を踏んでからお披露目する計画だったのにぃ!

 

『赫夜牟の方が一枚上手だったねぇ^^ だが、これで赫夜牟の強さに説得力が出た。今後、この力をソウゴが使うとなればそれはそれは主人公だろう』

 

 俺たちの予定では、ソウゴ君は作戦後にすぐ気を失う。

 そんな彼の夢の中でミステリアスに褒めるつもりだったのだ。

 

 そして赫夜牟の力の断片を渡して――って感じなのに。

 すでに持っているとは恐れ入った。

 

『流石は君が見込んだ主人公。というか、双星形態は久しぶりだねぇ』

 

 うん、そうだね。

 見たまえカメ君、これが双星形態だ。

 魔力が無限に増えるバグ形態だよ。

 

『これでなぜ増える』

『私と相棒だからだよ^^』

 

 これがBIG LOVEってやつだ。

 さあ行くぞ星詠みの杖君、すでにソウゴ君の覚醒で最高潮の盛り上がりを見せたのだからあとは手早く!

 のちに過去回想型劇場版にて、さらっと語られるくらいにとどめるんだ!

 

『でも一撃で殺すのは駄目なんだろう? すでに魔力量は赫夜牟などとうに超えている。その気になればすぐにでも塵にできるが』

 

 それは早すぎるよ。

 圧倒的な力を見せつけることだけは忘れずにね!

 

『注文が多い』

 

 そうは言いつつも、星詠みの杖君は0号として赫夜牟と戦い始めた。

 その気になればいつでも消し炭にできるのに、わざわざ足を斬っている。

 

 はい、そこで台詞!

 

「どうした、このままでは何もできずに死んでしまうぞ? 精々足掻いて見せたまえ、虫けら」

 

 GOOD。

 

『^^』

『むっ、マイロード。ソウゴが来るぞ! 気を付けるのだ!』

 

 大丈夫大丈夫。

 今の俺は双星形態で魔力が無限のバフを貰っているからね!

 こんな風に、踊るように避けることが可能なのだよ!

 

「ふふっ、どこを狙っているの? 私はここよ?」

 

 ひらりひらりと俺はソウゴ君の攻撃を避ける。

 ソウゴ君には今自我がないのか、俺への攻撃に躊躇は見られない。

 

 あ~、胴体をソウゴ君に貫かせてぇ~。

 それで血まみれになってソウゴ君を止めて、憧れの人を傷つけたトラウマを植え付けてぇ~。

 

 意識を取り戻した時には、自分の腕がソルシエラの胴体を貫いているんだね。

 それでもソルシエラはほほ笑んでソウゴ君を安心させようとするんだね。

 愛、だね。

 

『悪魔かな?』

『マイロード、それは、その……ちょっと……流石にわが娘と言えど擁護しきれない……』

 

 人外共にドン引きされて、遺憾です。

 

 安心しなよ。

 そんなことはしないから。

 

 あくまで今回のソルシエラのポジションは、ソウゴ君にとっての永遠の憧れで超えられない壁。

 傷一つ負うことなく倒してやろう。

 

「来なさい、私はまだ満足していないわよ」

「……僕が救わなきゃ」

 

 救わなきゃbotになってしまった……。

 俺としては意識は取り戻していて、泣きながら戦っている方が好みなんだけど。

 

『ソウゴにだけ注ぐ愛が歪みすぎているのでは?』

 

 主人公になるなら、困難を与えないと。

 これからもいっぱい壁を用意してあげるからね♥

 

「ソウゴ、その力は確かに強力で貴方の助けになる。けれど、まだ早いわね」

 

 俺は大鎌を無駄にくるくる回しながら魔法陣をソウゴ君の周りに大量に展開した。

 

 魔法陣から銀の鎖が射出されソウゴ君へと向かう。

 ソウゴ君は最初こそ避けれていたが、すぐに拘束された。

 

 うんうん、ではここでCGを一つ回収してさっさと終わろうかね。

 

「ふふふ、捕まえた」

 

 四肢を拘束されたソウゴ君へと俺はゆっくり近づいていく。

 その後ろでは、派手な戦闘音が響いていた。

 おそらく0号として星詠みの杖君が、ダイナミックに立ち回っているのだろう。

 

 0号が狂気に満ちた兵器として「動」を演じるならば、俺はソルシエラとして「静」を演じよう。

 

「悪いけれど、鬼ごっこで遊んでいる暇はないの」

 

 縛り上げたソウゴ君の前に来た俺はその顎を持ち上げて顔を覗き込む。

 それから、耳元に口を近づけた。

 囁くように、俺は言葉を流し込む。

 

「恐れないで、私を信じて。受け入れて」

 

 はい、カメ君意識を奪って!

 そして赫夜牟の力を一部だけ封印して!

 

『私がか。急にそんなことを言われても……』

 

 カメさんおねがーい!

 

『私に任せろ我が娘よ』

 

 星詠みの杖君がお外でヒャッハーしているので、カメ君が代理でソウゴ君を封印する。

 

 それっぽい魔法陣がソウゴ君の胸に浮かび上がると、数回点滅。

 そして魔法陣はソウゴ君の胸の中へと消えていった。

 

 同時に、ソウゴ君の目が正気を取り戻す。

 

「ごめ、ん……なさい」

「ふふっ、この程度可愛いものよ。……今は、眠りなさい」

 

 ソウゴ君の最後の言葉を受け、俺はその頭をそっと撫でてほほ笑む。

 そして、拘束を解き地面に寝かせた。

 

 さて、星詠みの杖君もういいよ。

 それボコボコにして^^

 

『わぁい^^』

 

 

 

 

 

 

 ソルシエラはソウゴ君を寝かせて振り返る。

 そこには足をすべてもがれ、外殻を引き剝がされて体液まみれで地に伏す赫夜牟の姿があった。

 

 あまりにも悲惨な光景だったが、ソルシエラは呆れたように息を吐くだけだった。

 

「つまらない。この程度で壊れてしまっては新たな魔法の実験台にもなりやしない! ああ、本当につまらない!」

「0号、遊んでいないでさっさと殺しなさい」

「あぁ、わかっているさ」

 

 0号はそう言って大鎌を引きずりながら赫夜牟へと近づく。

 すると、赫夜牟はせめてもの抵抗として頭を持ち上げ魔力砲を放った。

 

 が、それは障壁を張るまでもなく、大鎌により両断される。

 砲撃が分かたれ、0号の後方で爆発が起きた。

 

「品もなければ、芸もない。幻獣大戦の怪物と言えど、所詮はこの程度か」

 

 失望した声と共に0号は赫夜牟を見下ろす。

 そして、大鎌でその首を刎ねた。

 

 抵抗も音もなく、静かに首が落ちる。

 大鎌を担ぎながら、0号はゆっくりと振り返った。

 

「終わった。終わってしまった。実につまらない。あっけない幕引きだ」

 

 そう言いながら、0号はシヤクを見る。

 シヤクは笑顔だが、臨戦態勢をとっていた。

 

 そんな彼女の姿を見て、0号の口がゆっくりと弧を描く。

 

「……せっかくだ、また遊んでやろうか」

「っ」

 

 シヤクは自分がターゲットとなったことを理解し、覚悟を決める。

 0号の性格上、妹をわざわざ殺す真似はしない。

 

 が、どれだけの被害が出るかは予想が出来なかった。

 

(星生みで時間を稼いで、皆さんを安全なところに避難させるのが最優先ですね。けれど、私の考えることなんて理解しているでしょうから――)

 

 シヤクは戦闘に向けて演算を開始する。

 その時だった。

 

「くだらないことを言っていないで、帰るわよ0号」

 

 ソルシエラの声で0号は止まる。

 0号が振り返ると、ソルシエラは赫夜牟へと近づきコアを抜き取っている最中だった。

 

「目的は果たした。ここにいる意味はもはやないわ」

「はぁ……君は本当に……」

 

 興を削がれたとでも言わんばかりの視線を0号は向ける。

 そして何かを言いかけてあきらめた様子でため息をついた。

 

「いいさ、私のマスターは君なのだから。従うとしよう」

 

 そう言って0号は指を鳴らす。

 すると、ソルシエラと0号の足元に転移の魔法陣が現れた。

 

「待ってください! ソルシエラ、貴女は――」

 

 それを見たアイが咄嗟に止めようと手を伸ばす。

 しかし、ソルシエラは微笑むだけで何も言わない。

 

 やがてその姿は消え、辺りには沈黙だけが残された。

 

「――反応消えましたー。ソルシエラはもう近くにはいませんねー」

「そうか……」

 

 ヒショウはそれを聞くと、自身の頬を叩く。

 そして声を張り上げた。

 

「諸君! 作戦は成功したのだ! これより、後処理に入るぞ!」

 

 その言葉で、今まで夢を見ていたかのように立ち尽くしていた人々が一人、また一人と動き出す。

 

「アイ兄さん、僕たちはソウゴ君を家まで運ぼう」

「……はい」

 

 アイは一度顔を伏せる。

 そして次に顔を上げた時には当主として凛々しい顔つきに戻っていた。

 

 

 

 

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