【書籍化決定】かませ役♂に憑依転生した俺はTSを諦めない   作:不破ふわる

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九章 九重ちゃん、参上!!
第261話 こんな日がずっと続けばいいのに


 こんにちは!

 皆のミステリアス美少女です!

 

『朝から元気だねぇ』

『マイロード、今日も元気いっぱいでうれしいぞ』

 

 星詠みの杖君、カメ君、おはよう!

 

 那滝家から帰還してかれこれ一週間。

 俺の体はやたらと絶好調だった。

 今なら何でも出来てしまいそうな万能感は、まさに美少女という他ないだろう。

 

『多くの人間の性癖を破壊した結果なのだろうか。いずれにせよ、君が元気ならそれで良いよ』

 

 はぁ、こんな日がずっと続けばいいのに。

 

『フラグかな?』

 

「ケイ君、いますか?」

 

 部屋に突然ノックの音が響く。

 

 その声、扉越しの輝き、ミロク先輩ではないか!?

 朝から美少女が部屋に来ただと!?

 はわわ……!

 

『ん? 今、ナチュラルに透視しなかった?』

 

 俺は一秒もかからずに、えちえちパジャマから制服へと着替える。

 今日も男装美少女♂モードだ。

 

「入っていいですよ」

「失礼しますね」

 

 扉を開け、ミロク先輩が入ってくる。

 その後ろに続いて、ナナちゃんも一緒に入ってきた。

 

「おはようございます、ケイ。こうして顔を合わせるのは久しぶりです故」

 

 やべっ、不意打ち幼女だ。

 

『?!?!?!??!!? まっ、マイロード!? なんだこの愛くるしい幼き命は!? わっ、わわわ……私のデータにないぞ!』

 

 想像通り、カメ君は俺の脳内をパタパタ泳ぎ回る。

 脳内がうるさいよぉ><

 

『ナナちゃん……。幼き命がまだこの学園にいたとは……。ふわふわの翡翠色の髪、猫耳のついたもこもこパジャマ……! ああ、心が浄化されていく……』

『彼女は私の妹です^^』

『妹!? ということは、デモンズギアなのか!? ……いや、たとえそうであっても守護らねば。幼き命に貴賤はない』

『複雑な気持ちだねぇ』

 

 大喜びのカメ君は、なおも止まることなく一人で言葉を重ねていく。

 ナナちゃんがカメ君に乗っている光景は可愛いかもしれない。

 

 後できちんと会わせてあげるからね。

 

『マイロードとナナちゃんが私の甲羅に乗る!? 天上の意思でも看過できない可愛さだぞそれは!?』

 

 俺は乗るとは言ってねえよ。

 

『だが、無邪気なロリシエラとクーデレシエルの組み合わせは至高では?』

 

 自分の妹をコンテンツとして差し出すのか!?

 倫理観どうなってんだ。

 

『???????』

 

 なんで不思議そうなんだよ。

 

「ケイ君、朝からお邪魔してすみません。ちょっと尋ねたいことがありまして……」

「何でしょうか」

「その……那滝家からフェクトムに恐ろしいほどの支援が……えっと……」

「えっ」

 

 ミロク先輩は俺の目の前にウィンドウを展開する。

 そこには、フェクトムを支援する数少ない企業の名前があった。

 

 その中に燦然と輝く那滝家の文字。

 そしてその支援金たるや、他の企業の倍以上であった。

 

「那滝家に帰省していた間に、何か事件があったというのは聞きましたが。これに関しては、私知らされていません」

「ミロクは、これを見て驚きで1分と24秒ほど思考を停止していました。それほど、驚いたのでしょう。実際、なんの見返りもなしに支援するには多すぎる額です故」

 

 学園への支援は、一定のリターンがあってこそだ。

 聖遺物やダンジョンコア、あるいは研究品やダンジョンそのものの譲渡など。

 何もない学園にわざわざこんな事をするメリットはない。

 

 少し、脳を焼きすぎてしまっただろうか。

 

『あれだけの事をすれば当然だねぇ。追放された筈の君が未だに那滝と名乗れているのもそのためだろう』

 

「あの、本当にこれは頂いて良いのでしょうか? ちょっと、怖くて」

「……大丈夫ですよ。実は、フェクトムが経済難であると兄さんたちに相談したら、支援してくれることになっていたんです。報告を忘れていました。すみません」

「そうですか。あくまで、うっかり報告を忘れていただけなんですね?」

「はい」

「……自分を対価に支払った、とかそういうことはありませんね? 一人で無理をするのは駄目ですよ?」

「だっ、大丈夫です」

 

 ミロク先輩は俺に接近し、近くから顔を覗き込む。

 美少女の顔が近くにある……うわぁ、なんかいい匂いがするぅ!

 

『あ、また魔力が増えた』

『最近、どんどん魔力の生産量が増えてきたな。マイロードの魂がなぜこれだけの魔力に耐えられているか不思議だ』

 

 愛ですよ。

 

「ミロクは、貴女の事を心配しています故。実は、帰省中も不安でミズヒに相談を……むぐっ、もごもご」

「ナナちゃん、今月の課金上限減らされたいですか?」

 

 口を押さえられて、腕の中で顔を青くするナナちゃん。

 必死に首を振りながら、ミロク先輩に従う姿勢を見せた。

 

「……!? ひ、ひぇ。ミロク、許してください。次のバージョンで復刻されるアレを完凸しないといけません故……!」

「毎回言っているその「完凸」というのは、必要な行為なんですか……?」

「もちろん」

 

 ナナちゃんは、今までで一番真面目な顔でそう言った。

 誰がナナちゃんをこんな風にしてしまったんだ。

 

『のびのび育ってくれてうれしいねぇ^^』

『課金が好きなのか。成程な。マイロード、おともだちとして彼女が課金をしすぎる前に注意をするんだぞ。子供の内から金銭感覚が狂うのは駄目だ』

 

 今日も、姉と親は俺の頭の中で楽しそうだ。

 

「……ん?」

 

 ふと、気が付いた。

 ミロク先輩がナナちゃんと、お注射無しでくっついているのである。

 

 あの注射は打つと副作用で体調が悪くなるので、打てばすぐに分かる。

 が、今はその様子もなく平然とナナちゃんに触れていた。

 

『おや……これはまさか……』

 

「ミロク先輩、一つ聞きたいんですけど」

 

 俺はナナちゃんを指さす。

 ナナちゃんは、ミロク先輩の腕の中で首を傾げていた。

 

「薬無しで触れて大丈夫なんですか?」

「……あら、よくわかりましたね」

「ええ、だってあの注射打つとミロク先輩は毎回苦しそうですし。流石に気が付きますよ」

 

 俺の言葉を予想していたのだろう。

 ミロク先輩は驚くこともなく、「そうですね」と頷いた。

 

「それじゃあ、ケイ君にもお話しておきましょうか。実は――」

 

 不意に、部屋にノックの音が響く。

 

「ケイ君、いる?」

 

 扉の向こうからトアちゃんの声が聞こえた。

 

 退院時に階段から落ちて大けがというポンコツかました時はどうなることかと心配したが、無事に今度こそ退院できたようで何よりである。

 

 俺はミロク先輩を見る。

 すると、一瞬考えたような顔をした後に、ナナちゃんから離れていつもの笑みと共に頷いた。

 

「私に構わず、入れてください」

「入っていいよ」

「おじゃましまーす。……あ、ミロクちゃん、おはよぉ」

「はい、おはようございます」

 

 トアちゃんは、眠そうに目をこすりながら入ってくる。

 ナイトキャップに、お気に入りの重砲型抱き枕を片手に俺たちの前に来ると、少し不満げに言った。

 

「ミズヒちゃんとヒカリちゃんが朝から特訓でうるさい……。特訓させられる夢を何度も見たし……ふぁ、眠い」

「あぁ、まだ寮は改装が終わっていないですからね。防音性は低いでしょう」

「ミロクちゃんも、だからここに来たんでしょう?」

「……はい、そうです」

「え?」

 

 ミロク先輩は、何も感じさせることなく自然と嘘をついて見せた。

 驚く俺を他所に、二人は話を進めていく。

 

「この寮にはケイ君一人ですからね。静かで良いですよ」

「……うん。というわけで、ここで寝るね」

「ん?」

 

 首を傾げる俺を無視して、欠伸をしたトアちゃんはベッドへとダイブした。

 何が……おきている……。

 

『こんな行動、データにないねぇ!』

『私の予測を超えた……!?』

 

 データ三人衆、敗北。

 

「ふぁ……あれ、ケイ君は寝ないの?」

「いや、俺は別に」

「そうなんだ……()()()寝ないんだね」

「今日は……!? ケイ君、どういうことでしょうか」

「ミロク、落ち着いてくださ「ギフトカード一万円分です」……ケイには説明責任があります故」

 

 ナナちゃんがミロク先輩を止めようとして、凄まじい勢いで敗北した。

 手のひらを返すなどという次元の話ではない。恐ろしい変わり身幼女だ。

 

「い、いや、トアちゃんが寝ぼけているだけですよ。今日が初めてです」

「……本当に?」

「は、ハイ。ね、トアちゃん……トアちゃん?」

「……むにゃ」

 

 寝てる……。

 

 唯一、無実を証明してくれそうな元凶は、小さな寝息と共に幸せな顔で眠りについた。

 もう俺には、根拠もなしに無実を証明することしかできない。

 

「あ、あの……俺は本当に何も知らないんですよぉ」

「………………そうですか。わかりました」

「あ、わかっていただけましたか」

「はい」

 

 ミロク先輩は笑顔で俺の手を掴むと、そのままベッドへと押し倒した。

 柔よく剛を制すとでも言うべきだろうか。

 力をさほど入れていないはずのミロク先輩だったが、俺には抵抗する間もなかったのだ。

 

『!? ここで来るか、ミロケイ……!』

 

 俺の中にいる作家さんが喜ぶ声が聞こえる。

 しかし、俺本人は頭が真っ白になって何もできなかった。

 

「私も一緒に寝ます。そうすれば、ケイ君の無実を証明できますよ」

「なるほど(?)」

 

 美少女がそういうならそうなのだろう。

 

 俺はミロク先輩に従い、抵抗せずにベッドへと体を沈める。

 トアちゃんとミロク先輩に挟まれて、どうやら俺はすでに天国にいるようだ。

 

「ふふふ……それじゃあ、少し眠りましょうか」

「あっ、はい……」

 

 ミロク先輩は俺を見て、一度優しく笑うと目を閉じる。

 どうやら本当に眠るつもりらしい。

 

 ま、まずいぞ。

 顔が良すぎる……!

 

 俺は顔を逸らし、仰向けになる。

 そして気が付いた。

 

 この体勢だと、両側から美少女の寝息がお耳に届くのである。

 ふぇ、ち、ちからがぬけるぅ。

 

『耳が弱すぎるねぇ』

『マイロード、眠るのだ。そしてすくすく育つと良い』

 

 他人事の二人はあてにならないので、俺は助けを求めようと、ベッドの傍に立ち尽くすナナちゃんを見た。

 少し呆れた様子の幼女は、俺と一度目を合わせると頷く。

 

 そして、どこからか取り出した複数のタブレット端末を見せた。

 

「今から、ログボを受け取ってデイリー消化をします故。邪魔しません」

「い、いや。ちがう、た、たすけ……」

「では」

 

 ナナちゃんはそういうと、少し離れた場所で拡張領域からクソデカビーズクッションを取り出すと、体を投げ出してゲームを始めた。

 デモンズギアとは到底思えない姿である。

 

「…………ケイ君、眠れないんですか?」

「い、いえ。そんなことは」

「私が、羊を数えてあげますよ」

 

 顔を合わせることはできない。

 ミロク先輩とトアちゃんの添い寝ASMRをこれ以上接種したら、魔力があふれて辺り一帯が爆発する可能性すらあるのだ。

 

「羊が10匹、羊が9匹」

「まさかのカウントダウン方式」

 

 囁くように、カウントダウンをしていくミロク先輩。

 そして、かわいらしいトアちゃんの寝息。

 

「ふ、ふにゃ……」

 

 もうすでに体に力が入らなくなった俺は、流れに身を任せるしかなかった。

 

『平和な世界だねぇ^^』

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