【書籍化決定】かませ役♂に憑依転生した俺はTSを諦めない   作:不破ふわる

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第266話 誰がギザ歯ちゃんだ

「――なるほど、理解しました。貴女がなっちゃんさんの保護者なのですね」

 

 俺達はすぐにサヤカちゃんと合流した。

 

 サヤカちゃんは、どこか安堵した様子だった。

 ミロク先輩と同じく、姉のオフ会に不安があったのだろう。

 

「度し難い変態だったらこれで脳みそをぶちまけてやるところでした」

 

 笑顔で小銃を抱えるサヤカちゃんの言葉はどう聞いても冗談ではない。

 

 全知の俺は知っている。

 この子は、姉のことが大好きなクレイジーシスターであるということを。

 原作においても、最初はキリカちゃんを狙う敵だと勘違いしてトウラク君を襲っていた。

 それくらい、姉の事となると容赦も躊躇もなくなるのである。

 

「私も安心しましたよ。ナナちゃんのオフ会の相手が、かわいらしい子で。それに、かの有名な天剣だったなんて」

「世間で言われているよりも、だらしがない人ですけどね。けれど、妹として断言します。姉さんは、悪い人ではありません」

 

 サヤカちゃんは自信満々にそう答える。

 キリカちゃんと同い年なのに、しっかり者で偉いね^^

 

『しっかりものの幼き命もまた素晴らしい。最初は背伸びでも、それはやがて本物の余裕へと繋がるのだ』

 

 カメ君もご満悦だ。

 

「それで、一つ聞きたいのですが。キリカちゃんの隣の子は誰ですか?」

「……? オフ会の相手ではないのですか? 姉さんが話していなかっただけで、実はオフ会は大人数で行われるものだったのだと思っていたのですが」

 

 俺たちの視線の先では、今まさにキリカちゃんとナナちゃんが出会ったところだった。

 普段表情に乏しいナナちゃんが、ぱぁっと笑みを浮かべている。

 可愛いねぇ!

 

『あの笑顔を守護るために、私たち天使は遣わされたのだ』

『最初滅ぼそうとしていたくせによく言うねぇ』

 

 キリカちゃんが手を取ってぴょんぴょんと跳ねる様子もまた素晴らしい。

 それに比べてエイナ! 横で興味なさげにアイスを食うのはどうなんだ!

 キリカちゃん達にもアイスを取られると思って、食べるスピード上げたろ君!

 

「四人でのオフ会ではないのですか。六波羅先輩のところのお子さんもいるようですが」

「お子さんではねェよ。……エイナは偶然その場に居合わせただけだ。邪魔なら、今から俺が引きずって退場させるが?」

「いえ、構いません。姉さんは全てを受け入れますから。例え、過去にゲームで容赦なくフルボッコにされてギャン泣きさせられた相手でも、受け入れます」

「あの時は本当にすまなかったッ……!」

 

 六波羅さんが勢い良く頭を下げる。

 どうやら、エイナは過去にキリカちゃんをゲームで泣かせたらしい。

 特に驚きはない。

 

「頭を上げてください。最初に挑戦したのは姉さんなので。となると、三人でのオフ会なのでしょうか。あの白衣の子は誰も知らないみたいですが」

 

 俺たちは全員で首を傾げる。

 

「まァ、オフ会だからな。こうして顔見知りが来る方が珍しいだろ」

 

 六波羅さんの言う通りだ。

 今までが偶然だっただけだろう。

 

 まさか、あの白衣の子が原作と関わっていたり、厄ネタだったりする訳がない。わはは。

 

「それもそうですね。では、見守るとしましょうか」

 

 四人で、ほっこりしながらオフ会の成り行きを見守る。

 

 広場では、幼女三人とエイナがわっちゃわっちゃしていた。

 どれどれ、ミステリアスイヤーでお話を少しだけ聞いてみようかな^^

 

『また変な事を言い始めた……』

 

〈おお……貴女がキリキリまいさんですか。こうして会うのは初めてで、少し緊張してしまいます故〉

〈えへへ、私も少しだけ照れちゃうな。なっちゃんに会える日をずっと待っていたんだ!〉

 

『なんだこの音声!?』

『おお、これはまさに幼き声紋。マイロード、素晴らしい進化だ』

『最近、君おかしくないかい?』

 

 美少女の声は、一言一句聞き洩らさないよ^^

 

〈エイナちゃんも一緒なんだ! お友達?〉

〈エイナは私の妹です故。こんな体躯ですが、私の方が姉なのです〉

〈私も同じだよ! お姉ちゃんなのに、サヤカに身長で負けちゃったの! これから一緒に大きくなろうね!〉

 

 お耳が溶けるロリの会話。どうにか国宝に出来ないか?

 

『あぁ……私が光になっていく……』

『なるほど、今回は私が冷静に立ち回る役か。嫌な予感しかしないねぇ^^』

 

〈それで、隣の子はキリキリまいさんのお友達でしょうか。初めまして〉

 

 ナナちゃんの言葉で、白衣の子はアタッシュケースから飛び降りる。

 そして、ナナちゃんの事を突然抱きしめた。

 

〈初めまして! 貴女がキリカちゃんの言っていたなっちゃんなんだね! 私は九重! 私ともお友達になってほしいな!〉

〈ええ、もちろんです。私のような存在に、こんなに多くの友人が出来るとは思っても見ませんでした故。エイナ、アイスを買ってきなさい〉

〈えぇ!? またぁ!? シエルちょっと私の事を良いように使いすぎじゃ――こ、これは……!〉

〈一万、釣りはいりません故。この日のために、課金を惜しんで私はお手伝いを頑張りました。お金なら、あります故〉

〈流石シエル姉さまぁ!〉

〈え、エイナまたお金ないの? じゃあ私からもあげるよ。口座に三億でいい?〉

〈お二方に一生ついていきますぅ! へっへっへへへ……! 足でも舐めましょうか〉

〈エイナ、キモイ〉

 

 キリカちゃんの直球の悪口がエイナを襲う。

 しかし、大金を手に入れられると知ったエイナは無敵であった。

 

〈そうですぅ、私はきもいですぅ。えっへへへへへへこれで、リーダーにも褒めて貰えるかも……! そうしたら、リーダーは私の事を大好きになって………………キャー!〉

〈突然悲鳴をあげてどうしたの!? 体の具合でも悪いの!? ハチノミヤに診てもらう!?〉

〈エイナは時々こうなるよ。好きな人のことを考えると暴走するんだ〉

〈姉としては複雑です故〉

 

 エイナは原作でも六波羅さんが好きだったから特に俺は驚かないよ^^

 というか、原作を読むにおそらく六波羅さんからエイナに対してもクソデカ感情あるし。

 相思相愛だね。それに、アイ兄さんとシヤクの前例もあるから、結婚できるよ!

 

「――どうやら、エイナがまたパシリにされるそうです。あと、姉さんがエイナの口座に三億円を振り込もうとしていますね」

「急に何言ってんだお前」

 

 茂みに隠れ様子を伺っていると、突然サヤカちゃんがそう言った。

 しかも、発言の内容から察するに俺と同じ側の人間である可能性がある。

 

『こんなのが二人もいてたまるか』

 

「実は、姉さんのことが心配で髪留めに盗聴器を仕掛けているんです。これで、会話を聞いていました」

「そこまでするのかよ……」

「トランスアンカー使ってる人に言われたくはないんじゃないかな」

「あ?」

 

 六波羅さんに睨まれたので、顔を逸らしてミロク先輩の影に隠れる。

 ミロク先輩も察して、俺を守るように少し前に出た。

 

 見たまえ、美少女四人のゆるふわ四コマがここに在るぞ!

 

『キャラの属性もきれいに分担されているねぇ。これはSNS受けもするぞぉ!』

 

 ★ヨミさんのお墨付きだ。

 存分にコンテンツになるとしようか。

 

「あれはこの日のために買った特別製の盗聴器です。ジルニアス学術院のオークションサイトで購入した最新式ですよ。なので、音声もクリアに聞こえます」

 

 そう言って、サヤカちゃんは誇らしげに一つのウィンドウを展開する。

 左上に小さく表示されている『どこでもお耳キャッチ君』の文字は製品名だろうか。

 

「よくこんな一回のために買えたな。あそこのオークションサイトは質は良いが、高額だろ」

「それが、今回が初出品の人がいて安値で買えたんですよ。妙に怪しい方でした。製品の説明もどこか変で『頼まれて作ったけど、倫理的にアウトな使い方をしそうなので売りに出します』としか書かれていないし、名前は天才科学者真理ちゃんだしで。ダメもとで買ってみたら大当たりでした」

 

 思い当たる人物が一人しかいない。

 

「せっかくですから、三人にも聞こえるように調節します」

 

 サヤカちゃんがコンソールを操作すると、俺たちの耳にも音声が聞こえ始めた。

 イヤホンをしていないのに、何故だか耳元から聞こえるぞ!?

 

「なんだこれ。イヤホンつけているみてェな感覚だな」

「あら、二人とも耳元に小さな魔法陣が展開されていますよ。……って私もですね」

「これは、仕組みとしては骨伝導と同じらしいです。特定の魔力波により限定的に使用者に音を届けるのだとか。だから、他に音が漏れる心配がないんですね」

「うーん、 相変わらずの超技術」

 

 関心する俺の耳元では、ロリのキャッキャする声が聞こえてきている。

 どうやら、ここからはミステリアスイヤーを使わなくてもよさそうだ。

 

〈アイス買ってきましたぁ!〉

〈ご苦労様です。では、エイナも来たことですし行きましょうか〉

 

 どうやら四人は移動をするようである。

 アイスを片手にナナちゃんは歩き始めた。その後ろを、アイスをペロペロしながら三人が追う。

 

〈どこに行くのー?〉

〈今日はなっちゃんと一緒にカフェに行く約束してたんだ!〉

〈カフェですかぁ。おしゃれですねぇ。でも、量が少なくて、カフェって少し損した気分になるんですよぉ。騒げないし〉

 

 でも、それはたぶん六波羅さんが良い所に連れて行ってあげているんじゃないかな。

 できればそのカフェを紹介して欲しいくらいだよ。

 

〈キリキリまいさんとのオフ会を今日にした理由はただ一つ。私たちのやっているゲームのコラボカフェが今日からスタートだからです。初日に行って、ランダム封入コースターをコンプしてこそです故〉

〈私そんなに食べれるかなぁ〉

〈あ、食べるの私がやりましょうかぁ?〉

〈私も食べるー! ハチノミヤ、私って食べていいの?〉

〈構いませんますです。けれど、食べすぎには注意なのですです〉

 

「今、アタッシュケースが喋りましたか?」

「良かった、ミロク先輩も聞こえていたんですね。俺の幻聴かと思いました」

 

 九重ちゃんが乗って移動しているアタッシュケースは、よく見ると側面の液晶に目が映し出されている。

 あんなの持ってるのにモブ美少女とかあり得るか?

 ソシャゲのキャラだったりするのではないのだろうか。

 

「AIかなんかだろ。ああいう玩具を持ってるやつは騎双学園でも見かけるぜ」

 

 AIが相棒の白衣ロリ?

 それソシャゲなら最レアだろ。

 攻略サイトでリセマラ終了ラインに分類されるキャラだろ。

 

『でもソルシエラは期間限定で人権キャラだから』

 

 なんの対抗心なんだよ。

 

〈今からワクワクします故〉

〈あのビルだね!〉

〈結構大きいところでやるんですねぇ〉

 

 各々感想を言いながら、ビルの中へと四人は消えていく。

 その姿を見て、俺たちは頷き合い後を追った。

 

 そしてビルへといざ足を踏み入れようとしたその時である。

 

「……もしかして、ケイ君!?」

 

 その声に足を止める。

 振り返れば、そこにはどスケベバニー衣装の美少女がいた。

 ピンクの髪に黒メッシュと、泣きぼくろが印象的である。

 

 もしかして、貴女は!?

 

『知っているのかい?』

 

 彼女のことは忘れもしない。

 まだ俺がソルシエラとして活動していない頃に化粧の練習に付き合ってくれたバイトリーダーだ。

 

 名前よりもバイトリーダーの肩書に固執する変な人で、バイトリーダーと呼ぶことしか許してくれなかった。

 あの時はまだ未熟だったが、こうして見てみると彼女も美少女としての輝きを持っているね!

 

「バイトリーダー、お久しぶりです」

「久しぶりぃ! バイト辞めて以来だね。フェクトムの事は最近よく聞くようになったし、頑張ったんだねえ。うれしいよ」

 

 うんうんと頷くバイトリーダーを見て、なぜかミロク先輩が一歩前に出た。

 いつも通りの笑顔だが、妙に圧を感じる。

 どうやら警戒しているようだ。

 

「あの、うちのケイ君に何か用ですか?」

「え? ………………あ、もしかしてケイ君の彼女さんですか? とってもお似合いですね!」

「ケイ君、良い人と知り合いなんですね」

 

 さっきまでの威圧的な空気は霧散し、ミロク先輩はニコニコしながらバイトリーダーと握手を交わしていた。

 

「いやぁ、それにしても随分と可愛くなってまぁ。それに、お連れさんも全員美少女だし。……うん、これなら」

「バイトリーダー、なぜ急に土下座を!?」

「頼みを聞いてください! お願いいたします!」

「その格好で土下座しないくださいバイトリーダー! 絵面がマズイですバイトリーダー!」

 

 何とかバイトリーダーを立たせる。

 が、その目はウルウルと潤んで、今にも泣きそうだった。

 

 ただならぬ雰囲気を感じたのか、今まで黙っていた六波羅さんが口を開く。

 

「事情がありそうだなァ。話してみろ」

「ギザ歯ちゃん、ありがとう……」

「誰がギザ歯ちゃんだ」

 

 バイトリーダーは、涙声で話し始める。

 

 その内容に、ある者は天を仰ぎ、またある者は明らかに嫌そうに表情をゆがめ、またある者は意外と興味ありげに、そしてまたある者は。

 

 

^^

『^^』

『おぉ……』

 

 コンテンツの匂いに涎ジュルジュルであった。

 

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