【書籍化決定】かませ役♂に憑依転生した俺はTSを諦めない   作:不破ふわる

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第267話 そうですよね、赤バニー六波羅さん

 

 今日を祭日にする!!!!!

 

『涎が止まらないねぇ!』

『愛こそが、人類が天上の意思に勝つために必要なものだったのか……』

 

 俺たちは今、伝説を目撃していた。

 その盛り上がりたるや、過去最高と言っても良いだろう。

 もしもここで星詠みの杖君と双星形態になったら、無限に無限が乗算されビッグバンが起きていただろう。

 

「――お、おい。この衣装……色々と駄目なんじゃねェのか」

 

 俺の目の前には、俺が決して到達できない答えがあった。

 それはかつて、知恵の実を口にした人類に最初に与えられた難題。

 

 TS娘の魅力ってなーんだ、の答えである。

 

「脚とか見せすぎだろ……胸もぎりぎりだしよォ……」

 

 恥じらい。

 それこそがTS娘をTS娘たらしめる最も重要なものなのだ。

 俺は既に自らその要素を手放してしまった。

 

 その気になれば、催眠でも自己暗示でも演技でも俺は恥じらうことが出来る。

 しかし、それは本物ではない。

 

 TSに抵抗を持つ人間が、えちえち衣装を着たときにのみ得られる栄養こそが大切なのだ。

 

 そうですよね、赤バニー六波羅さん!!!

 

「良く似合ってるよ、六波羅さん。いや、今は確か『ご奉仕強襲型:ロクナ』だったか^^」

「ソルッ……ケイてめェ、ぜってェ後で殺す……」

「反抗的だけど、本当は指揮官の事が大好きな純情娘。棘のある言葉は愛情の裏返し……うん! きちんとキャラクターになれているね! 俺も見習わなきゃ^^」

 

 六波羅さんは今、赤いバニー衣装に身を包んでいた。

 スレンダーな体にはよく衣装が似合っており、すらりと伸びた脚はタイツが合わさることにより一番のえちえちである。

 

「なんで俺だけなんだ。てめェらは、普通なのによォ」

「そんなことないよ。ねえ、ミロク先輩」

「ふふっ、そうですよ六波羅執行官。いや、ロクナちゃんでしたか」

 

 ミロク先輩はそう言ってニコリと笑う。

 ご覧ください。

 長い髪はまとめ上げられ、執事服に身を包んだその姿を。

 

 ミロク先輩の男装だ。

 崇め奉れ。

 

『男装と女装とTSが同時にこの空間に存在しているなんて、夢のようだねぇ^^』

 

 ミロク先輩もまた、スタイルが良い。

 執事服に身を包んだ彼女はとても魅力的である。

 

「ケイ君もかわいいですよ」

「そうですかね。変なところがないか、不安なのですが」

 

 俺はそう言って、足元を不安げに見つめる。

 

 今の俺はミニスカメイドである。

 ニーハイにフリルの多いご奉仕衣装は、どう見てもえちえちご奉仕用である。

 

『露骨な集金キャラ。運営は実装ペースを考えろ』

 

 存在しない運営にキレてる……。

 

 そんな星詠みの杖君に見せてあげよう。

 刮目せよ、これが養殖型のTS羞恥だ。

 

「そ、それに。あっちのバニーに気を取られていましたけど俺も結構スカート短くないですか? メイドって、こんなにスカート短くしていいんですかね……」

 

 顔を赤くして、俺は出来るだけスカートで足元を隠そうとする。

 が、短いスカートで隠せるわけもなく、内またでモジモジするだけに終わってしまった。

 

『ほう、男装したミロクとメイドソルシエラか。大したものだねぇ』

 

 星詠みの杖君も涎ジュルジュルでなによりです。

 

「ははははっ、てめェにはお似合いだぜ。なァ、ご奉仕強襲型:ミナウラ」

「っ、さっき煽らなきゃよかった……! ミロク先輩、やっぱりギリギリまで更衣室にいます!」

「駄目です」

「ビビってんじゃねェよ」

「さっきまで恥ずかしがってたのに、なんでそんなに急に余裕が出来たんだ!?」

「任務だと思えば、まァなんてことはねェな」

 

 六波羅さんは真顔でそう言った。

 顔がまだほんのり赤いので、そう思い込もうとしているのだろう。

 えっちだね。

 

「皆着替えたかなー? おぉ、すごいねぇ! あとは、ケイ君はこの青メッシュウィッグを付けてねー。ミロクちゃんはこっちの被って完全に黒髪にして。そして、ギザ歯ちゃんはそのままでおっけー!」

「はーい」

「はいわかりました」

「ギザ歯ちゃんって呼ぶんじゃねェ」

 

 バイトリーダーはニコニコご満悦である。

 彼女の前には、クラシカルメイド姿のサヤカちゃんがいた。

 

 なんとかわいらしい。

 ちょこんという擬音が似合いそうなその姿は、彼女の冷静な表情と相まってクーデレロリメイドだ。

 

『おぉ……! マイロード、これはなんだ。なんと可愛らしい! 私も客として通わせてくれ! 幼き命の働く姿を間近で見たいのだ!』

 

 駄目です。

 君を今野に放つと絶対に面倒くさいことになる。

 

『なら私を出してほしいジュルねぇ^^』

 

 涎があふれて語尾が変わってやがる。

 君を今野に放つとRー18になりそうなので駄目です。

 

「本当にありがとう皆! 本当はクローマのコスプレ部が来る予定だったんだけど、途中で来れなくなったみたいでさ。困っていたんだけど、いやぁ良かった良かった!」

「お役に立てて何よりです」

「ケイ君、期待しているからね。当然、他の三人にも! 今から君たちは『シグマポリス』のキャラクターだ!」

 

 こうして、俺たちはシグマポリスというゲームのキャラクターに扮してカフェのバイトをすることになったのだ。

 今回はお給仕限定衣装が実装されたキャラ達がピックアップされたコラボカフェのようである。

 

 そしてこれこそ、ナナちゃん達が楽しみにしていたコラボカフェなのである。

 俺たちの耳元では今もなお、美しき幼女たちの会話が聞こえてくる。

 

〈このロクナちゃんのらぶらぶオムライスはランダムコースターが二個ついてくるのでお得です故〉

〈じゃあそれ頼もっか!〉

〈オムライス初めて食べるー!〉

〈へへへっ、遠慮なく残してくださいね……。私、食べ残しでも全然問題なく食べれるので〉

 

 可愛らしい会話に思わずほっこりしてしまう。

 彼女達のために、全力でコンテンツになるしかあるまい。

 

『既に私と星詠みの杖で、この場にいる全員の魂の位相を変えてある。デモンズギアに本人だと見破られることはないだろう。故にマイロード、近くで幼き命を見れるぞ。というか、見てくれ頼む。オムライスを頬張る彼女たちを見たいのだ……!』

 

 カメさん、わたしのことはもうどうでもいいの?

 わたし独りぼっち?

 

『くぁwせdrftgyふじこlp』

『カメを壊すな。君は時々人の心がなくなるねぇ。ほら、さっさと正気に戻ってくれ』

 

 ロリ扱いされるのは鬱陶しいが、興味が別に移るとそれはそれで負けた気がするんだよ。

 

『ほう、嫉妬かマイロード! そうなのだな! 可愛い子だ!』

 

 再起動させない方がよかったか。

 

「それじゃあ、朝の子たちと交代でお仕事お願いね。マニュアル通りにやれば良いから!」

「任せろ、仕事だってんなら手は抜かねェよ」

「ふふふ、少しだけ楽しみになってきました」

「姉さんに奉仕……じゅる」

「頑張ります、バイトリーダー!」

 

 四人で心を一つに、俺たちはバイトを開始した。

 

 

 

 

 

 カプセルいっぱいに満たされた赤い液体の中で、それは目覚めた。

 

 それに体の感覚はない。

 ただ、目覚めたのだという実感だけがあった。

 

 体はないのに、どういう訳か周囲が見渡せる。

 それに、赤い液体に満たされたこのカプセルの中でも音が聞こえた。

 

 世界が次第に鮮明に認識できるようになってくる。

 隣のカプセルは割れ、辺りにガラス片と赤い液体がまき散らされていた。

 

 それは、カプセルの中に何がいたのかを知っている。

 そして中身が今、自由を手にしていることも、情報として把握していた。

 

「おや、こっちもお目覚めか。流石は姉妹。目覚める時間もほとんど同じだな」

 

 声のする方を見れば、小さな体躯の科学者――講師がいた。

 母というには幼いが、それでもその講師こそがそれにとっては母なのだ。

 

「――」

 

 それは自由を求めて、講師へと言葉を投げかける。

 しかし、なんの葛藤もためらいもなく、講師は科学者として首を横に振った。

 

「駄目だ。それは意味がないし、何より興味がわかない。私はね、出来るだけ趣味と仕事を同時に片付けたいんだ。だから、そのお願いはきけない」

「――」

 

 不公平だ、とそれは抗議する。

 が、大して意味をなさなかった。

 

「悪いがここにいてくれ。私の計画には必要不可欠でね。あの子と違って、道具としての側面が強いんだ」

 

 講師はそう言って、すぐに作業へと戻る。

 既にカプセルの中で目覚めたそれを見ることに意味を見出していないようだ。

 

 それに体はない。

 暴れてカプセルを割ることも、自分の容姿を確かめることもできない。

 それが、妙に腹立たしかった。

 

「帰ってきたら土産話でもねだるといい。さぞ、面白い話をしてくれるだろう。自由を初めて手にした人間の言葉だ。値千金というものだろう。きっと、今頃はハチノミヤと共に楽しい観光でもしているんじゃないのかな」

 

 その声は、つい先ほどそれに向けたものよりも温かく優しいものだった。

 自分には決して向けられなかった母としての言葉。

 

「――」

 

 自由よりも何よりも、それは愛が欲しかった。

 

 

 

 

 

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