【書籍化決定】かませ役♂に憑依転生した俺はTSを諦めない   作:不破ふわる

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第270話 私はそう信じています

 楽しい時間もやがて終わりを告げる。

 俺たちの涎ジュルジュルコスプレタイムも、幼女達のオフ会も等しく終わるのだ。

 

 コラボカフェを後にした俺たちは、再び幼女達を見守る業務へと移行した。

 今、彼女達は元居た広場へと戻ってきている。

 どうやらお別れの時間のようだ。

 

〈とても楽しい時間でした。こんなに心が躍ったのは初めてです故〉

 

 ナナちゃんは優しい微笑みを浮かべてそう言った。

 すると、キリカちゃんが飛びついて抱きしめる。

 その流れに乗るように九重ちゃんも二人を抱きしめた。

 

 どうしてそこで混ざらないんだエイナ!

 

『おそらく、飽きて帰りたがっているねぇ。食うもの食ったし帰りたいのだろう』

 

 幼女の純粋さを分けてやりたいくらいだぜ。

 

〈本当はまだ遊びたいんだけど、理事会の任務があるから。ごめんね〉

〈いえ、天剣ともなれば仕方がない事です故。こうしてコラボカフェに共に行けただけで良い思い出になりました〉

〈なっちゃん……!〉

 

 彼女達にとって楽しい時間になって本当に良かった。

 こうして、草葉の陰から見守っていた甲斐があるというものだ。

 

〈またいつかあそぼーね!〉

〈はい、勿論です。今度は九重にゲームを教えます故。私の招待コードからゲームを始めてほしいので〉

〈あっ、ずるいよ! 私も私も!〉

〈じゃあ、今度はみんなでゲームパーティーだね!〉

〈……え、それもしかして私も含まれてますかぁ? ……あ、何でもないですシエル姉さま。文句とかは別に……〉

 

 幸せな会話をお耳で感じながら、ふと俺は隣を見る。

 ミロク先輩は、どこか安堵した様子で彼女達を眺めていた。

 その奥ではサヤカちゃんが嬉しそうに頷き、六波羅さんが呆れた様子でため息をついている。

 

 全員満足そうだな、ヨシ!

 

〈じゃあね!〉

〈はい、ではまたいつか〉

〈私たちも帰ろう、ハチノミヤ〉

〈あの、ちなみにいつ頃私の口座にお金は振り込まれますかね……あの、ちょっと、ねえ――〉

 

 キリカちゃんが去り、ナナちゃんが去り、九重ちゃんがアタッシューケースに乗って去っていく。

 その場にエイナちゃんを残して、オフ会は終わりを迎えた。

 

『永久保存版の映像であった。これを天上の意思に捧げることで、剪定の中止を打診しよう』

 

 どうなるかわかったもんじゃねえから絶対にやめてね。

 

「じゃァ、俺たちもここで解散だな。また会おうぜ」

「そうですね。またその姿でぜひ」

「二度とてめえらの前で女になるもんかよ」

 

 そう言って六波羅さんは最初にその場を去った。

 続いて、双眼鏡を降ろしたサヤカちゃんが立ち上がる。

 

「姉さんに奉仕するので帰ります」

「まだ一人コラボカフェ気分の子がいるな」

「今日はありがとうございました。よろしければ、今後も姉さんと遊んでやってください」

 

 サヤカちゃんはぺこりと頭を下げた。

 そして去り際にこちらへと小さく手を振ったので、俺たちは笑顔と共に手を振り返す。

 

 サヤカちゃんも可愛いねぇ^^

 

『良いものだな、人類とは』

 

 本当に人類全体を見てそう言ってる?

 

「さて、私たちも帰りましょうか。ナナちゃんの後をこっそり追ってゲート近くになったら裏口に回りましょう」

 

 ミロク先輩と共に、俺も帰路へとついた。

 と言っても、ナナちゃんの尾行は続行なのだが。

 

 帰るまでがオフ会だよ^^

 

「ほら、ケイ君」

 

 ミロク先輩は俺に手を伸ばす。

 優しい微笑みを携えて、彼女は俺が手を握るのを待っていた。

 

 俺は四度の蘇生の後に口を開く。

 

「なぜわざわざ手を繋ぐんですか。子供扱いしてます?」

「あの子たちが仲良くしていたのを見たら、なんだか手を繋ぎたくなっちゃいました。……私のわがままに付き合ってくれませんか?」

「……そんな風に言われちゃ、断れませんね」

「ふふっ、ありがとうございます」

 

 俺が手を握ると、ミロク先輩はより一層笑みを浮かべた。

 そして、俺の手を引いて歩き出す。

 

「今日はありがとうございました。ナナちゃんも楽しめたみたいですし、オフ会の相手がキリカちゃんだとわかって安心しました」

「そうですね。変質者じゃなくて良かったです」

 

 これで変な奴が来たら、うちのカメ君が黙ってなかったからな。

 

「ケイ君は、楽しかったですか?」

「え?」

 

 突然の質問に、俺はすぐに答えることが出来なかった。

 

「……楽しかったですよ」

「そうですか。良かったです」

 

 俺よりも少し先を行くミロク先輩の表情はわからない。

 今、彼女はどんな顔をしているのだろうか。

 

 沈黙が訪れる。

 俺たちの足音が雑踏の中に消えていく感覚だけが、そこにあった。

 しばらくして、ミロク先輩は「そう言えば」と口を開く。

 

「最近知ったのですが、フェクトムは昔満天の星が有名だったらしいですよ。現実の空より美しく壮大な星空だったそうです。ダンジョンを利用しているからこそ、出来ることなのでしょう」

 

 歩幅が小さくなっていき、やがて二人の足が完全に止まった。

 その間にもナナちゃんはフェクトムへと向かって行き、背中が小さくなっていく。

 

 すぐに追わなければと足を進めようとして、振り返った彼女と目が合った。

 

「皆が来てくれて、フェクトムは立て直すことが出来ました。今は無理ですが、いつかフェクトムで星空を見たいですね」

 

 青い目が、俺を捉えている。

 いつか遊園地で見た時よりもずっと強い輝きを秘めた美しい瞳だった。

 

「その時は()()()一緒に、皆で星を見ましょう」

「……そうですね。見れたら、嬉しいです」

「見れますよ、必ず。私はそう信じています」

 

 そう言って、ミロク先輩は俺の言葉を待たずに前を向く。

 そして駆け出した。

 

「やっぱりこっそり追うのはもうやめましょう! ここからはナナちゃんと一緒に帰った方が楽しいですよ」

「急ですね。というか、俺のこの格好どう説明するんですか」

「趣味ということで」

「より複雑になりそうな回答ですねそれ」

 

 互いに軽口を言いながら、俺たちはナナちゃんの背中を追う。

 

 ところで、これは美少女同士のおてて繋ぎなので無罪ですよね。

 

『尊み無罪^^』

 

 

 

 

 

 

 銀の黄昏の保有するラボの一つに講師はいた。

 古びた神殿の中にいくつもの配線が通り、モニターが無数に設置されている。

 それらはすべて、玉座に座るたった一人の少女のためのものだ。

 

「さて」

 

 首からぶら下げた懐中時計を開くと、時刻は零時を回ったところであった。

 

「時間通りだ。遅刻しないのは評価が高いよ教授」

「今まで君がどんな人達と関わりがあったのかなんとなく想像できてしまった」

 

 いつの間にか背後にいた教授に驚くことなく、講師は肩をすくめる。

 

「九重も十伽羅(とおから)も準備が出来た。いつでも作戦に移れるぞ。ちなみに博士は既に向こうに行ってしまってね、こうして私は一人孤独に待っていたのだよ。九重と十伽羅のリソースを無駄話に使うわけにはいかないからね」

「おっと、もう少し早く来るべきだったかな?」

「構わないよ。私は雇われの身だ。この狂楽の銘に矛盾しない事なら従うさ」

 

 講師はそう言ってモニターの目の前に椅子を召喚して座りこんだ。

 はっきりと浮かび上がった目の下の隈が、彼女がどれだけの間作業し続けていたのかを証明している。

 

「本当ならこのまま様々な話題に花を咲かせたいところだが、そうはいかないのだろう?」

「ああ、博士たちが待っているからね。それに、Sランクやデモンズギア使いに勘付かれる前に動かなければならない」

「私としてはそれでもかまわないのだがね。何しろ、私のかつての最高傑作と再び戦えるのだから」

 

 講師はそう言って笑う。

 それは、幼い体躯には似合わないほど獰猛な笑みだった。

 

「焦らずとも戦えるさ。……さて、そろそろ始めよう」

 

 教授は玉座へと目をやる。

 そこには、小さく寝息を立てる少女の姿があった。

 

「女王のための世界を作るぞ」

 

 

 

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