【書籍化決定】かませ役♂に憑依転生した俺はTSを諦めない   作:不破ふわる

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第273話 それは自業自得じゃないかな……?

「う~ん、りーだぁ、私の事好きすぎですよぉ、うえへへ……」

 

 朝、エイナはそれはそれは幸せな夢を見ていた。

 自分の大好きな人が都合の良いことをしてくれる幸せな夢は、デモンズギアの演算能力をフル活用して作られたものである。

 

 涎を垂れ流しながら、お気に入りのぬいぐるみを抱きしめて眠っていた彼女だったが、唐突に身を震わせた。

 

「……さっむ」

 

 九月の初め、まだまだ暑さはとどまることを知らない。

 眠るためにはいまだにクーラーが必須であった。

 

 が、しかしどういう訳か今は体の底から震えるほどに寒い。

 しばらくの間は眠気を味方に再び深い眠りの中に潜り込もうとしていたエイナだったが、その抵抗も無駄であった。

 

「寒い……!」

 

 エイナはデモンズギアで一番我慢強い個体だと自負している。

 が、そんなエイナでもこらえきれずに起きてしまうほどだった。

 

「リーダー、寒いんでこたつ出しましょうよぉ」

 

 そう言ってエイナは隣を見る。

 誰もいない。いつもなら隣で寝ているはずの六波羅は、既に起きているようだ。

 

「……まさか、私が震えているといけないと思って温かいココアを?」

 

 そんな訳はないのだが、エイナはわくわくしながらカーテンを開けることにした。

 こんな素敵な朝は、日の光を浴びて優雅に目覚めるに限る。

 

「ふふふ、まるで新婚ですねぇ!」

 

 スキップしながら、おめでたい頭でいろいろと考える。

 そして鼻歌と共にカーテンを開けた。

 

「……んんん?????」

 

 目の前に、銀世界が広がっていた。

 ビルや道路が全て雪で覆われ、まるで人の気配がない。

 氷の中に閉じ込められたと言われた方がいっそ信用できる世界がそこには広がっていた。

 

「なっ、なんだこれ。え、冬になったんですかぁ!? デモンズギアにいつの間にかスリープ機能が……!?」

 

 あわあわとエイナは震えて寝室を飛び出す。

 

「リーダーぁ! 大変ですよぉ、まだ私クリスマスプレゼントを考えていません!」

「朝から何言ってんだお前」

「外がめっちゃ雪積もってんですよぉ! これは、夏を通り越して既にクリスマスが……って、うわぁ!? なんだこの死体の山!?」

 

 リビングに大量に積まれた血まみれのそれは、騎双学園の生徒たちであった。

 誰であろうと問わず、文字通りの血祭りにあげた六波羅は、そんな生徒たちを監視するように彼らの前に座っている。

 

 コーヒーを片手に本を読んでいたようだが、それでもいつでも動き出せる体勢であった。

 

「こ、これは……」

「朝突然押し入ってきてよォ、殺そうとしたんだ。だからまァ、正当防衛だな。それに、死んでねェよ。全身の骨を砕いただけだ」

「それ生きてるんですか……?」

「探索者なら死にはしねェよ。ま、死ぬほど痛いだろうけどな」

 

 六波羅は、そう言っておもむろに立ち上がる。

 そしてコーヒーを淹れると、大量の角砂糖を無造作に入れてエイナへと差し出した。

 

「ほらよ、寒かっただろ」

「ありがとうございますぅ。……で、なんでこんなに寒いんですか」

「それはあのバ「ワタシ様の偉大な力によるものだぁ!」……来たか」

 

 扉が蹴破られ、威勢の良い声が響く。

 踏み倒した扉をまるでマットの様にして土足で踏み込んできたその姿に、エイナは心底嫌そうに顔を顰めた。

 

「うわ出た……」

「ワタシ様を見れて光栄だろう! この氷凰堂レイが、朝の五時をお知らせしてやろう!」

 

 ご近所迷惑な声量で、レイはそう言った。

 

「寒いのってもしかして、この人のせいですか?」

「そうだ」

「そうだとも、ワタシ様に感謝すると良い!」

「感謝だとぉ!? リーダーとのイチャイチャを邪魔されたのに感謝する訳ないだろぉ!」

「してねェよ」

「夢の中でしてたんですぅ!」

「六波羅、相変わらずお前のデモンズギアは馬鹿だな!」

 

 わっはっはと笑いながらレイは氷でカップを作ると、勝手にコーヒーを淹れた。

 そしてそれを片手に生徒たちの山へと座る。

 そこへ座った理由は当然、この場所で一番高いからである。

 

「座り心地は悪いな。生徒会メンバーの方がまだマシだ」

「座るな、一応てめェの守る生徒だろうが」

「フン、敗者に選択権などないわぁ!」

 

 そう言ってレイは生徒たちをあっという間に氷漬けにした。

 部屋の中に突然氷山が生まれたことにより、さらに室温が低下する。

 

 エイナは震えながら、レイを指さした。

 

「とうとうイカれたんじゃないですかあいつ」

「元からだ」

「お前らワタシ様に失礼だとは思わないのか」

 

 氷の玉座の上でレイは至極真面目な顔でそう言った。

 

「そもそも、今回の事件を鎮めてやったのはワタシ様だぞ。六波羅よりも早く、そして多くの生徒たちを地区ごと氷漬けにしてやったのだから」

「えっ、もしかして外が真冬みたいな景色なのって……」

「騎双学園の自治区はすべて、ワタシ様が凍らせた」

 

 その言葉に、エイナは六波羅を見る。

 彼は「事実だ」と言ってコーヒーを飲んだ。

 

「な、何があったんですか」

「知らねェ。が、戦っていて分かったことが三つある。まず一つ、どうやらSランクは敵という刷り込みがされているようだ。俺とレイに向かってきた生徒は全員、正義の味方みてえな面で必死に殺そうとしてきた。まるで俺たちが悪役みてェだったぜ」

 

 確かに悪役が似合う、という言葉を飲み込んでエイナは続きを促す。

 

「もう一つ、議会に連絡が繋がらねェ。学園都市のネットワークが遮断されているみてェだし、本格的にアリアンロッドが堕ちた可能性がある」

「え、それってやばいんじゃ……だって、ソルフィ姉様がいるんですよあそこ」

「そして最後はワタシ様から教えてやる! エイナよ、外に出て空を見てみるがよい!」

「あ、はい」

 

 逆らうとどうなるかわかったものではないので、エイナは従順にその言葉に従った。

 破壊された玄関を通って外へと出る。

 そしてまだ薄暗い空を見上げた。

 

「うわぁ……なんか面倒くさそう……」

 

 空を根のような何かが覆っている。

 どう見ても大事件であった。

 

「試しにレイがアレを凍結させてみたが効果はなかった。つまり、空にあるアレが本丸じゃねェってことだ」

「へぇ、大変そうですねぇ。……じゃ、私はまた眠りますね」

 

 自分に続いて外に出てきた六波羅に、猛烈に嫌な予感がしたエイナは部屋の中に戻ろうとする。

 が、六波羅に片手でひょいと抱えられた。

  

「………………もしかして、ベッドまで連れて行ってくれるんですかぁ?」

「もっといいとこに連れてってやるよォ、アリアンロッドになァ」

「で、でもでもぉ今連絡が繋がらないんですよね? なら大人しく待っていた方がいいんじゃないですか?」

「どう考えても緊急事態だろ。こんなバカみてえな仕掛けされて議会が動かねェ訳がねェ。直接乗りこんで理事長に話を聞くぞ。……まァ、いればの話だが」

「い、嫌ですぅ!」

「ならレイと留守番でもするか?」

「それも嫌ですぅ!」

「わがままだな、相変わらず」

 

 バタバタと足を動かすが、六波羅は気にすることなく氷漬けになった街へと繰り出していった。

 

 

 

 

 

 

 幼女、起床。

 

「ふわぁ」

 

 目をこすりながら、小さく伸びをする。

 そして欠伸を一つ。

 

 おはようございます。

 初手よりロリシエラにて失礼御座候。

 

「おはよう^^ ロリの姿で寝てくれて助かったよ」

 

 頬杖を突きながら、星詠みの杖君はこちらを見て笑みを浮かべていた。

 星詠みの杖君の前に設置された机には描きかけのイラストが何枚か存在している。

 

「おかげでいくつもアイデアが浮かんだ」

「この姿で新刊のアイデアが浮かぶなら、俺は喜んで協力するよ」

 

 俺がロリになっていた理由。

 それは星詠みの杖君がロリシエラ本を描きたいといったからだ。

 

 そのためにもロリの無防備な姿が見たい、寝顔をペロペロしたいという申し出があったので協力した次第である。

 当然、俺は快く快諾したし、今俺の下でベッドの代わりになっているカメ君も大賛成をしていた。

 

「おはようマイロード。良き朝だな。ところでどうだっただろうか、このカメさん型ベッドは。今回はふかふかのベッドになってみたのだが」

「ふかふかで好きー!」

「おぉ……至福である……」

 

 カメ君は砂シエラの肉体を利用して、俺の下でベッドになっていた。

 カメの形をした、ふかふかのベッドである。

 俺は幼女としてコンテンツ生産しながら快眠できる、カメ君は自分の背中の上で幼女が眠る、星詠みの杖君はロリシエラ本のアイデアを出せる。

 

 素晴らしい。

 全員が幸せな空間である。

 

 種族を超えて皆が幸せなのだから、これこそが世界平和の答えなのだろう。

 

「さて、そろそろ元に戻るとするか。今日は久しぶりにクラムちゃん辺りの脳でも焼こうかな」

「ロリシエラとクラムは流石に18禁すぎるねぇ」

「なんでロリのまま行くと思ってんだ。ほら、いいから俺の中に戻ってきなさーい」

「わぁい^^ 寝起きのロリの体に飛び込めー^^」

「マイロード、次はビニールプールになってあげるからな……!」

 

 口々にやばい思想をちらつかせながら、二人は俺の中へと吸収されていった。

 

『よし^^』

『星詠みの杖、貴様は写真を撮っていたな? 後で、くれないだろうか?』

『勿論だとも』

 

 ロリシエラ寝顔写真が堂々と俺の中で取引されていやがる。

 後で俺にも頂戴ね。

 

「さ、今日もコンテンツ生産に勤しむぞ」

 

 素敵な一日になりそう☆

 

 

 

 

 

 

 と、思っていたのに。

 

「うわあああああああん! 私、生徒会長なのに皆に嫌われたあああああああ!」

 

 トアちゃんに縋り付いて、鼻水と涙をまき散らしながら泣くリュウコちゃんがそこにいた。

 

「皆が、私を襲って……うぅ……きっと予算勝手に使ってリュウコ抱き枕カバーを作ろうとしたからだよぉおおおおおおお!」

「えっと、それは自業自得じゃないかな……?」

 

 トアちゃんの言う通りすぎる。

 

 

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