【書籍化決定】かませ役♂に憑依転生した俺はTSを諦めない   作:不破ふわる

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第274話 私のケイのどこが気に入らないのよ

 朝、俺のロリロリモーニングはリュウコちゃんのみっともない泣き顔により塗り替えられた。

 何やってんだリュウコぉ!

 

「ひっぐ……ひっぐ……皆が急に襲ってきたんだよぉ」

「そっかぁ、つらかったねー」

「本当にそう思ってる? トアちゃん本当にそう思ってくれてる?」

「………………うん、思ってるよー」

「うわぁん! 面倒くさい奴を相手にする目だあぁぁぁぁ!」

 

 トアちゃんに縋りながら泣きつく姿にはSランクの貫禄などない。

 

「あっ、ケイ君。おはよう」

「お、おはよう」

 

 トアちゃんは、俺を見て表情を明るくした。

 道連れする相手を見つけた顔で、トアちゃんは足元のリュウコちゃんを指さす。

 

「リュウコちゃん、嫌われたんだって」

「そんなにはっきり言わないでぇ……」

「ごめんごめん。良かったら、一緒に朝ご飯でも食べる? 美味しいもの食べたら元気になるかもよ」

「でも……レイちゃんにも嫌われたし……一緒のお布団で寝たくないって言われて……うぅ……」

 

 ナイーブになったリュウコちゃんは、なかなかに面倒くさい。

 調子に乗ったら乗ったで面倒くさいので、結果面倒くさい。

 

 しょうがない、ここは俺も助けてあげるとしよう。

 

「リュウコちゃん、あとで俺たちも謝罪についていくよ。大丈夫、誠心誠意謝れば許してくれるはずだ」

「うぅ……ケイ……!」

 

 リュウコちゃんが涙と鼻水で顔をぐしゃぐしゃにしながら俺へと抱き着いてきた。

 美少女のハグである。受け入れよう。

 

「あー、はいはいよしよし」

 

 俺はリュウコちゃんの頭を撫でる。

 こうして頭を撫でられる存在はありがたい。

 俺のコンテンツの一部になって貰おうねぇ^^

 

『なんだかんだリュウコに抱き着かれて満更でもない様子のソルシエラは、滋養強壮に良いとされているねぇ。普段人と関わろうとしない彼女だからこそ、こうして強引にでも関わりを持とうとしてくるキャラとの相性は抜群なんだねぇ!』

『なるほど、わからん』

 

 カメ君はどうかそのままでいてくれ。

 君までこっち側の知識を会得してしまったら、その時こそ俺たちはコンテンツモンスターになってしまう。

 夜な夜な街を彷徨い、コンテンツを生産するだけの獣に堕ちてしまう。

 

『堕ちシエラ!? えっちすぎるねぇ!』

 

 こうなる。

 こわいね。

 

「うえーん、よしよしして甘やかしてよぉ」

「あーはいはい。生徒会長頑張ってて偉いねー」

 

 リュウコちゃんだから流されかけたが、クローマの生徒に襲撃されるのは余程の事だな。

 騎双学園ならまだしもクローマの人たちはそんなに野蛮ではない。

 生徒会長になったリュウコが調子に乗ったのだろうか。

 

 それとも、都市型天使が実はいて今更原作のイベントが発生したとか?

 ま、そんなわけないわな、わはは!

 

『そんなことがあったらこのデモンズギアの祖たる私が気が付いていないわけがないねぇ! わはは!』

『マイロード、ここに天使もいるのだ。よもや、これだけの精鋭がそろって誰も気が付かないわけがあるまい。わはは!』

 

 だよね!

 普通にリュウコちゃんがやらかしただけだよね!

 そうなったら、とことんこの面倒くさいリュウコちゃんを楽しもうねぇ。

 

「はいはい、よしよし」

「うぅ……優しさが染みる……」

 

 リュウコちゃんは次第に落ち着きを取り戻してきた。

 なるほど、ソルシエラが面倒くさそうに肯定してくれる義務全肯定ボイスか。

 

『ほう、興味深いねぇ』

 

 ソルシエラにそっけない対応をされたいファンに向けた新規音声として売りだそう。

 一定の需要はあるはずだ。

 普段ではたどり着けないソルシエラの新境地、この状態のリュウコちゃんとならたどり着けるかもしれない。

 

『飽くなき向上心、感服だ』

 

 早速リュウコちゃんとわちゃわちゃしようと、改めてリュウコちゃんを見る。

 すると、その肩に見覚えのある物が乗っていた。

 

 ……うん? なぜこんなところに人呑み蛙が?

 

「ん? 何この蛙。ケイ、この蛙は何? この学園のマスコット?」

「いやこれは……」

 

 いつの間にかリュウコちゃんの肩の上に乗っていた人吞み蛙は、喉を膨らませてゲコゲコ鳴き始めた。

 すると、それに呼応するように辺りに大量の人吞み蛙が現れ始め、同じように鳴いた。

 

「えっ、ナニコレ。歓迎? 私が可愛くて強いSランク生徒会長だから、フェクトム流で歓迎してくれてるの?」

「落ち着いて聞いて欲しい。これらは、全部自律型の爆弾だ」

「………………え?」

 

 驚いたように、リュウコちゃんは俺を見る。

 そんな目で見られても、事実なのだから仕方がないだろう。

 

「ケイの言っていることは本当だよ。私がその気になれば、いつでもここを爆心地に出来る」

 

 こ、この声は……!

 

「あ、おはようクラムちゃん」

「おはようトア、ケイ。そして、初めまして渡雷リュウコさん」

 

 血走った目でしかし笑みを浮かべてクラムちゃんはそう言った。

 

『自分とは違い、自分の感情に素直になり抱き着くことが出来るリュウコに嫉妬しているんだ! なまじソルシエラの悲しみや辛さを知っている彼女は、こうして抱き着くことはできない。知っているからこそ、踏みこめないんだねぇ!』

 

 今日はクラソル専門家もお越しいただいているようだ。

 

「ところで朝から随分と騒がしいようだけれど、何か用かな。用事があるなら、私かミロクが応対するけど」

「え、あ、その……」

 

 何かを本能的に感じ取ったのか、リュウコちゃんは俺からそっと離れる。

 そして愛想笑いを浮かべながら、バルティウスを呼び出すとその陰に隠れた。

 

「すみません、調子に乗りました……。ここなら、私に優しいトアちゃんとケイがいると思って」

「ふぅん。そうなんだ」

 

 クラムちゃんは、バルティウスに物怖じせずに向かって行くと大量の人吞み蛙を生み出しながら口を開く。

 

「ちなみに、ケイとはどんな関係なのかな?」

「……え? ……あ、あー! 成程!」

 

 リュウコちゃんは何かを理解したように、さっとクラムちゃんの前に立つ。

 そして、こっそりと耳打ちした。

 

 が、俺は美少女の声は聞き洩らさないので俺の前で内緒話は出来ない。

 よって、その会話はクリアに聞こえた。

 

「わ、私は別にケイの事好きじゃないよ!」

「は? 私のケイのどこが気に入らないのよ。このトカゲ丸焼きにするぞ」

「めんどくさ……じゃなくて、勘違いだよ。私はただの友達! 」

 

 リュウコちゃんは助けを求めるようにトアちゃんをチラチラ見ながらそう言った。

 当の本人はたくさん出てきた蛙にびっくりして尻もちをついている。

 トアちゃんは可愛いねぇ^^

 

「大丈夫? トアちゃん」

「うん、ありがとうケイ君」

 

 手を差し出し、トアちゃんを起き上がらせる。

 感慨深いな。かつては触れるだけで死の可能性があった俺がこうして美少女の手を握れるようになるとは。

 

「それにしても、クラムちゃんなんか怒ってない……?」

「どうだろう。たまにクラムちゃんは行動がわからない時があるからね」

 

 俺は何も気が付いていないフリをする。

 クラムちゃんは弄ぶほど味が出るからな。

 

『そうしてついに我慢できなくなったクラムに押し倒される。もう何度見た光景かわからないねぇクラソル界隈ではもはやテンプレだよ』

 

 お前しかいないだろその界隈。

 

「けど、見たところあっちは解決したみたいだよ」

 

 俺が指をさす先には、先ほどよりも柔らかい笑顔を浮かべたクラムちゃんと、手を擦り合わせて頭をペコペコ下げているリュウコちゃんがいた。

 Sランクなのに、どうして下手に出るのが得意なんだろうあの子。

 

「ケイ、この子別に悪い子じゃないね。話せばわかる子だわ」

「そ、そうでしょ? 良ければ仲良くして欲しいな、なんて。あ、私とコラボした限定カップ麺いります?」

「いらない。ミズヒが貰ってきた分がまだ山のようにある」

「あぁ、最近やたらと食卓にカップ麺が出ると思ったらあれ貰いものだったんだ……」

「ミズヒちゃんが貰ってくれるっていうからつい在庫の七割をあげちゃった」

 

 ニコニコ笑いながら、リュウコちゃんはそう言ってサムズアップをする。

 七割が具体的にどれだけの量なのか聞くのは怖いので、知らないふりをしよう。

 

「じゃあ、皆でご飯食べよう? 私、もうお腹がペコペコなんだー」

 

 トアちゃんがそう言ってお腹を押さえる。

 いっぱい食べるトアちゃん可愛いねぇ。

 

「うん、じゃあ行こうか」

 

 そうして、美少女達(俺も含む)の優雅な朝食へと移行しようとしたその時である。

 

「た、大変っすー!」

 

 ゲートの方から、ミユメちゃんの叫ぶ声が聞こえた。

 慌てて振り返れば、ボロボロのミユメちゃんが半泣きでこちらに駆け寄ってきている。

 

「ミユメちゃん!? その傷はどうしたの!?」

「急にジルニアス学術院の皆が私を襲い始めて……うぅっ」

「そ、そんな……ミユメちゃんが……」

 

 フラフラのミユメちゃんをトアちゃんが受け止める。

 ここまで来るだけでも一苦労だったのだろう。

 

 で、ミユメちゃんをこんな目にあわせた黒幕は誰ですか?^^

 ぶち殺しますけど?

 

『ジルニアス学術院が敵に回ったと言っていたな。相棒、もしかすると、リュウコの一件は彼女の不手際ではなく、そういった事件が各地で起きているのかもしれないよ』

 

 久しぶりにまともな事言ったね君。

 だが、俺も同感だ。

 

 俺の知らないところで、美少女が悲しんでいる気配がする。

 これはコンテンツになる気がしねぇ。

 ソルシエラが世界の敵として認識改変されるなら楽しめるが、これは違う。

 俺以外の美少女が傷つくことで生まれるコンテンツなんて、心が躍らない。

 

 かわいそうは可愛いは俺が全て引き受けるぞ!

 

『素晴らしい決意だねぇ』

 

 どうせ天使か銀の黄昏の仕業なんだ。

 速攻で乗り込んで潰すぞォ!

 

 

『工程を全部無視して事件を解決しようねぇ』

『もはや我々に敵はいない。マイロード、無慈悲に、そして最高効率で敵陣を壊滅させるとしよう。まずはジルニアス学術院で原因を突き止めるのだ』

 

 そうと決まれば行動である。

 いざジルニアス学術院へと転移するために離れようとしたその時だった。

 

「ケイ君、どこに行くの?」

「え?」

 

 ミユメちゃんを抱えていたはずのトアちゃんがいつの間にか隣にいた。

 代わりにバルティウスがミユメちゃんを背に乗せている。

 

 俺が美少女の接近を感じ取れなかった……!?

 

「い、いやミロク先輩を呼ぼうかと思って」

「私がもう呼んだよ。それよりも、一緒にミユメちゃんを医務室に連れて行こう」

「あ、うん」

 

 手を握られて、俺はミユメちゃんの傍へと戻る。

 近くに人がいすぎるせいで、ソルシエラとして動くことが出来そうにない。

 

 正体を知っているクラムちゃんにアイコンタクトを取ろうとするが、トアちゃんが間にいることでそれも適わない。

 

「ミユメちゃん、医務室にミズヒちゃんを呼んだから。もう大丈夫だからね」

「心配かけてごめんなさいっす。私がもっと強かったら……」

 

 ボロボロのミユメちゃんを見ていると、早く事件を解決しなければと焦燥感に駆られてしまう。

 早く解決したいのに、現場から離れることが出来ない。

 

『もどかしいねぇ』

『焦ることはない。目の前の命を救い、それから行動しよう。タスクを一つずつクリアしていくのだ』

 

 ミユメちゃんだって、俺がソルシエラになればすぐに治せるのにぃ!

 

 ソルシエラになれないことにモヤモヤしながら、俺たちはミユメちゃんを医務室へと運んだ。

 

 

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