【書籍化決定】かませ役♂に憑依転生した俺はTSを諦めない   作:不破ふわる

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第276話 それやめろって言ってんだろ

 例え原作にない事件でもクールに解決できる。

 それがミステリアス美少女というものだ。

 

 そういう訳で、フェクトムのゲートへ向けて俺たちは移動中である。

 

『美少女でないのなら、あまり気分は乗らないが……まあ、ジルニアス学術院に行くとしようか』

『マイロード、張り切っているところ悪いが今回は第六の天使の可能性が高い。油断だけはするな』

 

 大丈夫だよカメ君。

 俺たちは最強だからね。

 のちに主人公には負けるけど、それでも強キャラとして君臨し続けるミステリアス美少女ポジションだから。

 

 こんな原作にもないイレギュラーイベントに俺が負けるわけないだろ、わはは!

 

『イレギュラーだからこそ警戒すべきでは?』

『そんなことよりも、ソルシエラとしてどうミステリアスに立ち振る舞うか考えておいた方が生産的だ^^』

 

 流石星詠みの杖君、わかっているねぇ。

 今回はジルニアス学術院でヒショウ会長を助け出すが、それが最優先事項ではない。

 

 俺の隣にいる彼女の脳を焼くことこそが本日のメインイベントである。

 ご存じ、クラムちゃんです。

 

「ひ、久しぶりに二人で任務だね」

「そうね」

 

 俺は既にソルシエラモードである。

 ゲートを出たらすぐにいつものゴスロリに変身しようねぇ。

 

「あら、緊張しているの? 安心しなさいクラム。貴女は自分が思っているよりも優秀なのだから」

「!? ……そっか、えへへ」

 

 もう幼馴染には顔向けできないほどの変態となった彼女ですが、今回は久しぶりの同行となります。

 

『脳みそぐちゃぐちゃレベルはソウゴと同等かそれ以上だろうねぇ』

『そうなのか? マイロード、私は彼女との関わりをあまり知らない……』

 

 確かに、カメ君が中にいるときはあまりクラムちゃん相手に美少女コンテンツを生産していなかったな。

 

 彼女はとても良い子だよ^^

 俺のことを押し倒したり、エッチ探知ッチを取り付けたりしようとしたけどね。

 

『おおよそ理解した』

 

 そして、一番初めにロリシエラを堪能した一人でもある。

 熱でうなされたロリシエラを看病するという年に一度あるかないかの神イベントに遭遇出来た幸運な子だ。

 

『看病!?!?!?! マイロード、私は既に冷静さを欠いたぞ……! 我が娘の一大事に私が駆け付けられないとは』

『その時はまだ敵だったし、そもそも原因君だしねぇ』

 

 君の毒と美少女コンテンツが反応して、それはもう大変だったんだから。

 

『自爆します』

 

 カメさん死んじゃやだー!

 

『自爆中止』

 

 判断までに過程がなさすぎる。 

 危うく貴重な友をなくすところだった。

 

「ねえ、本当に私たち二人だけでいいの? さっきトアに言ったように、ヒカリも連れていけるけど」

「確かに、荒事なら頼もしいけれど今回はあくまで救出作戦。私と貴女の二人の方が動きやすいわ。それとも……私と二人きりは嫌かしら」

「嫌じゃない! ほんっとうに! 嫌じゃないよ!」

「そ、そう」

 

 熱意に思わず俺は引いてしまった。

 彼女の眼が、据え膳を前にした人間と同じだったのだ。

 それすなわち、捕食者の目である。

 

「むしろ、貴女と一緒の時間が最近少なすぎてどうにかなりそうだった。なぜか貴女のところに行こうとすると邪魔が入るんだよね。呪われているのかな……」

「ふふっ、なら今日は貴女のために時間を使ってあげるわ。事件が解決したら、そうねぇ……デートでもしましょうか? なんて」

「……え」

 

 クラムちゃんが固まってしまった。

 俺は足を止めて、くすりと笑う。

 妖しくそして、エチエチな笑みである。

 

「どうしたの? ほら、早く行きましょう」

「あ、え、あ、うぅ……うん」

 

 何を想像しているのか、顔を赤くしながらクラムちゃんは何度も頷く。

 そして、俺の横へ来ると再び歩き出した。

 

「綺麗なウェディングドレス着ようね……!」

「飛躍しすぎよ貴女」

 

 ウェディングソルシエラは未実装です。

 

 

 

 

 

 

 ゲート前へと来た俺たちは足を止めて、改めて作戦を確認する。

 

「ゲートを出てすぐ、私はソルシエラとしての力を解放するわ。そして、ジルニアス学術院の中でも人がいない場所へと転移する」

「そこからはマーちゃんズで索敵しながら、安全に移動。もしもヒショウ会長を救い出せるなら、再び転移で安全に確保。だね」

「貴女のその蛙さんは作戦の要と言っても過言ではないわ。さ、行きましょうか」

「蛙さん呼び可愛い……」

 

 ぼそっとクラムちゃんが漏らした言葉を聞き逃さなかった。

 が、あえて俺はスルーさせてもらう。

 それは、君のために用意したソルシエラコンテンツだからね。しっかり咀嚼してね^^

 

 俺たちはゲートをくぐる。

 そして、すぐにその異変に気が付いた。

 

 青く澄み渡っているはずだった空は、根のような何かにより覆われている。

 まるで朝を否定するかのように、無理やり暗闇が作り上げられていた。

 

「……これは、少し面倒なことになったみたいね。銀の黄昏が本格的に動き出したみたい(適当)」

 

 俺は適当にそう呟く。

 ミステリアス美少女はすぐに黒幕の察しが付くものだからね。

 

 というか、これだけの規模の事件ってどうせ銀の黄昏だろ。

 

「なにこの空……!」

 

 クラムちゃんも空を見上げたまま驚いて固まっている。

 目を見開き空を眺める彼女は、やがて呟くように言った。

 

「……あ、何か、おか、し、い」

「クラム?」

 

 突然、クラムちゃんがこちらを向く。

 その目は、凄まじい憎悪と敵意に満ちていた。

 

「マーちゃんズ」

 

 俺たちの周囲に人吞み蛙が展開される。

 一匹でダンジョン主を葬れるだけの威力を秘めた自律式の機械人形は今まさに俺を捉えていた。

 

 つまり、美少女に本気で敵対されたのだ。

 悲しみ……。

 

『なんだこの魔力低下!? 相棒、少し凹みすぎじゃないか!?』

『おお可哀そうなマイロード。私が後でよしよししてあげよう……!』

 

 先ほどまで楽しくお話していた筈なのに、いつの間にかクラムちゃんが敵意マシマシでこちらを睨んでいる。

 

「ソルシエラ、お前はここで殺さないとね。例え私の命に代えても、黒焦げにしてやる! マーちゃんズ!」

 

 クラムちゃんの号令で一斉に人吞み蛙が俺へと飛び掛かる。

 そして、近くまで来た個体から一斉に大きな爆発を起こした。

 

『防御^^』

 

 星詠みの杖君のおかげで、当然俺は無傷である。

 心に傷を負ってはいるんですけどね。

 

「まあ、Sランクをこの程度で殺せるなんて思っていないよ!」

 

 黒煙を切り裂くように、クラムちゃんが姿を現す。

 手足についた人吞み蛙が爆発を起こし、直線的に加速し続けるクラムちゃんはその拳を俺へと放ってきた。

 

 なんで……なんで、俺を攻撃するの……。

 

『恐ろしいほどに魔力が低下していくねぇ。相棒大丈夫かい?』

 

 大丈夫に見えるか?

 

 あらかじめそういう風に立ち回って敵になるなら良い。

 けれど、普通に美少女に嫌われるのは……悲しい。

 

 揶揄いすぎたかな……普通に体を差し出していればこうはならなかったのかな。 

 待てが長すぎて、嫌いになっちゃった?

 

『マイロード、安心すると良い。これは一種の改変能力によるものだ。解析の結果、空に張った根に天使の力を感じた。ほかにもいろいろと混ざっているようだが、天使の仕業とみて間違いないだろう』

 

 カメくーーん!

 信じていたよぉ!

 クラムちゃんに普通に嫌われただけだったらどうしようかと思ったよ。

 

『マイロードを嫌う子がいるわけないだろう。というか、星詠みの杖も気が付いていたのではないか?』

『何のことかな^^ 別に、相棒が弱っていく様を見て楽しんでいたわけじゃないよ^^』

 

 貴様ァ!

 

『怒らずとも、すぐに教えるつもりだったさ。だが、あまりにも可愛くてつい^^』

 

 星詠みの杖君への罰は後で考えるとしよう。

 さて、天使の仕業だというのなら気持ちも切り替えられる。

 

 つまり、これは洗脳されソルシエラを攻撃してしまったクラムちゃんを楽しむコンテンツだな!

 

『なんだこの魔力量』

『元気が一番だ』

 

 カメ君、この洗脳が解ける条件を教えてくれ。

 そこからルートを逆算してミステリアス美少女として振る舞うッ!

 

『根がある限りは完全な洗脳の解除は不可能だ。根で辺りを包むことにより、学園都市を疑似的なダンジョンとしているらしい。強力なダンジョンの中では独自の法則が働く。クラムの言動から察するに『Sランクを敵と認識する』だろうか。ミユメやリュウコの話も同様の事例だと仮定すると、まだ条件はありそうだ。が、いずれにせよ、ダンジョンであるならば主がいて、コアがある。まずはそれらの破壊だ。そうすれば、ジルニアス学術院に行かずとも事件が解決できる可能性が高い』

 

 成程。

 つまり、ここでクラムちゃんを正気に戻すことは不可能ってことだね。

 

『ああ。だが、フェクトムでは正気を保てていたことから考えて、あそこに戻れば元に戻る可能性は高い』

 

 成程。

 なら、少し遊んで拘束してやりましょ。

 

 そしてフェクトムに連れ戻して、正気を取り戻したクラムちゃんに今度は一人で行くと告げるんだ……。

 

『ソルシエラの力になれると喜んだのもつかの間、まさか自分がソルシエラを襲ってしまうとは。そうして自己嫌悪に陥ったクラムを見て、ソルシエラは優しく彼女を抱きしめる』

 

 そして背後から囁くんだ。

 

 ――貴女が理解者でいてくれる。それだけで、私は救われているのよ。

 

 ソルシエラは初めてここでクラムに自分の思っていたことを吐露するんだね!

 

『うおおおおおおおおお!』

 

 うおおおおおおおおお!

 

『うるさいぞ』

 

 すまない!

 だが、やる気が出た!

 

 ここからは、全力でミステリアス美少女をさせて貰おう!

 

「ふふっ、そういえば貴女と踊ったことはなかったわね」

 

 俺は大鎌を取り出して、クラムちゃんの攻撃を避けながら笑う。

 爆風をかわし、爆炎を避け、そしてクラムちゃんの蹴りを片手で軽く受け止める。

 自分の頭部側面へと迫った蹴りを、まるでシルクのハンカチを掴むように優しい手つきで受け止める姿は見紛うことなきミステリアス美少女であった。

 

「っ、流石に強い。けど、ここで殺さないと!」

「意気込みだけは一人前ね」

 

 踊るように攻撃を避けながらも、俺は攻撃を一切しない。

 タイミングを見計らって、鎖で拘束してしまおう。

 

 ソルシエラは一度も武器を振るうことなくクラムちゃんを完封しなければならないからね。

 

『鎖、用意完了^^ いつでも拘束できるよ』

 

 よーし、狙って狙って。

 クラムちゃんの拳が俺の顔に当たるギリギリで拘束して、クールにこの戦いを終わらせるよー!

 

 回避を続ける俺へと、クラムちゃんが再び迫る。

 爆破を背に受けて加速したクラムちゃんは、俺へとその拳を向け、そして。

 

 ――()()()によって拘束された。

 

 こ、この鎖は!

 

「相変わらず、仲間思いだねぇソルシエラ」

 

 頭上から声が聞こえた。

 見上げれば、街灯の上に一つの黒い影が見える。

 

 頭から黒いフードを被り、闇に溶けてしまいそうな風貌の少女。

 その姿を俺は知っていた。

 

「のぞき見なんて、趣味が悪いわね。ネームレス」

「せっかく助けてあげたのに、そんなこと言わないでよぉ。どうせ、クラムちゃんに手出しできなかったくせに。拘束するのすら渋るのは予想外だったけどね」

 

 そう言ってネームレスは地上へと降り立った。

 

『ネームレス、一体何者なんだ……!』

 

 それやめろって言ってんだろ。

 

 

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