【書籍化決定】かませ役♂に憑依転生した俺はTSを諦めない   作:不破ふわる

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第281話 時間を返して欲しい

 クラムちゃんとの共依存コンテンツを生み出すことはできなかった。

 これから数十年は悲劇としてこの国に語り継がれることになるだろう。

 

『君の国どうなってんだ』

 

 が、しかしヒカリちゃんとの幼馴染的やり取りを見ることは出来た。

 クラムちゃんの事を知っているからこそ、強引に手を引いていくヒカリちゃんはその名の通り光属性である。

 あのやり取りは、数百年はヒカクラ神話として語り継がれることになるだろう。

 

『……まあ、楽しそうなら良いさ。それよりも、やはりミロクは気が付いていたようだねぇ。さてこういう時ソルシエラはどうするのかな?』

 

 ははは、驚いたけど想定内だよ。

 ミロク先輩ほどの賢い美少女が俺の正体に気が付かない方がおかしい。

 

 ミロク先輩には、後々大々的に俺の正体がバレたときに「やはりそうだったのですね……」と言ってもらう重要な役割をあげようね。

 

『勝手に役割を押し付けられる身にもなってくれ』

 

 だがね星詠みの杖君、考えても見てほしい。

 君を最初に覚醒させたとき、俺はミロク先輩を救おうとしていたんだよ?

 第二形態をお披露目した時は、誰を助けるために六波羅さんと戦っていたかな?

 そう。ミロク先輩とソルシエラは最初から繋がりがあるんだ。

 

 そしてミロク先輩が気が付いているならば、そろそろ動く時かもしれないね。

 

『何をする気だマイロード。危ないことは駄目だぞ』

 

 今から俺はッ!

 囚われのミステリアス美少女になるッ!

 負けに行くぞッ! 全力でッ!

 

『また気が狂ったか』

『おぉ、マイロード……。誰も怒りはしないからゆっくり眠るのだ。どうやら疲れているらしい』

 

 ソルシエラはね、最後には人の温かさに触れなければいけないんだ。

 今まで誰にも頼ることなく戦い続けてきた孤高の星。

 その強さで多くの事件を解決してきたことだろう。

 もしかしたら、俺たちの知らないところでも裏の組織と戦って、何度も壊滅させているかもしれない。

 

『自分とソルシエラをもう完全に切り離してコンテンツとして楽しんでいる……?』

 

 どれだけ強くても、一人では限界が来る。

 美少女は孤独ではいけないんだ。

 ソルシエラとして美少女として生きていくならば、俺は本当の意味でフェクトムの仲間になる必要があるだろう。

 

 那滝ケイではなく、ソルシエラとして受け入れられなければソルシエラの物語は完成しない。

 

『だから、わざと負けると?』

 

 丁度おあつらえ向きの規模の事件だ。

 ソルシエラほどの強キャラが負けるならば説得力がいるのだよ。

 その辺のモブに負けるソルシエラなんてありえないんだ。

 

『モブソル……!?』

 

 あり得ないって言ったばかりなんだけどねぇ。

 

『確かに規模としては大きいだろう。第六の天使がかかわっているならば、ソルシエラが負けるとしても……いや、やっぱり駄目だマイロード! どう考えても()()()()()()()()()()()()!』

 

 わかっているよカメ君。

 俺も空を見たとき感覚で理解したよ、これはまた容易く解決できるなって。

 

『その気になれば双星形態で破壊できるからねぇ』

『鎧星形態で学園都市全てに死の音を届けても良い。力を調節して、あの根だけを破壊するのだ』

 

 あまりにも二人が頼もしすぎる。

 なんでこの規模なのに解決策が二つもあるんだよ。

 

 でもだからこそ、安全にとらわれることが出来るんですね^^

 あー、根に絡めとられて吊るされてぇ^^

 

『随分と興奮しているようだねぇ。縛られるのが好きなのかな^^ そうなら早く言ってくれれば良かったのに^^』

 

 言ってないです。

 

 囚われたソルシエラを助けるために美少女達が来てくださるのだ。

 その光景を想像すると、昂ぶってこないか?

 

 その時こそ、俺も美少女になれるのだろう。

 まあ、体はまだあと数か月先まで可変式であることに変わりはないのだがね。

 

『そのためにミステリアス美少女の肩書を捨てることになるとしても、負けるのかい?』

 

 ああ、そうだ。

 今回はバッドエンドじゃないからね。

 バッドエンドなら孤独に戦い続けるのも良いだろう。

 

 が、今回はグランドルート。

 ソルシエラが一人の少女として笑顔を浮かべてフェクトムの面々に駆け寄るスチルで終わりを迎えるのだ。

 ミステリアス美少女から普通の少女に戻ったソルシエラはさぞ美しい事だろう。

 そしてそこからは過去がお辛い美少女コンテンツとして摂取することが出来る。

 

 ミステリアス美少女は、二度美味しいコンテンツなのだ。

 

『君がそう言うのならば仕方がない。ソルシエラとして、美しく敗北しようねぇ』

 

 けれど、助けに来てくれる美少女達に怪我をさせてはいけない。

 俺達で解決寸前にしてあげよう。

 捕まった後に内部へエネルギーを送って崩壊させ、敵のHPを1にするのだ。

 

『干渉して全てをこちらの管理下に置こうねぇ^^』

 

 ははは、まさか敵も自ら負けに来るとは思うまい。

 

 さて、これより『星詠み奪還作戦準備作戦』を開始するッ!

 

『ややこしいな』

 

 が、その前にまずはヒショウ会長を助けるぞ!

 俺の私情よりも原作キャラ様の身の安全だ!

 

 ジルニアス学術院へ、跳ぶぞ!

 

『わぁい^^』

 

 あ、すみません。転移はちょっと待ってね。

 やっておかなければならないことがあるから。

 

『え?』

『まだ何かあるのかマイロード』

 

 

 

 

 

 

 誰もいなくなった自室で、ケイは目を覚ました。

 

「――ここは」

 

 数秒、ぼうっと天井を眺めていた彼女だったがやがて、何かを思い出したように起き上がる。

 そして誰もいないことを確認してベッドから抜け出した。

 

「……皆、ごめんなさい」

 

 消え入りそうな声で、ケイは確かにそう言った。

 瞬間、その姿はソルシエラへと変化する。

 

 その手に大鎌を持ち、ソルシエラは転移魔法を発動させようとして――。

 

「っ……!」

 

 手が震え、大鎌が落下する。

 ソルシエラは荒い呼吸で胸を押さえながら、その場にうずくまった。

 

「はぁっ、はぁっ、はぁっ」

 

 重病患者のように浅い呼吸を繰り替えす。

 それも数十秒もすれば、収まってきたようだ。

 

 ソルシエラは大鎌を拾い上げようと手を伸ばす。

 そして動きを止めた。

 

 つい先程まで誰かが握っていたのだろうか。

 手の中に確かに感触が残っていた。

 

「……」

 

 そのことを理解したソルシエラは、一度酷く泣きそうな顔をしたがすぐにいつもの様な笑みを浮かべる。

 挑戦的で蠱惑的。

 最強であり続ける者の笑みを張り付けて、ソルシエラは今度こそ転移魔法陣を起動させた。

 

 目の前に、大きな魔法陣が浮かび上がる。

 

「……私は星詠み」

 

 言い聞かせるようにそう呟く。

 一歩踏み出すことに躊躇いはなかった。

 

 やがて、その姿が魔法陣の中へと消えていく。

 

 主が去った後の部屋で、カーテンだけが踊るように揺れていた。

 

 

 

 

 

 

 満足しました。

 

『時間を返して欲しい』

『苦しいのかマイロード!? 大丈夫か!? 動けるようになるまで安静にしていて良いのだぞ!?』

 

 いやいや、大丈夫だよ。

 

『強がりなのだろう。知っているぞ!』

 

 やばい。カメ君の変なスイッチ押しちゃった。

 

『自業自得だねぇ』

 

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