【書籍化決定】かませ役♂に憑依転生した俺はTSを諦めない   作:不破ふわる

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第282話 魔法陣があった方がカッコいいからだよ

 苦しみを隠して立ち上がるミステリアス美少女をした後、俺はジルニアス学術院へと到着した。

 

 ジルニアス学術院の一番高い建物の上にクールに降り立つ。

 空は相変わらず謎の根に覆われており、ジルニアス学術院のいたるところで戦闘の痕が見受けられた。

 おそらく、ミユメちゃんやヒショウ会長が逃げまわった際に出来たものだろう。

 

「さて、それじゃあ始めましょうか」

 

 俺は誰に言うでもなくそう呟く。

 そして足元にカッコいいだけの魔法陣を展開した。

 

 ヒショウ会長の探索を頼むぞ二人とも!

 

『えぇ……』

『なぜ魔法陣を無駄に展開させたのだマイロード。魔力を探知されてしまう可能性もあるのだぞ』

 

 魔法陣があった方がカッコいいからだよ。

 

 俺はミステリアス美少女なんだ。

 一挙手一投足がかっこよくなければならない。

 

『一理あるねぇ』

『ないと思うが……わかった、では探知しよう』

 

 ありがとう!

 

『ちなみにヒショウ会長はどれほどの幼さなのだ?』

 

 いや、幼くないよ?

 ここの生徒会長だからね、あの人。

 一度会っているでしょ、那滝家で。

 

『? 幼い波動以外を広範囲で探知するのは難しいのでは?』

 

 駄目だこの海洋生物、スキルツリーがロリ方面に伸びすぎている。

 

『というか、幼き命が学園を統治すべきではないだろうか? フェクトムも、マイロードが統治するべきだ。それか、蒼星ミロクを幼くするのか、二つに一つだマイロード』

 

 一方的に都合の良い二択を迫らないでくれ。

 だが、ロリミロク先輩か……。小さくなってもお姉ちゃんムーブをするミロク先輩は見たいかもしれない。

 

 ……よし^^ 全てが解決したらフェクトムの全員がロリになるイベントをやろう。

 ソルシエラ含めて、全員ロリのお祭りだ。

 

『おぉ……祭日であるか。実に素晴らしい!』

『なら催淫のイベントもあって然るべきでは?』

 

 全年齢対象版なので駄目です。

 そんなエッチなイベントはありません。

 

『ロリコンばかり贔屓される間違った社会構造を変えたい』

『ロリコンではなく、幼き命を愛していると言ってくれ。お前とは違うのだ』

 

 俺からすればどっちもやばいけどね。

 ブレーキ役の俺がいないと何をしでかすのかわからねえよ。

 

『マイロード、申し訳ないが貴女はブレーキではない』

『アクセルの権化だねぇ』

 

 不当な評価すぎるだろ。

 

 俺を揶揄う暇があるならさっさと探知をしろぉ!

 

『もう終わっているよ^^ 座標も固定したし、ここから転移で跳べる』

 

 素晴らしい。

 だが、直接目の前に降り立つのは駄目だからね?

 

『わかっているとも。ヒショウの少し上に転移しようねぇ。 クールに上から登場だ』

『……待て、それだとマイロードのカメさんパンツが見えてしまうぞ!』

 

 そんなパンツ履いたことねえよ。

 それに、見えないように工夫するに決まってんだろ。

 

 うーん……足組んで座って登場しちゃおうかな^^

 足が自慢ですからね、ソルシエラは。

 

『毎晩マッサージして手入れしている甲斐があるねぇ』

 

 え? そんな事していないけど。

 しなくても美少女粒子で常にベストコンディションを保てているんだが?

 

『……そうだったね^^』

 

 おい、夜中勝手に何かしてないだろうな。

 

『^^』

 

 笑ってんじゃねえぞ。

 

『じゃ、跳びまーす』

 

 無視するんじゃねえよ!

 

 

 

 

 

 

 多くのビルが立ち並ぶジルニアス学術院中央区の大通り。

 本校舎へと続くこの道は、いつもならば生徒たちが登校する光景が見られるだろう。

 が今だけは違った。

 

 ビルが一部倒壊し、アスファルトは所々が捲れあがっている。

 何よりも目を引くのは、ビルによりかかるようにして機能を停止した巨大な人型ロボットであった。

 

「はっはっはっはっは! つまり俺はピンチという訳だな!」

 

 ロボの肩の上でヒショウは高らかに笑っていた。

 爆発に巻き込まれたのか、全身が煤にまみれ、髪は焦げ付いている。

 

 それでも笑うのは、この状況でも希望があると信じているからだ。

 

「流石に一人だとキングジルニアースのエネルギーが尽きるのも早いか……! イルーグも取り外しができない」

 

 ヒショウの唯一の武器である自律型武装GM01イルーグはキングジルニアースへと合体したまま、動けなくなっている。

 戦闘向きではない異能を持つヒショウは、今丸腰と言っていいだろう。

 

 そんなヒショウに対して、彼を取り囲むように武器を構える生徒たち。

 それぞれが、まだ世に出回っていない最新鋭の兵器を持っているその光景は、どう見てもヒショウの敗北を示していた。

 

 が、ヒショウは諦めていない。

 

(ミユメ君が必ず助けを呼んでくれるだろう! それに、ここを切り抜けさえすれば、生徒会室に保管してある彼女を目覚めさせて――)

 

 細い糸を手繰り寄せるように、ヒショウは次の一手を構築していく。

 そして、頷くと叫んだ。

 

「ここからは、俺のヒラメキカラテでお相手しよう! 統計学に基づいた完璧な近接格闘術で全員倒して見せるさ! トゥアッ!」

 

 ヒショウはロボの肩の上でポーズをとると、跳躍する。

 無駄な回転とひねりを加えて、空中で生徒たちの銃弾を完全に回避するとそのまま地面へと着地した。

 

「行くぞッ! お前達のヒラメキを呼び覚ましてやるッ!」

 

 そう言って近くにいた生徒に殴りかかろうとしたその時だ。

 

「――賢いのか馬鹿なのかわからないわね、貴方」

 

 辺りにいた生徒たちが一瞬にして銀の鎖に拘束される。

 突然のことに反応することもできず、その場にいた数百の生徒が無力化された。

 

「ッ!? この銀の鎖……まさかッ!」

 

 ヒショウは声のした方を見上げる。

 そこには、ビルの屋上に腰を下ろすソルシエラの姿があった。

 

 足を組み、こちらを見下ろすその姿はまるで女王のように見える。

 否、事実そうなのだろう。

 

 この場は、既にソルシエラによって支配されていた。

 

「ソルシエラッ! まさか会えるとは思っていなかったぞ! 俺を助けてくれたのだな、感謝するッ!」

「暑苦しい男は嫌いよ」

 

 頭を下げるヒショウを見下ろしながら、ソルシエラはうんざりしたように言う。

 

「そうか! だが、俺は君の事が好きだ! ……今のは友人として好ましいという意味だ! 勘違いされては困るな!」

「勝手に話を進めないで頂戴」

「残念だが俺には幼い頃に結婚を誓い合った子がいるのだ! だから、すまない!」

 

 突然、ヒショウの体に銀の鎖が巻き付けられる。

 そして宙づりになった彼の前に降り立ち、ソルシエラはため息をつきながら言った。

 

「勝手に勘違いをしないでくれるかしら。……やっぱり、助けるんじゃなかったわね」

「すまない、勘違いをしていた。もう大丈夫だから降ろしてくれ。……本当だ、信じてくれ」

 

 疑いの目を向けながらも、ソルシエラは呆れた様子でヒショウを降ろした。

 

「それで、どうしてここに君がいるのか聞いても良いか?」

「……途中で貴方の知り合いだという子に会ったのよ。必死な顔でお願いされたものだから、断ったら私が悪人になるところだったわ」

「ミユメ君か……そうか。彼女は無事か?」

「さあ、どうかしらね。フェクトムまでは戻ったようだけれど、その後は知らないわ」

「大丈夫だ、あそこには頼れる仲間がいるとミユメ君は言っていた。たどり着いたのならもう安心だろう」

「……そう、仲間ね」

 

 ソルシエラは一瞬、目を伏せる。

 が、すぐにヒショウへと目を向けた。

 

「ここに来たのは、貴方を助けるのが目的ではないわ。それはあくまで、ついで。本当の目的は別にある」

「本当の目的?」

 

 ヒショウが首を傾げると、ソルシエラはフッと笑みを浮かべた。

 

「ジルニアス学術院の生徒会長さんなら、当然思いつくと思ったのだけれど」

「……まさか、GM00()()()()()()か!?」

「……………………そうよ。流石に分かっているみたいね」

「確かに、アレは君の力を模倣したものだ。俺とミユメ君の合作にして最高傑作」

 

 それは、生徒会のメンバーにすら教えていない極秘に開発された最強武装の名前であった。

 ミユメが考案した、ソルシエラの力をもとに他の異能を再現する特殊な武装はつい先日完成したばかりである。

 驚くべきことに、ソルシエラは既に存在を知っていたのだ。

 

(俺に近しい所に、ソルシエラの手の者がいるのか……? いや、今はそんなことを考えている場合ではないな)

 

「エックスギアに何のようだ」

「………………あれは、人には過ぎた力よ。星詠みとして、回収する」

「それは駄目だ。まだ稼働テストをしていない。それに、アレが量産できれば、本土の汚染地帯に人々が再び住むことが可能になる」

「それは人の都合よ。星は、人の手の中にあるべきではないわ」

 

 そう言うと、ソルシエラは大鎌をヒショウへと向けた。

 しかし、ヒショウは怯えることなく真正面からソルシエラを睨み返す。

 

 数秒、にらみ合った彼女達だったが、やがてヒショウが絞り出すように言った。

 

「………わかった。ならば、交換条件だ」

「貴方の度胸に免じて聞いてあげる、言ってみなさい」

「俺を生徒会室まで連れて行って欲しい。ジルニアス学術院だけなら、すぐに正常に戻す方法がある。この学院の皆を救えるなら、エックスギアを差しだそう」

 

 ソルシエラは少し考えた様子だったが「いいわ」と頷いた。

 

「なら行きましょうか」

 

 ソルシエラは転移魔方陣を展開する。

 その光景を目を輝かせて見ていたヒショウだったが、何かを思い出したように手を挙げた

 

「待ってくれ! 生徒会室は今、転移魔法が無効になっている。俺も転移を試みたが不可能だった! 真正面から、生徒会室に向かう必要がある!」

「そう」

「すまない、だからここからは二人で徒歩で向かうことになるだろう! 一時的ではあるが仲間だな!」

「貴方みたいな暑苦しい人間が仲間なんてごめんだわ」

 

 そう言うとソルシエラは大鎌を拡張領域にしまい込んで、謳うように言った。

 

「――星詠みはここに反転する」

 

 瞬間、銀色の魔法陣がソルシエラの足元へと展開する。

 それは、足元から上昇をはじめ、彼女の体を小さくしていった。

 

 幼い体躯へと変化したソルシエラの背後、地面から飛沫を上げてウミガメのような怪物が現れる。

 流線型の体を持つ、機械のようなウミガメは自身の甲羅の一部を分離させた。

 銀色に輝く四つの破片が、まるで衛星のようにソルシエラの周りを周回し始める。

 

 その姿を見て、ヒショウは唖然としながらもなんとか言葉を紡いだ。

 

「クローマで見せた、新たな姿……!」

「鎧星形態、私はそう呼んでいるわ。この姿なら、わざわざ地上を歩く必要はない」

 

 そう言ってソルシエラはヒショウの手を引く。

 そして地面へと潜った。

 

「なっ、これは!? ルルイカに似た能力か!」

「世界の位相をずらしたわ。ここなら、攻撃される心配もないでしょう」

 

 まるで海に沈んだかのように落ちていく体が、ウミガメの甲羅に受け止められる。

 ソルシエラは慣れているのか、その甲羅の上に降り立ち既に前を向いていた。

 

「それじゃあ、行きましょう」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『エックスギアって……なんだ?』

『わからないねぇ』

『マイロード、本来ここは幼き命専用なのだが? 次は乗せないからな?』

『カメさん、ごめんなさい。今だけはゆるして……だめ?』

『いつでも乗せていいぞマイロード!』

『変わり身が早いねぇ』

 

 

 

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