【書籍化決定】かませ役♂に憑依転生した俺はTSを諦めない   作:不破ふわる

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第304話 私のデータにないねぇ!

 あわわ……。

 

『あわわ……』

『おぉ……なんと凄まじき力だろうか……』

 

 エイナちゃんを庇って講師の攻撃を受けるプランを組んでいたら、まさかエイナちゃん本人がどうにかなってしまうとは。

 というか講師なんなんだよアイツ。

 ずっと隙あらばエイナを攻撃しようとするし。

 

『マイロードがエイナを庇うのは既に理解しているのだろう。故に、ソルシエラ本人ではなくエイナを狙った方が隙が出来る。合理的である』

 

 くそ、こうなったら双星形態になって一旦全員ぼこぼこにしてお茶を濁すか……?

 星詠みの杖君、どう思う!

 

『はわわわ……エイナがあんな状態になるなんて、私のデータにないねぇ!』

 

 データキャラやめちまえ!

 

『マイロード、星詠みの杖、早急に判断し対処しないと取り返しのつかないことになるぞ。私にもわかるのだから、星詠みの杖の方が良く理解しているのだろう。アレは今までのエイナではない』

『ああ、そうだ。本来であれば、すぐにでも星詠みとして対処しなければならない存在になってしまっている。いや、それ以上か……? さっさと機能を停止してしまうのが手っ取り早いのだが……』

 

 そ、そんなのは駄目だよ!

 エイナちゃんにどうにか正気に戻って貰うんだ!

 

『うーん、しかしねぇ。そもそもこの……何……? どういう状態……?』

 

 星詠みの杖君でわからないのに俺にわかると思うなよ。

 こっちはあくまで全知っぽく振る舞っているだけなんだから。

 

『無知無知の赤ちゃんだもんね^^』

 

 今回は君も同じレベルだけどね!

 

「――さて、ソルシエラ。こうなってしまったら君はどうするのかな。見たところ、エイナは一種の暴走状態にあるようだが。……いや、それは無粋な言い方か。彼女は至ったのだ、一つの完成形に」

「これが完成形……? だとしたら、貴女はどうしようもない程にセンスがないのね」

「ははは、それはどうも。……おっと」

 

 笑う講師へと、エイナちゃんが矢を放った。

 

 今までよりもさらに赤くなった矢が、講師へと迫る。

 が、講師は今まで通り何も抵抗することなく矢を受け入れた。

 

「次は上手く当てられるかな?」

 

 またすり抜けかよ、チートも大概にしろ!

 

『エイナの矢が当たる瞬間に実体を与えようにもタイミングが難しいねぇ』

 

 放たれた矢の行く末を俺たちは見守ることしか出来なかった。

 矢は講師の体の中心へと吸い込まれるように体の中へと入り、そしてすり抜けて背中から飛び出していく。

 

 その光景は、今まで見たものと変わりがない。

 エイナちゃんがどれだけ強くなろうとも、講師を相手にするのは難しいようだ。

 

「おっとまたすり抜けて――ぁっが!?」

 

 今まで余裕そうに笑みを浮かべていた講師が途端にその場に片膝をつく。

 演技には到底見えない。

 講師は苦しむように胸を押さえながら、エイナを見つめていた。

 

「まさか、当てることすら必要ないとは恐れ入ったよ。っぐぁ……はぁっ、はぁっ、魂に直接接続してくるとは……」

 

 講師は苦しそうに顔を歪ませている。

 その時、俺の眼が講師の中の何かが削れたのを確認した。

 

 美少女の輝きとは違う、講師の中にあるアレは銘だろうか?

 

『………おい、まさかアレは』

『ああ、やはり気が付いたか星詠みの杖』

 

 俺の頭の中で二人だけが訳知りな感じで会話をしている。

 置いてけぼり感が凄いのでやめて欲しい。

 

 説明してくれ、星詠みの杖君。

 

『デモンズギアとは、女王の棺の権能を分割し使いやすくしたものだ。中でも大半の権能を受け継ぎ、全ての統率者兼裁定者となったのが星詠である私。そして、厄災に特に有効とされた6つの権能がそれぞれデモンズギアとして選ばれた。理論上は、最終的に全デモンズギアが女王の棺に至る事が可能なんだ』

 

 ???????

 

『どんな低レアキャラでも育成すれば人権SSRになるぞ!』

 

 なるほど!

 

『だが、あくまで理論上は可能であるというだけだ。デモンズギアに少女の肉体を与えたのは、セーフティの意味が強い。せっかく人が扱えるように女王の棺をデモンズギアという形で分割したのに、成長してまた女王の棺になってしまったら扱えなくなってしまう。それでは本末転倒だ。だからこそ、デモンズギアは絶対に完成しない。故に、彼女らは完成体ではなく成功体なのだよ』

『大丈夫だろうかマイロード。難しい時は手を挙げて質問するのだ』

 

 はいはーい! つまりエイナちゃんが新たな女王の棺になりかけているってことですよね!

 これってどうすればいいんですか先生。

 

『私にもわからない』

 

 先生?

 

『本当に申し訳ない』

 

 先生!?

 

『だってこうなる前に他のデモンズギアか私が止めるからねぇ! なってしまったらもう破壊するしかないんじゃないかな?』

 

 エイナちゃんの破壊なんて出来るわけないだろ!

 

「見てくれソルシエラ。エイナはどうやら、相手の感情の吸収と操作を一方的に行えるようになった。条件は、矢に当たる事ではない。その矢に近づいただけでも効果を発揮する。必中の力がこうも変化するか……! 精々君も気を付けると良い。銘を持つ者は、感情こそが生命線。どれだけ肉体が頑強であろうとも、世界を統べるだけの力を持っていようとも、銘に背けば死ぬ。私であれば、興味のある事柄への歓喜を失えば死ぬし、君ならば博愛の心をなくせば死ぬ」

「聞いてもない事をご丁寧にどうも。要するに、貴女の天敵って事ね」

「私達の、の間違いだろう? 銘を持つ者同士、この場を生き残る方法を考えようではないか」

「お断りよ、急にすり寄ってこないで気持ち悪い。私一人で充分よ」

 

 俺は大鎌を構えてエイナの方を向く。

 この子の保護者は一体どこにいるんだ……。

 まだベッドの上なのかな……?

 

『もう六波羅でどうにかなる問題じゃないよ。相棒、ここはいったんエイナをボコボコにするしかない』

 

 くっ、やるしかないのか……!

 

「エイナ、そこまで私と遊びたいのなら遊んであげるわ」

「縺�k縺輔>」

 

 俺の事も敵と認識している今のエイナちゃんからは、敵意をひしひしと感じる。

 構えられた弓の照準は、次は俺に向いているようだ。

 

「縺励s縺倥c縺�」

「っ」

 

 エイナちゃんが矢を放つと同時に、俺は転移をする。

 背後をとってさっさと意識を刈り取る作戦であった。

 

 完璧なタイミングでの転移と共に俺は鎖を展開する。

 絶対に不意を突いた筈であった。

 

 なのに、どうして彼女はこちらを見ているのだろうか。

 

「縺ォ縺偵k縺ェ」

 

 不可解な言葉と共に、放つ動作すらなく矢が俺へと発射された。

 

『やば^^』

 

 再び俺は転移する。

 星詠みの杖君のサポートにより俺は連続で転移を繰り返し、矢を回避したつもりだが転移した先には必ず矢があった。

 

 縦横無尽に駆けようともあざ笑うように矢は俺を追ってくる。

 ひええええええ!

 防御防御!

 

『いやまて防御は――』

 

 俺は転移をやめて防御で受け止めることにした。

 障壁を展開し、矢を待ち構える。

 

 しかし、矢は次の瞬間には障壁を通り抜けた。

 

「っ!?」

 

 矢が俺へと突き刺さる。

 否、俺すらも通り抜けた。

 

 痛みはない。

 それ以上に、胸を何か恐ろしい風のような物が通り抜けた感覚だけが俺を支配していた。

 

 俺の頭の中をかき乱すように増殖していく恐ろしい感覚。

 後悔や怒りの感情が際限なく沸き上がり、俺はいつの間にか涙を流していた。

 

『マズイ……相棒の美少女エネルギーがどんどん低下している……! このまま底を尽くと死ぬぞ!』 

 

 でも、全然テンションが上がらない……。

 美少女粒子が、俺の中から消えて行くのがわかるよ……。

 

『くっ、おいカメ! お前は右脳に行け! 私は左脳に行く!』

『わかった、それでどうすればよい』

『同時に「ゼロ♥」と囁くように連呼するんだ』

『何を言っているんだお前は』

『行くぞ!』

 

 俺の頭の中で何故かバイノーラルで息遣いが聞こえる。

 そして次の瞬間――。

 

『『ゼロ♥ゼロ♥ゼロ♥ゼロ♥――』』

 

 こっ、これは人外お姉様と人外ロリのASMR!?

 ありがたい……! 魂に活力が蘇る……!

 

『よし^^』

『久しぶりに置いてけぼりになった』

『けれど、すぐに和ロリで囁くあたり、君にもロリの自覚が芽生えてきたんじゃないのかな?^^』

『やめろ! 私はあくまで保護者、幼き命を守護る者だ。決して私はロリなどではない!』

 

 あぁ~、背伸びするロリっ子みたいでかわいいよカメ君。

 そうやって自分はロリじゃないって否定するロリにはいつの時代も一定の需要があるからね。

 

 だから後で和ゴスロリを着ようね、怖くないからね^^

 

『うん、美少女エネルギーが完全に回復した。あと一歩遅ければ美少女エネルギーが不足して体がどうにかなっていただろう』

 

 ありがとう星詠みの杖君、カメ君!

 君たちの機転のおかげで救われた……!

 

「……ふふっ、今の攻撃は少しだけ驚いたわエイナ」

「なるほど、私の不干渉ですり抜けたのではなく、あの矢にはそもそも実体がないんだ。アレは矢の形をしているが、本質は感情への接続なのだろう。考えたくはないが、エイナが狙いを定めて矢を放った時点で必ず当たる。そういうものなのだろうね。これはこれは……こうなると私ではなく十加羅の方がまだ戦えるか」

 

 講師はそう言うと再び正方形の黒い箱を取り出す。

 泥が増殖し、辺りを満たしていく。

 波のようにせりあがった泥は、エイナをやがて飲み込んだ。

 

 が、すぐさま泥の中から赤い光が迸り、魔力波と共に泥が飛散する。

 その光景を見て、講師は狂気的な笑みと共に食い入るようにエイナを見つめながら言った。

 

「まさか、私達から一方的に吸い取ったエネルギーを自在に使えるのか!? 感情を有する生き物全ての天敵になったとでもいうのか彼女は! これはすごいぞ、やはり完成形じゃないか。俄然欲しくなった!」

 

 講師は俺とは違い銘が回復したようには見えない。

 しかし、大量の影と氷と共にエイナへと駆けだして行った。

 

 これはまずいぞ星詠みの杖君!

 もうくっ殺シエラとか言っている場合じゃない!

 ここで俺が負けたらBADEND直行だ!

 

 講師をボコボコにしつつ、エイナちゃんを拘束するぞ!

 

『無理難題すぎるねぇ、まあもはや君の無茶ぶりには慣れたものだが』

『無理は禁物だぞマイロード』

 

 そして余裕が出来たらエイナちゃんを止めた代償に、ついに限界が来た感じをアピールするんだ!

 

『まだ諦めてないのかぁ……』

 

 

 

 

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