【書籍化決定】かませ役♂に憑依転生した俺はTSを諦めない   作:不破ふわる

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第306話 講師のエチエチ実験室送り?

 

 エイナちゃんが暴走してからというもの、俺のプランは崩れ去ってしまった。

 完璧で美しい最強のミステリアス美少女である俺は、ちょっとエチエチなくっ殺シエラを繰り広げる筈だったのだ。

 しかし、これはいったいどういう事だろうか……。

 

『うーん、埒が明かないねぇ。やっぱり、双星形態になって倒した方が良いんじゃないかい? あの姿ならエイナが感情を抜き取るよりも早く興奮できる』

『あるいは、私の鎧星形態でエイナを直接絶命させることも可能であるぞマイロード』

 

 ふえぇ……確実な解決方法が既に二つもあるよお……。

 

『まあ、脳内ASMRのために双星形態になることは出来ないんだけどね。別にお外でもお耳ペロペロしていいならお外に出るけど』

 

 駄目に決まってんだろ。

 ソルシエラがこの状況で耳を舐められて腰が砕けたらどうなると思ってんだ。

 

『……………エイナの力で強制的にさらに興奮させられて、講師のエチエチ実験室送り?』

 

 頭の中どうなってんだ君は。

 デモンズギアが一体暴走しているんだよ!?

 どうしてこんな時までそんなことを考えているんだ!

 星詠みの杖としての誇りはどうした!

 

『どの口が言っているんだろうねぇ。そもそも君がくっ殺シエラをせずに最初から講師をタコ殴りにしておけばこんな事にはならなかったのでは?』

 

 ふええん、かめさんたすけてー!

 心無いマジレスがおそってくるよぉ!

 

『おぉ……可哀そうに……』

『うーん、まだ意外と余裕があるな。既に何度も死にかけているのに』

 

 俺とカメ君のやり取りに星詠みの杖君は呆れながらそう言った。

 

 こうして脳内で会議をしている間も、外ではエイナちゃんとの激しい戦闘が繰り広げられている。

 

「ソルシエラ、どうしたのだ? 動きが先ほどよりも精彩を欠いているが?」

「ふふふ、貴女こそ銘が今にも崩れ去りそうだけれど? 大人しくアジトに戻って教授に泣きついた方がいいんじゃないのかしら?」

「つれないことを言うんじゃない。ここは銘を持つ者として助ける気概をだね……っと」

 

 講師は迫ってくる矢を見て影の中に逃げ込んだ。

 同時に、影の中から講師の姿をした泥が飛び出してくる。

 矢はそれを代わりに貫くと、すぐ近くの地面に突き刺さった。

 

「……ふむ、やはりデコイは有用だな。今のエイナは覚醒こそしたがまだ上手く力を扱えてない。どうにも世界を上手く認識できていないようだ。感知機能で補ってはいるが、おそらくは視覚がまともに機能していない。付け入る隙があるとすればそこだろう」

「ご丁寧にどうもありがとう。さっさと消えて頂戴」

「ここまで丁寧に説明をしてやったというのにまだそんな態度をとるとは……。余程私は嫌われているようだな、やれやれ」

 

 講師はそう言って影の中から姿を現した。

 やはりと言うべきか、その姿は最初よりもやつれて弱っているように見える。

 

「直撃は避けようとも、これだけの感情を奪われる。恐ろしいものだ。それと……避けた矢が実体を持ったまま残っているのも脅威だ」

 

 講師の言葉の示す通り、既に辺りは赤い矢で埋め尽くされていた。

 まるで彼岸花が一面に咲いているかのような毒々しくも美しい景色は、きっと第三者であれば見惚れてしまうだろう。

 

 が、俺達にはそんな暇はない。

 何故なら、この地面に刺さった矢一本一本が今もなお俺たちの感情を抜き去っていくからだ。

 

「時間がたてばたつほど、彼女に有利な戦場になる。……中々に面白い力よね。出来ればもう少し貴女が苦しむ姿を観察していたいのだけど」

「だが、それは君の首を絞める事にもつながってしまうだろう?」

 

『えっ、首絞めが癖になったソルシエラ!?』

 

 引っ込んでろ。

 

『自罰的な性格がより悪化し、自分を傷つけることでいつの間にか薄暗い感情を満たしていたソルシエラ。ある日、クラムはそんな彼女の秘密を知ってしまい――』

 

 引っ込んでろって言ったんだけどなぁ。

 またクラムちゃんが相手の想定だし……。

 

『ソルシエラは度重なる戦闘により、重度の被虐体質になってしまった。それに気が付いたミロクは治療と称してあることを提案する――』

 

 バリエーションを豊かにしろって言ってんじゃねえのよ。

 やめろって言ってんのよ。

 

『でもコンテンツ的には?』

 

 美味しい^^

 

『おぉ……マイロード、そうやってコンテンツを引き合いに出されるとすぐに認めてしまうのは良くないぞ。星詠みの杖はマイロードのそんな癖を理解しているからこそ自重しないのだ』

『お前も大概だけどな』

 

 俺からすればどっちもだよ。

 

 ……うおっ、やべえぞ矢が飛んできた!

 

『ASMR用意!』

『うむ』

 

 俺の体を複数本の矢が通り抜ける。

 そして、それに対応するように俺の脳内バイノーラルマイクで星詠みの杖君とカメ君は囁いてくれた。

 

『負けちゃえ♥ 負けちゃえ♥』

『頑張れ♥ 頑張れ♥ 』

 

 あぁ~! 二律背反~!

 

『どういう感想?』

 

 減った魔力がすぐに復活し、俺は一命をとりとめる。

 が、それでもエイナちゃんの攻撃が効いている風を装いたいので俺は片膝をつきそうになることにした。

 

「……っ」

 

 姿勢を崩しかけた俺は、すぐに立ち上がる。

 その顔には、余裕の笑みを絶やさない。

 

「ソルシエラ。気が付いているだろうが、エイナは目覚めてから一度も動いていない。遠距離支援用のデモンズギアだとは知っていたがここまでの力を目覚めさせるとは思っていなかったよ」

 

 講師に言われて気が付いたが、確かにエイナちゃんは一歩もその場から動いていない。

 そういうムーブはミステリアス美少女である俺がするはずだったのに……。

 

『やろうと思えばできるけどね君も』

 

 それはまたいつかやろう。

 必ずやろう。

 

 ……あ、今度俺が洗脳されたらそんな感じでいこう!

 無慈悲に能力を振るうことで、女王って雰囲気を醸し出すんだ。

 

『洗脳の未来が勝手に予約された……』

『おぉマイロード、きちんと予定を立てられて偉いぞ』

『こいつイエスマンにも程があるだろ』

 

 カメ君は理解しているだけだよ。

 ソルシエラのような強キャラが洗脳されるのはコンテンツとして美味しいからね。

 でも洗脳は一度だけだ。

 二度も洗脳されるミステリアス美少女なんてただのクソ雑魚美少女だからね。

 

『今もクソ雑魚では?』

 

 ん?

 

『ん?^^』

 

 今、とんでもない誹謗中傷をされた気がしたが、まさか星詠みの杖君に限ってそんなことはしないだろう。

 

「それでソルシエラ。君には何か策があるのかな? 星詠みである君なら、こうなったデモンズギアにも対処できると思うのだが。……見たところ、未だに君はエイナに何かする様子もない。それどころか、隙あらば私を狙ってきているが」

「邪魔なものは最初に片付ける、そうでしょう? 私からすれば、エイナよりも貴女の方が目障りなのよ」

 

 俺はそう言って砲撃を講師に放つ。

 当然当たるわけもなく、体をすり抜けた砲撃はどこかへと飛んで行ってしまった。

 

 が、俺はそのまま講師に接近して蹴撃を放つ。

 星詠みの杖君!

 

『干渉相殺^^』

 

 干渉により接触が可能になった一瞬のタイミングで俺は講師を蹴り飛ばした。

 

 ははは! 瓦礫の山に頭から突っ込んでらぁ!

 ざまぁねえぜ!

 

『ミステリアス美少女にあるまじき感想』

 

「ふふっ、貴女には瓦礫の下がお似合いよ。そこで黙って見ていなさい」

 

 ミステリアス翻訳をして、俺はエイナちゃんへと向き合う。

 このままだと、埒が明かない。

 

 決めたぞ、星詠みの杖君、カメ君。

 ここは、エイナちゃんを止めた代償に疲弊し、そこを狙われて次の敵にくっ殺シエラするとしよう。

 

 つまり、ここはいわば仕込みの段階!

 

 ソルシエラが負ける理由を丁寧に積み上げていくのだ。

 そして気持ちよく負けよう!

 

 教授、博士、ネームレス、誰でもいいから頼むぞ!

 という訳で講師、お前はここで殺す。

 

『思いが通じて嬉しいぞマイロード。早速細切れにしてやろう』

 

 その前にエイナちゃんの無力化だ。

 無力化に力の大半を使い、その後何とか講師を殺すことでくっ殺シエラの布石とさせていただく。

 

 星詠みの杖君、仮にここで俺が本気を出した場合エイナちゃんを鎮圧できるか?

 

『余裕^^ エイナは攻撃手段こそ強力で豊富だが、防御は大したことはない。近づいて触れてしまえばお終いだろう。そこからどうやって戻すかは考える必要があるが』

 

 そこは俺の美少女エネルギーでどうにかするよ。

 なんか、そういうのはいける気がするんだ。

 

『ふわっとしている筈なのに、妙な説得感があるねぇ』

 

 という訳で、禁断の力を解放するぞ!

 

『そんなものはない』

 

 果たしてそうかな?

 

 デモンズギアでの対抗が難しいこの状況。

 那滝ケイという薄幸美少女には、もう一つ奥の手があるのでは?

 

 そう、彼女の家に古くから伝わる怪物の力が……!

 

『っ! 成程、ここで赫夜牟か! 確かに、能力こそ私たちの足元にも及ばないカスでどうしようもない雑魚ではあるが、見た目の恐ろしさだけは一級品だ』

『だが、今奴は位相の海の最奥でのじゃロリ美少女研修を受けている筈では? ここで取り出すのは危険だぞマイロード』

 

 大量の拘束具をつけよう。

 想像してご覧? その拘束具すらも、まるで禁断の力を押さえつけているように見えてこないかい?

 

 そして、後にソウゴ君がこれを使った際に拘束具が外れた真の姿がお披露目されるって寸法よ。

 あのソルシエラが過去に一度だけ緊急事態で使用した禁断の武器。

 それを扱うソウゴ君……!

 うん、いいね。くっ殺シエラだけじゃなくて、ソウゴ君のための過去編も作れるなんて俺はなんてミステリアス美少女として優秀なんだ。

 

『そうと決まればすぐに準備しよう。召喚する魔法陣を作ろうねぇ』

『ならば私は拘束具をデザイン、制作しよう』

 

 ありがとう!

 俺は何秒時間を稼げばいい?

 

『10秒……いや、5秒でいい』

『それでマイロードの期待に応えよう』

 

 なんて頼もしいんだ!

 ではこれより、禁断の力を使うソルシエラを始めるぞ!

 

 

 

 

 

 

 ソルシエラは冷たい視線をエイナに向ける。

 焦点の定まっていない目でエイナは、とりあえずソルシエラへと照準を合わせた。

 

 それがなんであっても関係ない。

 自分の愛する人の障害となる可能性があるならば排除するべきなのだ。

 

「雖後>」

 

 規則性のあるノイズがエイナの口から吐き出される。

 そして手の中に矢が生まれて、装填された。

 

 ソルシエラは真正面から見据えたまま大鎌を構えない。

 しかし、やがて何かを決心したように口を開いた。

 

「……やるしかないわね」

 

 大鎌の先端が、ゆっくりと地面を撫でる。

 弧を描くように、まるで空間を裂くような動作だった。

 同時にソルシエラの足元に魔法陣が広がった。

 

 既存の魔法陣からは逸脱したそれは、はるか昔に存在した古代の魔法陣に近い。

 赤紫色で、毒々しく、そしてソルシエラ自身を蝕む呪いのようなそれは、ゆっくりと光を放ち始めた。

 

「エイナ、感謝なさい。これを使うのは貴女が初めてよ」

 

 流れ出す魔力が魔法陣へと吸い込まれていく。

 何か恐ろしいものが現れると感覚的にエイナは、理解した。

 

 故に矢を生成して魔法陣へと向ける。

 が、もう遅い。

 ここに形は成った。

 

 ソルシエラは最後の起動言語としてその呪いを口にした。

 

「星詠みはここに――」

「させねェよ、引っ込んでろ」

 

 聞こえる筈のない言葉に、戦場の時が止まる。

 立ち上がった講師も、矢をつがえたエイナも、そして今まさに何かを呼び出そうとしていたソルシエラですらも驚いていた。

 

「……あら、ここに招待した覚えはないのだけれど、六波羅」

 

 わざとらしく名を呼ばれて、六波羅は双剣を召喚しながら笑みを浮かべた。

 その右腕には赤い手錠がかけられてる。

 

「そう固い事言うなよ。お前自身は好き勝手にどこでも現れる癖によォ」

 

 軽口を言って、頭を無造作に掻きながらソルシエラの隣へと向かう。

 そして。

 

「……こっからは手を出すな。俺の仕事だ」

 

 ソルシエラの横を通り過ぎ、さらに最前線へ。

 自分こそが主役であるとでも言いたげに、六波羅は双剣をエイナへと向けた。

 

「思えば、一度もしたことなかったよなァ、本気の喧嘩ってやつをよォ……」

 

 エイナは何も答えない。

 ただ、向けられた弓が全てを物語っていた。

 

「ハハッ、いいねェ! ようやくてめェも俺の事がわかってきたんじゃねェのかァ! エイナァ!」

「蟶ー縺」縺ヲ」

 

 両者、二つの力がまるで呼応するように増幅する。

 かくして、二人の戦争(けんか)は幕を開けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『あの……赫夜牟は……』

『おぉ……可哀そうなマイロード』

『うーん、じゃあこれはまた位相の海にしまっておこうねぇ』

 

 

 

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