【書籍化決定】かませ役♂に憑依転生した俺はTSを諦めない   作:不破ふわる

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第310話 ソルシエラと同等なんだぞ

 俺は為すべきことを為せなかった。

 その点で言えば、失敗と言えるだろう。

 

 だが、俺はそれでも心地の良い余韻に浸っていた。

 この余韻は……TS六波羅さん百合概念の余韻だ……!

 

『ペロペロ^^』

『おぉ……理解に苦しむ』

 

 カメ君にはまだわからないようだ。

 だが、TS六波羅さんが戦っている姿は、そしてエイナちゃんとついに結ばれたこの瞬間は何物にも代えがたいほどに美しい。

 

 なので、位相の海からこうして二人を監視するのも当然なことなのだ。

 

『エイナ……立派になったねぇ。これで六波羅を押し倒すことが出来れば、満点なのだが』

 

 は? 六波羅さんが押し倒される訳ないだろ。

 ソルシエラと同等なんだぞ。

 

『じゃあ弱いじゃないか!』

 

 えぇ……。

 

『TS六波羅がエイナに、女の子レクチャーを受ける姿を見たいとは思わないのか? 最初は恥じらいもなく胡坐をかいていた六波羅が、一か月後には女の子みたいな動作をするようになっていたらどうする? 口調はぶっきらぼうなのに、おしとやかで真面目。そして面倒見も良い……こんなの、誰でも脳が焼かれてしまうねぇ!』

 

 す、すげえ……!

 妄想の中で仮定に想定を重ね、妄想の中でコンテンツとして消費しやがった……!

 

『マイロードが普段やっていることでは?』

 

 そうなのか? 

 別に俺は普通に思考をしているだけだが?

 

『これは最強系に相応しい回答』

 

 最強故に、TS六波羅さん相手にも優位に立ち回れるだろう。

 ソルシエラに揶揄われるTS六波羅さん概念は、ある。

 

『結局負ける未来しか見えないけどね。逆転されて、ベッドに押し倒された後は――』

 

 は?

 俺は揶揄うだけで押し倒されないが?

 なんで六波羅さんがエイナちゃん以外とそういう関係になるんだよ。ふざけるのも大概にしとけよ。

 六波羅さんはエイナちゃんと結ばれるんだよぉ!

 

『めんどくせ^^』

 

 まったく、これだからカプ厨は困る。

 六波羅さんとエイナちゃんの顔をごらんよ。

 なんだかんだ言いながら、まだ手錠で繋がれてどっちも嬉しそうだよ。

 魂も輝いているね!

 

『おぉ……その先を歩く幼き命達もまた良いぞ。講師という母が死に、本当は泣きたいはずなのに、こらえて自分の信じる道を歩き始めた九重。そしてその意思を尊重し敢えて明るく振る舞うキリカ。なんと気高く、そして美しい光景だろうか』

『今ロリ談義の隙あったか?』

 

 星詠みの杖君、俺達の美少女論は既に光を置き去りにしている。

 まだ道を極めたというにはほど遠いが、それでも確かに一歩ずつ成長しているんだ。

 

『うーん、耳触りだけは良い言葉だねぇ』

 

 だからこそっ、俺は必ず次はくっ殺シエラを成功させる!

 講師が死んだから、教授か博士辺りでやろう!

 

 艶やかに、そして痛々しくも美しく負けるのだ!

 星は、一度だけ堕ちる……!

 

『うおおおおおおおお!』

『次は私も協力しようマイロード。きちんと、危なくないように負けるのだぞ』

 

 うん!

 大丈夫だよ、博士は一度勝っているし、教授に関しても俺の全知的原作データベースがあるからね!

 普通に負けるなんてことはあり得ないよ。

 手のひらの上でコーロコロしてやるソル!

 

『どうしよう、急に不安になってきた』

『何故不安になる。こんなにマイロードがやる気になっているのだから応援するべきだろう。我が子の夢なのだぞ……!』

『相棒が張り切ると、良くも悪くもろくなことにならないんだよねぇ……』

 

 失礼な事を……。

 さ、次のくっ殺シエラプランを考えるとしよう。

 

 TS六波羅さんたちを眺めながらね!

 

『六波羅ちゃんには、いずれニーソックスを履かせようねぇ^^』

 

 

 

 

 

 

 講師が死を向かえて間もなく、銀の黄昏の本拠地で教授は顔を上げた。

 

「おや……これは想定外だ」

「どうしたんだ、教授」

 

 博士は食い入る様に見つめていたモニターから目を離して、教授を見る。

 そして、その手の上で輝く星のようなものを目にした瞬間立ち上がった。

 

「そっ、それは狂楽の銘!?」

「ああ、どうやら私の元に帰ってきたようだ。ふむ、私が殺さずともこうして銘は手元に戻ってくるか……理論上は可能だと知っていたがこうしてみるのは初めてだね」

「そんな事を言っている場合か!? 講師が死んだという事だぞ!? あの馬鹿、勝手に場を掻きまわして勝手に死にやがった! くそっ、派遣した博士たちはどうなっているんだ……!」

 

 博士は頭を掻きむしりながら叫ぶ。

 そして、新たにコンソールを操作すると、一つの映像を映し出した。

 

 それは、杭の監視のために用意されたドローンからの映像である。

 それはエイナの暴走から始まり、六波羅との決着までが収められていた。

 

「……彼女は六波羅か? な、何故女になっているんだ……?」

「別に驚くほどの事かい? 私も君も、その資格はないと思うが」

「僕たちをこの議論に取り入れるとややこしくなるからやめてくれ。とにかく、これで講師は死んだのか……。どうする、教授」

「そうだね」

 

 教授は紅茶を一口飲むと、優雅に笑みを浮かべる。

 

「私個人としては、その映像の中にいるソルシエラに興味があるのだが」

 

 その目は六波羅やエイナではなく、ソルシエラへと向けられている。

 

「彼女の映像はないのか?」

「待っていてくれ……あった、これだ。講師とやりあっていたようだ。というか講師のやつ、いつの間にトリムの力を……!」

「ははは、まあいいじゃないか」

 

 教授はじっとソルシエラを観察し、大きく長く息を吐き出す。

 

「ようやく、一つの答えを得た。まさか、()()()ソルシエラだったとは」

 

 画面の中で戦うソルシエラを、教授はどこか懐かしさを秘めた目で見つめている。

 その様子を見て、博士も気が付いたように「まさか……」とソルシエラを見た。

 

「本当に言っているのか……!? 奴はあの日確実に葬ったはず。先生とは違って、お前が自らの手で殺したはずだ……!」

「だから、考えが至らなかった。あり得ないと除外してしまった。私たちはかつて、ソルシエラは博愛の銘を持つと予想したね。 確かに、あの子の生き方ならそう捉えられてもおかしくはないだろう。だが、その本質は違う。違ったのだ」

 

 今までの仮説を根底から覆す様に、教授は言葉を連ねていく。

 それは、まるでその事実を口にすることを避けて遠回りをしているようにも見える。

 

「常に自身の望んだ世界のために前に進み続ける者。かつての盟友――」

 

 やがて、教授はその名を口にした。

 

 

 

 

 

 

 同時刻、星木の学園にて。

 ラッカは屋根の上で頭を横に揺らしてうんうんと唸っていた。

 

「どうしたの?」

「ガーデナー君聞いてよ、なんか昔馴染みの気配がぼんやーりとするんだよね。それが、ここ最近どんどん強くなっているような気がするんだ」

「昔馴染み……」

「そうそう。一緒に教授をぶっ飛ばそうと戦ってくれた私のソウルメイト。ま、結果は大失敗だったんだけど。うん……この気配はやっぱり勘違いじゃないな」

 

 そう言ってラッカは立ち上がる。

 

「あの子がいるなら、今度こそ何とかなるかも! うおー!」

 

 歓喜と共にラッカは槍を生み出すと、片手間に熾天使を貫き殺した。

 そして、いつもの様に迫りくる熾天使の群れを指さして、ガーデナーの言葉も待たずに駆け出す。

 

「いつ計画がスタートしても良いように、ウォーミングアップしてくるー!」

「えっ、あ、ちょっと!」

 

 弾丸のように飛び出したラッカを、ガーデナーは慌てて追う。

 

「……なんだろう、この胸騒ぎは」

「待っててねー! ()()()ちゃーん!」

 

 何か、大きなことが起こる。

 そんな予感がした。

 

 

 

 

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