【書籍化決定】かませ役♂に憑依転生した俺はTSを諦めない   作:不破ふわる

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第312話 説明、開戦の前に

『――俺達から提案する作戦は一つのみ!』

 

 ヒショウの勢いしかない言葉を合図に説明は始まった。

 

『現在、学園都市を覆っているのは巨大な次元深層領域と言っていいだろう! つまり、必ずコアに相当するものがある。六波羅執行官! プライグスクールやアリアンロッドで、何か思い当たるものがないだろうかッ! ……君が六波羅執行官で合っているよな!?』

 

 ヒショウはエイナに渋々膝枕をしている少女へと、そう問いかける。

 彼女は既に答えることに疲れたのか、完全に後半の問いは無視して頷いた。

 

「……あァ、あったなァ。馬鹿みてェにデカい杭がよォ」

『その通り。アレはこの空間を維持するコアであり固定するための杭の役目をはたしている。アレが存在する限り、どれだけ空に存在する根を破壊しても意味はないだろう! 故に、杭を破壊するのが最も効率的で、手早い! ニコ君、例の画像を!』

『はーい』

 

 新たにもう一つの仮想モニターが展開される。

 見た瞬間、全員がそれが何かを理解した。

 

「学園都市のマップでしょうか?」

『ああッ。そしてマップ上に示してある三つの箇所。そこに杭があるッ! 君達にやって貰いたいことはただ一つ! この杭の破壊である!』

 

 そう言ってヒショウは、ビシッと決めポーズをとる。

 

「けどよォ、俺は既に壊そうとしたが無理だったぜ? キリカの馬鹿力でも不可能だった。壊すにも、手順が必要じゃねェのか?」

「そうだよ! あんなの、壊せないって!」

『ふっふっふ……そんなの想定済みだッ! トゥァッ!』

 

 ヒショウが跳躍し、画面から消える。

 そして再び床に降り立ちその姿が映った時には、一つの物を持っていた。

 小型のナイフの形をしたそれを掲げて、ヒショウは叫ぶ。

 

『これこそがっ、ジェノサイドクラック:皇改MarkⅡだ!』

「おぉ……カッコいい……!」

 

 ヒカリだけが目を輝かせて反応する。

 が、他の面々は今一つ信用できていないようだった。

 

 その雰囲気を察してか、画面の外からルカが補足を始める。

 

『Sランクの探索者でも破壊できていなかったのは、攻撃がそもそも杭に届いていなかったからでしょう。この杭の役割はダンジョンコアの生成と調節。その機能を利用して、杭の表面に別のダンジョン空間を大量に生成し、攻撃をその中に流し込んでいたのです』

「……なら、私やレイのように直接杭へと攻撃を仕掛けられる者なら問題はないのだろうか? 焼却が可能なら、さっさとそうしたいのだが」

『いい質問ですね。結論から言うと、不可能ではありません。が、そもそもあの杭自体が本来の形を偽装しているのです。大量のダンジョン空間を張り付けた風船を想像してください。その中に小さな本体が隠れている。それを目視できれば、破壊も可能でしょう。まあ、おすすめはしませんが』

『だからこそ、このジェノサイドクラック:皇改MarkⅡの出番だ! これを突き刺した個所からダンジョン空間を侵食し破壊。杭へと逆に毒を流し込んでやることが可能なのだ! いやぁ、まさか前に作った失敗作がこんなところで役に立つとは!』

『余計な事言わないでください』

 

 ルカの言葉でヒショウが止まる訳もなく、画面全てが顔で埋まるほどに接近しながら、ヒショウは叫んだ。

 

『四つの杭を破壊することで、世界を救おう皆! ちなみに、既に一本目はキングジルニアースで引っこ抜いたッ!』 

『その時、この装置が有効であることは確認済みです。なので、安心してこれを突き刺してください』

「そうですか。なら、早速始めましょうか。まずはそのナイフを受け取る必要がありますね」

「ああ、私が行こう」

 

 ミズヒがそう言って焔を生み出そうとしたその時だった。

 

「あ、もう視たので作ったっす」

 

 そう言って声を上げるミユメの腕の中には大量のジェノサイドクラック:皇改MarkⅡがあった。

 彼女の眼は青く輝き、何が起きたのかは一目瞭然である。

 

「……便利だね、それ」

「へへ、こういう時こそ私の出番っすから」

 

 クラムの言葉に照れくさそうにしながら、ミユメは一人一人に配っていく。

 

『うむ、どれか一つでも刺されば効果はある! 故に数は多いに越したことはない! 頼んだぞ! ちなみに、刺すと防衛反応として杭の中から大量に魔物が出てくるから気を付けてくれ!』

「なるほど……一筋縄ではいかないか」

『だが、幸いな事にこちらにはSランクとデモンズギア使いがいるッ。説明の間に、こちらでメンバーを振り分けたから聞いて欲しいッ!』

 

 言い終わると同時に新たな仮想モニターが現れた。

 それぞれが割り当てられたメンバーを確認している中、ヒショウは名を呼び始める。

 

『まずはプライグッ。ここには六波羅執行官とキリカ君! そして、千界学園にはミズヒ君とトウラク君ッ! そして――』

「ちょっと待てー! えっ、私一人なんだけど!? ねえっ、私が! この一般人代表である渡雷リュウコがっ、一人なんだけどぉ!」

『その通り。君にはアリアンロッドの杭を一人で対処してもらいたいッ!』

「言ってる意味わかってんのかアンタ! アリアンロッドだよ!? 絶対一番やばいってぇ!」

『だが、戦力を適切に振り分けた結果なのだ』

 

 ヒショウは困ったように頭を掻く。

 どうやら冗談ではなく本気でそう思っていたようだ。

 

「文句言うなリュウコ。みっともねェぞ」

「六波羅さんはキリカちゃんと一緒じゃんかぁ! いいなぁ……私も頼れる仲間が欲しいよぉ……」

 

 情けなくそう言いながらトアへと抱き着くリュウコ。

 彼女の頭を撫でてはいるものの、流石のトアの眼にも若干の呆れの色があったことに彼女は気が付いていない。

 

「……なら、僕が一人で行こうか?」

 

 トウラクは、そんな彼女の様子を見て言った。

 勢いよく顔を上げて、リュウコは目を輝かせる。

 

「いいの?」

「うん。確か、千界学園にはSランクがいたから。あの人と現地で協力関係を結べれば……」

「わかった! じゃあ、はいこれ!」

 

 そう言って、リュウコはトウラクへと小さな容器を差し出した。

 

「なにこれ」

「プリン」

「……???」

 

 話の流れからなぜプリンを差し出されたのかわからないトウラクが首を傾げる。

 すると、リュウコは先ほどから一転して自信満々の態度で言った。

 

「このプリンは私お手製のプリンなんだ。タタリちゃんはこれが大好物! だから、これを持って一歩でも千界学園に踏み入れば、絶対に来るよ」

「タタリ……千界学園のSランクだね」

「そうそう! だから、実質そっちもSランクとデモンズギア使いの二人。うん、私が君からミズヒちゃんを奪ったことにはならないね! 私、悪くない!」

 

 周囲に言い聞かせるようにリュウコはそう言って笑う。

 何故か、誰も彼女と目を合わせようとはしなかった。

 

「リーダー、あいつ最低ですねぇ」

「お前もクズ加減なら負けてねェよ」

『九重、ああいう人間にはならないようにするですです』

「わかった……!」

 

 リュウコは敢えてその言葉を無視した。

 都合の悪いことは無視するのが一番である。

 

「じゃ、メンバーも決まったし! 作戦を開始しよう!」

『ああっ、それは俺の台詞だぞリュウコ君ッ!』

 

 こうして、学園都市の命運をかけた作戦は何とも言えない始まり方をしたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 それを屋根裏から覗くお星さまが一つ+α。

 

『トウラク君が一人……!? こ、こ、これは……ッ』

『来た、世界が私達に味方しているねぇ!』

『おぉ……幼き命にはリュウコの様に育ってほしくはない』

 

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