【書籍化決定】かませ役♂に憑依転生した俺はTSを諦めない   作:不破ふわる

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第315話 自演、結局いつも通り

 ソールソルソル!

 まんまと演者たちが舞台に上がってきたソルねぇ^^

 

 教授とネームレスだなんて、まさにくっ殺シエラの理想の相手ソル!

 カモがネギを背負ってきたソルよ!

 ここからはくっ殺劇場ソル!

 

『テンションが壊れて語尾が崩壊しているねぇ』

『おぉ……マイロード、体は大丈夫か。痛かったら言うんだぞ』

 

 大丈夫だよカメ君。

 ちょっと体をセルフで死にかけにしているだけだから。

 

『要望通り、今の君の体はいつ死んでもおかしくない状態だが……まさかここまで本気になるとは。いつも通り演技でも良いと思ったのだが』

 

 駄目だ。

 原作主人公様を相手にくっ殺をやるんだぞ!

 しかも、敵はあの教授だ。トウラク君に何度も立ちはだかり、一度は殺した強敵だぞ!

 

 こっちもちゃんと死にかけじゃないと、筋が通らないだろ。

 

『だからって臓器をほとんど機能停止して、筋肉や骨もわざと崩壊させるかい? こうしている今も絶え間ない苦痛が襲っている筈だが』

 

 美少女エネルギーがあれば大丈夫。

 この体に美少女エネルギーが流れる限り、俺は死なないよ。

 

『おぉ……流石はマイロード。強い子だ』

『これはおかしい子では?』

 

 ソールソルソル!

 美少女エネルギーがある限り、俺は不死身ソル!

 誰も殺せないソルよー!

 

『その語尾だと滑稽な死に方をしそうだからやめてくれ』

 

 大丈夫ソルよ。

 既にこの舞台は俺の掌の上ソルから。

 

「トウラク、私たちの最優先事項は杭の破壊。それを忘れないで」

「わかっているよ!」

 

 千界学園はもう既に原型を留めていなかった。

 辺りは瓦礫の山と化し、大きな力同士のぶつかり合いで辺りには魔力の渦が生まれ大気を巻き込み巨大な暗雲を形成していく。

 

 教授達と戦い始めて十分、わずかそれだけの時間でまるで長い戦争の後のような光景が生み出されたのだ。

 

「ほらほら、もっと私を見なよソルシエラ。逃げ回っているだけ?」

「っ、貴女のダンスは荒っぽくて嫌いなのよ」

「そういうのが好みの癖にー」

 

 ネームレスは相変わらず俺をしつこく狙ってきている。

 俺はひたすらに攻撃を避け、好機を待っていた。

 

 視線の先では、トウラク君と教授が戦っている。

 俺の知識が正しければ、本来こんな所では戦わない。

 

 物語ではもっと後半。

 アリアンロッドで戦い、そして教授に殺されるのだ。

 

 が、それをヒロイン達との熱い思い出などをギュッとして復活したトウラク君は晴れて星斬りを手に入れるのである。

 

 何故かこのトウラク君は既に手に入れているようだが、それでも教授と初めて戦うならばきっとこれは成長のシーン。

 つまり……彼は一度死ななければならない。

 

『……え? 今、君はトウラクを殺すと言ったのか? 原作第一主義の君が?』

 

 俺はトウラク君に温室で育って欲しいわけじゃない。

 俺が好きなトウラク君はな、何度も立ち上がるし、死なんかに負けないの。

 

 それに、もしもトウラク君が本当にやばそうなら俺がぜーんぶひっくり返すし。

 いわば、これは養殖の負けイベントだ。

 安心安全設計だから死んでいいよ♥

 そして死に際にソルシエラが囚われる姿を見て絶望してね♥

 

 でもきっと立ち直れるって信じているよ♥

 トウラク君はそういう強い子だもんね♥

 

『身内が負けイベント仕掛けるとか、これもう3対1』

 

 何言ってやがんだ。

 トウラク君は一度死ぬことで鏡界とのつながりを強くして、星斬りを目覚めさせるんだ。

 なら、今ただでさえ強い彼が鏡界と繋がったらどうなるか気になりはしないかい?

 

 俺はね、原作主人公様には俺の想像を越えて欲しいのだよ。

 トウラク君ならきっとそれが出来る。

 俺はそう信じている。

 

『厄介な奴^^』

『どの口が』

 

 だからこそ、俺はこうして初期シエラで戦っているのだ。

 

『この姿を初期シエラって言うのやめてくれないかな? なんか、弱い形態みたいで嫌なんだが』

 

 俺達は今、いつも通りのゴスロリで戦っている。

 この決戦なら双星形態や鎧星形態などがある筈なのに……!

 くっ、どうしたんだソルシエラッ!

 

『どうしたも何も、君が勝手に封印しているだけだねぇ』

『だが、それでもこれだけの攻撃を捌けているのはやはりマイロードの技量があっての事。流石だ』

『お前たまにはしっかり叱ってくれ。仮にも親なんだろう?』

『どこに叱る要素が……?』

『狂ってる^^』

 

 いいや狂っているのは美少女であふれていないこの世界だよ。

 俺達こそが正気なんだ。

 

 政府は美少女エネルギーの存在を隠蔽している!

 

『政府も暇じゃないんだよ』

 

「……ねえソルシエラ、無理しているんじゃない? 今大人しく負けてくれれば、悪いようにはしないって約束するけど」

「冗談でしょう? 貴女、ダンスだけじゃなくてトークもつまらないのね。もういい、聞き飽きたわ」

 

 俺は鎖をネームレスへと放つ。

 鎖はあっという間に燃えたが、既に俺はネームレスの頭上を取っていた。

 

「っ」

「ふふっ、そうやって見上げるのがお似合いね」

 

 魔法陣を展開し、魔力を収束する。

 四人分のクソデカ魔力が集まり、胎動を始めた。

 

「マズっ」

「逃がすと思った?」

 

 牽制用にネームレスを囲んで大量の砲撃陣が出現。

 彼女に逃げる隙すら与えずに魔力砲の雨を浴びせる。

 

 そして、十分な時間できっちりと準備を終えた俺は、大鎌の柄をネームレスへと向けた。

 

「これでおしま――」

 

 今です!

 

「っ……!?」

 

 俺は集めた魔力を霧散させる。

 その顔を苦痛に歪め、ネームレスを囲んでいた大量の魔法陣も消え失せた。

 

『そ、そんな……! あと少しで勝てたのに、星詠みの杖の侵食が……!』

 

 どういう気持ちで解説してんのそれ。

 

「……ソルシエラ?」

「はぁっ、はぁっ……くっ」

 

 俺はネームレスを睨みつけてもう一度魔法陣を展開。

 今度はネームレスの周囲を砲撃陣が覆うことはなかった。

 

『もう魔法を自由に扱える余裕もないんだ……。作り直した魔法陣も穴だらけでまともに機能していない……!』

 

 衝撃の事実!

 ソルシエラはもう限界だった!

 

 講師やエイナとの戦いを経て、ついにソルシエラの体は限界だったようだ。

 

「やめて! それ以上は貴女がっ」

「ど、うして貴女が泣きそうなのかしら……ふふっ」

 

 俺は笑顔を浮かべているつもりになって苦痛に顔を歪ませたまま、大鎌のトリガーに指を掛ける。

 

 が、そこで俺の体からガクッと力が抜けて地へと真っ逆さまに落ちていった。

 

「っ」

 

 地面に落ちる直前で正気を取り戻し、何とか姿勢を制御しようとする。

 けれど、着地に失敗し、地面を何度も転がった。

 

 ああっ、もう着地も出来ないのかソルシエラ……。

 

『ずっと他人事なのが怖い』

『私から見ればどちらもそうだぞ』

 

 ?

 

「ソルシエラっ!」

 

 トウラク君が俺を心配して駆けつけてくれた。

 教授との戦いで忙しいはずなのに、隙をついて俺が立ち上がるまでの時間を稼いでくれるようである。

 

 俺は泥だらけになった衣装で立ち上がる。

 

「……何そんな心配そうな顔をしているのよ。貴方の相手は教授でしょう?」

「でも……っ」

「お馬鹿さん、目的を見失わないで。………………私なら大丈夫だから。ほんの少し、ステップを間違えただけ。大丈夫よ、私はアドリブだって得意なのだから」

 

 そう言って俺は震える手で大鎌を構える。

 大量のセルフデバフのおかげで片手では持てないため、両手で何とか持っている状態だ。

 

 さて、いい感じに注目が集まっているので第二幕といこう。

 

『侵食形態、いきまーす!』

 

 わぁい^^

 

 

 

 

 

 

 満身創痍のソルシエラを見て、その場の誰もが彼女の敗北を悟った。

 

 ソルシエラは戦いに負けたわけではない。

 強いて言うならば、それは悲劇的な運命だろうか。

 彼女の体がこの瞬間に限界を迎えたのだという事は全員が気が付いていた。

 

「そうか、限界だったのか」

 

 そう呟いたのは教授だった。

 彼は、憐憫を込めた視線をソルシエラへと送っている。

 

「……相変わらず、君は自己犠牲が好きなんだね。本当に昔から変わらない」

 

 教授はそう言って帽子を深くかぶる。

 そして、杖をソルシエラ達へと向けて言った。

 

「私たちの勝ちだ。もう退くと良い。これ以上の戦いは無意味だろう」

「……そう」

 

 ソルシエラは依然として笑みを浮かべている。

 その目は変わらず、輝きを失っていなかった。

 

「なら、第二幕と行きましょうか。星は、消えゆく最期の瞬間こそ最も眩く輝くのよ」

 

 謳うように告げる彼女は、大鎌へと額を合わせる。

 そして、静かに囁いた。

 

「星光は――ここに断罪する」

「っ、それは……!」

 

 トウラクはその言葉に覚えがあった。

 かつて自分を止めるために一度だけ使った禁忌の力。

 

 強大な力の代償が何であるかなど、考えるまでもなかった。

 

「……成程。星詠みの杖の侵食を逆に利用したのか。最後まで、足掻くことを選ぶんだね」

「足掻くだなんて、言わないで頂戴。私は最期の時まで、輝き続けるだけよ」

 

 茨を模した魔法陣が展開される。

 それは彼女を包み込むと、その姿を真っ赤に染め上げていった。

 泥に汚れていた筈の衣装が赤く染まり、裂けた箇所を覆い隠す様に深紅のレースが舞う。

 

 まるで、彼女の生きた証を刻むかのように赤いその姿こそ、今の彼女に唯一残された切り札――侵食形態。

 

「トウラク」

 

 今までとは違い、鎌を力強く持ち上げてソルシエラは名を呼んだ。

 その腕には茨が巻き付き、こうしている間にも伸び続けている。

 

「一度だけ私と踊ることを許してあげる」

 

 決戦の第二幕、あるいは彼女の最後の舞台の幕が上がろうとしていた。

 

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