【書籍化決定】かませ役♂に憑依転生した俺はTSを諦めない   作:不破ふわる

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第319話 寄生、脳内美少女評論家

 ネームレスの襲撃は奇跡的に被害を出さなかった。

 おかげで、ルトラ達はすぐさま医務室へとトウラクを運ぶことが出来たのである。

 さらに言えば、リュウコは終始『自分が頑張った』アピールをしていた。

 

「……トウラク、大丈夫だよね」

 

 ベッドで目をつむったままの彼を見て、ルトラは手を握る。

 今の彼女に出来る精一杯の行動であった。

 

 医務室には今、ルトラと0号、そして眠るトウラクだけがいる。

 

「私が彼の苦しみも斬れたらいいのに」

 

 それを見て、0号はくだらないと鼻を鳴らして窓辺によりかかる。

 あんな事が起きたというのに、フェクトムには穏やかな風が吹いていた。

 

「何度説明をしたらわかるんだ? それとも記憶領域が故障しているのかい? 牙塔トウラクは死なない。私のマスターが貴重な聖遺物を使ったのだから」

「……うん」

「はぁ。ルトラ、いい加減に――」

 

 0号が苛立ち混じりに再び説明を始めようとしたその時である。

 

「トウラク君が怪我をしたって本当ですか!?」

「治療できそうなものは、とにかく持ってきたっすよー!」

 

 ミロクとミユメが台車に大量の何かを積み上げて医務室へと飛び込んできた。

 よくよく見れば、台車に山のように積みあがっているそれは、ミユメの発明品のようだった。

 

「まずはこの『爆! 脊髄注入ブラスト元気丸』を――って、ソルシエラァ!?」

 

 ミユメの腕の中から、冗談みたいなサイズの注射器が落ちる。

 ゴンっと、音を立てて落ちたその注射器を見て、0号は若干人類というものに引いているようだった。

 

「ソルシエラがどうしてここにいるっすか!? え、もしかして私達に協力をしてくれるって事っすか!?」

 

 笑顔で駆け寄るミユメを0号は何も言わずに見下ろす。

 その目に、ミユメへの興味は微塵も感じられなかった。

 

「……ソルシエラ?」

「0号、ですよね」

 

 ミロクは冷静にそう確認する。

 彼女の背後から、シエルがひょっこりと顔を出しながらその意見を肯定するように頷いていた。

 

「間違いなく姉上です。全身が魔力で構成されています故。体を乗っ取ったわけではないでしょう。双星形態である可能性が高いです故」

「説明ご苦労様、シエル。で、賢い君はこれで納得してくれたかな? 空無ミユメ」

 

 嫌味が混ざったその言葉に、ミユメは一瞬キョトンとしたがすぐに目を輝かせてその手を握った。

 

「貴女が0号っすか! 会いたかったっすよー!」

「……チッ、こういうタイプは苦手だ」

 

 手を乱暴に振られながら、0号はそう愚痴をこぼす。

 肝心のミユメには届いていないどころか、真理の魔眼により勝手に体の中を覗かれていた。

 

「ふむふむ……体の基本構築はデータロイドと変わらないっすね。この情報があれば、より強力なデータロイドを――あ、見えなくなったっす」

「人の体を勝手に覗き見るとは、良い度胸をしているねえ」

 

 0号はそう言って、ミユメの頭に手をかざす。

 その瞬間、彼女の頭に魔法陣が浮かび、膝から崩れ落ちてしまった。

 

「ミユメちゃん!」

「意識を奪っただけだ。彼女は賢いが、少し喧しい。私はマスター以外の人間と馴れ合う気はないからねぇ」

 

 冷たくそう言い放つ様は、彼女の本来の人類への感情を表しているようだ。

 ミロクはそんな彼女を見て、口を開く。

 

 その時、更に二人分の足音が遠くから聞こえてきた。

 足音の主は医務室の扉を開けると、開口一番こう言った。

 

「ソルシエラがいるって本当!?」

「クラム、落ち着いてください。はい、深呼吸~」

 

 血走った目のクラムは、服の裾を掴まれる形でヒカリと共に医務室へと入ってくる。

 その姿は、躾のなっていない犬と飼い主のようだった。

 

「クラムちゃん、トアちゃんは一緒じゃないんですか?」

「トアなら、リュウコの方に連れていかれたよ。どうしてもお菓子作りの人員が欲しいとかで」

「私も誘われましたが、今のクラムを一人にすると何をするのかわからないので付いてきました!」

 

 ヒカリはそう言って力強く頷く。

 これほど頼もしい言葉はない。

 

「それで、どういう状況なの? ミズヒに軽い説明しかされなかったんだけど」

 

 クラムはキョロキョロしながら、目当ての少女を探す。

 そして、よく似た容姿のそれを見つけて顔を顰めた。

 

「……ソルシエラは?」

「私じゃ不満か? 足手まとい」

「――ッ」

「はいはい! 落ち着いて下さい! 人吞み蛙(マーダフロッグ)はしまって!」

 

 ヒカリは光翼を出して、人吞み蛙とクラムを押さえつける。

 それを冷ややかに見つめる0号を見て、クラムは叫んだ。

 

「お前ひとりでいるなんておかしいだろ! あの子はどこだ!」

「……」

「答えろよ! あの子に何があった!」

 

 ソルシエラをよく知る彼女だからこそ、0号だけがここにいる異常事態にはすぐに気が付いた。

 そしてそれは、ミロクも同じである。

 

「……0号、私も知りたいです。貴女達の身に何が起こったのか」

 

 真剣な眼差しでミロクはそう問いかける。

 0号はミロクとクラムを交互に見ると、ため息をついた。

 

「初めに言っておく」

 

 その言葉を始まりとして0号はこう説明を始めた。

 

「私たちは、負けた訳ではない――」

 

 

 

 

 

 

 へぇ~、精神体ってこんな感じなんすね~。

 カメ君や星詠みの杖君の存在をより近くに感じるよ

 

 甲羅触っちゃお! えい!

 

『おぉ……満足するまで触るがよい。しっとりすべすべふわふわもちもちの甲羅だ』

 

 それもう甲羅じゃねえだろ。

 

『ちょ、うるさいねぇ。今、君の代わりに説明をしているところなんだが?』

 

 星詠みの杖君からの注意の言葉も、今の俺には効果はない。

 何故なら、今は絶賛くっ殺シエラ中でもあるからテンションが高いのである。

 

 アレは我ながら完璧なくっ殺シエラだった……。

 求道者とか理想とかよくわかんねえことをルシエラちゃんが言っていた気がするがよくわからない。

 大事なのは今、俺のボディは杭に半分埋め込まれ黒いえちえち触手でからめとられているという事だ。

 素晴らしい。

 

『マイロード、怪我はなかったか?』

 

 大丈夫だよ。

 ちょっと、死が自分の四方を囲っているだけ。

 全身のありとあらゆる部位が生存可能な状態から逸脱して、ほぼ死体になっていただけだから。

 

『……それは、大丈夫とは言えないのではないだろうか』

 

 そうかな?

 現に、俺はこうしてピンピンしているよ。

 

『本来はあり得ない状態だねぇ。最初に、0号の中に入ってこっちに来ると言ったときは遂に人をやめたのかと思ったが……まさか、本当に可能だとは』

 

 ふっふっふ……俺は常に進化を続けている。

 あのまま杭にとらわれ続けているだけではこっちのコンテンツを味わえないからね。

 

 せっかくのソルシエラコンテンツなら、余すことなく摂取する。

 それが、美少女を目指す俺の務めだ。

 

『説得力の割に理屈がないんだよなぁ。人間は、魂だけじゃ存在できないんだよ』

 

 ?

 けれど、こうして出来ているならそれが全てだろ。

 

 それに君も感じるだろう。

 不可能を可能にする美少女エネルギーの湧き上がりを。

 

『ああ。双星形態は今もなお有効だ。力があふれて止まらないねぇ!』

 

 ネームレスに言ったのはぜーんぶ嘘!

 今の星詠みの杖君が時間経過で負けるわけないだろ!

 

『私と相棒のユニゾンと言っても過言ではない。真・双星形態だ!』

 

 うおおおおおお!

 

 という訳で、これから君には『マスター以外の人間との初めての共同戦線』という0号コンテンツを生み出してもらいます。

 こういう時のために、俺の部屋には色々とコンテンツストックがあるからね。

 

 クラムちゃん辺りを呼んで、コンテンツストックを解放しよう。

 そして、ソルシエラを美しくカッコよく助け出してくれ!

 

『助け出される側の態度か……?』

 

 うおおおおお!

 実はソルシエラは抱擁で意識を取り戻し、何か体力も回復して杭も一撃で壊れるぞぉ!

 

『やらせが過ぎる』

『ちなみに、0号はどこかで幼き命になることはないのか?』

『何がちなみになんだよロリコン。割り込んでまで発言することか?』

 

 ロリ0号のコンテンツストックはないんだ……。

 ごめん、俺は美少女失格だ……!

 

『案ずるな、ここから作りだしていこうマイロード。私は貴女達を見て学んだぞ。0号のようなキャラが幼き命になるのは、良い文明だと』

 

 ラーニングが完璧すぎる。

 

『うーん、私の脳内がいつもよりもうるさくて壊れそう^^ なんでこれに今まで君は耐えれていたんだ』

 

 何故耐える必要があるんだ?

 君達の言葉や感情は、これ即ちBIG LOVE……!

 耐えるなんてとんでもない。俺はこれがあるからここまで来れたんだ。

 

『……はあ、君は本当に♥』

『おぉ……流石は我が娘』

 

 感じるぞ、二人の愛を。

 行くぞ二人とも!

 

 さあ、ここからは0号のソルシエラ以外との交流や、那滝ケイのお労しい本音など、おいしいコンテンツが盛りだくさんだ!

 

『わぁい^^』

『今日も元気いっぱいで嬉しいぞ』

 

 

 

 

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