【書籍化決定】かませ役♂に憑依転生した俺はTSを諦めない   作:不破ふわる

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第323話 鑑賞、素晴らしき世界

 ソルソルソール!

 ソルソルソール!

 

『蝉かな?』

 

 夏、脳を焼く季節の到来です。

 皆さんのおうちにもソルシエラが脳を破壊しに行くようですよ!

 

 精一杯の美少女コンテンツでもてなしてあげましょうねぇ!

 

『夏の怪異?』

『おぉ……なぜ私との楽しいピクニックは日記にないのだ?』

 

 そんな記憶がねえからだよ。

 無い記憶を日記に書けるわけないだろ君。

 自分がどれだけおかしい事を言っているのか自覚しているかな?

 

『なぜ自らを論破するんだろうねぇ』

 

 は?

 俺のはあったが?

 

 俺はきちんとミステリアス美少女として生きてきたその軌跡を、美しく記しただけだが?

 

『誇張表現が過ぎやしないかい? 私には美少女コンテンツの生成過程を記した日誌にしか見えなかったが』

 

 美少女コンテンツは一日で成る訳ではない。

 ここまでの積み重ねがあったからこそ、花開いたんだ。

 

 クラムちゃんやミロク先輩をごらん。

 あんなにソルシエラのために泣いてくれて、最高だろう?

 

『ああ^^』

 

 これは妥協なく美少女コンテンツを探求し続けたからこその結果なんだ。

 

 味付けと美少女コンテンツは濃い方が良いってのが、うちに代々伝わる格言なんだよ。

 おかげでクラムちゃんはより脳を焼かれて理解者としてワンランク上のステージに上がったし、ミロク先輩も先輩レベルが上がった。

 

『上がるとどうなるんだ』

 

 ソルシエラの手作り曇らせグッズをプレゼント!

 

『メリットがないねぇ』

 

 なんてこと言うんだ。

 小さい頃からソルシエラが大切にしているぬいぐるみ(自爆プログラム内蔵)とか、皆への謝罪と感謝がメインの遺書とか、次の星詠みへの手紙とか色々とあるんだぞ。

 

『用意周到もここまで来ると気持ち悪いんだねぇ。感心よりも先に『マジかこいつ……』って思ってしまったよ』

 

 クラムちゃんとミロク先輩は日記は見たからね。

 ここからは、次のイベントに進んで貰うよ。

 

『ソルシエラの自爆プログラムだったかな?』

 

 そう!

 万が一に備えてソルシエラが自爆プログラムを残しておいてもおかしくはない。

 尊厳を失い生物兵器や生体パーツになる前に、女の子のまま殺して欲しいという最後の願いだ。

 

 なんと健気で悲しいのだろうか!

 ソルシエラ……どれだけの覚悟でこれを用意したんだ……!

 

『ウキウキだろうねぇ』

『――マイロード、彼女達の隙をついてぬいぐるみをカメにしておいたぞ。砂で作られているから、変幻自在だ』

 

 何してんだお前。

 

『私の存在も教えないと、後で皆と仲良くするときに私だけマイロードの中でお留守番になる。……それは、少し悲しい』

 

 カメ君……。

 

『私も、シエルやキリカ達と遊びたいのだ』

 

 やっぱ駄目だわ。

 天使を人前に出すわけにはいかねえよ。

 

『というか、度々こいつがカメを差し込むせいでソルシエラがカメグッズ好きみたいになっている気がするぞ』

 

 どうしよう、クリスマスプレゼントでカメのボールペンとか貰ったら。

 ソルシエラにカメは流石にアンソロジーすぎるよ。

 

『だが、そういうボールペンが後にボロボロの状態で出てきてマイロードの身に何が起きたかを示唆するのであれば……?』

 

 良い……いや、待てカメである意味はないだろ。

 あぶねえ、すぐにでもこの部屋にそういうグッズを生み出し伏線を張るところだった。

 

『こいつ、自分を入れて欲しいがあまりコンテンツを理解して交渉に取り入れたのか……!? これが天使……!』

『天上の意思により、幼き命の保護を命じられた私は常に進化をしなければならない』

 

 今頃、天上の意思も泣いているだろうね。

 信じて送り出した天使が、ロリコンになっているなんて。

 

『おぉ……誇りである。あと、ロリコンではなく、守護者だ……』

『一丁前にプライドあるのなんなんだよ』

 

 本当ならロリ化ソルシエラもやってあげたいんだけどね。

 そういうのも準備が必要だからさ。

 

 それにコンテンツ的には次は記憶喪失だし。

 

『記憶喪失を予定に組み込む人間初めてみた』

 

 これは俺も初めての試みだ。

 日記を書く際、俺は自身の中にソルシエラを改めて刻み込んでいる。

 これは条件反射の美少女コンテンツバージョンだと思ってくれて構わない。

 

『わかりやすくして余計に意味不明になってる……』

 

 つまり、俺はその気になればいつでも記憶を封印できる。

 そして何も覚えていないソルシエラになれるんだ。

 

 あ~^^ 散々苦しんで自分を犠牲にして作り出したものも、かけがえのない仲間も全て忘れてしまって全部がなかったことになる虚無シエラを早くやりてぇなぁ!

 

 日記を読んでも何も感じず、首を傾げてぇ!

 それ見て感情がぐちゃぐちゃになったクラムちゃんの泣き顔がみてえよぉ……!

 

『普段美少女に酷い事をしない分、クラムへの曇らせの躊躇が無さすぎる。君、そこそこ加虐心もあるよね』

 

 そりゃあ、ソルシエラはドSだからね。

 

『?』

 

 ?

 

 まあ、その辺は後でディベートするとして。

 次は六波羅さん達を見に行こうねぇ。

 

 本当はトウラク君に助けてもらうのが物語としては美しいが、TS六波羅さんに助けて貰うのも最高だ。

 あぁ~、弱っているソルシエラをお姫様だっこするTS六波羅さんが見てえよぉ!

 

『これを助けるのか……』

 

 星詠みの杖君、きちんと0号としてギスギスするんだよ?

 隙あらば協調性のなさをアピールするんだ。

 

 そうすることで、後々君が仲間になった時の味が増すからね。

 

『任せてくれ^^』

 

 それじゃあ、行くぞ!

 

『応ッ!』

『――マイロード、彼女達の隙をついてカメさんインテリアを追加しておいたぞ!』

 

 ずっと黙っていると思ったらまたやったのかよ!

 

 

 

 

 

 

 もしも、この場で一つ願いが叶うならリュウコは帰宅を願っただろう。

 

「足を引っ張ったら殺すぞ龍使い」

「ひぇ……」

「手ェ抜いても殺す」

「ひぇ……」

「私のリーダーに色目使っても殺すからなぁ!」

「お前相手にはビビんないよ(笑)」

「こいつぅ!」

 

 バルティウスの背の上でエイナがリュウコへと殴り掛かるが、リュウコはそれをひょいと避けて高らかに笑う。

 

「あっはっはっは! 六波羅さんはバチクソに怖いけどエイナは怖くないもんねー!」

「くっそぉ! リーダー、あいつボコボコにしてくださいぃ!」

「そうなると誰が千界学園に連れてくんだよ馬鹿」

 

 現在、バルティウスは凄まじい速度である地点へと向かっていた。

 千界学園の中央、最後の杭が刺さる決戦の地へ。

 

 千界学園の自治区には、人の気配はない。

 あるのは、空に渦巻く暗雲とそれを貫く杭のみである。

 

(……妨害を想定してバルティウスで来たが、予想とは違ったなァ)

 

 六波羅は、気の抜けているリュウコやエイナを見ながらそう考えた。

 この状況でソルシエラや杭のある学園を無防備にしておく理由はない。

 

 既に二つの杭を破壊された今、残った杭を守るための守りを構築するのは当然だ。

 

 それでもがらんとしたこの学園を見て、六波羅は二通りの可能性を思い浮かべる。

 

(ここが奴らの計画の要ではなく、壊されても問題無ェか。あるいは……誰が来ても問題ない何かが杭の近くにいるのか)

 

 教授の強さは、ルトラとタタリの説明で知っている。

 が、六波羅をもってしても完全な対処は不可能であろうというのが答えだった。

 

「いずれにせよ、気張る必要があるなァ。0号、お前はどれだけ戦える?」

「以前、騎双学園で君と戦った時の半分……もあれば良い方だろうか。既に、干渉の権能はその機能を失い始めている。手早く事を為すぞ」

「そうか、わかった。リュウコ、とにかく速くて強い奴用意しとけ」

「速くて強い……うーん、麒麟とかスレイプニルとかかな……」

 

 六波羅の言葉を受け、リュウコは戦いに備えて伝承の選別を始める。

 

 その時だった。

 

「act1」

「ッ、エイナァ!」

「はいぃ!」

 

 頭上から聞こえた声に、六波羅はエイナを弓へと変化させるとためらいなく矢を放つ。

 焼却の力を持つ黒い焔は赤い矢に貫かれて散り散りになった。

 

「ちょっ、撃つなら言ってよバランスが――」

 

 矢を放った衝撃でバルティウスが地上へと不時着する。

 ブツブツと文句を言いながらも、リュウコは無傷で起き上がり六波羅の見る方向を見上げた。

 

「うわ……ネームレスじゃん……」

「泣き言か? なら、お前から処分しても良いのだがね、龍使い」

「ひぇ……は、働きます! 不肖リュウコ、頑張ります!」

 

 リュウコに呼応して、赤い龍は起き上がり空のネームレスへと吠える。

 

「さて、始めようか。私のお姫様を奪おうとする奴らは、誰であろうとも倒す」

 

 ネームレスの背後には巨大な黒鳥の姿があった。

 妙に昂っているようで、翼を雄々しく広げてバルティウスへと吠え返す。

 それは、那滝家に伝わる唯一のSランク魔物、地絃天星埜御霊であった。

 

「おいおい、本人が聞いたら嫌がりそうなセリフだなァ!」

「あの子は私のものだ」

「脚は引っ張らないようにしないと……!」

 

 地絃天星埜御霊に相対するは、学園都市最高戦力のSランクと星詠みの杖の中枢プログラム。

 

「景気づけだ、これで死ぬなよ雑魚共が」

 

 真っ赤な光線が弓より放たれた。

 地絃天星埜御霊は、翼を一度大きく羽ばたかせると、その風圧だけで光線をかき消す。

 その光景で、六波羅達は怪物の実力を理解した。

 過去戦ったどの魔物よりも強い、と。

 

「そんなんじゃ、今のこいつには攻撃は届かないよ」

「へェ……」

 

 千界学園2度目の決戦は、ここに幕を開けた。

 

 

 

 

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